26回
2019/11 訪問
秋味が滋味深く纏う星野料理
■お料理
今宵も圧巻の星野料理に惑わされ続ける
至福のひと時を頂きました。
何時もの様にさり気なくうま味を引き出す
技もののお料理にはホントため息しか
出なくなります。
晩秋の星野料理、期待で胸膨らませながら
頂きます。
①先付
寒空に身を晒して来たので
最初にホッとする感じのものは有り難い
この白味噌と蕪の合わせ技は
完璧すぎるほどのこっくり感が満喫できる一品
白味噌だけで溶いた汁の瀞みと言い甘味と言い
至高の味わい
舌にサラサラと流れて舌を優しく撫でる
するとこっくりと落ち着く円やかさと
和みが訪れる
温感がまた素晴らしく優しい温かさ
其処にふわんと浮かぶ蕪の嫋やかな事
まるで気品溢れ何処までもmildなポタージュ
筆舌し難し味覚に我を忘れん
②前菜3品
何時もの前菜
鯛の飯蒸し
京菊菜の胡麻和え
唐墨
ばちこ
飯蒸しは明石の鯛の頭を焼いて
飯蒸しにしてます。
ばちこを少し炙って
炙られた唐墨でばちこをサンドしてます。
唐墨もばちこもお酒を進めてしまいます。
飯蒸しがしっくりとしてモチッと米粒が
いい塩梅で歯に絡む
絡んだ所に鯛が焼かれた頭から滲む
ほんのりとしたお焦げの苦甘い風味が漂い
飯蒸し全体に旨味を加えてとても美味しい
お腹を少し満たして空きっ腹を
落ち着かせてくれる有り難い一品
菊菜の胡麻和え!
此れがまた何と穏やかなる胡麻の甘味を
引き出してる事か
純真無垢な胡麻の甘味を感じながら
口当たりの優しい甘さに感動する和え物
胡麻自体の瑞々しさが堪んないほど
鮮度の良い胡麻和え
◉飛切りを御燗で
③海鼠腸の茶碗蒸し
プルプルンと揺れる玉地の上に振り柚子
海鼠腸の潮風味を淡く潜らせて
海鼠腸からの塩味を玉地の甘さの中に
さり気なく忍ばせている
その加減の良い事
玉地のうま味が滋味深くて海鼠腸の味わいを
生き生きとしたものにしてるのか
海鼠腸自身のうま味を上手に玉地の中に
閉じ込んで海鼠腸と玉地をバランス良く
旨味を引き出させてるのか
或いは海鼠腸を潜らせて玉地に
塩味を投げてやり玉地の旨味を
膨らませてるのか
その全てが絶妙に絡み合う美味さが
淡く穏やかにゆるりと舌に訪れて
染み染みジワジワと味わいが浸透してくる
作品
んん、此れ玉地も海鼠腸も舌を唸らせる味覚
④焼き伊勢海老
星野さんがサワサワと蠢く伊勢海老を
片手で掲げて調理する前の
生き様を目の前で披露
珍しくダイナミックな星野お料理と感じ
期待感が高まる
チョツトドキドキ。
どんな感じのお料理になって出てくるのかなぁと厨房へ姿が消えた星野さんの戻りを待つ事
15分ほどかな、
うぅ〜ん、甲殻の香ばしい匂ひが少しづつ
漂うではありませんか、
何と芳しい気品のある伊勢海老の香り
目の前に置かれて暫し沈黙空間
殻から身を削ぐのですが
取りにくそうにしてるので
星野さん以下お料理人さん達が
全員分の伊勢海老の殻から海老の身を
解して頂き食べ易く剥き身状態で
再度、お皿をご提供
いざプリプリで湯気が立ちホカホカの
伊勢海老をお口に放り込まん
焼き立てのプリプリ感は歯に清々しく
弾力性を感じさせて
齧るたびに伊勢海老の甘味が
ポンポンと弾け飛ぶが、
そのプリプリに海老の味噌が滲んで
伊勢海老独特の味噌の甘味が泳いで来る
此れらの旨味甘味のエキス同士が
螺旋状に重なり合い素晴らしきコクが
脳に届く
これぞ絶品の味わい
結構お腹いっぱいになり満足度急上昇
⑤炭火焼きの白子
す、凄い白子だ
一口舐めた途端に舌にビビッドな
瀞みと途轍も無く円やかにトロ〜リと来る
白子の熟れた口溶け感が
その穢れ無き甘味と同時にやって来た
とても通常の鱈の白子とは思えず
こんな白子が世の中に有ったとは
星野さんありがとう。
感謝感激
何でも北海道浦河の真鱈の白子との事
相当な上物にてこの白子の粒子の
きめ細やかな事
クリーミィな事
喩え難しな味覚でず〜ッと舐め続けていたい
こんがり狐色に焼かれた白子さんは
温和な温もりが歯も舌も包み込んで
陶酔感を呼んでくる
そしてこの温感と飛切りの燗酒の温度とが
ピタリ寄り合う
うぅ〜旨すぎる仕掛けに降参しちゃう
⑥湯葉と京水菜
珍味が続きましたのでサッパリとお口直しに
との星野さんらしいお気遣い
お出汁の浸し地に此れも美しい湯葉と
京水菜の組み合わせ
見た目とても綺麗に纏まっている
崩して食べてしまうのが勿体なく感じる
一口浸し地に染みた湯葉を頂く
丸く甘い味
緩やかにジワリと来る
とても涼しい甘味が来る
地の甘味と湯葉の甘味が息がピッタリ合う味覚を演じている
この甘さ加減は見事としか言えない
アクセントに黒七味が少し振られて
時々ピリッと甘味を引き締めて来る
その味の変化が楽しい
⑦富田林の海老芋の唐揚げ
キタァ〜
大好きな海老芋
其れも星野さんの唐揚げで
揚げ物のレベルがとても秀逸かつ高度な
衣の質感を創造してくる唐揚げ
天麩羅も同じく油物全般に技が光る
星野さんの揚げ物
どうしたらこんなに軽やかかつサラサラとした衣を纏えるのか不思議だ
葛粉の唐揚げの技ものは天下一品なのである
ど真ん中だけをくり抜いてる海老芋の唐揚げ
きめの細やかさが裏漉ししたような粉質感にて
信じ難きお芋のねっとり感がサラサラで
クリーミィなほどに舌に絡み付いてくる
その品格が行き交う甘味のお淑やかな事
一度甘く炊いてから揚げてるらしい
お箸でサクッと海老芋の身を摘むと
シットリと割れて来る
とぉっても細やかな芋の質感が舌に届く
この時期の海老芋は星野さんのものが
やっぱり最高に美味しい
で、因みに周辺部の海老芋は何処に
行っちゃうのかな?とお尋ねしたら
賄いで食べます、しかもかなり長期間毎日
続くとの事。
ある意味、周辺部の富田林でも羨ましい
⑧お造り
明石の鯛
お皿の奥に置いてあるのがお腹の身
皿の手前に置いてあるのが背中の身
鯛の身の表裏を頂ける口福の味に舌が喜んでる
山葵醤油でも
山葵を切り身でクルクル巻いても
その膨よかな肉感がお口の中で身悶える
しなやかに身が反発して噛み応え感が
気持ちよく歯に響いて来る
淡白な甘味が山葵に刺激され旨味に激変する
⑨丸鍋
鼈
長葱
お餅
香るわぁ〜。
いい匂ひぃ
鼈がお醤油を吸って焦げて来る感じの
匂ひがとても空腹感を呼び起こす
お腹結構膨らんでる筈なのに
不思議とこの匂ひで食欲誘って来る
食べたいと言う欲望が唆られる丸鍋
丸鍋がグツグツと唸る
丸鍋がブクブクと騒ぐ
煮え滾ってる鼈の肉に喰らいつく
美味い!コラーゲンもドロ〜ッとしたのが
たっぷり骨に纏わりついて
しゃぶり尽くして小骨だけが残る
うま味が身に染み渡る
⑩真魚鰹塩焼き
白身の美しさよ
褒めてやりたい程に静かに佇む
背表紙と言うか背の焦げ目加減が
カリカリで無くて薄皮一枚こんがり狐色
一方白身は
塩味とても淡く忍び寄る美味さ
ホッカホカの白身が
焼く直前に塩降って真魚鰹の身体全身に
塩気を帯びる
舐めてると塩気がジンワリと浮かび上がる
電熱焼きなのに殆ど炭火に近い焼き加減
これも技有りの一品
純白な真魚鰹の淡白な味覚をそのままの
持ち味を最大限引き出して真魚鰹だけの
真っ白に一分の雑味も無く焼き上げるのには
電熱の方が好ましいかもと想像
炭火の香りさえ微塵も付けずに焼く
かつ、火入れは炭火に限りなく近く焼く
分厚い真魚鰹の芯まで火が通ってる
全くゼラチン質が残らず身質の膨よかさを
味わえる
真魚鰹の醍醐味を満喫する作品
⑪炊き合わせ
ぐじの蕪蒸し
銀杏
百合根
近江蕪を擂り下ろしてぐじに乗せて
葛の銀餡を施してます。
国産の葛粉で溶いた銀餡に
近江蕪を擂り流しにして
ぐじをその中に潜ませて
蕪を掘ると奥の方から百合根や銀杏が
ヒョッコリ顔を出す
近江の蕪自身は出汁で炊いてるのか
優しいうま味が染み込み、
ぐじから放たれた旨味も纏って
コクを感じる味わいが満タン
銀餡のトロ〜ッとして温度感のある和やかな
甘味を携えて蕪蒸しが何処までも穏やかに
揺ら揺らと甘味が揺蕩う
そのたゆたう蕪に纏われつつ
ぐじがこっくりとした旨味を味わえる一品
心までもポカポカして来る
⑫お食事
ご飯
牛の時雨煮
山椒雑魚
赤出汁
香の物
新米の艶々ご飯
この三種の神器ではないですが
このご飯セットが出ると
とてもほっこりと気分が落ち着く
癒されるご飯に舌が素直に喜ぶ
定番の牛の時雨煮の優しい甘さ加減
山椒がピリリと絡む雑魚ご飯もいい
単純に白ごはんの粒が立ってる所を
ホクホクと噛み締めながらの浅漬けを
シンプルに合わせるのも良し
シメに赤出汁でホッと一息ついて
ご飯お代わりしちゃう
満足度が段違いに高いご飯なのである
⑬甘味
蕨餅
きな粉美味しい
練りたての蕨餅もぷよぷよ感が新鮮で美味
このお料理の構成、流れ、組み立て
素材とのバランス
持ち味の引き出し方
全てに星野氏の技術とセンスが詰め込まれて
人々を唸らせる料理
完成度の高い至高の日本料理
末永くお付き合いしたい名店
2019/11/23 更新
2019/09 訪問
至高至福の秋味
■2019.09.25(水)夕餉
■お店
京味西氏の薫陶を真摯に受け止めて
歴史を引き継ぐものの最有力候補の
お一人であることは間違い無いかと思います。
そしていつの日か西氏の作り上げた歴史を
塗り替える日を星野氏が作るのではないかと
言う期待も胸に秘めて通い続けたい名店。
星野秋味の収穫祭が今宵始まります。
■お料理 お任せ
お酒4合とおビール含み¥42,000ほど。
①焼き茄子と胡麻豆腐の白味噌仕立て
お茄子の品の良さに先ずビックリ
これが本当の星野料理の真髄かと
思えるのです。
素材を慈しみ味を愛でる仕事のあり様に
舌がほとほと参ります。
このお茄子の焼き加減に蒸し加減の
絶妙なこと。
お箸をお茄子に入れますと
中に吸い込まれるように包みこまれ
お口に運べばお茄子の翡翠が
ムースのように口溶けてホロホロと
円やかに解けて行く。
繊維質など感じる暇もなく
ふんわりトロンと甘みを舌に残しながら
溶けていくのです。
その溶けて行くあり方が焼き茄子特有の
香りと味覚の輪郭をくっきりと
浮き上がらせるもので秋茄子の醍醐味を
満喫します。
そして同時に進行する白味噌のうま味
その質感はほんのりとコッテリして
トロ〜んと溶ける感じなのですが
濃厚な甘味は京味噌特有のものに
お出汁の滋味深さが加わっており
こんな美味い白味噌の汁は
何処でも味わった事のない美味しさで
正にこっくりする味覚となってます。
この白味噌仕立てを啜ってもうま味豊かに
舌に寄せてきますし
胡麻豆腐と一緒に飲んでもまた、
格別の味わいです。
胡麻豆腐自体がと〜っても円やかな
食感で
出汁でコトコトとじっくり炊いてるそうですが
それにしても
舌で触れるとスルリと滑って抜けて行く感じ
お箸で摘みますと
お豆腐の形がくねくねと蠢いて
ツルンと箸先から抜けてしまいそうだし
お餅みたいに伸びやかな柔らかみを見せて
円やか味が舌を癒してくれます。
それ程に甘美な円やかさとぷよぷよの
弾力感を兼ね備えた極上の胡麻豆腐
の白味噌仕立てなのです。
もう、この最初の一品だけで
今宵の星野料理の魅惑の渦に巻き込まれ
端から舌が感激しております。
②前菜三品
炭火で炙ったばちこ
サゴシの棒鮨
サゴシは鰆のお子様です。
だだ茶豆の塩茹で
良い構成の流れを作りますね。
汁物の後に少し熱を覚ましたもので
チョツトお腹が膨れるものにと
脂の乗ったサゴシと酢飯の具合が良いです。
酢飯も酸味がちょうど良い
③芋茎の吉野煮
定番のお料理
此れを食べると舌も心もホッとするのです。
芋茎の繊維質とトロンとした葛のマッチングが
何とも言えないのです。
芋茎を丁寧に仕上げてるのでしょう。
シャキッとした食感の鮮度が群を抜くほど
潔良くて
添えられた生姜が適度な痺れを
舌に置いて行きます。
出汁と葛の合わせ方が明快な色合いを出して
芋茎を噛み締めると力強く旨味が放たれます。
芋茎自身の素材の滋味と
葛のとろみと
生姜の刺激が交錯する妙味に
感嘆してしまいます。
④鰻蒲焼き
自家製の鰻だれの香りが鼻先まで届いて
もう、うっとりしちゃいます。
お腹に応える香りです。
鰻は養殖ものですが、
此処まで火入れの妙を高める焼き物の
出来栄えに舌が唸って仕舞います。
その肉厚な鰻の白身がホクホクに
蒸されてふんわりと優しく歯に絡みます。
パリッとした皮目は歯をぐっと噛み込ませると
歯に反発しながらも砕け散って行きます。
その両者のコントラストがまた素晴らしく
美味しさを増幅させて来ます。
其れが三切れもあるのです。
ガツンと頂いて至福の時を迎えます。
つい、飛び切りが進んで仕舞います。
⑤冷やし無花果 白味噌田楽
この順番が素敵です。
鰻の強い味覚後に訪れる爽快な冷感
この温感との落差が魅惑の味わいとなります。
冷んやりとした無花果に田楽の甘味も重なり
無花果との相性がパーフェクトです。
無花果が別格の果実に変化する
無花果のジュクジュクした甘味に
負けない田楽味噌が秀逸で
見事に味覚同士が同調して来ます。
田楽は
白味噌に卵の卵黄と煮切り酒と砂糖で
合わせたもので施されてます。
一味も二味もそのレベル感が違う
田楽味噌です。
無花果の甘味も
田楽の甘味も
無花果の冷感も
ふわぁっとした食感もいい
お口の中に溢れる甘味も無限大に広がる
これら全てが融合して舌を陶酔の渦に
巻き込んでいきます。
⑥岩手の松茸のフライ
普通の薄口ソース
塩
酢橘
傘の開いた部位を揚げたもの
衣から美味しいフライ
最初の一本目は酢橘塩で頂きます。
サクッと齧って松茸フライを割くと
いきなり香る高貴なあの松茸の匂ひ
香るわぁ〜
あまぁい香り
お口からその香りがフワァ〜ッて
抜けて行く
カラッと揚げ立てな上に
繊維質がジューシー
来てるお客さん全員がうまいうまいと
言ってむしゃぶり喰らいついてます。
とても満足度の高い松茸フライでした。
⑦鰹のたたき
薬味
茗荷と葱と大葉とおろしがいい
ポン酢
鰹が分厚くてたたき方が素晴らしく
鰹の甘味をぐっと引き出して来る
炭火で炙ったたたき
雑味のないたたき
温感が素晴らしくこの温かみが素敵に
肉質感を高めてる
鰹のたたき以上に鰹自身の旨味が
浮き出て来ていて、
更にぽん酢が酸味を鰹にたっぷり注ぎ
鰹の旨味を際立たせているのです。
叩きの美味しさのレベル感が全く違う
炙りをいれた結果生じる鰹全体の温度感が
美しい肌触りを舌に与えて
浮き出た脂がヒタヒタと迫って
それがまた旨味を引き出している素晴らしく
甘美なたたきなのです。
⑧明石の鯛
山葵
割醤油
昆布締めされた鯛の状態が素晴らしく
何も付けずにこのままで食べるのが
一番美味いかと感じます。
3〜4時間ほどシメてるとの事。
鯛の身から滲んでくる甘味が
ねっとりして
弾力もあり
肌の艶が円やかで
肉質感がとってもしなやかで品がある
山葵が負けないくらい良い鯛で
舌が驚いてしまってます。
鯛の身から浮き出る甘味
淡白さが消えてしまってるような身質で
うま味十分に感じられる白身です。
鯛にこんなうま味を潜ませることができるとは
流石な星野流の昆布締め。
噛むとジューッとうま味が乗ってて
何とも言えない美味しさがお口に充満する
飛び切り旨味が映えてる鯛のお造りです。
⑨小鍋
鱧松の鍋です。
鱧に松茸がごそっといっぱいお鍋に入って
鱧の骨で取った出汁と
松茸のエキスが鍋に流れ込んでます。
鱧もいっぱい鍋にボトボト落としてくれて
贅沢感極まる鱧松鍋です。
昆布と一番だしのみで地を整えて
うま味を出してます。
取り皿にお鍋から鱧と松茸を少しずつ
分けながら
酢橘をお鍋の汁に少し滴らせて頂きました。
酢橘がこのうま味に合います。
鱧がまたたっぷり吸い地を吸って
旨味に勢いがついてます。
噛んでも舐めても美味しい鱧松茸に
秋味の風味を満喫させて頂きました。
お汁がうまくって
最後の一滴までスプーンで掬いました。
⑩真魚鰹の塩焼き
塩焼きなんですが
何という淡い塩味なんでしょうか
然も白身が極太な真魚鰹です。
ザックリと厚みのあるど真ん中から噛み込んで
真剣に美味しいぞーと、叫びたくなる真魚鰹
どうしたらこんな焼き方ができるのかなぁ
と独言て仕舞います。
何処を齧っても淡く奥の方から塩味と言うより
底から浮き出て来る淡い味覚なのです。
本当の意味で此れこそ底味なのかなと
感じ入って仕舞いました。
ひと塩当てずに
焼く時に当ててるだけなので
こう言う淡い塩味がつくらしいです。
その塩味がとぉっても長続きして
舌の奥の方まで
ジワジワと淡い塩味が滲んで広がって
行きます。
感動ものの真魚鰹でした。
⑪自家製飛竜頭と湯葉の炊き合わせ
飛竜頭をお箸で割いてやりますと
何と銀杏がゴロゴロして
木耳迄彼方此方に散らしてます。
更に飛竜頭を食べてる合間に湯葉を
頂くのですが
湯葉の甘味が穏やかに仕上がってて
この丁度良く混ざり合う甘味同士の
味わいが穏やかに舌を弄んでくれます。
何かホッとする味覚が訪れて
安堵感を与えてくれます。
こんな感じの飛竜頭には頭が下がります。
⑫渡蟹の海蘊かけ
海蘊も美味しいですが渡蟹の甘味のキレの良さ
がとても印象に残るお味です。
生姜もいい塩梅なのです。
どの一品も味わい深く良い仕事ぶりなのです。
仕事の中身が濃いのです。
絶対に手抜きとか油断とかが皆無なお仕事を
される星野料理。
一品に掛ける素材の持ち味を引き出す力が
秀でています。
お料理に物語があり、
甘いひと時
辛いひと時
酸っぱいひと時
爽やかなひと時
まるで食の人生凝縮版を演じて頂いてるような
感覚に見舞われるのです。
⑬お食事
ご飯
牛の時雨煮
香の物
縮緬雑魚
赤出汁
生卵とおかか
星野さんのご飯は真に心米なのです。
とても気持ちが和んで癒される米粒の甘味が
浮かんでくるご飯
最初に雑魚を乗せて一膳
次に時雨煮で一膳
TKGに時雨煮を入れてすき焼風にして
更に一膳
フゥ〜、お腹満ぱんとなります。
時雨煮の甘味と卵の甘味の掛け合いが
激美味です。
卵の黄身に牛の時雨煮を絡めながら
ご飯をズルズル〜ッとお口に掻き込んだ時の
美味しさと言ったら
もう、堪りませんね。
更におかかをバサッと星野さんから
鷲掴みでご飯に落として頂いて
うま味がTKGに舞い降りて来て
うま味と旨味が渾然一体となり
舌が美味しさの坩堝の中に
取り込まれていきます。
更にお茶漬けが有りますとの
星野さんからの
申し出にもうギブしました。
⑭蕨餅 煎茶
きな粉が美味しい蕨餅を頂いて
煎茶でお口も身心も注いで
興奮の味覚の中から落ち着きを取り戻して
秋味満喫の宴に豊かな満足感でいっぱいです。
2019/10/20 更新
2019/06 訪問
初夏の旬が駆け抜ける
■2019.06.21(金)20:30〜訪店
■夏のお料理 お任せ¥37,000ほど
じっとり汗ばんでくる季節
湿気も多くて外出して歩きたくない気分
こんな時は心より涼しい風を
靡かせてくれるお料理が嬉しい。
①鮑と蓴菜 山葵 胡瓜
舌をこの蒸し蒸しとした気分から
解放してくれる一品。
まず驚いてしまうのが兵庫三田の蓴菜
実がついてるゥ
このプチプチ感とぷよぷよ感の共存には
出逢えないと思ってましたら
流石は星野氏です!
こんな嬉しい先付はお代わりしたくなります。
ぽん酢の酸味の中を蓴菜が泳いで
鮑の周りにぷかぷか浮かんでます。
その酸味が蓴菜に絡んで舌を程よく
刺激しながら蓴菜が涼しげにぬめり味を
寄せて来ます。
そして鮑のコリコリ感が訪れて
三位一体となる妙味が舌をお迎えです。
幸先の良いスタートに喜んでしまいます。
②鰻の飯蒸し
地焼きされた長崎の養殖鰻さん
皮目のパリパリ感に潜む旨味を
最大限に引き出す
皮目と密着してる白身をホクホクに仕上げて
そのエネルギッシュな身が自ら捩れるほどに
鰻の味わいを楽しめる
絶妙な火入れのバランスが生み出す旨さ
養殖鰻をここまで昇華させてしまう星野の技
その絶品鰻が3切れも乗っかってるのです。
鰻たれに酔う
味醂とお酒と濃口を1:1:1の比率を
色々に試しながら
その日の鰻が最高の出来栄えになり
持ち味を最大限に発揮するように
甘味を強めたりして鰻の皮目にも腹側にも
丹念に刷毛を入れて念入りに味付け
そして山椒の香りを付けながらと言う作業を
繰り返されます。
本日の鰻さんには二層にタレをかけて
二層焼きにされて
甘味を少し強めな感じに仕上げてるとのこと。
白身はホクホクの深い鰻本来の味わいを見せて
皮目はパリパリッと歯ごたえ感が満喫出来て
そのコントラストに驚いてしまいます。
この焼き加減の見事さは星野流でしょうね〜。
こんなに炭火がしっかりと入って
皮目のパリパリ感と身のホクホク感とが
織り交ぜられた地焼きものはあり得ない
と思えるほど
鰻のポテンシャルを限界まで
出し切ってるのですよ。
この鰻に飯蒸しのモチモチ感が重なるので
美味い美味いが大行進です。
③ほうれん草の軸と岩茸の胡麻和え
胡麻の香り
胡麻の甘味
胡麻の冷感
炒りごまの優しさ
それらが途轍も無く美味しいのである。
そのゴマちゃんに付き添うほうれん草の軸の
青味に絡んでくるシャキシャキ感がいい。
舞い散る岩茸がしっとりとして
お海苔のように寄り添う
こう言うのがお料理なのだと言わんばかりに
さり気無い食材を調理して美味しい味覚を
創造してるです。
しっかりお勉強になりました。
④芋茎の吉野煮
定番ですよね〜。
この葛で出汁を溶いた餡を飲むと
何故か心が和んでくるのです。
芋茎の食感が楽しい
このトロ〜リ感は答えられません。
芋茎の無機質な味を葛の粘性と出汁のうま味
アクセントの生姜だけで創作する名品。
一本一本をじっくりと味わさせて
頂きました。
◉寶劔
⑤黒鮑
じっくりと3時間かけて蒸された千葉大原の黒鮑
その身のこなしは
ゆるりと横たわる筋肉質が歯を招き寄せて
官能的な柔らか味を見せます。
広がる広がるどんどん鮑の味覚が
お口の中で花開く
鮑の肉質はコシが残りつつ柔らかいの
それでいてしっかりと筋肉質がしなると言うか
張りのある肉肉しさが存在して
繊維質がビシッと決まってるのだけど
温和に優しく歯を鮑のお肉の中に
招き入れるのですよ
凄い炊き上がり方、どうやってんのでしょえね〜。
⑥虎魚の唐揚げ
虎魚を揚げ物で来ちゃいましたぁ〜。
捌くだけでも難しそうな上に
葛粉でさらりと薄く着飾って
羽織一枚という感じのふわふわな衣の舞に
唇が自然にキスしたくなります。
驚いちまうのが天つゆ!
何だこりゃ、お椀の吸い地レベルのうま味が
潜んでる
ご本人曰く
美味しいお出汁を用意しましたので
お出汁にドボンと唐揚げを漬けてもらって
天つゆを飲みながら食べるイメージでどうぞ
だって。
簡単に言えるお言葉ではないな〜。
余程自信がないと天つゆって揚げ物を
ちょっと浸して
唐揚げした素材の旨味に塩味なり甘味なりを
加算して脂を少し落とさせて緩和させるものなのに、ドボンですよ、天つゆはお飲み物として
お口にたっぷりと含んで唐揚げは
何も迷わず、天つゆの味を纏わせるだけで
旨味が膨らみますよ、と言ってるのです。
そこまでおススメならばと
覚悟を決めて虎魚をドボンと天つゆに落として
そのままズルズルッて感じで舌へ
吸い込んでみました。
う、う、ウメェ〜。
ホント、椀盛みたいに滋味深さが舌にじ〜んと
来るじゃないですか。
鰹風味の塩梅の良い事
絶品なるかな天つゆ
鰹だけじゃない
淡く淡く鹹味がそこはかとなく漂うのです。
そして虎魚は
身の部分だけをさらりと揚げて白身が
丸っ切り無垢な白身で一切雑味がなく
仕上がっており、極旨なのです。
衣も葛粉を漬けただけのサラッとした
唐揚げなのですよ。
身の方に具合良く包丁入れてる故
さっと揚げるだけで
火が満遍なく白身の中まで届いてホクホク感が
リアルにまんま届く
天つゆに浸った衣は濡れ加減がしなやかで
ザクッとした食感が軽妙なのです。
その軽快な天つゆのうま味と衣の食感の狭間で
虎魚の旨味がパァ〜ッと広がるのです。
凄い凄い、揚げ物としてのレベル
完成度の違いがど素人でも明快に解を得る味覚
ホント、舌殺しだわ。
天つゆと衣と白身を蒸すレベルの次元を超えた
お料理でした。
これ、シメのご飯に乗せたぁ〜い。
◉〆張鶴 純
⑦お造り
キジハタ
酢橘
マルドン塩
山葵
円やかなマルドン塩はちょっと煎ってるので
お塩の本性が露わに出てる感じで、
とても膨よかな鹹味が浮き出てくるお塩です。
この円やかさを酢橘の酸味で溶かすと
塩気の底味が酸味の奥から浮かび上がる感じで
きじはたの淡白さに輪郭を与えてしっとりとした肉質をしなやかに美味しさを誘い出します。
更に、
酢橘塩に山葵を足して
お醤油も御殿場の天然醸造もの
キジハタと言えば夏のお魚
さっぱりしててしなやかな肉質で
膨よかな食感が楽しい。
お醤油と山葵の甘辛加減良くキジハタに
馴染ませてやると旨味が涼やかに膨らむ
味覚が単に美味いのではなく
その肉質と合わさって涼しげに舌に
囁いてくるのです。
お造りも計算され尽くしてるのかなと
お聞きしたら
やはり経験値がものを言うそうです。
⑧鱧と蓴菜
本日の椀種は牡丹鱧に梅肉
椀づまには蓴菜を忍ばせてます。
火を入れてあげた蓴菜は
素敵なグリーンに衣替えです。
このうまい具合の掛け合わせ方
星野ならではの昆布のうま味が淡く淡く忍んでる吸い地の素晴らしさ
純白で無垢な牡丹鱧
鱧斬りの技も一本ものではなく
一枚ものでザクザク刻んでる
中骨の所で割ってないのですよ。
だから刻みを入れる包丁の距離が倍なのです。
だからこそ鱧がど真ん中でパッと大輪の花を
咲かせるんですよね〜。
先ず吸い地をじっくりと味わいます。
此れは嬉しくなる昆布の淡味
どこまでも淡く深い所から忍び寄る底味
味蕾の一つ一つに何かが訴えてくる
いい余韻です。
ここは牡丹の花をしっかり味わいたい
純白な牡丹鱧から無垢な甘味と
素直なぬめり味が舌に及ぶ
舌で鱧の表面を舐め回すと花弁が
艶だち鱧の持てる味覚の全てがその花弁に
凝縮されてるが如き甘味が
静かに波打つのです。
⑨稚鮎
島根県高津川の天然鮎
本日は
旬の凄いやつが全部出て来ちゃうんですね。
喜びまくりです。
稚鮎は頭から中骨まで優しく焼かれて
柔らか目に仕上げてあります。
この稚鮎がまたしっくりと来るんですよ〜。
どうしたらこう言う焼き加減の
火入れが可能となるのでしょう。
鮎は頭の先っぽからカリカリと皮目全体に
焦げ付きが広がり満遍なく火が通り
ゼラチン質などは欠片も残らず消えている
なのにワタの身が柔らかくレア感があり
ふっくらと良く火が通った白身と対照的な
甘味が静かに訪れる
このコントラストも素晴らしいが
頭と尻尾と腹回りの皮目のカリカリ度
中の白身のほっこりふかふかな豊満度
小骨に絡んだワタのレアな苦味の濃度
是等の味覚がくるくると舌を回して
魅了するのです。
次に
1尾目の鮎を貪って頂いてる最中に
違う食べ方してみますかとお言葉頂き
ハイ、とご返事しましたら
その場で即興的にザクザクッとお箸で
細工を入れて頂き
焼いたばかりの稚鮎から何と!
スルスルするりと頭付きの中骨迄を抜き取り
白身とワタはそのままで
二体にして頂きました。
綺麗に分解された稚鮎を見て
その場に居た人みんな、
目の前で何が起きてるのかな?と言う感じで
一瞬ポカンとしてます。
意図も簡単にサラリとやって退ける星野氏の
技に感嘆します。
頭付きの中骨を抜くと残った方の身の食感が
格段に違って来るんですよね。
中骨にも肝が付いてるし苦味がバラけず
稚鮎自身が若いのでまだ骨が柔らかく食べれて
新鮮な味わいが残ります。
中骨を抜いてしまうと身の若さが格段に違って
舌に身の旨味を残していく。
なんかこの中骨抜き取りする食べ方
癖になりそうです。
⑩炊き合わせ
京賀茂茄子
車海老
千石豆
直火で丸焼きにして焼き茄子に仕上げてから
鰹を効かしたお出汁に浸して
お茄子の繊維質にスゥ〜ッとお箸が
取り込まれていく
翡翠色が輝いてます
お茄子が全然濁らないし
中まできちんと火が入ってる
芯までふわんとした感じになってて
お茄子のエグ味が全然無いのですよ。
お茄子を寝かせる時間によるのでしょうが、
経験値が成せる技かと思います。
⑪焼き鱧と冷たい胡瓜
パリパリに焼いてあったかぁい鱧が横たわる
あったかい鱧と冷たい胡瓜の組合せ
温感料理と冷感料理の均衡の美学みたいなものを感じます。
胡瓜は全部種を取ってお塩で揉んでます。
胡瓜のさっぱり感が焼き鱧の和む旨味と
良く釣り合ってます。
鱧を焼くとこう言う感じの美味しさに
化けるのかと初めて味わいました。
鱧を焼いてお醤油たれで鰻の地焼きみたいに
仕上げてるのです。
その焼き鱧を一口食べると鱧の猛々しさが
焼きの中に閉じ込められてて鱧の旨味が
ホクホクで穏やかな味わいに
仕上がってるのです。
余韻が舌にジーンと響いて後を引きます。
⑫お食事
ご飯
縮緬雑魚
牛の時雨煮
香の物
赤出汁
お塩を追加で頂き
この甘い白米にパラパラと降らして
塩むすび感覚で食べました。
ご飯の甘さと塩気の塩梅がご飯を
進める進める
ヤバイくらいにマルドンのお塩が
ご飯を引きつけて来る
塩が美味しいと言うか
お米の甘味が塩の能力を引き出しちゃうほど
甘味の深みが奥深いご飯。
勿論いつも通り
時雨煮とも
縮緬とも
相性良くご飯を頂きます。
⑬鰯茶漬け
鰯を醤油で絡めて炊いたものを
お茶漬けに添えてます。
良い鰯のある時だけのご用意なので
本日は当たりの日です。
時期限定品です。
鰯を齧って塩分を含ませてから
ザクザクっと焙じ茶のお茶漬けを啜ると
お口の中でバランスが行き交い
お料理としての味覚が完成するのです。
鰯をチビチビ遣りながらの焙じ茶漬け
シンプルで奥の深い茶漬けです。
⑭わらび餅 煎茶
定番のわらび餅
星野料理の変幻自在な美味を締め括るに
相応しい作り立てのわらび餅
きな粉をたっぷりと塗してお口に運ぶ
きな粉の粉質が繊細かつ
上品でエレガントな粉なのです。
粉こなしてるのです。
わらび餅がトロンとしてきな粉がしっとり
絡みまくりです。
何とも言えないしっぽりとした甘さが
舌に寄せてくるんです。
其処に煎茶の渋味が淡くて
わらび餅の甘味を頂いた後に味わうと
ホッとするんです。
ふぅ〜。
最高峰の美味の高みに辿り着いて
ホッと落ち着いてる自分を発見。
満足の極致に達した感に酔い痴れる夕餉でした。
若々しく瑞々しい実がついた蓴菜と黒鮑のコリコリ感が清々しく清涼感を誘う
養殖鰻をここまで昇華させて美味しいもんに仕立て流ことが出来るのかと思える程の激うま旨な味覚が訪れる
定番の名物の一つ 芋茎なんてものをここまでのお料理に仕上げて来る こんなもんを美味してしまう仕事こそ料理人の技
うま味成分がたっぷりとしてコクを感じる絶品天つゆ
中骨を抜き取った稚鮎 あっという間に捌いて頂きました。
2019/07/17 更新
2019/05 訪問
令和日本料理 星野事始め
■2019/05/13(月)19:00〜訪店
令和初めましての星野さんです。
平成の時を超えて恐らくは令和にも一際光り輝き
その歴史に1ページを飾ることになるだろうと
思います。
本日もどれもこれも舌が絶句する逸品ばかり
一品に対する星野氏の想ひも感じられますし
また、その繊細かつ丁寧な作品の作り込みには
感動の連続を頂きます。
■お料理
①先付
白味噌に蓬餅
京都山利の白味噌のお汁
端午の節句に因み、邪気を払う蓬のお餅入りです。
白味噌は生き生きとして麹麹してる食感
濃厚気味な白味噌にトロ〜ッとした甘味が
ほんのりと滲むまろ味を帯びた甘さ
この穏やかさがなんとも言えない
コク深い味わい
この円やかな味覚と舌を安堵させて
ほっこりとさせる舌触りに感嘆してしまいます。
ゴクリと飲み干してお餅のモチモチ食感も
愉しませて頂き、嬉しい一品目です。
②穴子の飯蒸し
笹巻きにしてあり笹の香りを飯蒸しに写してます。
明石の穴子を山椒煮してもち米と合わせて
おこわに仕上げてます。
5月なので此方も粽をイメージしたもの。
季節感への表現がとても上手に施されてて
奥床しくもあります。
で、この穴子飯おこわ版と言いますか
飯蒸し穴子仕様と言いますのか
舌が道案内されても迷ってしまいそうな
虚ろな世界に導かれてるような戸惑いする
味覚なのです。
おこわ自体のモッチリしたお米の食感が楽しめ
そのモチモチ感に穴子の旨味が
柔らかく丸味を帯びて舌を纏って来ます。
何て言うのが適切なのか迷いますが
米粒と米粒の隙間が空くのでもなく
ギュッと詰まってるのでもなく
塩梅よく粘着してるモチモチ感と穴子の甘味が
お互いを抱擁し合って
旨味をまぁ〜るく引き出してくるのです。
この味覚は忘れ難いな。
兎に角、食感が楽しいやら嬉しいやらで
感動モノなのです。
此処まで仕上げてくるとは
作品としての完成度の高さに驚いてしまいます。
③酢の物
蓴菜
鮑
ぽん酢
兵庫県の三田の蓴菜が凄うま
清涼感がストレートに伸びてくる
こんな蓴菜が世の中には有るんだ
蓴菜にぽっちやり纏ってる玉の大きさに驚く
その玉の餡がホント、プルルルルル〜ンと言う
感じなの、え〜っ?こんなプルプルの
ツルリンなスベスベ感有りか?
然も全く蓴菜臭さが無くて純粋に
蓴菜の味覚を発揮してます。
星野氏ご本人曰く
これだけの質の良い蓴菜は中々手に入らない
代物との事
流石は星野さんです。
更に蓴菜に驚いてる暇は有りません。
三陸の鮑の刺身の鮮度が素晴らしく良いのにも
感嘆の声が上がります。
シコシコ感と歯を入れた時のコリコリ感が
既に涼しげな食感と爽快な反発感を歯に
響かせてぽん酢の酸味に寄せられつつ
鮑の活力ある醍醐味を頂きます。
此れが三陸鮑の生き生きとした旨味だぞと
鮑が叫んでおります。
此奴にも舌が白旗を上げております。
何という素材の合わせ方の妙なのでしょう。
蓴菜のプルプルなツルリン
鮑の溌剌としたコリコリ
其処に程よく酸味が畳み掛けてくる
何処までも爽やかに涼しげな装いを
微塵の迷い無く寄り切る作品なのです。
④お凌ぎ
茄子
鰹節
木の芽
お出汁で茄子を炊いたものに鰹節を振り掛け
木の芽を添えられてます。
お口直し的なサッパリ感がお口に広がる
お茄子がスゥ〜ってお箸で簡単に真っ直ぐ裂けていく
とてもスムーズに繊維が裂けて自分の好みの
サイズでお口に運べます。
お口に運んだ瞬間、翡翠色の食物繊維が
ジュワ〜ッと出汁のうま味を弾き出すの
この技物だからこそか
出汁の地にたっぷり浸ったお茄子の味覚に
舌が気怠く頷き始めると
フンワリ優しく鰹節の衣が羽ばたくのです。
これがまた風情感じる鰹節の落ち方なのです。
でね、ここでアクセントと思ってました木の芽が
勢いよく高らかに木の芽固有の
味と香りを振り撒いて茄子の味覚に
明快な輪郭をはっきりと描きます。
お茄子がやや大人しい味わいなので
木の芽が生き生きとした風味を添えて来て
素晴らしいマッチングを見せます。
この妙技にも驚いた。
お茄子を炊いただけなのに
こんな奥深い味わいに仕上げてしまうとは
舌は沈没するしかないでしょう。
⑤揚げ物
小柱
漉油
冷えてて旨味たっぷり
何だこれは!
此れが小柱なの?と見まごう程の
歯触り舌触りに味蕾に広がる麗しい程の旨味
まるで飲兵衛たちのために創造されたのかと
思える逸品中の逸品
本日のベストと言っても過言では無い
この小柱さんだけで軽く一合行けちゃう
チビチビと小柱摘みながらやり続けたい
何と言っても葛粉で揚げた衣のサクサク感の心地良さよ
揚げられた葛粉の衣の粉質がお上品
サクッと衣を崩して歯を小柱の身に進めると
衣の粒子が細やかに小柱の中に沈められて行き
衣の甘味が小柱に移る
小柱は歯に挟まれてホロリと解けていき
その欠けらがポロリと柔らかく崩れ乍ら
小柱自身の旨味をたっぷり浮き立たせる
その旨味の味の良い事
小柱を進めて行く最中に感じる塩味
淡く薄く広がる底深い塩味
舌にジンジン来るのだ
甘味をより一層引き立てる塩加減のバランスが
何とも言えない小柱
旨いとか美味しいとか言うレベル感覚の度を
軽く超えている
此れには参った。
お手上げです。
漉油の存在忘れちゃいました。
澤屋まつもとがドンピシャ合いました。
⑥お造り
真子鰈
真鯒(マゴチ)
山葵醤油
酢橘
お塩
お造りで白身同士を合わせる
共するとお互いが霞んでしまう
白身同士の味わいがぼやけるので
赤身と合わせる方が容易いと思いますが
星野さんのお料理はその間隙をついて来て
白身同士の旨味を上手に引き付けてくるのです。
真子鰈は
鮮度の良さが映える生命力のある弾力感
淡白な味わいの中に面白いほどの旨味が潜んでる
この旨味はオーソドックスに山葵醤油で行く
白身の旨味をくっきりと浮かび上がらせる
これが刺身の醍醐味だと思う。
真鯒は
白身が肉感的で上品な甘味が感じられる
噛んだ後の余韻が爽やかに残る
酢橘を滴らせて柑橘系の爽快感を加えると
身の厚みがしなやかに呼応してくる
此れも秀逸な作品
⑦お造り
鳥貝
星野自身の手で網焼きの上で
鳥貝さんをパチパチと炙られております。
頃合い良しと見るや菜箸で裏返し
鳥貝のポテンシャルを最大限に引き出す炙り
湯気がほんのりと立ってます
その炙られたばかりのホクホクな鳥貝を
一口パクリします
身を齧ります
一気に甘味がジュージュー飛び出して来て
瞬く間にお口を鳥貝の澄んだ甘味で蹂躙して行きます。
その甘味の何と耽美な事
目を奪われる様に舌を奪われてしまう大海の
甘味にうっとりです。
クチュクチュと噛んで行く度に
鳥貝の甘味がジュル〜ッと滲み出すのです。
炙られた事でより一層甘味成分が増してます。
⑧お椀
椀種 虎魚
椀づま 白髪葱に木の芽
星野さん、
虎魚を余すところなく虎魚の持てる力を
全て出し切らせているのです。
頭と骨で取ったお出汁は鼈の丸仕立てみたいに
お鍋と言っても良い感じのお椀になってます。
ある意味ダイナミックなお椀模様
ですが、吸い地はとても慈の味わいが深く
昆布と水を施しつつ虎魚のうま味成分を
引き出し切り仕上げにお酒を加えての吸い地
この何処までも淡く滋味深く舌を地の底味に
誘い込む様な味覚には
チョツト呆然として立ち止まってしまいます。
雑味が一切ない吸い地
ボーッと舌をお椀に浸していると
お椀に浮かぶ虎魚の純白な身の
穢れない美味しさにハッとして我に返る
真っ白な身がホロホロと崩れる
舌に白身を任せる
ぬめり味が舌を優しく撫でて行く
淡白な甘味が舌を犯して行く
地のうま味と白身の甘味が共鳴し
脳に恍惚感を呼び込んで至福の味わいが訪れます。
⑨焼物 伊佐木 蓼酢
関伊佐木の塩焼き
蓼酢
本日感動の焼き物です
皮目が旨い!
普通皮目の裏手にゼラチン質の残骸が
少しはへばりついてる物なのですが、
もうそう言う雑物が全く無く
皮目のパリパリ感の純度が高い。
皮を噛み始めると最初にバリッと来て
直ぐそのままパリンと砕ける感じが
歯に響いて来る、その時の食感の
衝撃がパリッと砕けてカラッと裂けて
歯に与える感覚が開いて来るのです。
更に突き進んで
白身のお肉がふわふわ浮かび上がる感覚が
お口に入り込んで来て
ホロホロと白身が溶けて行く口溶け感が続く
そしてその口溶け感の真ん中に
関伊佐木の脂が乗って
火が身の芯まで通りふっくらと膨よかに
その身が焼かれてふわふわなくらいに
膨らんだ甘味が訪れるのです。
この皮目と身の味覚の落差が大きくて
伊佐木さんを舐め続けたくなります。
⑩炊き合わせ五種盛り
単に五種の旨味を並べただけではない
先程から厨房がやけに忙しいなと思って見てましたが
お鍋が5個もガス台の上でご活躍してます。
何だろうと訝ってたのですが、
其々の小鍋に異なる素材が炊かれてて
出汁の深さ甘味のバランスを少しずつ
崩して変化を付けてるのです。
素材同士が混じり合わない様に個別の鍋で
炊いてお椀に盛り付け
だからこそ材の味が生き生きして
きちんと味覚のポテンシャルを発揮するのでしょう。
星野料理の技を垣間見た気がします。
小芋
車海老
姫竹
空豆
蒸し鮑
房総の鮑は数時間かけて炊いて
円やかで軽やかなる甘味と肉感に仕上げてます。
お献立の始めに食べたコリッとした鮑と対照をなしてて
こう言う伏線を仕掛けてあったのですね
この辺のお献立の流し方にも
ホトホト感心しちゃう。
姫竹!出汁のうま味が透き通る様に馴染んでる
繊維質が柔らかく噛みごたえ感が優しいのに
シャキッとした繊維は生きてる
不思議な食感。
小芋のねっとり感が歯を喜ばしてます
お手手繋いでよ〜と言う感じで
小芋さんの甘味が絡んで来ます。
車海老も空豆も薄味で炊かれたうま味が
充分乗り移りシットリ淡く舌に寄せてきます。
特に空豆!
塩味が何処までも広がり奥行きの深さが
続いて行く耽美な塩気に驚いた。
塩だけで炊いてるそうですが
空豆を食べた後も塩味が後から追いかけて来て
余韻を残して行く
この空豆の味覚は突出してます。
五つの異なる味付けを施した素材が行き交う
味覚のシルクロードです。
⑪お口直し
山菜の盛合せ
お出汁は先ほどの真子鰈の
アラ落ちしたもので引いてます。
漉し油
うるい
こごみ
蕨
春の旬菜尽くしに
お出汁をほんのりと固まる感じの煮凝り風に
仕上げられてます。
清涼感爽やかに舌を涼めてくれる作品
どれもこれも完成度の高い一品ばかり
参っちゃいますよね
皆さまお通いになる訳です。
⑫お食事
いつもの激うまホカホカポカポカご飯です。
そしてピカピカな米粒に
甘い香り立つ湯気の匂ひ
このご飯を見てるだけでウキウキしちゃいます。
お腹かなり膨らんでいっぱいですが、
此れは頂かねば何ヶ月も待った甲斐が無いと言うもの
しっかりお代わり頂いて
雑魚飯にしたり
時雨煮の旨味たっぷりご飯にしたり
色々な風にお米さんを弄ってやりました。
どう弄んでも白米の甘味が優勢で
湧き出るご飯の糖質がお淑やかで
穏やかで途轍もなく美味しいご飯なのです。
山形コシヒカリ
香の物
牛の時雨煮
山椒雑魚
赤出汁
⑬甘味
わらび餅
煎茶
2019/05/27 更新
2019/03 訪問
滋味深き味わいに春を乗せて
■2019.03.01(金)19:00〜訪店
本日より星野さんの春料理が春の微風の如く
春一番の風味を乗せて舞い落ちて来ます。
少しだけ冬の名残りを見せて
春の走りをお雛様に差し上げて
雅な春日和の装いに纏われたお料理を頂きます。
■お料理 お任せ¥30,000ほど、お酒含む。
①若竹煮
❇︎鳴門の生ワカメ
❇︎早筍
春の走りに出会うもの
早筍と生ワカメが瑞々しく感じられて
木の芽の香りが筍の甘味に寄り添い
舌を誘ってくるのです。
筍からは春を感じる香と味覚が先行して訪れ
サクッと噛むと若々しい甘味がジワッと
寄せてくる、その後から吸い地が淡く淡く
何処までも静かな佇まいで寄せてくるのです。
その謹み深い味わいに心が穏やかに暖められます。
このホッと癒されるひと時が嬉しくなります。
②お凌ぎ
❇︎雛寿司
蒸した温かいお寿司です。
雛祭りの季節に合わせて
お雛様のように蒸し寿司を着飾ってます。
彩り鮮やかなる錦糸の黄金色が
鮮やかに映える蒸し寿司です。
錦糸の絨毯に小さなプリッとした車海老様が
赤く身を染めてお料理に映える彩色です。
舎利は赤酢で酸味を程よく施されてて
お米の甘味と酸味を施した
舎利の美味しさが格別です。
③焼き河豚
❇︎身をお醤油で焼いて
❇︎あら焼き
もう、仰天ものの味覚漂う焼き河豚でした!
焼き河豚の味比べと言う感じで
身とあらの両方を焼いて頂けます。
厨房の囲炉裏越しに漂う香り
んん、何だろうこのいい香りィ。
この香りだけでお腹がキュゥ〜ッと鳴ってしまいます。
囲炉裏の網掛けの上に
乗せられた河豚の身から漂う芳しい匂ひ
店内に耽美な香りの舞が訪れてます。
その身が焼き焦がれていく様を
ジーっと見つめる星野氏の眼差しが真剣です。
炭火の火加減をパタパタと手団扇で扇ぎます。
囲炉裏の空気孔へ平の手で空気を送って
火加減を調節!チョツトびっくり。
頃合い良しと見るや否や
河豚の身をサッとお皿に盛り付け
一人前ずつお運び頂きます。
この、焼き河豚のお醤油味の滋味深いこと
お味といい身の引き締まり具合と言い
半生の火入れ加減が絶妙に妙味を引き出して
プリプリ度と言い絶句しちまいます。
此れはマジ、ヤバイ!
澤屋まつもとさん、もう一合所望。
お醤油と味醂とお酒で和えてるのかと推察ですが、
醤油ベースのたれの味がとても
奥行きを見せる品の良い醬油味で
どういう塩梅で施してるのだろうか、
不思議な甘味と仄かな鹹味が寄り添い合う
コクのある旨味を作り出してるのです。
更にふっくらと焼かれた身の締まり具合の
活きの良さがプリプリに歯に反発して
素晴らしい食感を楽しめます。
次にあら焼きがお手元に届きます。
骨付きを手で鷲掴み
焼き加減が凄く香味高く舞い上がります。
河豚のあらを此処まで昇華させたお料理に
仕上げてしまうとは、
とんでもない才能です。
単純にあらを焼いただけとは思えない旨味
少し振り塩してるかなと淡くお味を忍ばせてますが、
河豚のあらの美味さを巧みな焼き加減で
前面に引っ張り出してます。
ガブっと骨に食らいつく
齧って骨に付き纏う身を歯で削ぎ落とす
削がれた身の部分が舌に落ちる
プリプリな身でありながらも
チョツト焦がされた苦味が河豚の淡白な
甘味とともに訪れる
焼き加減の塩梅が見事な技もの故に
生まれる淡いお焦げの味が忍ぶ甘味
もう、
美味しすぎて骨の髄までしゃぶり続けたいと
思ってしまいます。
④吉野煮
❇︎根芋
❇︎生姜
❇︎葛でといて
前日から浸水させてゆっくり根っこの繊維質を
柔らかくほぐしてます。
元来、味の無い無味乾燥な根っこなので
食感が命の出し物
茹で加減とお出汁の張り方
そして
葛の引き具合で味覚を整えてます。
この味気ない味覚の素材を生姜の施しと葛と出汁だけで
これだけの旨味に変えてしまっている所が
凄いと思います。
⑤揚物
❇︎蕗の薹
❇︎ぐじ松笠揚げ
❇︎酢橘
蕗の薹は塩気を付けてあります。
ぐじは酢橘を滴らして
揚げたて蕗の薹の衣から零れ落ちる品の良い苦味
噛んでると甘味に変化してほんのりと
香ばしく苦味を舌に残していく
その名残の苦味にぐじのホクホクの白身を
絡ませますと絶品なる味覚が舌を襲います。
更にぐじの揚げ鱗のサクサク感の素晴らしい事!
フワッと舞うように口の中で鱗のサクサク感が
舞い散るのです。
この食感と一緒にぐじの肉感的な旨味が
訪れてチョツト興奮してしまいました。
ぐじの官能的な甘さとまったりな白身の食感が
後を引いて暫くボ〜ッとしちゃいます。
⑥お造り
❇︎明石の鯛
❇︎赤貝
春らしい雅な盛り付け
朝〆たばかりのものをの空輸でお届け
身がブリブリなのです。
赤貝のシコシコ感が半端なく
嚙み応え感がいっぱい歯を反発させます。
鯛の白身の鮮度の品が良く
淡白に純粋な甘味が単純に生山葵のお醤油に
ピッタリ嵌ります。
⑦お椀
❇︎蛤の真薯
❇︎小かぶ
❇︎人参
❇︎ゆず
菱餅をイメージした色合いを魅せて
緑 赤 黄色が鮮やかに真っ白な蛤真薯から
浮かび上がります。
蛤の出汁だけで生地を伸ばしているので
真薯が溶け出して吸い地がどんどん変わりゆくのです。
擂り身を崩すと蛤がプックリと身を露わにして
蛤のエキスが吸い地に及んで
潮の風味と蛤のうま味が重なり合い
コクのある妙味に昇華しているのです。
ジワっと舌に忍び寄っては
余韻を残して去っていく蛤の吸い地の味わい
このまま浸り続けたいと思わせる蛤汁です。
⑧焼物
❇︎赤鯥は対馬の紅瞳
❇︎はじかみ
流石は紅瞳
身から滴る脂が尋常じゃない
たらたらと迸ってるのです。
ふっくらと焼きあがったアカムツの皮目を
箸先でチョコンと崩してやると
露わな白身からダクダクと渓流の如く
流れる旨味たっぷりの脂
その脂に浸された皮目がまた、
お焦げの苦甘さが佇んでて美味い!
〆張の純様が舌を清めます。
ジューシーな脂の乗った白身をほぐすと
塩味が淡く効いてて舌に忍び寄って来て
しっとりと芳醇に濃厚な甘みが広がり
一口食べる度にうっとり来ちゃいます。
どうしたらこんな美味が作り出せるのか不思議です。
兎に角ふっくら加減が途轍もなくお優しい
こんもりと膨らんだアカムツの
無垢なる白身からは
想像し難い程の脂の乗った旨味が発散し
舌をよじらす位に白身の肉質から湧き出る脂が
舌を蕩けさせるのです。
その官能的な脂の甘みと旨味が
お互いを融け合わせて一体化し
旨味自身がずっと昇華し続けて行って
甘味が何段階にも表情を変えちゃう、
その余韻がず〜ッと愛おしく
美味しさを引っ張るのです。
最後の一切れを食べ切る瞬間に儚さを感じて
憂いを含んだ紅瞳星野仕立てなのです。
⑨炊き合わせ
❇︎蒲生の筍
❇︎飯蛸
❇︎蕨
お出汁で優しく炊いて
筍がシャキッと舌に抱きついてくる
大振りな筍はガッツリお箸でグサッと
突き刺して、突き刺した穴からじゅわッと
染み込んだ出汁のうま味が弾き飛んで
お口の中で暴れん坊です。
チョツト獰猛さを見せる筍で
繊維質の芯がはっきりしてて
噛んだ時に心地良く響く食感が楽しいです。
此の響き渡る食感を舌に覚えさせておいて
出汁のうま味を纏った飯蛸を舌に追加すると
筍の名残の甘味と飯蛸の甘味が合わさって
愉快な甘さに成長しちゃうのです。
この炊き合わせの妙味は嬉しくなります。
⑩進肴
❇︎春小(かすご)
❇︎菜花
❇︎山葵添え
小さくても鯛と良く言われます。
そのかすご鯛を山葵で和えて
ピリッと背筋を伸ばした食感に
山葵のツーンとする味覚
春小の爽快な甘味が潔い味わいを
見せてくれます。
⑪お食事
❇︎山形こしひかり
❇︎山椒雑魚
❇︎牛の時雨煮
❇︎赤出汁
❇︎白菜
キラキラ輝く艶々のコシヒカリ
米粒がきちんと整列してるみたいに立ってて
ホクホクのままを噛み締めると
ご飯の甘味で舌が抱きしめられて来ます。
この甘味たっぷりの魅惑的白米に
山椒雑魚を乗せてご飯にピリリと
刺激を加えて甘味を膨らませて頂きます。
赤だしが濃度の高い赤味噌の風味を漂わせて
ご飯と一緒に手を繋いで来ます。
更に牛の時雨煮の気怠い甘さが
このピカピカの白米にピッタリ寄り添って
ご飯の旨味を増幅します。
時雨煮自身の旨味がお口の中で弾けるだけで
幸せ気分満喫
ご飯のお供としてご一緒すると
ご飯が仲良く時雨煮をお迎えして
お互いに甘味を微笑見合って抱き合います。
このコンビは鉄板な美味さ
ご飯が美味しく過ぎてお代わり必至です。
⑫甘味
❇︎わらび餅
❇︎黒豆のきな粉
練り立てのわらび餅です。
黒豆をすり潰したきな粉で
点々と黒い粒子が見受けられます。
このきな粉には独特のコクみたいなものが
感じられ、純度が高くて美味しい。
本日も最後の甘味まで至れり尽くせりの
お料理を堪能させて頂きました。
次回、鮎の季節がとても楽しみです。
まだ早めの筍と生ワカメが春を告げるお吸い物
錦糸玉子の色鮮やかな絨毯にプリプリの海老 お雛様の晴れやかな装いをイメージしたとの事
お醤油ベースのタレと半ナマに焼かれた河豚の身 焼き加減が絶妙な慈の味わいを運んで来る
ここまで昇華するかと思うほどあら焼きの 味わいに驚く 骨までしゃぶり尽くしたい
まつもとさんをぬる燗で お酒の無垢な甘味がとても穏やかに舞う
定番根芋の吉野煮 里芋の根っこを前日よりお水で浸して 柔らか味を調えるのにコトコト煮込んで 穏やかな丸みを葛で纏います。 無味なものを昇華させて不思議な食感と味覚のお料理に
苦味を温和に包む衣の優しさが蕗の薹を纏う
ブリブリに粋のいい赤貝と明石の鯛 生命力を感じる活きの良さ 鯛の弾力感が生き生きして歯を反発させる 気持ちいィ鮮度の高い食感。
蛤の出汁から生まれるうま味が生地の慈を深めていく 飲み干した時の儚さが虚ろに舌へ余韻を残す
紅瞳の脂のジューシーさ 皮目が鰻みたいに甘くて美味しい お焦げのキツネ色の部分が脂のって甘味を膨らませる 皮目とふっくらな白身の共演が舌を唸らせる
春の走りに寄り添う春の子 春日神社に因んで由来とも 春日和に相応しい鯛とも言われる春小 かすごの身は小さくても鯛そのもの。
三種の神器に見えちゃうお供の名作三品 ご飯を唆る 舌を惑わす これだけで何杯も行けそう
神技とも言える山形のコシヒカリご飯 柔らか味 硬さ 浸水度 甘味 ふっくらさ どれも素晴らしいが それらのエレメントが調和している所が凄い 何という清々しい味覚
2019/03/03 更新
■2020.01.07(火)夕餉
■新春の星野料理
お酒税サ牛時雨のお土産含む
お会計¥44,000
新年1/7営業初日の星野さんへお伺い
①先付
白味噌仕立ての京風お雑煮
お餅
富田林海老芋
人参
鮪節の糸がき
真っ白に穏やかな温かさに揺れながら淀む
白味噌のお汁
白味噌仕立ての天に雅に飾られた糸がき
天に控えし糸がきは
憂いを含んだ様にサワサワと
佇んでいらっしゃいます。
その糸がきから気高く香る
鮪節の匂ひにうっとり
白味噌の何処までも甘く薫る匂ひにも
心が揺らぐ
お椀の蓋を開けた時から心癒される
その佇まいで眼を楽しませて始まる星野料理
目を楽しんだ後は香りで惑わせ
白味噌の至福の味わいが舌を訪れる
白味噌のお汁のまったりとした円やかな食感と
こっくりと心身を芯から穏やかに包み込む
瀞み感じる舌触りと甘味
あらゆる五感が目覚めてその旨味に陶酔感を
覚えるほどの至高の味覚
何者にも邪魔されてない穢れの無い
純粋に無垢な味わいが其処に佇んで
私の舌を魅惑の衣で纏う
雑煮の具材たちが舌を満足げに弄ぶ
その味わいの奥行きの広がりを満喫しながら
愉快なほどの口福感が訪れて
至福のひと時を頂きました。
②前菜
御節気分の前菜に舌がウルウルして
来ちゃいます。
盛り付けの真ん中から順に
自家製唐墨
下にお大根を絡ませてあります。
黒豆
春子鯛の酢締め
菜の花の昆布締め
たたき牛蒡
お正月の珠玉が雅に散りばめられたお皿
お酒のアテにもドンピシャなミニ御節に
して頂いており感謝の言葉しか出ません。
お正月気分に少し浸りながら
燗酒をチビチビやるも良し
グビッと呑んで酔いに舌を委ねるも良し
良い気分でほろ酔い加減が進んでしまいます。
ホント美味三昧のお料理構成に舌が
メロメロです。
8時間かけて煮詰めた黒豆の艶やかさと言ったら
とんでも無くツルツルな甘さ
然もしつこく無くて爽やか系
菜の花はサラッと湯掻いて昆布で締めて
お出汁に浸してます。
繊維質の心が残るしゃきっとした食感としなやかな性質の質感が混合する程良い炊き加減に
お出汁の味が咀嚼して菜の花の狭間から
滲み出て来る出汁のうま味と食感、
歯触りとのマリアージュが自然に進んで行く
この不思議さとも思える味覚の中に
どう反応して良いやら舌が迷っております。
唐墨がまた凄い
純度と言うのか鮮度と言うのか
血管の混じり気が微塵も無い唐墨
見ててもその綺麗なオレンジ色に輝く
粒々が綺麗に映える
血の気を完璧なまでに消していて
血抜きが完璧に施されてる
細かく手を施してるのかと思いますが
その丁寧なお仕事に見合う唐墨の品の良い
塩味と海鼠固有の味わいに参ります。
此奴はお皿の一気に片付ける勇気もなく
チビチビとお酒にお付き合い頂きました。
前菜のお品はどれもこれもが
心に染み入るお味でお酒が自然に
進んでしまいます。
③河豚の白子焼き
ぷっくりふくらんでる焼き白子さんが二つ
お皿の上でプルプルと揺れております。
最初、お箸でプツンと薄皮を割って
頂こうかなと思ってましたら
星野さん曰く
小籠包を食べる具合で
お一口でパクリと食べると
白子の薄皮と中のプルプルの白身との
バランスがマリアージュして
美味しいですよとの仰せです。
ん、成る程、そうなのですね。
だからこの大きさで焼かれてるんだなと
納得してしまいます。
このサイズとお口に含んだ時の熱々感と
お口の中でプチッと皮が裂けてトロ〜ンと
口どけしてくるぷよぷよ感が見事に
交錯して美味しい渦がゆっくり巻かれて
お口が白子で膨らんじゃいます。
その途端
ほっぺが落ちるよ〜と叫んじゃいそうです。
そしてそのプヨプヨな白子が舌の隅々まで
徘徊してるときに感じる塩味が
また淡く寄せて来るのです〜。
この塩梅が絶妙な塩梅で
白子の甘味に奥ゆかしく底味を浮き上がらせて
熱々の白子さんがゆっくりとお口の中で溶けて
消えていく間合いの中で淡い塩味が
ヒタヒタと忍んでくるのです。
この味加減には参りましたね。
更には
お酒とのマリアージュも素敵でした。
お酒を含んでから白子焼きを食べると
とても白子がお酒と一緒にほんのりと
薄く染まっていき
お酒の余韻の甘さが白子を優しく包んでくれて
そのお酒の甘味が仲良く白子と握手してくれます。
また、
白子をmgmgして白子をほぼ食べ切った後で
お酒を頂いても白子の甘味よりも淡く潜んでいた塩味の方が余韻が強く
お酒の甘味を微妙にくっきりと
浮かび上がらせます。
いやぁ〜、この白子さんたちは絶品。
このお料理で高揚感上昇です。
④茹で松葉蟹
流石と言いますか
此れぞ匠の技と言うに足る作品かと
感じ入ってしまいました。
何も足さない
ただ只シンプルに蟹を一匹ずつ湯掻いて
カウンターに饗される直前に蒸すのみ
松葉蟹と真摯に向き合って
蟹の素朴な甘味を極限まで引き出す
お水の温度感覚だけで施される蟹料理
じんわりと湯掻いた蟹かにさんの白身が
私の前に横たわる。
その白身から蟹の甘い香りがふわふわと
漂います。
普通蟹酢とかをご用意するお料理が定番ですが
星野さん曰く
お出しする直前に一度蒸してますので
香りや甘味が蘇るそうです。
なので何もつけずに食べてくださいとのこと。
とてもお上品な甘味が溢れてくる蟹の身に
舌が驚いてます。
然もお時間かかるでしょうに
一匹ずつ煮てるそうです。
蟹さんも丁寧に扱われてご自身が
早く食べて〜とおっしゃってる様です。
お箸を殻の隙間に入れてスゥ〜っと入れて
ホカホカの白身を解して
お箸で塊を摘んでお口にパクリと
放り込みます。
全然蟹の臭みが無い
蟹の甘味が素直に浮き上がってくる
全く無垢な旨味と蟹の純粋さを引き出している
兎に角甘さがお淑やかで舌に甘さの余韻が
静かに佇む
こんなに無垢な蟹の味覚が存在するとは
不思議な甘味に誘われてもう、
食べ心地の良さにうっとりとしてます。
蟹のポテンシャルを余すことなく引き出してる
ホントに綺麗な美しい味覚を纏う
星野流の蟹料理です。
⑤蟹味噌和え
今度はお酢を蟹味噌に少し滴らせて
甘酸っぱさを足して仕上げてます。
この流れがいいんですよねー
蟹の甘味を堪能した後に
少しだけ酸っぱい甘いが舌を訪れて
欲望をやんわりと掻き立てて来る
この蟹味噌も純度が高く
温感が良いのです。
蒸し器で優しく蒸されてるので
蟹の解し身も蟹味噌もとっても穏やかな
円やかさが伴う優しいお味
舌がウフフと言って微笑んでますよ。
舌を円やかに撫でていく
もう、絶句する味わい
こんなん出されたら本当に参っちゃいます。
⑥根芋の吉野煮
定番吉野煮
此れは外せない一品
いつも通り根芋と吉野葛の相性と生姜の
刺激がお口の中で舞い踊る妙味
この妙味の誘惑にはなかなか勝てそうに
有りません。
そしてご一緒頂く飛切りの御燗が
この吉野煮と誠に合うのです。
感謝あるのみ。
⑦白魚の天麩羅
桑名の白魚です。
毎年この時期の白魚は穴道湖の大きなものを
お使いになっていたかと思いますが
今年は未だ出回ってないのでしょう。
少し小ぶりな白魚ですが、
其処は星野流の施しが冴える技ものに仕上げて
掻き揚げの塊にて饗されます。
揚げたての衣が美しい
サラリと流れる食感の心地よさが堪らない
こんなにサラサラした衣の揚物は
星野さんでしか出会えない代物
咀嚼感も素敵でふんわりと歯が沈む
その向こうにある白魚がやんわり歯を
導き入れて白魚の淡白な甘味を舌に振り撒く
とってもフカフカする甘さに感動
其の白魚一匹がたくさん集まってるものだから
食感の心地よさも長続きするし
白魚の香りと甘味もたっぷりお口の中に入って来て食べ応え感を満喫させてくれます。
此れは満足感が高き作品。
掻き揚げの次に待っていましたのは
バラ揚げです。
一匹ずつの揚げたてを今度は頂けます。
此れは此れでスナックみたいで楽しい。
一匹ずつですと
揚げたての潔い食感と
風味が颯爽に通り過ぎていく
このシンプルな揚物の素材を
極上の旨味の高みへ持って行くレベルの高さに
感心してしまいます。
衣がこんなにサラリとしてるのは
小麦粉を濾してるからでしょうか
とても細やかな衣の揚げ加減にも
感心してしまいます。
⑧お造り
祝い鶴のお皿が嬉しく新春のお喜び気分を
醸し出します。
明石の鯛です。
この時期の明石は鯛の身質のしなやかさが
秀でて来てるところで咀嚼感がはっきりと
身質から感じとれるものです。
あしらいは目甘草
山葵
白身が分厚く旨味が出てきてますので
チョツト刺激を包みたくなり
生山葵を鯛の白身でくるくると巻いて頂きます
お口に入れて咀嚼しますと
身質の淡白さとしなやかさが反発して来て
その間隙から山葵がツーンと弾き出して来て
鯛の身質に刺激を与えて美味を振り撒きます。
何度も咀嚼し続けていたい気分です。
鯛の鮮度の良さに舌が喜んでました。
⑨お椀
車海老の薄氷椀
芽蕪
柚子
淀大根を薄氷に見立てて仕立ててます。
昆布も奥深く忍ばせてる感じで漂う
車海老はプリプリ感半端なく
サッとお湯で湯掻いただけで余計な
足算はしない施し
食感が素晴らしく舌に響き応えてくる
其れ等全てのエレメントがお椀全体を
盛り立てて至福のうま味を作り出している
何と言うバランスの良さ
味わいの純朴さ
素直に素材の持ち味を雑味なく引き出すお料理
⑩焼き物
ぐじの松笠焼き
松笠の立ち居振る舞いが美しく
正に松毬の様に鱗が整然と並んでいる
本来の松笠焼きです。
鱗がきちんと寝てるので見た目も美しい。
まずは一口鱗から齧ってみます。
美味しい〜。
鱗のパリパリ感が堪んない
然も
身がホクホクで塩味がほんのりと忍ばせてある
もう芸術の領域
鱗のパリパリ感の感覚と身質のホクホク感との
マッチングが素晴らし過ぎて
この不思議な食感を何度も味わいたくなる。
鱗を噛む度に歯に跳ね返ってくるパリッとした
食感の心地よい事
パリッとする鱗を通り過ぎて純白の身質に
深く歯を入れるとハラリと解け崩れる白身
その崩れた身質から淡く寄せる塩味が
ジーンと舌の全面に染み渡ってゆっくりと
広がって行く
其処に美味で満足が充足する
ひと時を見出すのです。
⑪炊き合わせ
聖護院大根と京菊菜
お大根をコトコト炊いて
その大根から滲み出るエキスのみで
満ちる甘味で自身を浸す
甘味が綺麗なまでに澄んでて
大根から滲み出るおつゆが美味しい
その甘味に浸された菊菜が嫋やかに揺れる
味覚を持ち出してくる
味覚自身が淡く舌に寄せて来て
滋味深くうま味が広がる
こう言う味わいは舌の琴線に触れて来て
ジ〜ンと来ちゃいます。
⑫鴨饅頭
鴨挽肉をお出汁で炊いてから求肥で
包んでおかきを唐揚げして蒸したものを
射込んでます。
その上から瀞みが円やかな銀餡掛け
天に山葵の盛り付け
銀餡をスプーンで掬って舐めます。
餡の瀞みが絶妙で穏やかな事
ほんのりと醤油味を泳がせていて
凄く奥ゆかしい味わい
トロンとした銀餡の中に浮かぶ鴨饅頭を
やおらお箸で割いてやると
中から鴨肉のそぼろがホロホロと
流れ出して来て舌を誘惑してます。
一口摘んでゆるりとお饅頭を咀嚼
美味い!
お饅頭を包んでる求肥が無茶しっぽり
舌を抱いてくる
更に奥深く進むと鴨挽肉の甘味がやんわりと
朧げに浮かんでくる
そして
山葵の刺激が鴨饅頭の甘味をグッと押し上げる
この妙味連打に完全にノックアウトです。
⑬お食事
ご飯
牛の時雨煮
雑魚
赤出汁
香の物
一膳目はホクホク艶々の白米に雑魚を山盛り
ぶっかけて実山椒をピリッと感じつつ
ご飯の甘味と対比しながらの美味を堪能
二膳目は甘味にコクのでてる絶品時雨煮で
ふわふわご飯を掻き込んで時雨煮の旨味が
米粒までお口の中で浸透して乳化していく
感触を確かめながら満喫
いつも乍ら嬉しい満足度の高いご飯です。
⑭甘味
蕨餅
星野さんのわらび粉って艶々な感じで
練りたてのものを頂けるので
お餅感が優しくって
きな粉も甘さがピッタリ蕨餅に寄り添ってて
ホント美味しいのです。
⑮お土産
牛の時雨煮