台南で必食の擔仔麵(タンツィーミェン)、著名な度小月は水仙宮前で1895年創業の老舗。 : 度小月 台南本舖老店

台湾高鐡(台湾新幹線)の台北站は、台鐡の在来線に寄り添う、聊か肩身の狭い地下のプラットホーム。
滑るように動き出したのは、700T型と呼ばれる、東海道新幹線のぞみの改良型。
暫くの間、トンネルをゆっくりと進み、ほどなく到着する板橋(バンシャオ)からは明るい地上に出て、列車はぐんぐんスピードを上げていきます。
高層住宅群もやがて南国の田園風景に変わる中、たちまち速度は295km/hにも。
わが日本の技術が、こんなにもこの国の人たちの役に立ち、暮らしを豊かにしている。
少し誇らしい気分で、車内販売のコーヒー(NTD40)を買い求め、ゆったりと車窓を眺めます。

以前は在来の自強號で４時間もかかった台南には、僅か１時間45分で到着。
ただ、この高鐡站が市街とは遠く離れた田園にあって、当初はシャトルバスでさらに１時間近くを要したもの。
最近になって台鐡が連絡在来線を敷いたおかげで、30分ほどで台南中心部へ出られるようになりましたが・・・

久しぶりにやってきた台南は抜けるような青空で、陽射しの強さも台北とはどこか違う熱帯の様相です。
この街で先ず腹ごしらえとなると、擔仔麵(タンツィーミェン)は外せませんね。
站から続く中正路というメインストリートを暫く歩いて、有名な「度小月」(ドゥシャオイェ/ドショウゲツ)さんへ。
こじんまりした間口ですが、入るとすぐに大きな提灯が下がり、その下では座った職人さんが実演調理をしています。
台北忠孝敦化(チョンシャオトゥンホヮ)の支店でもおなじみの、このお店ならではの光景です。

茶器などを上品に飾った店内は、見ているだけでも異国情緒に浸れますね。
こじんまりと清潔感あふれる店内で食べていけるという意味でもこのお店、実に日本人向けなのかも。
熱気あふれる台南小吃という意味では、凄いお店は山ほどありますから、追々紹介したいとは思いますが・・・・

さて、注文する擔仔麵ですが、調理はささっと湯がくだけ。
実演台で張りきるお兄さんに、ミェン&ルーダン、と。
中国語なんだか英語なんだか、わけのわからぬ言葉に、言われる方もたまったものじゃないですが、旅行なんて、半分は度胸ですから。
要は、麵(小麦の中華麺)、ビーフン、いずれかを選び、貢丸やソーセージ、ピータン、魯蛋等々はお好みでということです。

直ぐに持ってきてくれる擔仔麵(蛋入NTD65)、量はほんの少し。
大食いな人なら、こんなの一口、という感じの量ですが、もちろんこれが伝統的なもので、故に食べ歩きの身には丁度良いのです。
実にさっぱりした蝦出汁が、すうーっと腹に収まります。
麺は小麦麺のほかに細身のビーフンも人気ですが、あくまで「麵」の方がするすると喉越しも良いですね。
麵の上からかけられる挽肉そぼろ餡は、台湾独特の深みある甘辛い味で、すりおろしニンニクが結構効いてきます。
そぼろ餡の上からはごく小さなパクチー、それに小海老がちょこんと。
このパクチー、苦手な人も多いのですが、全体を引き締め、蝦出汁の良さを引き立ててくれますね。

そして、もう一品と頼んだのが「黄金蝦捲」(NTD140)。
台南市街の西方、オランダ統治に謂れのある古い港町「安平」ゆかりの名物でもあります。
三本を半割にして出してきますが、これでNTD140とは、結構なお値段。
だいたい、台湾の屋台では、炒飯がNTD50～70程度なのですから・・・

でも、一口食べると、やっぱり頼んで良かった・・・！
カリッとした口当たりとともに、ジューシーな海老のすり身のジュワーッと溢れる旨さ。
勿論、何時頼んでも揚げたてを出してくれ、これはもうたまりません。

台南は西側に台湾海峡を擁する街ですから、この海老も、もちろん近場で揚がる新鮮なもの。
でも、台湾では夏季だと頻繁に台風がやってきて、漁師にとって、夏場をしのぐのは大変なこと。
だから、夏季の副業として、麺等々の屋台を出す人が、一昔前まではとても多かったのだとか。
このお店の創業者は福建出身の漁師で、苦しい夏場である「小月」を乗り越える（渡る＝度）ために、擔仔麵を売り歩いた。
これが「度小月」の屋号の意味なのだそう。

長竿に麵売りの道具一切をぶら下げて売り歩く・・・
それは大変な苦労だったようで、擔仔とは、まさに担ぎ棒(天秤棒)のことなのだと。
擔仔麵の椀が小さいのも、机や椅子が簡素なのも、そして入口の簡素な実演のスタイルも、擔仔を肩に担いで売り歩いた昔の苦労を今に伝える、ご当地台南伝統のスタイルなのですね。

NTD1.00≒JPY3.62(2014/09)