4回
2023/12 訪問
昨年の「最高の一皿」に選んだ「トリュフすきやき」、コースの間はずっと美味しさと楽しさで充実の時間が過ごせます。立ち寄るだけの確かな価値があるお店です。
昨年は年の瀬12月に、食べログマガジンへの掲載をしていただき、「人気インスタグラマーが教える最高の一皿」の選定を依頼される名誉をいただきました。
昨年もミシュラン店や食べログアワード、百名店受賞店を多数訪問しましたが、ボク個人としてはここ「おぶね」の「トリュフすき焼き」が1番で、こちらを選出させていただきました。
遠州花咲牛という静岡県のすずき牧場で育てられている素晴らしい黒毛和牛と、割下と火入れ中に削って入れるたっぷりのトリュフを惜しみなく使った「トリュフすき焼き」が絶品。
とても分かりやすい料理ですが、誰もが手放しで美味しいと言える料理。
これを奥さんの実家に一緒に行く際に、どうしても途中で立ち寄って食べて年を越したかったわけです。
季節の旬の食材と、極力地元の素材を使う地産地消の姿勢、そして高木さんの卓越した技術で、この日もすべての料理が絶品でした。
初めて連れて行ったボクの奥さんも、とても喜んでいて全ての料理が美味しいと舌鼓を打っていました。
その中で、高木さんから言われてありがたいなーと感じた話は、ボクの奥さんがナマモノや魚、火があまり通っていない食べ物などかなり気をつけていました。
そういう風潮へのアドバイスとして、「本当はお腹に赤ちゃんがいるうちにいろいろ食べた方が、赤ちゃんに抗体ができてアレルギーになりづらくなる」ということを話してくれました。
特にアレルギーで重症化しやすい蕎麦やピーナッツは、胎児のうちに母親が食べておくのが良いという話で、食中毒になる危険性が高いものはダメですが、いろいろな食べ物を食べるのが子供にも良いと思っていました。
ボクは常々、食べ物を気にし過ぎる風潮に対して否定的な意見を持っていたので、高木さんのこの話はとても腹に落ちました。
この日の料理の内容は以下の通り。
・とんぶり入り胡麻豆腐、フォアグラバター
・飯蒸し
・季節野菜の天ぷら
・越前蟹
・土瓶蒸し
・トリュフすき焼き
・トリュフご飯
・ミルク寄せに苺のイタリアンジェラート
どれもが素晴らしく美味しい。「おぶね」は定期的に立ち寄りたいお店。
2月には奥さんが子供を産んで家族3人になりますが、岐阜に行く際に今度は3人で立ち寄りたいと思います。
奥さんと一緒に良い年の瀬を送ることができました。
2025/01/25 更新
2023/01 訪問
数ヶ月ぶりの「おぶね」は冬の味覚が加わり、さらにパワーアップ。素晴らしい料理の数々で、また春先に訪問することを約束してきました。
静岡に行って「くずし 之助」「肉割烹 五平」に訪問し、3件目に前回訪問して親しくなった高木さんのお店「おぶね」に訪問してきました。
前回の料理が感動的で、数ヶ月経つので料理の内容も変わったところでどうしても味わいたくなっての訪問です。
相変わらずの人気店で、カウンターは常連さんでいっぱいでした。久しぶりの訪問でしたが、高木さんは温かく迎えてくれます。
席についてまず生ビール、ブラウマイスター。
「SHINNIHON RYORI OBUNE」の文字が刻印された錫のグラスで提供されます。ビールは錫の器で飲むとより美味しく感じるんですよね。
この日のコースは以下の通り。
焼き胡麻豆腐、蕗味噌焼き、新筍、京人参米粉揚げ・・・焼いた胡麻豆腐は香り良く、トロッとした食感で美味しい。揚げた金時人参はさらに甘味が引き出されていて、食感も味も良く仕上がっています。
鰻と黒豆の飯蒸し・・・良質な鰻の産地の静岡県吉田町の脂が乗った鰻は、某有名占い師の占いで今年運気がよても良いと言われているボクにとっては”(運気が)うなぎのぼり”の意味もあり、黒豆に赤飯に加えてとても縁起が良いです。美味しさはもちろんのこと、さらに料理に季節な意味も込めるのは実に素晴らしい。
土瓶蒸し・・・地蛤と赤穂生牡蠣、海老、三河赤鳥に三つ葉がを乗せ、すだちを絞った一品。この美味しさが尋常ではない。外は非常に寒かったですが、トリュフの芳香とともに強烈な旨味で身体を温めてくれる土瓶蒸しは極上の美味しさです。
牡蠣・・・赤穂の生牡蠣をカクテルソース、ビネガーとトマトソースに地元レモンでいただきます。牡蠣はレモンで簡単に提供されることが多いですが、トマトとの相性が抜群なのでより美味しくいただけます。牡蠣の食べ方ではこれが一番好きです。
活き越前蟹・・・捌く前に生きた越前蟹を見せてくれます。コイン型の黄色い証明タグでオスの越前蟹であることが分かります。刺身を巣立と岩塩の塩わさびでいただくと、トロッとした食感と同時に脂の乗った甘味ある美味しさが広がります。最高です(涙)。
トラフグ・・・遠州灘のトラフグは「天然とらふぐ祭り」がをあん肝ポン酢と熟成ポン酢でいただきます。身が締まったフグを噛み締めると口に広がる旨味。その後、フグの皮の食感を楽しみながらフグ用の日本酒でじっくりといただきます。
蟹爪の甲羅肝焼き・・・活きたままの蟹を味噌だけ取り出した甲羅に酒と塩、蟹爪を入れて火にかけます。目の前で蟹爪が提供されるまでの流れを見て、目でも舌でも楽しめる逸品。幸せです。
蟹甲羅酒・・・蟹爪の甲羅肝焼きの残りの酒をいただきます。蟹の風味の熱燗。
蟹ほぐし身・・・胴体の身をほぐして蒸し、甲羅焼き肝ソースを掛けてキャビアを乗せた贅沢な一品。冬の味覚を存分に味わえるこのコース、最高に美味しくて贅沢すぎます。
越前香箱蟹の茶碗蒸し・・・先ほどまでの越前蟹のオスではなく、メスの香箱蟹が入った茶碗蒸しに和風あん、フォアグラとクリームチーズのソースでいただく絶品茶碗蒸し。前回訪問時も感じましたが、ホームラン級の料理が続く超重量級打線。いろいろな種類の美味しさに感動が続きます。
太刀魚・・・遠州灘で一本釣りされた太刀魚、蕗のとう、そら豆のかぶら餡掛け。蕪は大根と同じく消化酵素を多く含む春の七草で、おろしてとろみがついた餡の優しい味で大好きな太刀魚をいただきます。ゆずの香りが清々しい。
炊き込みご飯・・・鯛と浜名湖新青海苔、グリーンピースの炊き込みご飯で、炊き上がりの土鍋を見せてくれると、青海苔に埋もれた鯛がこちらをみているかのように感じます。鯛の旨味を青海苔の香りをまとって炊き上がったご飯は絶品。ただ、この頃にはお腹いっぱい過ぎて完食できず、もの凄く悔しい思いをしました。
遠州夢咲牛の炭焼き・・・サシがしっかり入った遠州夢咲牛の特選カルビを2枚・・・のところを涙を飲んで1枚だけいただきました。この牛、本当に美味しくて楽しみにしていただけに満腹でこのお肉を口にするのがとても残念。でも満腹でもしっかり分かる美味しさは流石の実力です。
苺のマスカルポーネのジェラート・・・パンナコッタが乗って、ブランデーのクリームソース、苺のそのままかき氷がトッピングされています。「おぶね」はデザートも力を抜かず美味しく食事をしめさせてくれます。
数ヶ月ぶりの「おぶね」でしたが、この時期は蟹にフグに冬の味覚が多数味わえたので、以前よりもさらに素晴らしい料理でした。それにしてもこれだけ良い食材を使って料理を提供できるのはお客さんは幸せです。ほぼ全てのお客さんは満足するに違いありません。
そして、そんなお客さんが喜ぶ料理を日々提供できるのは素晴らしい仕事だと思います。
常連のみで固定していたカウンター席が開放されてからまだ1年経っていないですが、口コミで「おぶね」の良さがどんどん広まっています。食事の後、高木さんのベントレーで近くの居酒屋で軽く飲みにいきましたが、非常に気力も充実していて、今後確実に和食の「百名店」に選ばれていくことだと思います。そして食べログでいうと「4.0」をかなり近い将来超えていくことが強く予想されます。
春先にはまたメニューが変わるとのことなので、暖かくなった頃また「おぶね」の高木さんの料理をいただき、幸せな時間を楽しもうと思います。
2023/02/02 更新
2022/09 訪問
「麻布 かどわき」の門脇氏と共に研鑽を積んだ一流の技術。約20年、常連のみに許されていたカウンター“高木前”が解放された今は、絶品料理をいただけるチャンスです✨
仕事で掛川に行くついでに、フォロワーさんやグルメな知人が軒並み高評価する“新日本料理”のお店「おぶね」に行ってきました。
静岡県の中でも人口が多い方ではない市なので、訪問する前は正直侮っていました。しかし、その先入観は大きく覆されて、脳と舌に強烈なインパクトを残すことになりました。
料理と一緒に酒を飲みたかったので、お店から徒歩2分の場所にある菊川市のホテルを事前に予約。予約の1時間前にチェックインして仕事を済ませ、19時半にお店へ。
住宅が立ち並ぶ道を進むと、照明でライトアップされたスタイリッシュなお店がそこにありました。建物は黒をベースに一部白と赤で美しいコントラスト。扉を開けて、入り口までのアプローチも石畳で実にオサレです。
良い建築デザイナーが入ってますね。HPもそうですが、非常にデザイン性があります。
中に入ると、満席のカウンターの真ん中に空いた席に大将の高木さんの優しい笑顔で案内されました。人の良さがストレートに伝わってくるとても良い笑顔でした。
座って最初に生ビールをオーダー。錫のグラスの口切りいっぱい注がれたブラウマイスターの繊細な泡はサーバーが綺麗に掃除されている証。
そしてここからコースのスタート。
内容は以下の通り。
蒸し鮑とホタテ・・・鰹出汁がたっぷり入った生クリームをまとったホタテは初めていただきましたが、絶品。キャビアの塩味と柔らかい鮑、旨味クリームを纏ったホタテを一緒にいただくと凄い衝撃を受けました。お通しからこの美味しさとは驚きでした。
牛刺し・・・遠州夢咲牛の牛刺しに新鮮なウニを乗せたもの。「おぶね」では和牛のコンテストで多数の賞を獲得しているすずき牧場から、最高黒毛和牛のみを仕入れています。質の良い牛は脂の融点が低いので、マグロの脂に近い口溶け。ウニと塩が格別の相性。最後の1枚は山葵をたっぷりつけて・・・美味い。。。
落花生・・・茹でてわずかに残った芯の食感と甘みを楽しみ、日本酒「十四代」で流し込みます。
クエと栗、銀杏・・・クエの唐揚げは旨味の固まり。これに合わせていただく白ワイン「SHAI MAS(シェ マス)」。クエの旨味を味わいつつ、白ワインの酸味が唐揚げに合い、脂っぽさを流してくれます。ペアリングもよく考えられて提供されています。
栗も油で揚げられていて、噛むと薄皮がパリッとして栗の香りが口の中に広がる絶妙な火入れです。
クエの鱗の揚げ物も食感と風味が絶妙です。水戸黄門でお馴染みの徳川光圀は鮭の皮料理が大好物だったそうですが、クエの鱗揚げもその親戚のような料理ですね。
お造り
鱧の刺身と湯引き、鰹のタタキ、クエ(クエの肝のソース)、鯖寿司(蓮根の芽、茎山葵を甘酢につけたもの)・・・極力地元でとれた鮮度の良い魚を使い、実に美味い。そして、これに合わせるのが日本酒「菊姫 黒吟」。初めて飲みましたが、酒袋から自然に滴る酒をビン詰めして三年熟成させる非常に手間のかかったお酒。至高の日本酒でいただく新鮮な魚介は日本人であることを感謝せざるをえません。
土瓶蒸し・・・松茸と鱧、ホタテの濃厚な出汁がしみためちゃめちゃ美味しい土瓶蒸し。これに合わせるのが日本酒「如空(jyoku)」で、とにかく美味すぎる!!
白茄子の揚げ浸しとつる紫の菊花あんかけ・・・菊川市の地元野菜のトロッとした白茄子、つる紫を出汁の効いたあんが優しく包んでいます。
柿と牡蠣の西京チーズグラタン・・・掛川産の柿を容器にし、発酵食材を組み合わせて作った牡蠣のグラタン。いままで食べたグラタンの中で一番美味しかった。
あぶらぼうずのピリ辛味噌漬け焼き・・・脂の乗ったあぶらぼうずがツヤツヤと輝いて見るからに美味しそう。磯自慢酒粕のソースに生粒胡椒の塩漬けを添えられて、絶品。これ、お米が欲しくなります。
すき焼き・・・牛刺しと同じ「遠州夢咲牛」ですが、焼く前のお肉を見ると、非常にきめ細かいサシが入って実に美しい。美味しいお肉は見た目に美しいんですよね。割り下にトリュフを削ってお肉に火を通し、最後にトリュフをもう一度お肉が見えなくなるくらい削って振りかけます。
口に運ぶと、旨味に甘味、香り、など美味しさを構成する要素がすべて最高レベル。全国的にはあまり知られていない遠州花咲牛ですが、笑ってしまうくらい美味しい。これだけ良いお肉が全国的な知名度が低いのは、飲食業界の歪みですね。
ミルク寄せに巨峰のイタリアンジェラート・・・葡萄カルピスのソース、マンゴーのソースでいただくスイーツ。
全体として、この田舎で(失礼!)ここまでのクオリティの料理を出されるとは全くの想定外で、とにかく度肝を抜かれました。地域の平均値を大きく突き抜けた絶品料理の数々は、都心の和食の名店にまったく引けをとりません。
それもそのはずで、大将の高木さんは麻布十番の名店「かどわき」の門脇氏と共に研鑽を積んだ経験により一流の技術を身につけています。その後、地元菊川に戻って「おぶね」をオープンさせて先日、20周年を迎えたところ。
地元の新鮮野菜や駿河湾の海鮮、季節に合わせて旬の食材を取り寄せられるルートを持ち、数々の賞を獲得している遠州夢咲牛など、非常に質の高い食材を使っています。
一流の技術と上質な食材、店舗もスタイリッシュでありつつ品のある内装、そして大将の高木さんの笑顔から伝わってくる優しく穏やかな人柄。
どれもが非常に完成されており、衝撃を受けました。
飲食店は一流どころは東京にどうしても集まりがちですが、その中でも東京で学んだ一流の技術を地元に戻り極力地産地消にこだわって最高の料理を提供する名店は日本各地にあります。
「おぶね」はそんな名店の1つです。
ここへ行くために逆算して旅行の予定を立てたくなりますね。
ちなみについ最近までカウンターは常連さん限定で一般解放はされていなかったようです。それが最近、解放されてボクも足を運ぶことができました。いわゆる“高木前”で絶品料理をいただけるようになったわけです。
30年後の50周年まで応援していこうと思います。
2022/09/08 更新
2年ぶりに静岡県菊川市にある新日本料理「おぶね」に訪問してきました。菊川駅からタクシーで5分ほどの立地で、この日は奥さんの里帰り出産の付き添いで長期滞在していた岐阜からの帰りに旅行を兼ねて立ち寄りました。
周囲には住宅が立ち並ぶ落ち着いたエリアで、建物は深い焦げ茶の木材を基調にしており、照明の当たり方で表情が変わります。夜に訪問すると、アプローチの照明が控えめに店構えを照らし、まるで料亭のような静謐さと緊張感のある美しさを感じます。
地元・菊川の有力者や経営者層が長く通う店として知られており、地域内では特別な席に使われることも多いお店です。
オーナーは高木氏で、麻布十番のミシュラン3つ星「麻布 かどわき」の門脇氏と共に修行時代を過ごした兄弟弟子の関係。
「おぶね」で使用している器の多くは、「かどわき」で使っていたものをいただいているくらい、門脇氏とは現在でも密接な関係にあります。料理の哲学も精神も、最高峰の料理人との交流で常にアップデートされています。
こだわりとして注目したいのは、地方店でありながら都市部の割烹にも引けを取らないクリエイティビティを持ち、地元中心の素材の組み合わせや火入れ、盛り付けに洗練が見られる点です。
「おぶね」は食べログのTOP1000、続いて日本料理百名店2025に選出され、地方ながら高い評価を受けていることが分かります。
この日いただいたコースは越前蟹を堪能できる大満足のコース。内容は以下の通り。
越前蟹の茶碗蒸し・・・蟹味噌の濃厚さとフォアグラの脂の甘みが調和し、旨味の多重構造。茶碗蒸しの柔らかな質感に対して香りとコクが強く、序盤から圧巻の一皿でした。
マグロの刺身・・・鉄分を感じる濃厚な旨味で、粘りのある質感が特徴。世界のトップソムリエ2000人が選んだ「最もマグロに合うシャンパーニュ」である、Grande Réserve Brut(デュアール & フィス グランド・レゼルヴ ブリュット)とのマリアージュ。
上質な脂をまとったマグロの頭肉の酸味と山葵の香りと刺激、それにシャンパーニュの酸が実に良く合います。どちらから先にいただいても、相乗効果で美味しく感じられる組み合わせ。
飯蒸し・・・カラスミの塩味、大葉の香り、黒豆の甘みが調和し、もち米の弾力が心地よい一品。日本料理の技術が端的に出る料理で、丁寧な仕込みが伝わります。これ、素晴らしく美味しかった。
蛤の土瓶蒸し・・・地鶏に浜名湖の蛤、原木椎茸、霜降り平茸、三つ葉など具材の旨味が重なり、複雑な旨みが溶け込んで濃厚ながら繊細な風味で、体に染み入る美味しさ。外の寒さを吹き飛ばして、身体を芯から温めてくれる美味しい土瓶蒸しでした。
越前蟹の刺身・・・まずは1本を山葵醤油でシンプルに。細かく整えられた繊維が舌の上でほどけるように崩れ、淡い甘みがじんわりと広がります。
もう1本は、蟹の内子と蟹味噌を合わせた醤油漬け。濃厚な旨味が一気に押し寄せ、先ほどの清らかな甘みとは対照的な“深いコク”が立ち上がります。生の脚肉のまろやかさに、内子と味噌の強い個性が重なり、まるで別料理のような変化を見せてくれる贅沢な食べ比べです。
越前蟹のポテンシャルを、まったく異なる2つの表情で味わわせてくれる、感動的な一品。
河豚の唐揚げ・・・外側はカリッと、身はふっくらとした火入れ。淡白な味の中に上品な旨味があり、衣の香ばしさが絶妙です。
焼き蟹・・・爪の部分は加熱することで身がぎゅっと締まり、繊維の一本一本が際立つ力強い食感に。噛みしめるほどに上品な甘みがふわりと広がり、香ばしい香りが後を追いかけてきます。
甲羅焼きは濃厚な蟹味噌を主体にしながらも、ほぐした身の旨味がしっかりと溶け込み、ひと口ごとに奥行きのあるコクが押し寄せます。
蟹グラタン・・・前半は帆立の甘みとベシャメルのコクが一体となり、とろりとした質感の中に外子のプチッとした食感がアクセントとして現れます。クリーミーでありながら重たさがなく、素材の甘みが真っすぐ届く味わい。
後半は雲丹とトリュフを加えて“味変”。途端に香りの層が一段深まり、甲羅全体にふわりと広がる芳醇な香りが圧巻。トリュフの香りが全体を品よくまとめ上げる流れは、まさに二段構成の醍醐味。とにかく素晴らしかった。
柚子釜のトリュフ味噌焼き・・・柚子の器をそのまま使った一皿で、熱が入ることでまず皮からふわりと立ちのぼる芳香が心を掴みます。中には帆立の瑞々しい甘み、クリームチーズのまろやかさ、味噌の塩味、柚子果実のほのかな酸味が溶け合い、仕上げにかけたトリュフにより、香り・甘み・コク・酸味が層を成すように広がります。
熱を帯びた柚子の果汁が全体をまとめあげ、甘い香りと軽やかな酸味が後口を引き締め、口の中で味が変化していく「香りの料理」として成立しています。最後まで飽きさせない、香り・旨味・甘酸っぱさが見事に一体化した一品でした。
遠州夢咲牛カルビ塊肉のトリュフすき焼き風・・・鉄鍋で焼き入れされた瞬間から脂がじわりと溶け、細やかなサシが生み出す甘い香りが立ち上がります。表面をしっかりと焼き締めてから、削ったトリュフをたっぷりと入れた割り下で煮含め、そこに更にたっぷりと削りかけられるトリュフ。
牛肉本来の旨味と濃厚なコクが余すことなく引き出され、ひと口ごとに脂が舌の上でなめらかにほどけていく贅沢な味わい。そして終始辺りに立ち込めるトリュフの芳香が幸せな時間にしてくれます。
炊き込みご飯・・・蕪の甘みが優しく広がり、コースの締めとしてほっとする味わいです。
自家製ミルク寄せ・・・パンナコッタのような滑らかさに赤ワイン漬けの苺とコニャックの香りが重なり、余韻の長いデザートでした。
全体として、菊川市の「おぶね」は地方都市の枠に収まらない圧倒的な完成度の料理が続き、一品一品が記憶に鮮明に残る体験の連続でした。
特に遠州夢咲牛や越前蟹など素材のポテンシャルを最大限に引き出す技術は見事で、都市部の名店と比較しても遜色がないどころか、個性と密度のある料理構成で強く印象に残ります。
高木氏の絶妙な距離感の接客、洗練された建築デザイン、地元食材を活かした構成力が三位一体となり、訪問に値する名店として確かな存在感を示しています。
地方から全国へ評価が広がる理由も十分に理解でき、今後さらに進化していくことが期待されます。
実に良いお店です。来年もまた「おぶね」の素晴らしいお料理を堪能したいです。