39回
2023/07 訪問
天使の性別
最近「スルスル飲めないやつを。」と言うのがマイブーム。
この一言で、本当にスルスル飲めないワインが出てくる。
こういうワイン、飲めない人は本当に飲めないのだろうが、飲める人はもうナチュールしか飲めなくなっていく。
自分がナチュールが好きなのかそうでないのか、試すのには向いている。
(飲めなくても嗜好の問題だからどうでもいいと思う)
顔はイケメン、首から下は幼児体系の天使がコルクに描かれている。
天使に性別はあるのか、という問いに対し、グーグル先生は「ない」との御回答。
はあ、そうなんですね。多様性は前人類の概念なのですね。
ワインも多様性の時代。亜硫酸なしのワインもありなわけで。
ジル・アゾーニ(たぶん息子のアントナン)のワイン。
お店でも寝かせていたそうで、今回開けてみてその味覚に驚いたという。
確かに出汁のような梅のような凝縮した味覚で、とてもするする飲めない。
外のテラスで夜風に吹かれながら、一日の疲れを癒す。
この時期ならではの風情を楽しむ。
以下、インポーター資料より。
「亜硫酸無添加が絶対条件。ワインにブドウ以外のものは入れない」
「ブドウはイエス・キリスト。畑は聖母マリア。造り手は二人に従う羊飼いである」
VdT – Le Raisin et I’Ange – Hommage(à Robert) 2017
ル・レザン・エ・ランジュ オマージュ (ア・ロベール)
2023/07/29 更新
2021/02 訪問
通常利用外口コミ
この口コミは試食会・プレオープン・レセプション利用など、通常とは異なるサービス利用による口コミです。
organ全力投球 クラシックフレンチコース
この時期、全ての飲食店が真剣に考え、苦悩し、結論を出した。それは全て尊重されるべき。
何が正解かは分からないし、それを判断できるのはきっと神様だけ。
「人を守ること」は多面性を持っていて、感染を広げないことも、生産者を含めた食材提供者の生活を守ることも、どちらも大切。
organは17時から20時までのディナーをコースに設定し、アラカルトの提供を休止。
それはそれで残念なことではあるけれど、これって毎日好きな日にコース料理が食べられるということ?
そもそもコース料理は生産者を招いたイベント等でないと食べられないわけで(通常営業の中でもオーダーできるようですが、一人で行く身としては現実的でない)。
これはまたとないチャンス。
特に毎週水・木曜日はテーマを決めたコンセプトディナー。
今週は「クラシックフレンチ」をテーマにしたところ、反響がすごく急遽金曜日を追加したほどだそうで。
こちらのお店、1回目の緊急事態宣言時にはテイクアウトに切り替えられましたが、予約困難という点は宣言前と同じで瞬殺。
つまり何をやっても人を惹きつけるお店ということ。
17時開始に遅れぬよう10分前に到着。検温、消毒を行う。
本格的コース料理に緊張しつつ着席。コース開始前にオーナーシェフよりご挨拶を戴く。
一言一句記憶していないのだけど、今日は楽しんで下さいという内容に全員から拍手が起こる。
マイクをお使いになるのは飛沫飛散防止のためですね。何でエコーがかかってるんだろう。
コースは6品。デザートを除く5品にワインがセレクトされている。
こんなの全部飲んだら酔っぱらうなと思いつつ、結局全部頂戴することに。
宣言下でアルコール提供の時間制限ができた結果、短時間でたくさん飲もうとする酔客が増えて店に迷惑をかけているという報道が頭をかすめる。
大丈夫。ナチュラルワインは悪酔いしないし頭痛も起こさないから。
(実際、翌日は普通に勤務できた)
何だかフランス料理店に来たような感じで緊張する。いやフランス料理店なんだけど。
ウヤウヤしく1皿目が到着。
①グルヌイユのパセリソース、ニンニクのクリーム
予約時に言われた。カエルが出るかもしれませんが大丈夫ですかと。
カエルって蛙ですよね。帰るじゃないですよね。お化けが出るかもしれませんが大丈夫ですか、のノリとは違う意味ですよね。
20歳くらいの時にゲテモノを出す店で色々食べて以来だなぁと思いつつorganが出すんだから大丈夫ですと答えた。
フレンチではポピュラーと知ってはいたけど、フレンチで食べるのは初めて。
思ったよりも淡白。鶏肉に近い。だからソースと合わせる肉として用いられるのか。
味のアクセントになっているエディブルフラワーが本当に綺麗で、緑のソースが草原に、ニンニクのクリームが山に見える。
あたかも野原にいる蛙。
②ドーフィネのラヴィオリと木の子のラヴィオリ、コンソメ
そういえば、コンソメを作るのにはものすごい手間と時間がかかるのだと、結婚式の時に料理長が言っていた。妻の顔よりシェフの発言のその一節が強く記憶に残った自分の式だった。
聞くと作るのに7~8時間かかったそうで。皆さん眠れたんですか。
これは大切に戴く。滋味深い。優しい味。
③エイヒレのソース・グルノーブル風
最初にバターの甘い香りにとろける。美味しいやつだと一発で分かる。
お皿によって形が多少異なるとのことだったが、軟骨がたくさん入っている部位がきた。
この骨食べられるのと思ったが、コリコリの触感がたまらない。
焦げるか焦げないかのギリギリのバリバリ具合が絶妙。
また、ブロンド2019とのマリアージュがピッタリで、久々にその美味しさを再認識。
④帆立と白アスパラのトリュフ風味
今回最もやられた一皿。外食そのものが厳しく制限される生活の中、久々に美味しいものを食べられたという感慨。
大げさでなく涙が出るレベル。口の中に肉厚帆立の甘い果汁(?)が広がる。
パンケーキが合うんだなぁ。
⑤鳩のサルミ、アンディーブのタタン
鳩って飛ぶやつですよね。幸せの象徴ですよね。食べちゃうの・・・?
そもそもカタツムリを食べる時点で少し引かれるフランス人だけど、日本人だって蜂の子もイナゴも食べるわけで、タコ食べる点で驚かれると聞いたことがある。お互い様なんだよね。
サルミとは「ローストあるいはソテーした食肉をスライスしてソースの中で再加熱する調理方法」だそうです。
初めて食べる鳩はすごく柔らかい。レアとはまた違う肉本来が持つ柔らかさ。
心臓もあるし血のソースということもあって鉄分が感じられるが、しつこくない。
付け合わせのタタン。これが曲者。
プルーチーズが隠れてる。プルーチーズ好きにはこの裏切りはたまらない。
⑥ヴァニラのミルフィーユ
これはもちろんデザート担当の女性スタッフの力作。
構想は無論、準備にも相当な苦労をした企画だったのでしょうね。
ナチュラルワインは自由奔放な飲み物。
一方クラシックフレンチは既定の教本のようなものですよね。
その2つを合わせるって本来相容れないもの同士をくっつけるってことじゃないですか。
今の社会状況も同じ。
複数の価値観がそれぞれ正義を主張するけど、生命をつなぐことと、生活を守るということは根源的には共通していることでしょう。
このような状況下だからこそ、私たちは久々の食を楽しむことができる。
その反応を見るのが飲食に携わる人々のモチベーションに繋がっている。
なんか双方の魂のふれあいのようなものを感じずにはいられませんでした。
早く元に戻りますように・・・。
昨年末についたカーテン
検温と消毒。本日満席の表示。
メニュー
このお店のインテリア好きな人多いですよね
レアワインの空き瓶見たことを自慢する人の話で笑ったこともあったなぁ
2杯目 アリゴテ
20年ぶりくらいの蛙
お花畑のかえるに見える?
花がいい味のアクセント
個人的に一番のヒットだったコンソメ
軟骨までコリコリ食べられる
上に載っているのはクルトン
久々に飲んで美味しさを再認識
泡がふつふつ動いてる
肉厚の帆立
鳩。左の黒い塊はハツ。
蛙の足より太い
タタンの裏に隠されたブルーチーズにやられた
デザート
おまけ ジミオ2015 もうフルーツジュースのよう
2021/02/06 更新
2020/04 訪問
通常利用外口コミ
この口コミは試食会・プレオープン・レセプション利用など、通常とは異なるサービス利用による口コミです。
これまで、そしてこれからと続く歴史の1ページとして
2020年5月1日 このお店の歴史の1ページとして記録しておきます。
今、organはテイクアウトで営業を行っており、ナチュラルワインも店頭で購入可能です。
内容は3種類ですが、日々微妙に変化します。詳細はお店のインスタを参照して下さい。
国内だけでなく、フランス、海外の生産者など多くの人々を守ることにつながります。
この玉手箱にこのお店の全てが凝縮されている。
箱を開けるときの時のワクワク感、それを裏切らない世界がひらく。
なかなかボリューミーでかなりの満腹感。おせち料理みたい。
でも、取り寄せのおせちによくある「これ苦手」というものがない。例外なく全部おいしい。
これで1箱2160円とは。採算取れているんだろうか。心配になるレベル。
妻のママ友の間でも話題になっているとか。争奪戦になっている理由が分かる。
このお店はワイン生産者の思いを伝えてきた。
この小箱も同じように料理だけじゃない、その後ろに食材を提供した人々の思いを伝えている。
organは三軒茶屋uguisuの2号店として開店してからもうすぐ9年になる。
最初からナチュラルワインの代名詞的存在として名を馳せた名店も、社会情勢の影響を受けないわけにはいかなかった。
思えば開店は東日本大震災の年(2011年)だった。あの混乱の年にこのお店はオープンした。
自粛節電の中、街の一隅を照らす店の灯りに私達は勇気づけられたのではなかったか。
日常がひとつひとつ失われていく中、「もてなしの空間」の存在に、安心感を覚えたのではなかったか。
私達がお店に求めたものは、ワインや料理だけだったのか。
そこにいる人々(友人やスタッフ)との触れ合いではなかったか。
organというひとつの「文化」ではなかったか。
organは単に食べて飲む場所ではなく、心の拠り所として機能してきたのだ。
そして今、あの時以上の混乱がこの国に訪れている。
様々な制約を受ける中、organはテイクアウトで料理を用意している。ペアリングのワインも購入することができる。こうした試みを数日で始めることは、極めて困難な取り組みだったと想像できる。
料理は店内でいただくものとは異なるが、ひとつひとつが手のかかった料理であり、スタッフの「作るなら最高のものを!」という言葉通りの意気込みが感じられる。
良くも悪くも、こうした料理を家のベランダで家族と共に楽しむことができる日が来るとは思わなかった。
これは家で楽しめる非日常の中の日常だ。
このテイクアウトもやがて非日常のものとして終わるときがくる。それがいつになるかは誰にも分からない。
でも、こんな時もあったねと、語りあえる人々が集まる時、この空間はより強くなり、多くの人の心の拠り所として、また歴史を刻み始める。
「その時」は遠くない将来、必ず来る。
自宅の極小ベランダにて
ボックスは3種類
蓋に書いてある
御開帳①
御開帳②
御開帳③
C 魚介と肉の主菜
A 野菜と魚介の前菜
帆立と根セロリを詰めた蕪 レモングラス風味
スミイカのトマト風味とクスクス
黄色ビーツとりんご、柑橘のサラダ/ほうれんそうのキッシユ
鯵の軽いスモーク 茄子のビストゥ風味/牡蠣とアスパラガスのグラタン
胡椒鯛のプランダードのクロケット、タルタルソース
鮮魚のポワレ ラヴィゴットソース
鴨フィレ肉のロースト/大山鳥のルーロー
プティ・サレのパン粉焼き
2020/05/01 更新
2014/10 訪問
ビオワインの生産者が息づいているお店
(11/10/2014)
通い始めて2年になる。
オーナーシェフのK氏の言葉を借りれば、ビオワインはカウンターカルチャーであり、ロックの精神に基づいた作り手の精神の表現だ。
フランスの格付けAOCをものともせず、独自の生産方法で作られている。
ひとつの方向を向いているが、そこに協調性は感じられない。一つ一つが唯一無比であり、作り手の魂そのものなのだ。
我々は生産者に会うことはなかなかできないが、「通訳」としてのスタッフを通し、その神髄に触れることができる。「通訳」は多くの生産者に会い、その交流を含めて語らってくれる。
ただ、通訳は主役にはなれない。原本があって初めて訳本が出来上がるからだ。
しかし、通訳にはセンスが必要だ。
それは料理とのマリアージュである。
ワインはワインとして独自の主張をしている。しかし、料理の存在によってワインの新たな側面が強調されるのだとしたら、もはやこれは「新訳」となる。
ビオワインの中には飲む者を選ぶ「作品」がどれだけ多いことか。
繊細かつ荒々しいそんな振り切ったワインたちをどうやってひとつの物語に組み込むのか。
言ってみれば生涯独身を決めた50男に結婚相手を見つけるようなものだ。
そもそもカウンターカルチャーをそこまで高尚なものに高めることは、生産者が望まない「脱線」なのではないか。
それに、K氏の料理もロックでなければならない。それは生産者に対する敬意だからだ。
同じ精神性を保ちつつ、双方が個性を全面に出してもぶつかり合わないという神業を要求される。針の目に糸を 通すようなそんなことが可能なのか。
しかし、K氏の世界は常に進化している。自分でも言っているように守りに入らない。
だからorganの料理は肝試しに似ている。
牛肉のステーキのように、美味しいが美味しいのが当たり前のメニューがほとんど存在しない。
メニューを見ても写真がないので想像するしかない。
珍しいジビエや聞いたこともないソースの羅列に客の想像力は限界を超える。
もちろん、スタッフは詳しい説明をしてくれる。
しかし、最後は自己責任だ。個人的には、ここは勝負の場だと思っている。
でも、それはK氏の狙いなのだ。
何が出てくるかは分からない。
出てきて初めて、それがひとつの写真のような「作品」であることを知る。
食べてみて初めて、その美味しさを理解できる。
そして最後にビオワインとのマリアージュに気付かせてくれる。
今は亡き生産者も、引退してしまった生産者も、ここでは息を吹き返し、ただそこに「居る」ことを実感できる。
全ての生産者が祝福していた。「ありがとう」というよりも、「お前もすごいな」という心を許した友に対する労いの言葉のように思えた。
この店には生産者が今も生きている。
氏は国内のワイナリーにも足繁く通い、栽培段階から関わっている。
私はそう遠くない将来、独自のドメーヌを立ち上げ、ワインの製造に関わっていくのではないかな、などと期待している。
(5月/2014)
このお店の魅力をどう言葉で表現すればよいのか分りませんでした。
だから今まで何も書けませんでした。
こんなに多くのビオワインを用意しているお店がありますか?
こんなに多くのグラスワインを用意しているお店がありますか?(常時20種類程度)
こんなにビオワインの魅力を教えてくれるお店がありますか?
こんなにビオワインを好きにさせてくれるお店がありますか?
こんなにワインを愛しているスタッフが何人も揃っている店がありますか?
こんなに直に会ってきたワインの生産者を情熱的に語れるスタッフがいますか?
こんなに安い値段でこんなにたくさんの料理を出せる店がありますか?
そして例外なく美味しい店がありますか?
こんなに客に気配りをしている店がありますか?
こんなに客の一挙手一投足を観察し、何を求めているかを常に探そうとしている店がありますか?
お客さんに喜んで欲しいから、酵母の段階から自家製パンを作ってしまう店がありますか?
こんなにワインに詳しくない人間が行っても、ワインの話で十分楽しませてくれるホスピタリティの高いお店がありますか?
こんなに平日も休日もお客さんが溢れかえっている活気のあるお店が西荻窪にありますか?
どんなに予約がいっぱいでも、カウンターだけは予約を取らず、飛び込みのお客さんのために空けてくれているお店がありますか?
そんなに気配りをしても、すぐにその席もいっぱいになってしまう人気のある店がありますか?
しかしその場合に備えて、立ち飲みスペースがあって、そこではスタッフとの会話がすごく弾んでしまう店がありますか?
ワイン1杯だけでも快く対応してくれる店がありますか?
こんなに1人で行っても、必ずスタッフの誰かが相手をしてくれて、オーナーも話し相手になってくれて、最後は常連さんに紹介してくれるお店がありますか?
そしてその常連さんがみんないい人で、この店をこよなく愛していて、その全員が紹介を受けた人をこころよく受け入れてくれる店がありますか?
こんなにオーナーがワインを愛し、お客さんを愛し、店を愛し、スタッフを愛している店がありますか?
こんなに最初から楽しくて居心地のいいお店がありますか?
こんなに言葉で書いても表現しきれないもどかしさを痛感するお店がありますか?
そして、これだけのことを書いても書き足りないから、結局予約なしでいいから一人でいいから行ってみて欲しいお店がありますか?
初めてでも、「ただいま」という気持ちにさせてくれるお店がありますか?
あなたには、「おかえり」と迎えてくれるスタッフがいるお店がありますか?
・・・見つけることができましたね?
【補足】
全部、三軒茶屋/uguisuを除いてですよ?
2018/05/18 更新
週末のランチに久々に伺う。1年ぶりくらいでメニューが大幅に変わっている。
しかも本日は海外から2名のゲストスタッフを招いてのクッキングセッションとのこと。
メニューから選んだのは男性スタッフ・ノエ特製のポワロー・ヴィネグレットと、
女性スタッフ・ルーシー特製の柿と青唐辛子のノンアルカクテル。
どんな料理なのかな?
冷菜のポロネギ料理は甘くてフルーツを食べているよう。特に青い部分がトロトロで絶品。
カクテルは舌の上で柿の甘さを感じた次の瞬間、喉を通る直前に辛みを感じる飲み物。
美味しかった・・・。
飲まずに帰るつもりもないので、軽く一杯のもうかな。
そう言ったところ、ルーシーがスルリと持ってきたのは、シュレールのシルヴァネール(2020)。
ああそうだ。こういう軽くないのをサラリと出しちゃう店だった・・・。
香りが強い。凝縮した柑橘系とでも言おうか。色合いも美味しいことを物語っている。
続いてロバのイラストがかわいい、ラウレアノ・セレス(メンダル) Blanc Abeurador 2 (2018)
スペインのナチュラルワインの旗手のような人で、ブリュタルの創始者の一人とのこと。
難しいことは分かりませんが、「ブリュタル」は亜硫酸を使用しない様々な生産者達がつけた共通のキュヴェ名で、各自が色んな内容のワインを作っているそう。
脳天に痺れがくるというか、思わずのけぞる。
のけぞったのは、この立て続けの2杯の味わいがとても似ていたという理由もある。
似ていてもおかしくないないのだろうけど、意外な現象に色々考えてしまった。
まだまだ暑い9月の午後はさっぱり系で過ぎていくのでした。