3回
2021/04 訪問
すしをエンターテイメントに変えた、変幻自在の“木村劇場“
「鮨人」の特徴は、多くの寿司店が「握り何巻セット」というスタイルなのに対して、握りを中心にしつつ、丼、椀物、焼き物、デザートなどを組み込んだコース仕立てになっていることだ。そして、その一つひとつが独創的でクオリティーが高く、それを店主・木村泉美氏の巧みなトークでより楽しめるようにしていることだ。単品の握りはなくコースのみで、鮨人のすしは、一般的な寿司とは少し異なるジャンルのものだと考えた方がよい。
この店は、日本料理の「祇園 さゝ木」(京都の3星店)のいわば鮨版だと思う。店主の話術と革新的な料理が客を魅了するカウンター割烹は、“佐々木劇場“と称される。鮨人も、まさにそれだ。ユニークな料理とトークが一体となり、コース料理が1つのショーとなり、その世界に引き込まれていくように感じられる。鮨人が、一斉スタートで入れ替え制になっているのには、そういう意味もある。余談だが、秋元康は、AKBの公演やコンサートで、歌の合間のトークを非常に重視していた。それがファンの楽しみになり、そこから生まれた売れっ子が指原莉乃だ。”木村劇場“のすしは、全国そして世界から地方に人を呼ぶ魅力があるエンターテイメントだ。
【料理、味】
コースの中では、普通の握り以外の品に、特に目を見張るものが多い。
以下は、8千円(税込8800円)のコース。※は5千円コースにないもの。8千円コースは、「鯛とノド黒のしゃぶしゃぶ」が秀逸だが、それ以外は赤身が中トロになったのと、げその焼き物がついただけだ。5千円コースにもノド黒と白えびはついているから、5千円の方がお得感がある。
1.甘えび
先月に5千円コースで食べたのより、身もシャリも一周り小さくなった感じがした。
2.白えび
同上。小さいので、白えびらしい旨みがいまひとつ十分感じられなかったような。
シャリは「赤酢と塩のみで、砂糖を入れていないから喉がかわかない」と、店主が説明してくれた。
3.茶碗蒸し
富山の湧き水と梅干しだけで作った茶碗蒸し。梅干しの風味が絶妙で、シンプルでありながら奥が深い。
4.アオリイカ
当店のスペシャリテ。驚きのとろける柔らかさ。先月と違って説明はなかった。(先月の説明=アオリイカをマイナス50度で冷凍して繊維を壊し、10時間かけて脱水して身を柔らかくし、さらに細かい飾り包丁を施してある)。
5.紅ズワイガニの小丼
紅ズワイガニとイクラと5千円コースにはなかったウニ。やはりカニよりもイクラの味が強かった。
6. アオリイカのゲソ(焼き物) ※
ぷりぷりの食感のゲソに山椒をきかせて。
7.アジ
先月のアジは歯ごたえがあったが、本日の方がやわらかい食感だった。
8.サクラマス
「これが富山の鱒の寿司」といって出されたものは、確かに鱒寿司風で、軽く酢で締めてあり、先月食べたものよいも脂が乗ってなめらかな食感だった。サクラマスについての説明は「海で育ったヤマメ」というだけで、やはり先月よりも簡単だった。(先月の説明=サクラマスは、元々は白身のヤマメだったが、川に住める個体数に限度があるため、強いメスだけが生き残り、それが海に出てエビやカニを食べて身が赤くなった)
9.ひらめの昆布じめ
10.鯛とノド黒のしゃぶしゃぶ ※
いずれもメス。オスが脂が乗っているのに対して、メスはきめが細かいという(「人間の女性と同じで」と店主が説明)。鯛は、鯛とは思えないほど口溶けが滑らかで柔らかい。ノド黒も、ノド黒にしてはやさしく柔らかい味と食感だった。これは食べたことのない味わいのものだった。
11.中トロ ※(5千円コースでは赤身)
伊豆下田産のもの。中トロらしい脂の乗り具合だった。
12. ノドグロの串焼きとベニズワイガニ
いずれもオス。オスは筋肉質で脂がのっているとのこと。ベニズワイガニは先月食べたのよりも身が大きく張りと甘みがあった。
13.かぶす汁
寿司にした魚のあらを、塩などの調味料は使わず、水と魚の血と骨だけで煮詰めた“魚のエスプレッソ”。使うあらは毎日違うから、毎日違う味になる。確かに、先月のとは違ったし、量はずっと少なかった。
14.穴子
店主が「穴子は飲み物」と言った通り、極限的に柔らかい感じの穴子だった。
15.デザート(最中)
「皮は、餅米を炭火で焼いた」という説明があった。先月に比べて、塩の味をあまり感じなかった。
16.お茶
きょうは、お茶は1つだけ。羽釜で70度の湯でゆっくり煎れた。
思わず舌をうならせる、他店にはない独創的な驚きの料理がいくつかあった。ただ、握り寿司だけ見ると、アオリイカ以外はあまりピンとこないものが結構あった。3月、4月と試してみて、その感想は変わらなかった。ノド黒をオスとメス2つ出しながら、いずれも握りではなかったことからも、握りよりも創作料理で勝負しているように思える。この店が真価を存分に発揮するのは、ランチ以上に夜のコース料理なのだろう。
鮨人のメニューは、1年を通してあまり変わらないようだ。店主に尋ねたところ、季節とかで特に代えるものではないとのことだった。実際、この季節の富山では、寿司屋に限らずフレンチでもイタリアンでも、こぞってホタルイカを出すのだが、鮨人にはそれがなかった。これもまた、この店の独自の哲学なのだろう。カウンターの前にネタケースがないのも、伝統的な寿司に対する挑戦のような気がする。
【雰囲気】
芸人のような店主のトークとキャラクターと、きれいすぎない内装のおかげで、変にかしこまらず、なじみやすい雰囲気だ。
【サービス】
店主は、絶えず手を動かしながら、1人1人の客への目配りが行き届いている。寿司下駄にちょっと醤油がつくと、すぐに気がついてふいてくれたりもする。客のちょっとした反応にも言葉を返し、さすが千両役者だと感服させられる。
【CP】
祇園 さゝ木が3星店にしてはランチの値段が手頃なのと同様、鮨人も良心的な価格設定だ。それを可能にしているのが富山の海の幸だ。富山の寿司は、リーズナブルでクオリティーが高くで旨いと、今や全国的に定評がある。鮨人は、その中でも特別な存在だ。2部制と質素な内装だからこそ、驚くべき安価を実現できているのだろう。
【総合評価】
料理、CPが高レベルで、満足度が高い。ミシュランの星がついていない(※2021年5月以前)のは、主に内装の問題なのかと思う(同じ富山市内の「鮨難波」のような内装にすれば、1つ星がつくだろう※ミシュランの評価基準は、公式には料理のみ)。県外からの客の接待には、まずここを選んでおけば間違いない。年配の人でも安心して楽しめる。
白えび、甘えび
アオリイカ
紅ズワイガニの小丼
アオリイカのゲソ
アジ
ひらめの昆布じめ
鯛とノド黒のしゃぶしゃぶ
中トロ、サクラマス
ノドグロの串焼きとベニズワイガニ
かぶす汁
穴子
デザート(最中)
店舗外観
店舗入り口
2021/05/19 更新
2021/03 訪問
すしの概念を変えさせられる“鮨人ワールド”
すきやばし次郎、鮨さいとう、すぎ田など、すしの名店は数多い。すきやばし次郎などは、ジョエル・ロブションが心酔し、天ぷらの名店「みかわ是山居」の主人などは、3万円のおまかせを10年以上毎日のように何千回通って食べたなどと聞くと、どんなにすごいものなのか試してみたくはなる。それでも、どんなにうまかろうと、すし1食に3万円かけるぐらいなら、2~3千円の「美登利寿司」(東京)に10回行った方がいい、高くても「寿司大」のおまかせ(私が行った当時は築地で3千円台)までだと長年思っていた。もともと“すし“は、庶民のファストフードだったのだから。その考えを少し変えさせられたのが、富山の「鮨人」だ。東京などではまず考えられない価格で、驚きや感動を伴う、レベルの違うすしを味わえる。これほど違うのならば、こっちの方がいいし、5千円よりもっと高くてもいい。そう思わせるだけのものが、この店にはある。芸人風の店主・木村泉美氏の独特のキャラクターもあいまって、数ある富山のすし店の中において異彩を放つ存在である。
【料理、味】
握りはすべて味つけが施されている。醤油は、ネタそのものの味を損なわないように控えめにつけてある。赤酢のシャリはサイズが小さいから、女性や高齢者にはちょうどよい。握りだけでなく、丼、椀物、串焼き、デザート、2種類のお茶までつけて、多彩な楽しみが詰まった密度の濃い約1時間の“木村劇場”、“鮨人ワールド”だ。
今回は、5千円(税込5500円)のコース。(昼は5千円か8千円を選択)
1.甘エビ
大ぶりで丸々とした甘エビが2匹で、身には張りと甘みがある。
2.白エビ
甘エビと紅白のセットで出すという演出だ。すごい甘味やとろける口溶けをあまり感じなかった。
3.茶碗蒸し
富山の湧き水と梅干しだけで作った茶碗蒸し。少しさめたぐらいが丁度おいしくいただける。
4.紅ズワイガニの小丼
少量のご飯に、紅ズワイガニとイクラをちらしたもの。カニよりもイクラの味が前面に出ている。
5.アオリイカ
当店のスペシャリテと言ってよい。アオリイカをマイナス50度で冷凍して繊維を壊し、10時間かけて脱水して身を柔らかくし、さらに細かい飾り包丁を施す。驚くほど柔らかくて甘く、口の中で溶けていく。イカの概念を覆す、他の追随を許さない逸品だ。これを食べると、世の中には、自分が知らない次元の違う料理があるのだということに気がつかされる。
6.アジ
肉厚で歯ごたえがあり、味が濃い。
7.ヒラメ(昆布締め)
富山産。柔らかく、ねっとりした感じ。
8.サクラマス
天然の富山産。サクラマスは、元々は白身のヤマメだったが、川に住める個体数に限度があるため、強いメスだけが生き残り、それが海に出てエビやカニを食べて身が赤くなったとのこと。今でも、身はオレンジ色だが、分類上は白魚になる。サクラマスは、鱒寿司以外で食べる機会が少ないため、本当はどういう味なのか確認できた。
9.ノド黒の串焼きとズワイガニ
ノド黒の身はふっくらして、脂がのってジューシー。塩でシンプルな味つけ。
10.お魚のお椀
前日に寿司になったあらゆる魚の頭や骨などのアラを水だけで大鍋でコトコトと12時間ぐらい炊いた、魚の「エスプレッソ」のような濃厚な出汁。これも当店の名物。旨味が凝縮され、特にカニ味噌のような風味が強い。
11.マグロの赤身
八丈島で上がった204kgのもの。馬肉のように赤身の色が濃い。
12.穴子
対馬産。穴子は砂地がいい海で獲れる。富山湾はいい砂地がないので穴子は獲れない。
13.デザート(最中)
海の塩を使ったジェラートが詰まっている。塩加減が絶妙で、実にすっきりさわやかな味わい。
14.お茶(その1)
抹茶の入ったお茶で、通常より多い茶葉を使っていて、色も味も濃い。
15.お茶(その2)
2番茶を水出しで。
【サービス】
今回はカウンターではなく、掘りごたつの座敷の席だったので、店主の名調子を目の前で聞けなかったが、座敷席担当の若い店員さんは非常に感じの良い応対をしてくれた(若い店員さんも、カウンターにいる店主とほぼ同じ説明をしていた)。
【CP】
この料理でこの値段は、富山のこの店でなければ実現できそうにない。
【総合評価、感想】
食べた人を特別な気分にさせる力のある店だ。初めて訪れた兄夫婦は、1つ口にするたびに幸せそうに「おいしい、おいしい」と言って、笑顔が止まらなかった。
2021/04/23 更新
鮨人は、富山の鮨店の中で最も全国的によく知られる人気の名店。料理を化学した独創的手法を用い、富山を中心にした食材に驚きのアレンジを加える独自のスタイルの料理と鮨は、伝統的な江戸前寿司とは一線を画して異彩を放つ。料理、鮨、酒、そして店主のよどみないトークが一体となり、早いテンポで次々と繰り出されるコースは、巧みに組み立てられたストーリーに思わず引き込まれていく。気がつけば時を忘れている、濃密な1時間半のショータイムだ。
【料理、味】
ディナーは、18時、20時15分の2部制で、料理9品、鮨10巻、デザート1品を織り交ぜて、15,000円(税別)+席料1,000円(税別)。日本酒のペアリングは、おまかせのフルコースが満寿泉6種類で11,000円(税別)。お酒は希望に応じてアレンジしてくれる。合計27,000円+消費税27,000円で29,700円。以前は12,000円のコースがあったようだが、コロナで席数を減らしている関係もあってか、現在は15,000円のみになっている。
ランチでも、酒抜きのお茶だけでも、この店らしさを堪能できる。ただ、より深くじっくりと「木村劇場、鮨人ワールド」に没入するには、ディナーの方がお薦めで、お酒も多少はあった方がいい。そして、この店を心から楽しむには、店主と上手に話をするのがポイントです(あるいは店主と他の客との会話をしっかり聞くこと)。
コースの内容は、季節の旬のものをそれなりに入れ替えるが、基本的に1年を通して、さほど変わらない。日本酒のペアリングも大きな変化はないようだ(ちなみに、同じ富山の星つき店「SOTO」は料理が変わらなくても、酒はかなり入れ替える)。
◇店主・木村泉美氏について
店主の木村泉美氏は、自ら「元は不良だった」と言い、独学で鮨を学び、31歳で寿司屋を始め、2度店をつぶした後、2005年に鮨人を開店したという異色の経歴の持ち主だ。東京をはじめ、各地に出張し、活動の舞台は台湾など海外にも及ぶ。スシローの商品開発なども手がけた。パリなど海外出店の話もあったそうだが、それでも、勝負の本丸は富山と決めている。
鮨人で1日15時間仕事し、6時間は他のビジネスなどをして、睡眠は3時間だという。鮨の求道者でありパフォーマー、職人でありプロデューサー。「レストランとは、人を元気にする料理を出すところだ」と熱く語る木村氏は、あと30年、85歳まで仕事を続けて、いずれは、鮨を志す若い人を育てる学校を作りたいと、夢と意欲はまだまだ止まらない。
(以下、お酒についての説明は省略。実際には店主のかなり長い説明がつく。料理についても本当はいろいろ話がありましたが、今回はごく一部にとどめます)
酒1.満寿泉IWA5
酒2. 満寿泉純米醸造
1.盛り合わせ (料理1)
マグロの赤身(タマネギ醤油漬け)、白子、ホタルイカ、水蛸
マグロは、ただの醤油漬けでないのが当店らしい。白子は表面をしっかり焼いて香ばしい。水蛸は、薄造りのようにスライスして、すごく柔らかくてやさしい味わい。ホタルイカは漬けにしたもの。
2.茶碗蒸し (料理2)
富山の湧き水と梅干しだけで作った茶碗蒸し。熱々よりも、少し冷ましてからいただくのがよいらしい。ランチでも定番のメニュー。
3.白エビ (握り1)
ランチでは甘エビとセットでサイズも小さめだが、ディナーは、白エビだけを贅沢に使い、口いっぱいに白エビの甘みが広がる。
シャリは富山のコシヒカリで、小さめなサイズ。赤酢と塩のみで、砂糖を入れていないから喉がかわかないとのこと。
4.富山エビ(ボタンエビ) (握り2)
寿司屋で火を通したボタンエビは初めてだ。フレンチのカーヴ・ユノキでさえ「まずは生でそのまま」と、半分は生で出してきたのに、まさかの「しゃぶしゃぶ」にしてしまうのが鮨人流だ。外側は、軽くぷりっとした感じに火を入れ、中はボタンエビらしい半生の甘みと食感に仕上げている。
5.アジのたたき (料理3)
ランチのアジは握りだが、ディナーのアジはひと手間加えている。しっかりした味つけの醤油漬けにしてゴマと紫蘇の風味をきかせ、よくあるアジとはちょっと違った味わいの料理になっている。
6,カワハギの肝の巻物 (握り3)
カワハギの肝がこんなに旨いものなのかと思わせる1品。肝が溢れ出てくるぐらいボリュームもたっぷりあって堪能できる。
酒3.やっぱり満寿泉
7.イクラ、ウニ、カニ、白子の小丼 (料理4)
5千円のランチはイクラとカニ、8千円のランチはウニが加わり、ディナーの小丼は白子を加えて、より濃厚でコクと旨味のある贅沢な丼になっている。
8.アオリイカ (握り4)
ランチでも定番のメニューで、当店のスペシャリテの1つ。マイナス50度で冷凍して繊維を壊し、10時間かけて脱水して身を柔らかくするという1品は、「料理は化学実験」と言う店主の真骨頂を示すものだ。アオリイカの握りは、1年を通して出しているが、旬の時期に特大サイズのものを仕入れて冷凍で保存している。皮の外側は硬いが、内側は柔らかいので、特大サイズのものを使うことで、その柔らかさを生かしている。
酒4,満寿泉リンク8888
9. ウナギの白焼き (料理5)
表面はパリっとして、中はふっくら柔らかくてジューシー。ディナーのみの1品。この焼き物は、目鯛とか鰤とか、日により季節により変わる模様。
10.鮪のスモーク (料理6)
マグロと言われないと見た目も味も何だかわからない、これまた鮨人らしい変化球。
11. ブリ (握り5)
ブリの繊維を細かくほぐして粗めのペースト状にしていて、見た目と食感はブリとは全く別モノだが、味わいはブリ。これまた、氷見の寒ブリ料理店の店主が聞いたら卒倒しそうな奇想天外な1品。
12.ヒラメの昆布締め (握り6)
8千円のランチで食べたことあり。
酒5.満寿泉グリーン 純米吟醸
13.ノドクロ(メス) (料理7)
ノドグロのしゃぶしゃぶ。5千円のランチにはなく、8千円のランチに「鯛とノドグロのしゃぶしゃぶ」として出てきた。大将の木村氏はオスの方が好みのようだが、大トロと中トロどちらが好きかのようなもので、このメスのノドグロはほどよい脂のりで美味だった。
14.サクラマス (握り7)
脂がよく乗っていて、口溶けがよく旨味のあるサクラマス。4キロサイズの特大のサクラマスを北海道から仕入れた(大量に仕入れて冷凍保存している)。すっきりした爽やかな味わいの「満寿泉グリーン」との相性もよい。
15.ベニズワイガニ (握り8)
ベニズワイカニの旨味をしっかり味わえる握り。ランチと共通。
酒6. 満寿泉 全麹 純米大吟醸
16.ノドグロ(オス) (料理8)
ザ・ノドグロという力強い料理。脂の乗ったノドグロを一番おいしく食べられる料理は何かを突き詰めた店主の結論がこれなのだろう。ランチにも出る定番。
17.カブス汁 (料理9)
当店の名物の1つ。「魚のエスプレッソ」は、魚を無駄なく大切に使い切ろうとする店主の思いを凝縮したものとも言える。「海外では、網にかかった魚は全部むだにしないが、日本は商品になりそうなものだけ選んで、他は捨ててしまう、そういうことをする日本の漁業はだめだ」「魚の目利きをするというが、自分が魚に選ばれているのだ、魚との一期一会の出会いなのだ」と、店主は熱弁した。
18.マグロ (握り9)
これぞマグロのトロという感じの滑らかな口溶けと甘み。見た目も味わいも、すごくきれいだ。5千円ランチでは赤身、8千円では中トロ。
19.穴子 (握り10)
コースの締めは、いつも穴子の握り。柔らかくて甘口だから、玉子焼きかデザートの代わりなのか。今度、店主に聞いてみようと思う。
20.最中のアイス (デザート)
もち米を炭火で焼いた皮と海の塩を使った1品だが、とにかくすっきりとした自然なやさしい味わいが気持ちよい。ランチと共通の定番。
21.2種類のお茶
【雰囲気】
店の造りは、どこかレトロで庶民的な雰囲気で、緊張せずに自然にくつろげる。この点においても、他の星つき鮨店とは大きく異なる。
【サービス】
店主は、手と口を絶えず動かしながらでも、客一人ひとりに目配りし、お茶やお酒のなくなり具合や、寿司下駄の汚れなどをこまめに見て対応してくれる。
【CP】
単純なコストパフォーマンスは、ランチが特によい。ディナーでも計17,600円で、富山の星つき鮨店の中では標準的だが、東京などと比べると相当にリーズナブルだ。昼・夜ともに2回転させるから実現できるのだろう。
【総合評価】
料理も演出もユニークで満足度が高く、単に料理を味わうだけでなく、特別な時間を楽しめる。広く多くの人にお薦めできる一軒です。