グルメ大家さんさんが投稿したシェ・イノ(東京/京橋)の口コミ詳細

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グルメ大家さんのグルメ日記

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グルメ大家さん (40代後半・男性・東京都) 認証済

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シェ・イノ京橋、宝町、銀座一丁目/フレンチ

1

  • 夜の点数:4.8

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 4.6
      • |サービス 4.8
      • |雰囲気 4.6
      • |CP 5.0
      • |酒・ドリンク 4.7
1回目

2025/05 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス4.8
    • | 雰囲気4.6
    • | CP5.0
    • | 酒・ドリンク4.7
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

極上のソースをベースに組み立てられたクラシックフレンチと、心のこもったサービスが織りなす”グランメゾン”。敢えて星獲得の基準から外し、独自の評価基準で勝負する姿勢、100年先も続くと思わせる名店です。

この日は子供をベビーシッターさんに預け、妊娠中の妻と二人での訪問。奥さんが2人の時間がなくなっていることを口にしたので、またフレンチを食べたいとのリクエストがあったので急遽、食べログゴールドの名店「シェ・イノ」に訪問してきました。京橋駅から徒歩1分、明治京橋ビル1階に構えるグランメゾンです。

東京駅八重洲南口からも徒歩7分とアクセスは良好で、周囲の喧騒を感じさせない静かなロケーション。クラシック調のエントランスファサードで、アール・デコ様式の玄関構え扉を開けると、クラシックな空間が広がり、白いクロスと落ち着いた照明の中で優雅なひとときが始まります。

このレベルのフレンチを訪問すると、「グランメゾン東京」に出演している気分になりますね。

創業者は日本フレンチ界の巨匠・井上旭氏。1945年鳥取県生まれ、21歳で渡欧後、「トロワグロ」や「マキシム」での修業を経て、1976年に銀座「レカン」の料理長を務め、1979年「ドゥ・ロアンヌ」、1984年に「シェ・イノ」を開業。2007年にはフランス農事功労章シュヴァリエを受章。2021年に惜しまれつつ逝去されましたが、現在は古賀純二氏が総料理長を務め、料理長は2022年より手島純也氏が担当し、井上氏の精神は今も店全体に息づいています。

古賀氏は1964年佐賀県生まれで、1984年に専門学校を卒業後、当時開業間もない「シェ・イノ」へ一期生として入社。厨房では井上旭シェフ直下で基礎から学び、ソース、肉、魚、前菜など全ポジションを順番に習得。20年以上にわたりスーシェフとして厨房の中核を担い、料理哲学を深く体現してきた人物です。ソースの設計と素材の選別においては特に厳格で、井上氏の引退・逝去後は、その意志を最も忠実に継ぐ者として厨房をまとめ上げ、2016年には厚生労働省より「現代の名工」に選出されました。派手さはないものの、一皿ごとに“旨味の骨格”を感じさせる技術が光る職人肌のシェフです。

手島氏は東京都出身。都内の調理師学校を卒業後、「オテル・ド・ヨシノ(和歌山)」や「エメ・ヴィベール(西麻布)」といった名門で研鑽を積み、フランスでも一流レストランにて数年の修業経験を持ちます。魚の火入れとデセールに強く、技術だけでなくセンスや色彩感覚にも定評があります。2022年10月よりシェ・イノの料理長に就任し、伝統を尊重しながらも一部の盛り付けや調味設計にモダンなエッセンスを加えるなど、古賀氏の味に寄り添いつつ、次世代の表現を担う存在として期待されています。特に近年は若手の育成にも力を入れ、クラシックを継承するチーム体制の中核を担っています。

そして経営面を支えるのが、現代表取締役社長・伊東賢児氏。1968年三重県鈴鹿市生まれ。ソムリエとしての経歴も華やかで、1991年リュイナール賞、1995年ポメリー・ソムリエスカラシップ優勝など多数の受賞歴を持ち、1997年にシェ・イノ入社。2022年より現職に就任し、サービス・ワイン・経営を統括しています。

フレンチ百名店にも複数回選出され、2024、2023年Silverを連続受賞、2025年にはついにGOLDを獲得し、非常に注目のお店となっています。クラシック・フレンチを体験するには必訪の一軒だと思われます。


この日いただいたコースの内容は以下の通り。

アミューズ・・・グラスで供される新玉ねぎのムース、上には生ハム風味のジュレがかかっています。上品な甘さの新玉ねぎの美味しさに香り良いジュレ、コースの幕開けに相応しい爽やかさです。

オマール海老のテリーヌ・・・オマールとアシアカエビ(和歌山県産の車海老)をソテーして冷製にしたものを中心に、旬の野菜の人参、茄子、インゲン、パプリカ、ズッキーニ、ポワローネギ、それらを春キャベツで包んでいます。
テリーヌの下側は貴腐ワインと北海道紫ウニのソース、トマトのソース、マッシュルームのソース、上部両側にはアボカドのムース、上部中心にズワイガニのカクテル。
全体がキレイに彩られていて、配色も見た目も美しい。そしてどこから食べても異なった素材同士の味わいが楽しめて、ソースも抜群に合います。とても美味しい一品でした。

鴨のフォワグラと胸肉の燻製の取り合わせ・・・スモークが香る鴨の胸肉にフォアグラを重ね、コンソメとポートワインのジュレ状のソース。焼きたてのブリオッシュ。
フォワグラは基本好きではないので、個人的にはお店の調理・提供の仕方によって楽しめるかどうかがかなり変わるのですが、フォアグラの嫌な脂っこさや臭みがなく、鴨の赤身肉に上質な旨みを添える役割を果たしており、十分に楽しめる一品でした。

本日の魚料理・・・表面を香ばしく焼き上げた金目鯛、下にはサフランで炊いたイタリア米、ズッキーニ・烏賊のソテー、イカ墨で炊いたお米をペースト状にして乾燥させ、焼いてチップス状にしたもの。トマトベースの出汁にオマール海老、魚、烏賊の出汁で炊いたソースでいただきます。
金目鯛は生でも煮ても蒸しても、そして焼いても良い万能素材。お米はリゾットにチップス、野菜に魚介とこの一皿でさまざまな計算・意図が込められているのが分かります。そして、実に美味しい。

仔羊のパイ包み焼き“マリアカラス風”・・・シェ・イノのスペシャリテで、やはりボクも奥さんも追加料金を払ってこれにしていただきます。フォアグラとトリュフ、マッシュルームを仔羊に詰め、パイで包みじっくりと焼き上げ、トリュフのソースがたっぷりと敷かれた贅沢な逸品。
上にはすましバターで焼き上げたポテト、根セロリを裏ごしたペーストにトリュフ、美しい一品で、仔羊は特に若いものを使っているのでラムっぽさもほとんどなく柔らかく非常に上質な羊肉です。なかなかこのレベルのラムは口にすることはないです。
そしてソースが絶品。フレンチといえばソースが命、このお料理もこのソースが主役とも言えるクオリティで、ラムを食べ終わったあとはパンで“saucer”して、お皿がピカピカになるまで拭っていただきます。

デセールワゴン・・・ワゴンから選ぶデザート。パリブレスト、ガトーバスク、サントノーレ、オペラなど王道揃い。特にパリブレストのプラリネクリームが秀逸。ここでサプライズとして「安産」の文字が描かれたプレートが登場し、心から嬉しく、忘れられない思い出となりました。

カフェ・・・紅茶を選択。香り高く、小菓子との調和も良く、余韻のあるフィニッシュ。


全体として、奇をてらわず真正面からクラシックフレンチと向き合ったコースでした。どの皿にも長年の技術と設計が感じられ、派手さよりも確かな伝統と深みで満たされている印象です。

サービス時の会話の中で、妊娠していることを伊東賢児社長に何気なく伝えたところ、コース終盤にサプライズが。デセールプレートに「安産」と書かれたメッセージが添えられ、スタッフ全体の心遣いに温かい気持ちになりました。会話の中で得られた情報をスタッフ全体で共有して、それをお客さんで形に料理の形で表現する。驚きと感動がそこにありました。

価格はマリアカラスに変更してワインを何杯かいただいて30,000円くらいでしょうか、2人で6万円に届かないくらいのリーズナブルな価格帯。皿数・素材・サービス・空間の全てを含めて納得の内容です。

フランスでもクラシックフレンチを提供するお店が減っていく中で、敢えてミシュランの基準から外して独自の評価基準で勝負し続ける姿勢は清々しく、応援したくなります。

100年後も続くグランメゾンであり続けて欲しいです。

また伺います。

2025/05/22 更新

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