活き蟹をまるごと！新鮮材料が奏でる極上の味、プーパッポンカリー。 : Kuang Sea Foods

バンコクから70kmほど南に離れたメークロンという街にある、鉄道線路上の折り畳み市場、それにアムパワー水上マーケットへと、ガタンゴトンとローカル線を乗り継いで出かけてみたのはいいけれど、なんと、帰りの列車はもうないのだと。
でも心配は無用、鉄道があまり便利でないタイでは、ロットゥーというジャンボタクシーが大活躍なのです。
僅かTHB60でバンコクへ戻ってくれるというロットゥーは、ハイエースを大きくしたような、とても快適なクルマ。
幹線国道とハイウェイをかっ飛ばし、瞬く間に「戦勝記念塔」脇のターミナルに滑り込みました。

このターミナルのすぐ南で交差点を左に折れ、ランナム通りをずっと歩いていくと、見えてきたのは「クァンシーフード」という、プーパッポンカリーの評判店。
お店の前には生簀や水槽が並び、盥には、手足を縛られた蟹が何匹も。
待機している女性スタッフに案内されて店内へと進むと、ちょうど週末の夜とあって、大広間に並んだテーブルには、老若男女の家族連れをはじめ、実に大勢のお客さんで賑わっています。

さて、まずはタイらしいところで、取り敢えずみんなで「トムヤムクン」を啜ろうかと。
ちなみに「トム」は煮るの意、「クン」は海老の意味なのですね。
それにしても、タイ料理の名前って、どれも食材と調理法の組み合わせで命名されているものばかりです。
トムヤムの風味と言えば、今ではカップヌードルのトムヤムテイストが日本でバカ売れするほど。
日本人にも親しまれる、タイ料理を体現するテイストなわけですね。

大きな鉢にたっぷり持ってきてくれたトムヤムクン。
一口啜ると、いきなり強い辛み、そして酸味がガツーンと襲ってきますが、ライムの香りが爽やかさを添えます。
ふくろ茸、殻ごと煮た海老、刺激の強い牛蒡のようなもの？それに、なかにはレモングラスや柑橘の葉「バイマックルー」など、齧っても決して飲みこめない香辛料もたくさん入っているから、上手に避けながら食べ進めます。

そして、待望のプーパッポンカリー。
これ、現地の物価を考えるとちょっと吃驚、大皿ながらTHB380もします。
ロットゥーで、アムパワーをいったい何往復できるやら・・・・
とは言え、日本円にしてみれば千円台前半くらいのものですから、絶対に奮発して欲しいもの。

大皿に盛られて出てきてみると、全体を黄色いふわふわが覆います。
具の太宗は、もちろん叩き潰したばかりの新鮮な蟹、それにあれこれ入った野菜たち。
蟹はいろいろな部位が入っていますが、苦労しなくても甲羅から上手い具合に身が外れてきます。
さっきまで活きていただけあって、仄かな甘みが溜まらない極上の味。
蟹みそ、卵黄、蟹の卵と、コクのある食材が出会い、ふんわり効いたカレー粉とともに、無二の味覚を奏でます。
カリー、とは言うものの、ふわふわまったり蟹と卵のコク、という感じですね。
以前から噂を聞いていましたが、実際に食べてみると、これは本当に旨い！

次に、牡蠣の名物料理「オースアン」を。
小粒でプリプリの新鮮な牡蠣がごろごろ、鉄板の上でもやしを敷いた上で卵とじにされ、とろみをかけてあります。
甘くてビリビリ辛い、いかにもタイらしい赤いソースをとろーっとかけて。
口にしてみると、これがプリップリで海の滋養がギュッと詰まったような良い風味！
この料理、私の台湾レビューを読んでいただけた方なら直ぐに連想されると思うのですが、台北寧夏路や新竹で有名な「蚵仔煎」(オアジェン)にとても良く似ています。
でも、もちろん似て非なるもので、ソースの味のみならず、全体の塩梅も良い意味で台湾とはかなり違います。
これも、此処に来たら絶対外せません。

最後の締めは、もちろん炒飯(カオ・パット)。
大皿にたっぷり、家族で分けても十分な量があります。
使っているのは、勿論インディカ米。
これが実に良い塩加減で、パラリと上手に火を被せてあります。
此処のチャーハン、タイで食べたものの中でも一二を争う旨さでした。

バンコクでも、プーパッポンカリーで有名な店はいくつもあります。
特にソンブーンレストランなど、素晴らしいものですが、半ば観光化していて、大勢の日本人旅行者やビジネスマンと鉢合わせ。
それに対して、此処はというと、多くのタイ人たちの熱気とともに、ダイナミックな本場の食事をとることができますね。
ちょっと野暮ったい雰囲気は否めませんが、そこがまた旅の醍醐味だと思います。