東山清水さんが投稿したレヴォ(富山/城端)の口コミ詳細

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東山清水の「富山の美味逍遙」

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レヴォ城端/イノベーティブ、創作料理、郷土料理

2

  • 夜の点数:4.6

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.1
      • |雰囲気 4.7
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
  • 昼の点数:4.6

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
2回目

2022/06 訪問

  • 昼の点数:4.6

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

富山の自然と命が五感に響く究極の地方料理、未知と非日常の別天地

 レヴォは、2020年12月にオーベルジュとして再出発して1年半余り、既に高い知名度と評価を得ている。透徹したこだわりの料理と徹底した地産地消は、唯一無二にして究極のローカル・ガストロノミーとも目され、料理評論家の山本益博氏は「魂が震撼する」と評した。ゴ・エ・ミヨ ジャポン 2022年では、谷口英司シェフ自身2度目となる「今年のシェフ賞」を受賞した。谷口氏が人生を賭けて理想を形にした壮大なチャレンジは、さらなる高みに向けて続いている。

【料理、味】
 多彩なジビエと山海の幸をこれでもかと盛り込んだ「前衛的地方料理」は、力強くかつ繊細で、富山・利賀村の自然と谷口シェフの個性を凝縮している。1年前に食べた時は、食材と谷口氏の個性が際立って尖った印象を受けたが、今回は、食材とシェフの個性がより融合・相乗し、バランスのよさと奥深さが増したように感じた。力強さの中にもやさしさがあり、エッジが立っているけれども心地よい。細部にまでこだわりが行き届き、ありきたりなところが見当たらない。食材から生命感がほとばしるのを随所で感じ、五感に訴える新鮮な驚きが続く。

◇一献  イタヤカエデの樹液を、富山のガラス作家・安田泰三氏作のガラスの盃でいただく。

1.プロローグ
 富山の山海の幸を使った小さな5種類のアミューズで、これだけも豊かな自然のイメージが広がる。
・グジェール
 黒部の山羊のチーズと満寿泉の酒粕を練り込んで焼いたもの。
 ふんわりした外側のシュー皮が口の中で崩れると、山羊のチーズのまったり濃厚な風味が広がる。
・白エビ
 薪火に軽くあてて香りを出した白エビ、その下は海苔を練り込んだ餅米で作ったエビ煎。
 サクサクのエビ煎と上に乗せた白エビのとろみが混じり合う。
・赤ビーツのメレンゲと鶏のレバームース
 定番メニュー。メレンゲは口に入れた瞬間、ほろほろと軽く溶けて、ムースの深く強い旨味がしみる。
・甘鯛とジャガイモのクロケット
 細かく刻んだ甘鯛とジャガイモが、口の中で混じり合い、甘みと塩気とほろ苦さなどが温かくジュワっと広がる。上に乗せたナスタチウムは、小さなハスの葉のようで緑色が鮮やか。
・山ぶどうの新芽
 山ぶどうの新芽を香ばしく揚げたもの。まわりに、山ぶどうのツルと茎を添えた。
 柔らかな苦味の中に、ぶどうらしい酸味が現れる。

2.青バイ
 バイ貝(富山湾産)は、薪で軽く炙った。中央に、山菜のハンゴンソウ、イタリアンパセリの新芽、下には新たまねぎ。新タマネギのソース、ペルノー酒を使った白いソースとともに。
 温かいバイ貝は薪の香りが立ち上り、やさしい歯ごたえが心地よい。そのまわりの山菜類は、新鮮そのものでしゃきしゃき弾け、みずみずしさに満ちている。

◇パン1 (米粉のパン)

3.鱧
 鱧の姿はなく、エキスをブイヨンスープに忍ばせている。ジュレにした鱧のスープに、山菜のミズのペースト、ジャガイモのペースト、ウニ、ジュンサイ、紫蘇のスプラウトと花とオイル、梅肉などを合わせた。
 鱧のジュレは冷たくてみずみずしく、紫蘇の塩気のある風味、ウニのほろ苦い旨味、ジュンサイのプルプルの食感などが、口の中で代わる代わる主張する、夏らしい一品。鱧の姿をあえて消すところが、イノベーティブのレヴォらしい表現だ。

4.月の輪熊
 月の輪熊は、2週間熟成させ、薪火であぶり焼きした。アザミ、コゴミ、ギボウシ、イヌドウナ、菜の花とともに、熊のコンソメ、アザミと蜂蜜のソースで。
 熊の肉は、柔らかいようでいて、力強い線維の粘りと弾力もあり、すぐには口溶けしない。よく噛んでいると、野生的というより上品な感じの旨味がじわっと出てくる。熊のコンソメのジュレは、さっぱりとしながら旨味が強く、シャキシャキの山菜がその旨味をまとう。

5.赤烏賊
 赤イカ(四方産)を薪で軽く炙り、周りには、カンゾウ、発芽落花生、ズッキーニ、シシトウ、フヌイユ、マタタビの実をちりばめ、グレープフルーツのビネグレットで和えて、ヴァンジョーヌのソースを合わせた。
 赤イカは香ばしくて、ぷちぷちぱつぱつした歯ごたえがあり、ゲソと胴体2つの異なる食感。それにいろいろな山菜類の味と食感が加わり、甘みと酸味のあるソースが絡む。

6.アスパラガス
 川端農園の極太のアスパラをゆっくりソテーした。ソースは2種類、1つは卵黄と熊の脂のカルボナーラ風のソース、もう1つはアスパラのジュのソース。低温調理したサクラマス、天然のミツバ、山椒、大根の花とともに。
 アスパラは、表面を焦がした柔らかめの穂先と、固めで力強い胴体部分と2つの味わい。胴体部分の方は、かみしめると、生きているような青々しさが芯の中から現れる。低温調理したサクラマスは、箸でつまむとほろほろに崩れるほど柔らかく、しっかりした塩気で、かんでいるとマスらしい風味が奥から出てくる。

7.グルヌイユ(メニュー外)
 天然のグルヌイユ(カエル)は、店から30分ほどの場所で捕まえたアズマヒキガエル。そのもも肉のフリット。和紙のコースターを取ると、器の中には、グルヌイユの腕とバラを使ったセビチェ(マリネの一種)、イタドリとクワの新芽。
 グルヌイユは、ほぼ鶏肉に近い味と食感。ただ微妙に引き締まった肉質で、長い筋線維の張りと弾力を感じる。適度な脂があるが、フライドチキンほどに柔らかくジューシーではない。新鮮な山菜は、ほのかな苦味と青々しさで、脂をまとったセビチェに合う。
 ちなみに、ウシガエルは敏捷で警戒心が強くて捕獲困難だが、ヒキガエルは動きが緩慢で人前にのこのこ出てくるから、容易に捕獲できる。ヒキガエルは都心にも棲息していて、東京スカイツリーのすぐ近くの親水公園でも見かけました(ここにはウシガエルもいます)。

◇パン2 (全粒粉のパン)

8.大門素麺
 30秒ほどでアルデンテに仕上げた半生の大門素麺を、黒部の山羊のチーズとフキノトウのオイルのスープで。
 当店のスペシャリテの1つ。オイリーで濃厚なスープをまとった素麺は、つるつるで口当たりがなめらか。山羊のチーズとフキノトウという個性的な2つの風味が見事に両立していて、素麺の新たな食べ方としてよくできている。山羊のチーズの風味は、店を出て2時間後に出たゲップにまだ残っていたほどだが、マイルドで嫌なえぐみはない。

9.レヴォ鶏
 土遊野農園で特別に飼育している生後90日程の若鶏の足の部分。土遊野の米を、レヴォ鶏の胸肉、頬肉、熊の内臓、山菜のコシアブラとともに炊き、それを鶏皮で巻いて中に詰めて、薪火でじっくり焼いた。ソースは、レヴォ鶏のブイヨンにマスタードを合わせた。
 力強い味わいと野生的なビジュアルで、当店を代表するスペシャリテ。熱々でジューシーな外側の皮と、中に詰まったいろいろな旨味が口の中に広がる。1年前に来た時は、生後45日の鶏で食べるところが少ない印象だったが、今回は生後90日で、肉を食べた満足感が得られた。

◇パン3 (天然酵母のパン)
 
10.虎魚(オコゼ)
 ふっくらと焼き上げた虎魚で、その下にはガスエビをベースに赤ピーマン、唐辛子を入れたソース。ウドのバリグール、シャク、オオバタネツケバナ、チャンチン(香椿=山菜の一種で中国では高級食材)とともに。
 オコゼはきれいな白身で、軽くぷるんとした張りと、ほろっとした柔らかい食感とがある。ウドは香ばしくて野生的な味わいで、ソースはエビの濃厚な風味。

11.猪
 近くの山で猟師が獲った猪を店の貯蔵室で熟成させ、薪火でじっくり焼いた。ススタケは、上の方の柔らかい部分を食す。上には空心菜、ヤマブキショウマ。
 猪の肉は、力強い弾力感とさくさく感があり、臭みのない野性味を感じる。ススタケは、しっかり焦げ目をつけて味が濃い。

12.よつぼし苺
 富山市で取れた糖度の高いヨツボシ苺を使った冷たいデザート。下の方にショコラ生地のクッキー、中にはレモンハーブ、上にはマリネした苺、つるし苺の冷たいエクラゼ、飴状に仕上げた苺のチップという3種類の苺に、ライムの皮をちらし、ココナツのラングドシャを添えた。バニラをまぶしたココナツの泡のソースとともに。大きな木製の器は、ダイニングのテーブルと同じくShimoo Design製。
 冷たくしっとりしたエクラゼは苺の味が濃厚で、固くて粘りのあるチップは薄く小さいが苺の味が凝縮している。さくっとしたラングドシャは、小さいがココナツが香る。ココナツの泡もさっぱりとした香りで、五感で楽しめる一皿になっている。

13.黒文字
 添えた花以外はすべて黒文字を使って作ったデザート。薄く焼き上げたパイ生地の間には、黒文字のカタラーナ(カスタードクリームのようなもの)をはさみ、上には黒文字のパウダー、シロップ、つぼみ、千華園の白い花。
 パリパリの香ばしいパイ生地に、冷たくてスイートなカタラーナ、粒々した食感などが入り交じる黒文字づくしのデザート。

14.小菓子
・棒茶のタルト
・エゴマのフィナンシェ
・桑茶のシューアイス
・リンゴのタルト
・生キャラメル(フランボワーズとミルク)

 ドリンクは、アルコールのペアリングが13,000円(税込み)、ノンアルコールが6,600円(同)。グラスは比較的手頃な値段で、ジュースは600円からある。

【雰囲気】
 厨房とダイニングが一体となった空間のオープンキッチンは開放的で、シェフをはじめとしてスタッフの動きが常に全部見え、ときおりシェフの掛け声が聞こえてきたりしてライブ感がある。テーブル席は窓際に並び、夏は一面の緑と木立、冬は木立の間から雪景色と渓流が見える。
 店に向かう途中、緑一色の山奥に分け入っていく時点から気分が高まり、非日常の別天地に来た感じがする。利賀村から富山市の市街地に戻ってくると、地方から都心に戻ってきた時のような、日常の現実世界に引き戻された感覚を覚えた。
 
【CP】
 料理だけで見ると、このクオリティーと品数で税サ込み24,200円は、十分にその価値がある。比類の無いロケーションも含めると、考え方にもよるが、宿泊費や高い交通費がかかっても、やはり一見の価値はあるだろう。

【総合評価】
 谷口シェフは、利賀村という富山県の山奥の秘境に、人生を賭けて壮大な理想を形にし、コロナという試練を耐えて一定の成功を収めてきた。やはり、この店は別格だ。
 去年テレビのドキュメントで見た谷口シェフは、目指すのは「3つです」と明言して野心を隠さなかった。今も心に期すものはあるはずで、これから先、遠く世界中からはるばる客が訪れるようになれば、ミシュランの調査員も3つ星をつけざるをえなくなるだろう。”世界のレヴォ”になれるかどうか。富山の食文化と大自然を世界に発信しようという壮大な挑戦は、まだ続いている。
 

  • 一献

  • プロローグ2品

  • 甘鯛とジャガイモのクロケット

  • 甘鯛とジャガイモのクロケット

  • 山ぶどうの新芽

  • 米粉のパン

  • 青バイ

  • 月の輪熊

  • 赤烏賊

  • グルヌイユ1

  • グルヌイユ2

  • アスパラガス

  • 大門素麺

  • レヴォ鶏

  • 虎魚(オコゼ)

  • よつぼし苺

  • 黒文字

  • 小菓子

  • コーヒー

  • 店舗内観(ロビー)

  • 店舗外観

  • 店舗外観2

  • エントランス

2022/06/15 更新

1回目

2021/03 訪問

  • 夜の点数:4.6

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.1
    • | 雰囲気4.7
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

富山を愛しすぎた男のロマンと野心の理想郷、進化した究極のテロワール

「星、空、水、山、雪、土。すべてが食につながる」を店のキーワードに掲げ、地産地消を徹底した究極のテロワールを実現した理想郷とも言うべきオーベルジュ。食材から器・インテリアに到るまで富山づくしの前衛的地方料理は、鮮烈で独創的で、ここにしかない唯一無二の価値を生み出している。
 レヴォについて語るには相当な紙幅を要するが、他に類のないすごい店であることは間違いない。ロマンと野心あふれる類い稀なシェフが人生を賭けた壮大な挑戦の舞台は、遠く険しい山奥に足を運ぶだけの価値がある。

【ディナー】
 1月、2月の料理と基本共通するメニューが多いが、3月になり春の食材をいろいろ取り入れた内容になった。所要時間3時間半(19:00~22:30)。

0.食前酒
 南砺市の石黒種糀店の甘酒にジンジャーを合わせたもの。器は安田泰三氏作。
 一般的な甘酒のようなとろみや甘ったるさはなく、芳醇な甘味がありながら透明感がありすっきりして美味。

1.prologue(プロローグ)
①赤ビーツをメレンゲにして、レボ鶏のレバーをムースにしてはさんだもの。
 外側は軽やかなサクサク感があり、中はレバーの甘みとほのかな苦みがある。
②グジェール(チーズを混ぜたシュー皮)
 黒部の吉田興産Y&Co.(ワイ アンド コー)で作っている山羊のチーズと満寿泉の酒粕を練り込んで焼いた。
③八尾の高野もなか屋の最中
 最中といっても甘くはなく、中身は八尾のエゴマと甘鯛で、鰹節のような風味を感じる。
④イワシのタルト、ウドとタラノメ、ゲンゲ
 イワシのタルトは、タルト生地の上にイワシを重ねている。富山湾で獲れる深海魚のゲンゲ(幻魚)は灰干しして山椒の殻を砕いてまぶした。ウドの食感がアクセントになっていて、山椒の殻の渋みが口の中に残る。
⑤富山湾産のあん肝とラスク
 あん肝は、満寿泉に半日漬け込んで、薪と藁で燻香をつけたもの。あん肝はクリーミーで濃厚だが、重くはない。ラスクの焦げたような苦みがあん肝の濃厚さを和らげる。

2.ガンド(氷見産)
 ガンド(ブリに成長する1つ手前)は、マリネした赤大根で周りを覆い、自家製キャビアを包んでいる。ガンドは脂がのっていて、とろけて口いっぱいに広がる。赤大根の歯ごたえとガンドのとろける食感との対比が際立つ。塩分濃度を抑えたキャビアは、それだけ食べると結構塩気があるが、全部いっしょに食べるとガンドの味つけ役になり、それ自体の存在を感じない。器は釈永岳氏作。
 
3.月ノ輪熊(春)
 冬眠明けの熊は赤身が主体。薄くスライスして、熊のコンソメにさっとくぐらせて火を通し、ウニのソース、熊の煮こごりのジュレとともに。他に、干しゼンマイ、子持ち高菜も。全体を混ぜ合わせ、肉にからめていただく。クマの肉そのものは淡泊で、よく噛まないと口の中に長く残る。ウニの甘い苦みがきいている。器は、Shimooデザイン製。

○パン1(米粉パン)
 移転前と同様、コースの中に3種類のパンが組み込まれている。米粉のパンは軽くて柔らかい。
 バターは柔らかいクリーム状で、塩気控えめで甘味がある。

4.水蛸(ミズタコ)
 富山市四方(よかた)産の水蛸を薄くスライスし、薪の熾火(おきび)で火入れした。水蛸の身の下には、プチプチした食感のタコの吸盤、白梅のピューレ、赤ジソ、大葉のオイル、ハコベラ。
 タコの身は柔らかく、タコ特有のクセが少ない。しっかりした味つけで、ソースはシソの強い風味がきいている。

○パン2(全粒粉と麦芽のパン)
 米粉のパンとよく似ている。

5.蛍烏賊(ホタルイカ)
 ホタルイカは、薪でさっと炙ってある。上にはナバナ、下にはネギのサラダ。ホタルイカのジュ(出汁)をつけて、箸とスプーンでいただく。
 ホタルイカの身はクセがなく食べやすく、ソースはイカの濃厚な旨味が染み出ている。

6.黒エイ
 黒エイの身は、鰻の白焼きのような見た目と食感で、黒エイの軟骨のコリコリした食感がアクセントになっている。ツクシの苦み、天然のセリの春らしい味わい、チーマディラーパを加え、鯛の出汁から取った白いソースでいただくと、淡泊な黒エイの身が複雑な味わいになる。

7.大門素麺(おおかどそうめん)
 大門素麺は、通常は乾麺だが、半生をアルデンテに仕上げている。黒部の吉田興産Y&Co.(ワイ アンド コー)の山羊のオイルとフキノトウのオイルのスープでいただく。熱々のスープは、山羊のチーズの香り。個人的には、素麺はめんつゆで普通に食べる方がいいと思うが、そこにあえて挑戦するのがレヴォ流だ。

8. L'évo鶏
 契約農園の土遊野(どゆうの)で、満寿泉の酒粕をエサにして生後45日まで生育した若鶏のもも肉と胸肉を使う。土遊野の有機棚田米の餅米を熊の脂で半炊きにして鶏肉といっしょに鶏の皮に包み、薪で焼き上げ、鶏の旨味をたっぷり吸わせる。ソースはマスタードベースで、鶏のもも、胸以外のすべての部位から取ったブイヨンを合わせた。料理全体として、鶏を丸ごと全部使っている。
 かぶりつくと、ジューシーで力強い脂が口にあふれる。ソースは、卵黄のように濃厚でまったりしている。

○パン3(天然酵母のパン)
 皮が分厚くて非常にハードなパン。自分の唾液だけでは柔らかくならないから、皿に残ってソースをつけて何とか少しだけ食べた。

9.赤蕪(あかかぶ)
 赤蕪は、腐葉土で作った土釜の中で蒸し焼きにし、カブの葉を使ったサラダ、満寿泉の貴醸酒の泡とともにいただく。
 蕪は、生の食感が残るぐらいの固めで、しっかりした歯ごたえがあり、ほのかに甘く力強い。貴醸酒は豊かな甘さが口に広がる。レフェルヴェソンス(広尾)にもシンプルな蕪のスペシャリテがあったが、それよりももっとストレートで、前衛的料理のレヴォの真骨頂の1つと言えよう。

10.真鱈(まだら)
 富山湾産の真鱈は、表面にイカの黒作り(イカ墨を使った塩辛、富山市四方の業者特製)を塗り、薪で香りをつけてふっくらと焼き上げている。カリフラワーのピューレとともに。
 真鱈の身はふっくらして柔らかく、ピューレは滑らかなマッシュポテトのようで、カリフラワーの特有の風味がやさしくこめられている。

11.熊の腸(メニュー外)
 春に冬眠明けした熊の腸の上の方の細い部分をタリアテッレ(パスタ)のように薄くスライス。小腸の中に詰まっていたアザミを取り出して掃除をし、新たに採取したアザミと合わせたもののソースでいただく。
 小腸は非常に柔らかくぴらぴらとした食感で、噛んでいると小さくなっていく。焼き肉屋のホルモンとは全然違う。アザミが食用になるとは知らなかったが、苦みやクセのない春菊のような感じ。

12.子猪のスペアリブ(メニュー外)
 骨つきで脂身の多い部分に、大葉、ミツバ、タンポポなど8種類の山菜をあしらい、レモングラスベースのソースでいただく。
 脂身が野性的で力強く、野菜といっしょに口にすることで、脂のくどさを和らげている。

13.日本鹿
 レヴォのある南砺市と接する富山市大沢野で獲れた日本鹿を解体せずに30~60日熟成させ、薪の熾火でじっくり火を入れてレアに仕上げた。熊と鹿の血を使ったジビエのソースに、寒干しの黒大根、プチベール、野蒜(ノビル)、ホウレンソウを添えて。
 レアよりはしっかり目に火を通しているが、外側も内側も肉は柔らかく、肉をあまりつぶさずにナイフが入った。肉は赤身の味が結構濃く、野生の生命力が感じられ、肉自体は、カンテサンスで食べたメインのシカよりおいしいかもと思った。ソースは、非常に濃厚でいかにも野性的だ。

14.よつぼし苺
 表面の層に苺のチップとモッツアレラチーズと春菊のオイル、その下に苺のスープとシャーベット状の苺が潜んでいる。それらをスプーンで下から混ぜ合わせていただく。
 苺のチップは極薄でパリパリした食感。苺のシャーベットは、イチゴのエッセンスを凝縮したように色も味も濃い。全部混ぜて口に入れると、全体に爽やかな甘酸っぱさと冷たさが行き渡り、脂っこい料理のあとのいい口直しになった。

15.あんぽ柿
 あんぽ柿のシュクレサレ(砂糖と塩)。瞬間冷凍したリコッタチーズのパウダーは、砂糖と塩を絶妙のバランスで加え、中にあんぽ柿とチーズベースの濃厚なクリームが隠れている。あんぽ柿は南砺市福光産。外側が固く内側がしっとりした干し柿に対して、あんぽ柿は、わりと全体が均一にしっとりしまった感じがし、柿の甘味が凝縮している。リコッタチーズのパウダーは冷たくて、塩気もあってさっぱりとしている。下の方の柿とソースは濃厚だから、チーズのパウダーを最後に食べた方が後味がいい。

16.コーヒー

17.小菓子(メニュー外)
①黒文字(クロモジ)とフランボワーズを使った生キャラメル
②タルトレット、プラリネと棒茶のエスプーマ
③ショコラのシュー。中身はクワの葉の冷たいグラス(アイス)。
④八尾産のエゴマを合わせたフィナンシェ
⑤洋梨とレモングラスのパートドゥフリュイ
 食後の小菓子としては、驚くほど手が込んでいて、バラエティーに富んでいる。

【ドリンク】
 ワインは、富山のセイズ・ファームとドメーヌ・ボーのものを中心にそろえている。日本酒は富山の満寿泉、勝駒、三笑楽。食後酒には、ソーテルヌ(貴腐ワイン)、ヴィン・サント(デザートワイン)、ポルト、マデラ、グラッパなどもある。ノンアルコールは、富山県産のハーブ・スパイスの茶、ピーチ、グレープ、林檎のジュースなど。
 ワインを中心にしたアルコールのペアリングは、数種類約500mlで12,000円。半量の250mlにすることもできる。ノンアルコールのペアリングは、オリジナルカクテル・ドリンク数種類で6,000円。希望に応じていろいろアレンジしてもらえる。
 グラスは、アルコールが1杯1000円前後、ジュース類は500円からで、比較的手頃な設定になっている。

【朝食】
 朝食は、利賀村のおかあさんの味をアレンジしたもの。脂の強いジビエの夕食とはうってかわって、野菜中心の和風で、ディナーで少しもたれた胃にやさしい料理だ。苦みやえぐ味なども含めて、田舎の自然や伝統をそのまま出している。
 レヴォが目指す究極の地方料理は、その土地の自然や空気を、時間をかけて体感することで完成する。レヴォの真価を存分に味わうには、やはり、1泊してこの朝食を食べるのが理想だろう。

1.惣菜の盛り合わせ
①クレソンのお浸し。ほのかにカツオ節の風味。
②ハタハタ。富山産。山風で一夜干ししたもの。
③赤蕪の漬物。結構塩気が強い。
④カブの葉のよごし。苦みがあるからご飯と一緒に食べるのがよい。
⑤タラノメ。クセのある味で、ご飯と一緒がよい。
⑥ワサビ菜。結構辛味があるから、ご飯と一緒に。
⑦ジャガイモ(地元の言葉で「かっちり」)。皮つきのまま、醤油、みりん、砂糖で煮詰めたもの
⑧鹿肉のしぐれ煮
⑨フキノトウ味噌。やはり、かなり”えぐみ”がある。
⑩キクラゲの辛子和え

2.利賀豆腐
 大豆のやさしい甘味がする、やや固めの木綿豆腐。
3.猪の肉を使った味噌汁
 石黒種糀店の味噌に、キャベツ、タマネギ。まろやかな味噌に猪の脂が加わり、滋味深く心温まる味わいになっている。
4.ご飯
 契約農園の土遊野の有機棚田米を使用。甘味があり粒立ちのよいご飯。

 料理は、ディナー20,000円+飲み物、朝食は3,500円。これにサービス料10%と消費税10%が加算される。

【雰囲気】
 すっきりとして整然としたオープンキッチンを目の前にしたカウンター席(4席)からは、調理の作業の様子(主に盛りつけ)が間近に見える。ときどき、シェフの「さあ行こう」と言うかけ声やスタッフへの指示が聞こえるが、みなかなり静かに仕事をしている。他店では、スタッフが忙しく動き回り、声が飛び交い、活気のあるライブキッチンのところもあるが、レヴォの厨房は、いたって静的で飾らない空間だ。厨房と客席とに自然な一体感があって、長時間1人で座っていても退屈もせず居心地がよかった。適度に明るさを抑えた照明も、落ち着きがあって疲れなかった。
 ガラス張りの窓際に配したテーブル席と個室(4席)からは、眼下に流れる渓流とその両岸にそそり立つ山の雪景色が見えた。

【設備】
1.施設全般
 ロビーとレストラン内はWi-Fiが利用できる。レストランの下の階に、クマやシカの貯蔵庫やワインセラーがあり、見学させてもらえる。頼めば、厨房内も見学させてもらえる。
 周囲は自然豊かだが、散策路などは特にない。夏場なら渓流の河原まで降りることはできるという程度だ。

2.コテージ
 今回はコテージ1を利用。グレーを基調としたモダンでシンプルな壁面と透明なガラス、古民家で使用していた建具や家具などを取り入れた木の質感とで構成されている。
 タオル、シャンプー、ボディーソープ、ドライヤー、歯ブラシ、歯磨き粉、くし、カミソリなど、ひと通りそろっている。冷蔵庫には、飲料水がある(自販機などはない)。また、ネスプレッソがあり、5種類のコーヒーと2種類の紅茶が飲める。
 ないものは、寝間着、テレビ、時計、ネット環境。
 浴室は、ガラス張りで、湯につかりながら雪山の景色が見える。

4.サウナ
 1時間貸し切り。じわじわと温まっていく感じで、スタッフによると「きょうは温度が高め」とのことだったが、一気に汗が噴き出してくるほどの熱さではなかった。汗が少しずつにじみ出してくる程度で、顔にタオルを巻きつけ、ときどきドアを開ければ、長い時間入っていても全然大丈夫だった。食事前のサウナとしては、非常に気持ちよかった。

【サービス】
 担当の2名の女性スタッフは、いずれも感じが良く、親身な対応をしてもらえた。12名のスタッフのうち、移転後に新たに地元採用した人もいるとのことで、まだ洗練されていない印象のスタッフもいるように感じた。

【CP】
 他にはない特別感から、「プライスレス」という言葉が頭に浮かんだが、2万円(税サ込み24,200円)という料金設定はいたって適正妥当だろう。

【総合評価】
 リゾートホテルのレストランだった時と比べて、格段に力強く個性的に進化した印象だ。レヴォは、移転前の2016年に、NHKのザ・プロフェッショナルで取り上げられたが、同番組に過去に登場したのは、京都吉兆、すきやばし次郎、カンテサンス、京味、開花亭、龍吟、草喰なかひがし、Moliere、未在、鳥しき、天寿し、HAJIME、茶禅華、プリズマといった超名店ばかりだ。5年前に既にそれほどの存在になっていたのだから、これからどんな注目と評価を得るのだろうか。
 今回のレヴォの料理は、食についていろいろなことを考えさせられた。おいしいとは何なのか、価値のある料理とは結局どういうことなのか、美山荘(京都)と比べるとどうかなどなど。日本のフレンチを代表するカンテサンスやレフェルヴェソンスは、極上のエレガンス、複雑な調和とバランス、そしてそれを踏まえた独創性で、どの皿も完成度が高くて、フランス料理が初めてという人が食べても素直においしい料理だと思う。しかし、レヴォが目指しているのはそれとは違う。万人受けするようにアレンジすることよりも、地方の独自性と素材の個性とシェフの感性を大切にしている。客が苦手だとか嫌いだとか言うものでも、アレルギーでない限り原則として出すほどに信念を貫いている。そして、”前衛的”という店のコンセプトの通り、誰も真似できない、誰もやったことのないことにあえて挑戦している。前衛的な芸術に違和感を抱いたり理解できなかったりすることがあるように、食べる人によって好き嫌いや評価が分かれる部分があるかもしれない。1つのコースの中でも、これはすごいと思う皿とよくわからないと感じる皿とが出てくることもあるだろう。ジョエル・ロブションがすきやばし次郎のタコを食べてイセエビの香りを言い当てたみたいに、熱狂的なファンや高感度な食通だけが理解できる物凄さもあるのかもしれない。予定調和の料理ではないからこそ、次に一体何が出てくるのか、どんな味がするのか想像をかきたてられるし、次に来たら何が出るのかと、また無性に食べてみたい欲求にかりたてられるのだろう。
 いずれにしても、非常にハイレベルで他にはない独創性にあふれ、はるばる遠くから来て険しい山を越える苦労をしてでも、一見の価値がある稀有な店であるのは間違いない。そして、レヴォが「そのために旅行する価値のある卓越した料理を提供するお店」かどうかは、既に証明されつつある。コロナ禍の中でも、不便な長旅をして来る宿泊客で連日満室なのだから。
 レヴォはまだ進化の途上にある。真価を余すことなく発揮するのはこれからだ。富山を愛しすぎて、大きな賭けに出た谷口シェフのロマンと野心にあふれた壮大なプロジェクトが成功し、日本そして世界に冠たる新たな食文化の殿堂になることを祈っている。

【参考情報】
1.交通アクセスについて
 所要時間と利便性を考えると、レンタカー、自家用車、タクシーなど車で行くのが定石だ。ランチもディナーも、行きは南砺市営バスの路線バスの利用も可能だが、井波発だから、富山市方面からだと井波に行くまでに時間がかかる。越中八尾駅発のバスは、レヴォの手前約5kmの利賀村中心部までしか行かなくて、そこにはタクシーもいない。帰りは、いずれにしても車を呼ぶしかない(八尾交通なら越中八尾駅まで片道約14,000円)。
 宿泊者向けの送迎車は、客5人まで同乗できる。今回は、行きが14時45分発で所要時間60分。帰りは朝10時発で所要時間約45分(運転するスタッフや、狭い道で出会う対向車の台数と状況によっても差がある)
 越中八尾とレヴォとの間の全行程のうち、真ん中3分の1の区間は、1車線で道幅が狭いところが多く、片側は崖、片側は深い谷でガードレールもなかったりして、ヒヤヒヤすることがある。運転に自信がない人や悪天候の時には、自分での運転はかなり大変そうだ。

2.気候と周辺環境
 標高500mほどのところにあり、富山の平地より3~4度気温が低いようだ(気象庁の観測データがない)。特に朝晩は平地よりも冷える。今年の積雪は多いときで3メートルに達したそうだ。

  • 食前酒

  • prologue1(赤ビーツのメレンゲ)

  • prologue2(高野もなか屋の最中)

  • prologue3(イワシのタルト、ゲンゲ)

  • prologue4(グジェール)

  • prologue5(あん肝)

  • ガンド

  • 月ノ輪熊(春)

  • 米粉パン

  • 水蛸(ミズタコ)

  • .蛍烏賊(ホタルイカ)

  • 黒エイ

  • 大門素麺

  • L'évo鶏

  • 腐葉土で作った土釜

  • 赤蕪(あかかぶ)

  • 真鱈(まだら)

  • 熊の腸

  • 子猪のスペアリブ

  • 日本鹿

  • よつぼし苺

  • あんぽ柿

  • コーヒー

  • 小菓子

  • 個室

  • エントランス

  • フロント

  • ウェイティングルームの木彫(岩崎努)

  • 厨房

  • ダイニングからの景色

  • レストラン棟

  • コテージ

  • コテージ1内部

  • 室内のコーヒー

  • 浴室

  • 近隣の風景

  • 朝食の惣菜

  • 朝食全体像

2021/04/29 更新

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