グルメ大家さんさんが投稿したルシェーヌ (長楽館)(京都/東山)の口コミ詳細

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グルメ大家さんのグルメ日記

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グルメ大家さん (40代後半・男性・東京都) 認証済

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ルシェーヌ (長楽館)東山、祇園四条、三条京阪/フレンチ

1

  • 夜の点数:4.8

    • ¥50,000~¥59,999 / 1人
      • 料理・味 4.6
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP 4.8
      • |酒・ドリンク 4.8
1回目

2025/09 訪問

  • 夜の点数:4.8

    • [ 料理・味4.6
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP4.8
    • | 酒・ドリンク4.8
    ¥50,000~¥59,999
    / 1人

京都祇園の文化財「長楽館」で味わうフレンチ。七谷鴨や地元野菜を駆使した完成度抜群のコースは、建築と料理が一体となる唯一無二の体験です。

奥さんの誕生日を記念して京都を訪れ、祇園四条駅から徒歩10分、八坂神社に隣接する円山公園の一角に佇む洋館「長楽館」へ。館内1階にあるフレンチレストラン「ル シェーヌ(Le Chene)」を利用してきました。

長楽館は明治42年(1909年)、“たばこ王”と称された実業家・村井吉兵衛が国内外の賓客を迎えるために建てた迎賓館です。
当時は初代総理大臣である伊藤博文や大隈重信、渋澤栄一、山縣有朋、さらには日本の皇族や英国の王族も利用した由緒ある建築で、現在は館内にレストラン、カフェ、そして隣接する新館に客室を設けたホテルとして再生されています。

以前は京都市の有形文化財でしたが、2024年には、国の重要文化財に指定された貴重な建物です。

今回利用した「ル シェーヌ」は、歴史的洋館のクラシカルな雰囲気に包まれながら本格フレンチを楽しめる特別な空間。

1歳の子供を連れての訪問でしたが、個室は子どもも利用できるとの事。家族でゆっくりと安心して食事を楽しめました。このスケールの建築と料理を兼ね備えながら、小さな子供連れにも対応していただけるお店は非常に稀少だと感じます。

料理を手がけるのはシェフの橋本和樹氏。京都や滋賀の旬食材を積極的に取り入れ、フレンチの技法をベースに和のエッセンスを巧みに取り入れた一皿を提供してくれます。

美しい洋館の趣と調和する繊細な料理は、特別な記念日にふさわしいものでした。

長楽館には「ル シェーヌ」のほかにも、当時の客間などを活用したカフェや、重厚な雰囲気漂う「ライブラリーバーマデイラ」、さらにスイーツブティックなど複数の施設が併設されています。

特にカフェは当時の客間に加え、喫煙室であった「喫煙の間」や美術品を展示していた「美術の間」といった様式の異なる複数の部屋をそのまま活用しており、食体験を通して建物の歴史や文化に触れられる点が魅力です。

仕入れに関しては、シェフが毎朝3時間かけて鯖街道を経ていただいてくるという京都・大原や静原、滋賀の季節野菜が多く使われています。実際、この日のコースにも七谷鴨や美山鹿といった地元を代表する食材が盛り込まれており、地域性が料理に強く反映されていました。

こだわりとして挙げられるのは、料理の質だけでなく「空間との融合」です。
長楽館はルネサンス様式を基調とした重厚な洋館で、部屋ごとに異なる意匠が施されています。ル シェーヌが位置する食堂の間はシャンデリアや暖炉、大理石の柱が配され、まるで明治の迎賓館に招かれたかのような体験を味わえます。


アペリティフとしていただいたのは「バロン・アルベール リュニヴェルセル」。果実味が素直に広がり、軽やか。料理のスタートに心地よい軽やかさを添えてくれました。

この日いただいたのは「七谷鴨」をメインディッシュとするフルコース。内容は以下の通りです。

キッシュ・ロレーヌ・・・一品目は通年提供のキッシュ・ロレーヌ。淡路島の玉ねぎを丸一日じっくり火入れし、網の上で水分を飛ばして甘みを凝縮。縁には京都のもち豚を使った自家製ベーコン、仕上げにグリュイエールチーズ。玉ねぎの上品な甘さとベーコンの燻香、香ばしい生地が美しく調和しています。

続いて2杯目のシャンパン「アルノー・ド・シューラン レゼルヴ ブリュット」。トーストやナッツを思わせるニュアンス、より奥行きとクラシカルな重み。異なる魅力を放つ2杯のシャンパーニュが、場の雰囲気をより華やかに彩ります。

冬瓜と生姜・・・出汁をたっぷり含ませてやわらかく仕上げた冬瓜。その中には伊根の
カンパチとキノコのタルタル、口に入れると冬瓜の瑞々しさと魚介の旨味が重なり合います。
下に敷かれたのは滋賀県産・笠原生姜のジュレ。清涼感があり、全体に爽やかなキレを与えていました。
この一皿は、10月6日の中秋の名月を意識して構成されたとのこと。丸く盛り付けられた冬瓜が満月を思わせ、視覚的にも季節を感じさせる演出が秀逸でした。
出産を控えている奥さんへの配慮で、カンパチは蒸しホタテに差し替えていただいての提供。

美山鹿“赤山椒”・・・パート・ブリック(薄い小麦生地)で包み込んだ京都・美山産の鹿肉。中には完熟した赤山椒が仕込まれており、口に含むと鹿肉の滋味深い旨味にピリッとした香りが寄り添います。上下面にはスライスしたビーツを配し、その鮮烈な赤で紅葉を思わせる華やかなビジュアルを表現。味覚だけでなく視覚的にも秋を感じさせる一皿でした。
合わせたワインは2022年ヴィンテージのブルゴーニュ・ピノノワール。生産者はアントナン・ギヨン。若いながらも落ち着いた酸があり、ビーツの酸味や鹿肉の旨味に呼応するような調和を見せました。ミネラル感も感じられ、スパイスと赤身肉の組み合わせに寄り添う秀逸なペアリング。料理とワインの双方が互いを引き立て合い、印象深い体験となりました。

ブールノワゼット・スナケ・・・表面にサクサクのパン粉を纏わせた、ブールノワゼットソース(焦がしバター)の香りを楽しむ一皿。深い器が“香りのスピーカー”となり、立ち上るナッティな香りが食欲を誘います。
底にはナスのペースト「キャビア・ド・オーベルジーヌ」、周囲にはスライスしたナスを添え、パン粉の軽やかさとバターの濃厚さをナスの滋味が受け止め、香りごと楽しめる仕立てでした。
合わせたのはサン・ヴェランの樽熟成シャルドネ。凝縮感ある果実味と樽のリッチなニュアンスが焦がしバターの風味と相性が良く、料理とワインの双方を高め合う印象的なペアリングでした。

「    」・・・黄褐色の斑点が特徴的なハタ科の魚「オオモンハタ」を用いた一皿。皮目は香ばしく焼き上げられ、身はふっくらと仕上がっており、素材本来の旨味が際立ちます。ソースは京都の万願寺唐辛子を使ったもので、辛みを抑えつつ青唐辛子特有の香りと甘みが加わり、魚の繊細な風味を引き立てていました。
皿には大原・静原・近江から届いた旬の京野菜が添えられ、それぞれに異なる調理法が施されて個性が際立ちます。ラグビーボールのような形の「メロンきゅうり」やオクラ、万願寺唐辛子など、この時期ならではの滋味を堪能できました。仕上げにはバスク地方エスペレット村の唐辛子「ピマン・デスペレット」を添えて、爽やかな風味が料理全体をまとめ上げています。
魚の旨味と京野菜の力強さ、さらに異国のスパイスが重なり合い、土地ごとの個性が響き合う調和のとれた一皿でした。
合わせたのは、秋の味覚を象徴する「ひやおろし」。冬から春に搾られた新酒をひと夏越して熟成させ、旨味が凝縮し丸みを帯びた味わいに仕上がります。原酒ならではの力強さと調和のとれた柔らかさがあり、オオモンハタの旨味や万願寺唐辛子の香りと絶妙に寄り添い、季節感を一層引き立てていました。

お口直し・・・口直しは二種のソルベ。ポルトガルのマデイラワインを用いたソルベ、梅のソルベで、中央には梅のソースが添えられています。爽やかな酸味と甘み。

七谷鴨・・・メインは京都・亀岡市七谷で育つ特別品種「クロワゼ」の鴨。「ル シェーヌ」のシグネチャーディッシュです。提供直前に稲わらの香りをまとわせ、懐かしさを感じさせる瞬間的な燻香演出の後、厨房で仕上げられて登場しました。
ご挨拶に来ていただいたシェフによれば、七谷鴨は解体直後は肉質が硬いため、まず冷蔵庫で熟成させ、その後1週間ほどで搬入。さらにもう1週間氷漬けにして乾燥を防ぎ、柔らかさと旨味を引き出すとのこと。こうした手間で本来の滋味を存分に堪能できる仕上がりに。
構成はロース、もも肉のガレット、砂ずりの三種。ソースは鴨の骨から取った出汁で力強さを支えます。付け合わせは、コシヒカリ玄米の大葉リゾットに茗荷の花と枝豆を添え、爽やかさと彩りをプラス。
熟成と氷漬けを経て生まれた旨味、演出、香りが一体となった、このコースを象徴する素晴らしい一皿でした。

フロマージュ・・・フロマージュは北海道産のチーズを使用。外側を清見ワインのぶどう酒粕でまとわせて熟成させ、豊かな風味を引き出しています。
添えられたのは、「ブラムリーズシードリング」というイギリスでは“クッキングアップルの王様”と呼ばれる品種で、爽やかな酸味がチーズの濃厚さを一層引き立てていました。

バターサンド・・・一般的な重厚なバターサンドとは異なり、こちらは驚くほど柔らかく、軽やかな仕立てが印象的。発酵バターをベースに、バニラビーンズとアプリコットソースを織り交ぜることで、濃厚さの中に爽やかな香りと酸味が絶妙に調和。
薄く繊細に仕上げられているため、フォークとスプーンで上下を分け、口に含むとバターのコクがすっと広がり、余韻は軽やか。実に洗練されたデセールでした。

無花果“黒文字”・・・デセールはイチジクを主役にした一皿。ベースのパンナコッタはとろけるように柔らかく、スペキュロスをはじめとするスパイスが奥行きを添えていました。
イチジクはコンポートに仕立て、「黒文字(くろもじ)」の香りを移すことで甘みに清涼感をプラス。ルビーポートを煮詰めたソースにも黒文字を重ね、皿全体に統一感ある余韻を生んでいます。
果実の甘みとスパイス、木々の香りが調和し、自然の奥深さを感じさせる印象的な締めくくりでした。

ミニャルディーズ 8種の香り・・・ミニャルディーズは4種類。抹茶ショコラ、マカロン、ショートブレッド、そして黒七味を効かせたフロランタン最中と、小菓子一つひとつに個性が際立ちます。
合わせる紅茶は8種類から香りを確かめて選ぶスタイル。茶葉はシガーボックスに見立てたケースに収められ、葉巻を選ぶように手に取って選びます。
創建者がタバコ事業で財を成した人物であるという建物の歴史をなぞる演出でもあり、長楽館ならではの体験。
デセールを締めくくる小菓子と紅茶の時間が、単なる食後ではなく「文化を味わうひととき」に昇華していました。


全体として、「ル シェーヌ」は明治の迎賓館を舞台に、京都の地元素材を生かした極上のクラシックフレンチを味わえる特別な場所です。

料理の完成度と建築空間が高次元で融合しており、単なる食事体験にとどまらず、文化財としての空間が料理を引き立て、料理がまた空間を生かすという相乗効果を感じました。

スタッフさんのサービスも会話のトーンも気付きも内容も、落ち着いており、子供連れに配慮いただけたことも含め、安心して誕生日を祝うことができました。

歴史建築の空気と、京都の素材を生かすクラシック・フレンチ。特に七谷鴨の火入れと香りの設計が記憶に残る出来。子連れ個室対応の丁寧さも含め、記念日に自信を持って薦めたいお店だと言えます。

とにかく素晴らしかった。

2025/10/04 更新

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