2回
2025/05 訪問
滋賀県は大津市瀬田の唐橋たもとの炭火割烹 蔓ききょうさんに家族4人で初訪問。
コースにて予約。
メインのお肉が選べるシステムなのだが。そこそこどころじゃない選択肢の多さで、選ぶのに本気を出す必要がある。
選んだのは、淡海地鶏、豚、1ヶ月熟成の経産牛イチボ、鹿、そして月の輪熊の子熊ロースト。狩猟解禁。
まずは淡竹の煮物で静かにスタート。合わせるのはハートランドの生。完璧な導入。
お造りはアオリイカ、スズキ、ビワマス、サワラのタタキ。どれもキリッと新鮮で、魚が喋ったら「ありがとう」って言うレベル。
ビールをちびちびやりつつ、ワインリストをチェック。思わず声が漏れるほどの充実ぶり。
選んだのはティボー・リジェ・ベレールのニュイ・サン・ジョルジュ・ラ・シャルモット2019。市場価格と睨み合っても引けを取らない良心設定。ありがたすぎる。
火入れに関しては真面目に惚れるレベルで、サワラとそら豆の焼き物は炭火とスチコンのダブルパンチ。外カリ中フワ。説明不要の美味しさ。
合間に鹿のレバーパテが登場。甘めのパンと合わせて、ワインが止まらなくなる。ってか、止めない。
焼き野菜は地元産のカラフルな子たち。塩と焦がしニンニクソースでシンプルに仕上げ、素材の底力を見せつける。
メインのお肉は、地鶏からスタートして鹿、イチボ、豚、そして月の輪熊。どれも完璧な焼き加減で、ワインと一緒にじっくり咀嚼していく時間がたまらない。
締めは熟成肉のカレー。反則すれすれの旨さ。
デザートは酒粕のアイスを最中でサンド。ほうじ茶とともに静かにフィナーレを迎える。
火入れ、素材、ワイン、空気感。どれを取っても文句なしの名店。ぜひ再訪したい一軒。
2025/05/25 更新
瀬田の唐橋のたもとにひっそりと佇む蔵にこの店はある。琵琶湖の美味を凝縮したような、心躍るメニューとワインが楽しめる素晴らしい空間。
最初のトキイロヒラタケ、にんじん、カブの炊き合わせからして、すでに季節の気配が漂います。火入れは柔らかく、しかし輪郭ははっきりと。晩秋の湿り気と野菜の甘味がほどよく共鳴し、地味深い入り口。
続く丹後ケンサキイカ、スマガツオ、サワラの炙りは、脂が乗り切った秋の海のエッセンス。炙り香のアクセントがよく効き、旨味が落ち着いたトーンで伸びていく。サワラと枝豆の塩焼きは、枝豆が香りの層をつくり、晩秋らしい「後ろに引く余韻」のある一皿です。
そこに登場するのが、琵琶湖の稚鮎の天ぷら。初夏の可憐さとは異なる、晩秋ならではの密度ある味わいが魅力的で、ほろ苦さが季節の移ろいをそっと語ります。
中盤の肉料理はまるで“滋賀の晩秋のジビエ見本市”。
熊のスネ肉のリエットはほっくりと温かく、冷たい風を忘れさせる滋味。クセは巧みに抑えられ、パンと合わせると一気に幸福度が上がります。
淡海地鶏の白レバー焼きは、香りが濃密でありながら清潔感も併せ持つ仕上がり。そこに旬の焼き野菜盛り合わせが入ることで、秋野菜の香気と甘味が口の中を整えてくれるのが嬉しい。
さらに圧巻は淡海地鶏の雌雄のムネ・モモ焼き。雌雄の違いが味のコントラストとなり、肉のきめ、香りの立ち方、ジューシーさに明確な差があるのが面白い。
続くイノシシのロースト、月の輪熊のローストは、晩秋にこそ真価を発揮する主役。脂の香りの伸びがよく、火入れが精妙で、ワイルドでありながら実に品のあるまとめ方です。
〆のブルーチーズの卵かけご飯は、意外性があるようでいて、深い塩味と旨味が秋のジビエの余韻に驚くほど合う。最後はバニラアイスモナカで、軽やかに冬への扉を閉めるような幕切れ。
ドリンクはルジェのクレマンで軽やかに始まり、ドメーヌ・デルー モレ・サン・ドニ レ・ゼルビュオット2020の柔らかい果実味と落ち着いた樽香が、晩秋の料理にぴたりと寄り添う選択。デザートには山崎ハイボールというのも粋で、季節の余韻がスッと伸びます。
晩秋の滋賀を、一皿ずつ丁寧に紡いだコース。大津まで訪れる価値は十分どころか、季節ごとに再訪したくなる魅力があります。