miti4134さんが投稿した鮨 一幸（東京/東銀座）の口コミ詳細

■訪問日 2025.4.26（土）17時半〜19時半

■お料理 お任せ¥60,500税込
お酒含むお会計¥75,000税込

■予約 常連様よりお招きにて

大将のホスピタリティが素晴らしく
優しさとおもてなし度のレベルの高さに
感銘と驚きを覚える。
ご予約時間にお伺い致しますと待合室正面に
工藤大将がお立ちになりお出迎えしてくれて
とても和かな笑顔にて嬉しいおもてなしです。
そして後ほど証明されますが
銀座においても更により磨きがかけられており
研ぎ澄まされた至高の一貫を追求する工藤大将
その明鏡止水なる真摯な姿勢に完成する一貫に
感激を頂きました。

〜〜〜お摘み〜〜〜

❶鯛 明石:山葵 塩

鯛の切り身で目覚める工藤ワールドの
扉が煌びやかに舌を覚醒させてくれる
この一品だけで既に工藤ワールドへと
誘い込まれてしまう。

と言うのも鯛の身質のしなやかさにも
また切り身の断面の滑らかさにも驚き
感じ包丁の威力を巧みに操って斯程に
鮮明に曝け出す切り身の艶かしさには
堪らなく麗しい美味を感じてしまう。
切り口の断面でこれほどの鮮烈な味と
旨みが吠えるのかと思える仕上がりに
此れには包丁までの工藤大将の拘りが
為せる技と感銘を超えて舌に伝播する
驚愕の踊りを見せる鯛のお造りに感嘆。

舌がホントに彷徨いつつ口内に淡白な旨みを
満たして行き其処に潮味と風味と山葵の香り
までが交差する至福の幸せタイムを満喫する
喜びは例えようがないほどのものなのでした。

更に鯛の尻尾までサービス頂いて
この嫋やかなる尻尾の旨みが大変
鯛本体の味わいを昇華させている

明石の激流に揉まれている所為なのか実に淡麗な
しなやかさと言うのはこう言うものかと鯛として
かなりレアな逸品との出逢いを叶えて頂いて舌が
喜んでおりました。

❷赤貝:ヒモ付き

この赤貝の鮮烈な身肉の弾力感！
一口齧った途端に口内を支配する
赤貝の甘味に潮風戦ぐ風味レベル
心地良く靡く憂いの味わいに驚く
良くぞ此処迄仕込みを丁寧に磨き
赤貝を直前まで鮮度保ちつつ舌へ
お運び頂けるとは信じ難しの味覚！

もうね、飛んでも御座いませんよ
こんなん頂けるとは流石はですよ。
香りと身の食感がとても健やかに
伸びつつ流石は工藤大将の眼鏡に
叶う素晴らしい赤貝なのです。
更に驚きが潜んでいて何とヒモ！
スンバラしく鮮烈なコリコリ感が
伴う赤貝のヒモまでをご用意して
赤貝の魅力全部出し切るかの様に
赤貝が泣き叫んでそうな美味しさ
これ程の鮮烈な赤貝も珍しいので
じっくりと味わわさせて頂きます。

然し此処で気がついちゃうのです
赤貝がふわふわとして旨みに甘味
そして潮風が漂いつつ舌を夢中に
させてしまってます。
其れは香りと味覚と食感が同期し
赤貝の魅力全てが程良く発散する
そう言う状況を作り出している為
其れに舌がvividに反応してる
其処は何故なのかと食後に反芻し
良く思い起こせば確か工藤大将が
名刀で赤貝の身をトントントンと
肌理細やかに叩いて解されていた
事を思い出しました。

成る程飾りを身肉に細かく入れて
赤貝の肉汁が満遍なく染み渡る様
仕掛けを施していたのかと今更に
気が付いている自分が恥ずかしい。
でも其処までして赤貝の魅力をね
カウンターに出す直前まで仕込み
満足度を高めようとする真摯なる
おもてなしに頬っぺたはストン！
と落ちまくりでした。

ついでに酒飲みの言い訳を一つ
既にこの２品だけで一合が入り
次のお酒を所望してしまってて
結構お酒が進んでしまう一品の
揃え方にも嬉しくなりました。

あと美観が優れて品を感じるものにて
お猪口と徳利は切り子の作品なのです。
こんな道具で吟醸酒を飲めるとは最高
斯様な環境で酒を酌み交わす事になり
感極まっちゃいました。

シャキシャキッとしてプニプニ感が
新鮮に舌に瑞々しく伝わる赤貝との
出逢いにはホント舌が大喜びしてて
咀嚼した時のシコシコ感と言うのか
グニョって柔らかく解れて行くのも
赤貝の潮風味が靡き大海に育まれた
絶妙なバランス良い旨みが溢れ出る。
赤貝に宿る大海からの爽やかな旨み
純粋無垢な味わいが口内で発散され
その淡い底味が甘味の中で浮き上り
実に美味なる貴重な体験を頂きます。
赤貝は鮮度も突き抜けるものであり
ナチュラルに大海の恩恵を受けての
甘味がこんなにも潜んでいようとは
この赤貝の魅力が全て曝け出されて
赤貝の魅力を再認識させられました。

◉大地

❸キンキのしゃぶしゃぶ:ポン酢

地味深きお出汁にキンキを潜らせ乍ら
しゃぶしゃぶしたキンキをご用意です。
お皿の上には和やかに温められたキンキ
肉肌が妖艶なくらいピンクに染まってる
そのキンキにはポン酢が纏わせてあって
酸味が良く似合いキンキから漲る脂質を
和めながら旨みを彷彿とさせて舌を訪れ
こよなく味わいを深めておりました。
咀嚼を進めるとキンキの身肉から脂質が
ジワッと口内に零れ出し舌を仰け反らせ
堪らない程の美味が膨張しておりました。

❹子持ち槍烏賊のウニ詰め

・白胡麻
・ゆず皮
・穴子の詰め
・山葵

鮨一幸スペシャリテとも言える名品となります。
と言うよりも味覚も香りも食感も全てが調和し
舌を振るわせてしまう絶品との遭遇に感謝です。

子持ち槍烏賊の卵がいっぱい詰まってて甘くて
然も食感の柔らかみがとても良く歯触り抜群に
健やかなる咀嚼感を育てるもの。

基本的に江戸前の古い仕事で丁寧に印籠の如く
代わりに海胆を皮の中に詰める作業を施しつつ
山葵に柚皮の香味を加えて香り高き一品を完成。
海胆にたっぷりと掛けられた煮詰め味が海胆の
珍味と交わり溶け合い高貴な風味豊かに反映し
絶妙な味わいへと展開して行きます。

一手間を惜しまずに皮を剥いた純白の
子持ち槍烏賊の腹を捌いた空洞の中へ
詰め込まれた海胆と共にギュゥ詰めと
なって膨らんだ槍烏賊を輪切りを用意。
一度咀嚼を始めれば絶品の味わいにて
舌が絶え間なく歓喜する名作の誉れを
呼ぶものに高められた一品を痛感する。

さらに咀嚼が甘味をより深めて妙味が囁き乍ら
海胆珍味とのマリアージュを完成させる絶品の
味わいを育んでくるので有る。
槍烏賊は火を入れすぎても硬くなりパサつくし
適度に保湿感も保ちつつ火を入れるのがとても
難易度が高い調理を要求される作品にて其処に
馬糞海胆を詰め直して槍烏賊の中で少し寝かし
甘味旨みを慈しみつつ仕上げには穴子詰めにて
耽美な味覚と香り付けで至高の一品に仕上げて
舌を喜ばせる至福の一品に仕上げておりました。

❺半生ばちこ

此れはかなり吃驚仰天もので
大将が広げてるものは何か？
カウンターの皆様が大将を
ジッと見つめて仕舞い一瞬
目が釘付けとなります。
相当立派な出立ちの焼きばちこ
こんなに面積も厚みもある物が
作り得るのかと思うほどの逸品
信じ難き大きく分厚いばちこを
目の前にしてかなり驚いちまう。

焼いた部分とぱちこの身のレアな
半生のvividな部分の珍味度が
グンと伸びて表面とのギャップが
物凄くクリアな食感となり抜群の
珍味度を募らせている。

然も全く癖も嫌味も無くて
繊維質の純度の高さに驚き
珍味の磨き上げたレベルの
素直な美味さと鹹味に感銘

故にばちこを咀嚼すると
珍味が素直に浮き上がり
サクッと繊維質が解けて
とても咀嚼し易くて美し！

此奴はヤバヤバな美味さ
俄然、酒を欲してしまい
此処はみむろ杉を煽って
仕舞いました。

ばちこの膨らみ厚みにも
感動し豊満な身肉一杯に
詰まってる焼きばちこの
半生状態の仕上げ方にも
感心してしまいました。
ばちこの珍味が雑味無く
引き立つ逸品なのでした。
この珍味の一品ですっかり
一幸ワールドに心酔しつつ
夢中になって仕舞いました。

■□此処からいよいよ握りの開始□■

1.春子鯛

最初の一貫の美味しさが工藤ワールドの
扉を開けて工藤物語における口福紀行が
始まります。

春子鯛は贅沢にも身厚な切り付けと共に
身肉の鮮度の高さに舌が夢中になります。
プルプルンのフワッフワの春子鯛様です。

堪らず春子鯛の握りを掴んでお口に入れ
舌にフワッと着地の瞬間にフッと揺れる

その春子鯛の握りをお口の中での酢飯を
頂きますと春子は芳しさを携えて芳醇に
舎利を包み込んで同時に酢飯が旨み放ち
握りとしての味わいが咀嚼と共に伸びて
乳化が健やかに深まって行くのです。
とても味わい深い進行速度が心地良くて
舎利とネタとの一体感が醸成されて舌が
甘えて仕舞うのです。

鮨一幸で使われるお米は全く鮨一幸の為
耕されている物で北海道樺戸郡にだけの
鮨一幸区画から育まれたゆめぴりか米を
使われてます。
特に樺戸連山から流れて来る雪解け水の
恩恵を受けて格別なお米を専用に育てて
収穫したものを使われてます。
兎角ゆめぴりかは餅米の様に粘性が強く
酢飯には適さないとも言われますが敢て
鮨一幸では粘り強さを有効活用した握り
としてて咀嚼が酢飯からの酸を呼び込み
鮨ネタとの共存共栄により口内調理進み
旨みが増して美味しいの連打が鳴る様な
そう言う咀嚼感覚が滲み出る一貫となり
実に舎利玉と春子鯛の調和がピタ〜ッと
照準が合っ来る、そんな握りにて感銘を
受け続ける一貫の素晴らしさに出会えて
舌は喜びを隠し切れなくなります。
そしてこの最初の一貫はきちんと仕事と
役目を終えるものとして完成度も高くて
初めの握りは口当たりも優しくて更には
嫋やかな春子鯛の身質が大変気品に溢れ
その身が香りの余韻と共に口内を包んで
満足のいく美味しさが訪れているのです。

2.鱵

ニ貫目に鱵です。
旬のネタであり江戸前の鱵の一貫は
かなり嬉しく舌が素直に喜ぶ作品に。

海の貴婦人とも称される鱵らしく
その見目麗しゅう美形が舎利上に
厳かに佇んでおります。

鱵を小手返しの所作が美しい工藤大将の
握るお姿に見惚れながら鱵の一貫が届く
総檜香るカウンターの上にフワリと乗る
鱵が軽くフッと揺れて舎利が沈んだ感じ
その美しく映える鱵の握りを咀嚼し始め
ピリッと生姜が先走っても舌が爽やかな
響きを感じて舎利玉の優しさと酸味香る
ストレートな香味と共に鱵の淡麗な味を
引き出している崇高な一貫に感銘を受け
鱵がお口の中で軽やかにしなやかな舞を
見せてくれて咀嚼は幸多く感じるものに。

舎利が少し踊って鱵のリズムに合わせて
その内に鱵と舎利がハーモナイズしつつ
舎利の乳化を手伝うかと思うとサラッと
舎利と共に身溶けして自然なままに消滅。
このリズム感と淡麗な味わいが一瞬にも
感動を呼びその直ぐ後に儚くも立ち消え
舎利と鱵の美しい合唱は短い命を燃やし
奏でる旨味の清々しさにて儚くも余韻を
残して行きました。

工藤大将の握りの秀でている点の一つとして
そのネタと舎利との間合いの一体性が極めて
突き抜ける点に有るかと感じてます。
咀嚼が進むに連れてネタの粘性や滑らかさや
麿みそしてしっとりとする湿度感が酢飯との
距離を詰めて行き酢飯の粘性や滑らかさ等に
重なり合い互いを意識せずに一体的なものと
なり極上の旨みが舌に訪れる事になります。
その時の感動の瞬間に絶品！旨い！となって
頭から消える事のない印象的で動的な味覚が
脳裏に刻まれて行くのです。

3.炙り鰆

三貫目からジワリ舎利の旨みが浮き上がり
握りに深みが出てくるのが工藤大将の握り
大将曰く今のここからですよ、3貫目から
味わいに奥行きが出てきますからと嬉しい
お言葉を頂きます。

鰆の一貫はストーリー性に長けた握りとの
お話を大将が良く語られます。

鰆は噛むとどんどん味わうが深まると共に
酢飯の酸と鰆の脂質が混沌となって自然に
乳化が速やかに進んでいきます。

鰆は少し皮に軽く炙りを入れており炭火の
香りがほんのり舞い上がり鼻腔を心地良く
擽ぐります。

皮目のパリッとした食感と身のしなやかな
肉感とのコントラストが綺麗に決まるので
咀嚼感が無茶苦茶清々しく麗しさを讃える
そして舎利の酢飯との調和がピタリ決まる
この潔さが胸を打つ感慨深さに包まれての
鰆の一貫の凄さと気品に参ってしまいます。

従って
鰆の一貫は味わいを噛み締める度に深掘り
されて行き薫香が仄かに鼻に抜けて行く時
至福のストーリー性を放ちながら美味礼讃
となり感動する味わいを頂く事になります。

4.中トロ 腹上 大間 定置

鮨一幸の鮪はやはり格別なのだと感じ
改めて印象付けられた握りとなります。
春の時期の定置で漁獲した鮪でしたら
やはりストレスも無く美しい脂質にも
程良い甘味にしなやかな身質が纏って
舎利との相性も抜群の一品に仕上がる
との事です。

やはり鮪自体の個体の鮮度が良く輝き
身質がとてもしっとり感を旺盛に感じ
脂質分がエレガントに佇むトロの身で
その中トロをお口の中に入れた途端に
ロゼ色に艶めく赤身がまさにトロンと
舌の中に蕩けて旨味が深まって行く。

腹上の方の中トロを
そんな気品に満ちた中トロの一貫にて
滑らかにマイルドな肉質感を満たして
味わいはワイルドなまでに吠えてます。
旨味と酸味が舎利との間を行き交うも
その蕩ける旨味がスゥッと消えて行く
喪失感が更に絶品なる美味しさを育む。

お口の中で中トロを咀嚼してる間に
胸が高まるほどの芳醇な香りが漂い
咀嚼し続ける間に寄り添う甘美なる
脂質に感嘆する。
肌理細やかな肉肌に溜息を付きつつ
繊細な身質はシルキーな肌触り感じ
香りはエレガントに余韻を放ち乍ら
舌との触れ合いが艶かしく官能する
堪らなくなりグッに全てを飲み込み
暫し陶酔に溺れてました。

5.大トロ

大トロの方がエアリー感を少し
詰めた施しで握られています。

大トロは丁寧に筋から剥がされ
剥がした大トロには少しの飾り
その飾りも手伝ってトロ身質は
サラリと舌に着地する仕掛け方
多分に大トロの躍動漲る肉感と
脂質の逞しさを巧みに宥めての
気品溢れる脂質感を佇ませての
絶妙な一貫に仕上げております。

その大トロをパクッと放り込む
剥がしの大トロは瞬く間の内に
トロ〜ッと解けて行き舎利玉を
巻き込んであっという間に乳化
咀嚼をするかしないかのうちに
大トロの身質から脂質たっぷり
零れて耽美な美味が口内に充満
大トロは舌を撫でる度に官能し
震えてる舌は止まらない感動で
満たされておりました。

◉七本槍

6.羅臼の蝦夷馬糞雲丹 軍艦:福岡海苔

春は羅臼の蝦夷馬糞海胆での軍艦です。
この時期の馬糞海胆の珍味は勿論の事
更に海苔の印象的な余韻深まる時間に
痺れてこう言う逸品を入手するまでの
苦労話にも花が咲きました。

蝦夷馬糞海胆を海胆の王様とも言える
極上の有明のお海苔で包み込んだ軍艦
ゆっくりとお口へと落として行きます。
蝦夷馬糞らしい野性味のあるほろ苦さ
濃厚に展開する独特の甘美な珍味とが
同時に進行して舌を陶酔の渦に巻込む

海胆を食べ終わった時に余韻が継続し
更に海胆の後にどれだけ長く続くかに
焦点を絞って見つけたのがこのお海苔
このお海苔は他のお海苔より3倍長く
海苔風味が残る代物だったと言う事で
海胆を食べ切った後に余韻が最後まで
残るのがこのお海苔の香りと磯の味で
ストーリー性のあるお海苔を見つけて
巻いた馬糞海胆の軍艦となり故にこそ
この海苔との抜群の相性が馬糞海胆の
珍味を最大限に活かした珍味度を誇る
軍艦なのだと改めて認識致しました。

やはり工藤ワールドの為せる技ものは
奥が深いと痛感した一品でした。

7.炙った喉黒丼

熱々に炙られたばかりの喉黒が小丼で
言わずもがなの旨さは群を抜くもので
コース料理のこの中間地点に位置する
ご配慮も嬉しくなる絶品の脂質感との
舎利の酸味との共有を極限まで楽しめ
コース半ばでの弛みを許さずグイッと
加速させる様な勢いで握りのコースの
中に緩急の面白みを奏でる取り計らい
こう言う考え抜かれた構成にも感銘を
受けてしまいますね。

とってもリズム感が考え抜かれたもの
1,2,3と軽やかに美味しい握りにて
スタートし4,5,6と鮪のインパクト
と共に旨みや珍味を膨らませてからの
喉黒の脂質感たっぷりに舌を甘く誘う
小丼の縦横無尽な振る舞いに圧倒され
舌が震えてしまうほどですが実にこの
タイミングの良さは頬っぺたストン！
となりますね。

そして喉黒の小丼を酢飯と喉黒を箸で
ぐちゃぐちゃにかき混ぜてから咀嚼し
モグモグ噛み始めますと何と言っても
切り立ての酢飯は赤酢の酸味キリッと
シャープに効いていている所に喉黒の
滴っちゃうほどのジューシィな脂質の
甘味がジュワァンと口内で唸りまくり
咀嚼すればするほど酢飯と一体化して
喉黒がどんどん忽ちの内に解けて行き
酢飯と一緒にぐるぐる旨味を振り翳し
舌を陶酔する魅惑の旨味の渦の中へと
一気に惹き込み舌が呆然となってその
迫力ある肉感と脂質感に溺れて仕舞い
一瞬我を忘れてしまうのでした。
もうね、酢飯と喉黒が合体したものの
その乳化の速度感に押されっ放しにて
堪りませんね。
この丼は反則技の一品となりますね。
身厚で脂質満タンの活きの良い喉黒に
酢飯をキッチリ合わせて来られるのに
完璧に降参と相成りました。

8.小鰭

酢飯の酸と小鰭の酸味と塩味とが見事に
調和している小鰭の仕込みが凄いと痛感。

小鰭の仕込みにお酢と塩の配分がどんな
塩梅で締めておられるのかは企業秘密と
思いますが噛んだ瞬間に轟く鮮烈な身の
肉質感と歯応えにシャープに響く味わい
それらがシンシンと口内に降り注ぎ身は
躍動感を増して華麗な踊りを見せながら
舎利を巻き込んで行く一体感の旨さには
かなり絶句してしまいますね。
もう此処迄来ると名物級の小鰭となり
キュッと引き締まってる小鰭の握りは
その身質が程よく切れ味の良い食感を
伸ばして来て口内をスッキリさせます。

兎に角小鰭と酢飯の境界線を感じなく
そのシャープな身質の締まり具合には
酢〆と塩〆のバランスの良さを感じて
小鰭の皮の輪郭がクリアに伸びますし
身厚な肉感はシャープな味わいと共に
爽快な咀嚼感を走らせて来て清々しい
また、
舎利とネタの間合いが見事に馴染んで
絶妙に調和する味わいが舌に訪れます。
とても小気味良い切れ味が嬉しい一貫。

9.墨烏賊 酢橘

綺麗な墨烏賊でストレートな歯応えを感じる
逸品たる本能をあからさまに曝け出している
墨烏賊の肉感がとても潔く感じられる美味さ
其処にキュッと舎利を巻き込んで食感と香り
そして酸味が程良く舞いつつ墨烏賊は旨みを
発揮する。
墨烏賊に優しく大胆に施された数本の飾りが
身の豊満な肉体から醸し出される甘味を助け
舌にゆとりを抱かせる様にソフトに抱き付き
同時に舎利からの粘りと酸味と湿気が程良く
混じり合い極上の墨烏賊の一貫が口内で完成。
そして咀嚼と共に自然に解けて行き甘く乳化。
酢飯の酸と墨烏賊の旨みが素敵に混じり合い
新たに一体感を持った妙味が生まれて来つつ
舌が感動して咀嚼を大変楽しんでおりました。
素晴らしい纏まり方が完成されてる握りです。

◉田中六五

10.鰯 本日のスペシャル！

四年振りに握られる鰯との事でした。
中々良い鰯に巡り合わなくて此処迄
待ちに待った鰯を握ると言う事です。

鰯と言うお魚は個体差も激しくまた、
仕込んだその日のうちにしか使えず
足の速いお魚となりますので中々に
扱いが難しいモノにるとの事でした。
大将曰く命を感じさせたいお魚でも
有り生命の輝きのあるうちに美しく
綺麗に送ってあげたい思いとの事。

更には小骨等も大変多く最小限しか
骨は抜かず骨周りの美味しさも感じ
鰯の身質を極限まで活かす薄切りに
施したものを何枚も重ねて握る事で
工藤大将の意に叶うものが完成して
私達の舌を喜ばしてくれます。

本日の鰯の握りは薄切り3枚付けで
握られておりました。
お口に徐に放り込みますとトロンと
して蕩ける身と舎利があっという間
一気に融合してまるで中トロの様な
艶かしさで口内を彷徨いかつ小骨等
全く意に介さないと言う滑らかなる
食感にて舌を撫でて行きます。
舎利と鰯が見事に一体化した握りは
舌の抱き心地が大変官能を呼び込む
麗しい味覚がどんどん広がる旨みを
育み健やかに鰯の持ち味を堪能して
舌を高揚感で包み込んでくれました。

11.白焼き風煮穴子:塩

以前は甘く煮たものにたっぷりの煮詰めを
滴らせてご提供されていらっしゃったとか。
その頃は噴火湾の穴子をお使いになられて
匂いがどうしても抜け切れず其の後東京で
今の仲買人と出会いが有り西対馬の穴子を
甘く煮込んで味が伸びた所を塩を乗せての
仕様に変えてご用意するスタイルが定着。
やっと思い通りの穴子に近づいているとの
事でした。
但し対馬産のこのレベルの穴子は全体量の
約2%程度しか存在せず入手困難な穴子と
なっているとの事でした。

その希少な煮穴子が白焼きの様相を見せて
穴子の握りの天に純白のお塩がキラリ輝き
凛々しい姿態を見せ付けております。
実に美味そうにフンワリ付け台の上で佇み
落ち着き払って座しております。

穴子は一度煮てから焼かれてます。
この塩加減の塩梅が物凄く良くて
白焼きのフワッとした身質の中を
塩が泳いでいるのではと錯覚する
くらいの塩の馴染み方で口内での
調理が穴子を中心に目まぐるしく
進むのですが
その時にこの塩が穴子に飛び込み
身質全身に馴染んでしまうのです。

ゆっくり摘んで熱々な火入れ加減を直感し
ポトリと舌に穴子の握りを逆さ落としして
ハラハラと崩れ落ちながら一気に解けつつ
口内で甘い脂質とカステラ食感の繊細なる
舌触りに狼狽えながらこの一貫こそが〆に
相応しい工藤ワールドの幕の閉じ方だなと
つくづく感慨深い瞬間を迎えてしまうので
有ります。

而して咀嚼が進むと穴子の握りの
全体から程よく穴子からの甘味を
後追いするかの様にスッと底味が
浮き上がって来てジワ〜ッとする
塩加減の施しが穴子の甘味旨味を
グッと持ち上げて実に絶妙な味の
バランスを完成させておりました。

とっても名残惜しく煮穴子の甘みの耽美な
余韻に後味を引っ張られつつ満足感が大変
健やかに育まれて嬉しい一貫なのでした。

12.玉

玉子生地の作り方は10年間変わらず一貫して
同じやり方を踏襲されてるとの事。
然し味覚は途轍もなく進化しているのです。
同じ生地を扱っては居ても塩砂糖の配分とか
生地に与える熱量や冷ます時の温度や時間等
様々なやり方を試行錯誤しながら鍛錬を重ね
今の美味しさが有り常により良い味覚を追求
探り続けているとの事でした。

故に工藤大将の世界観の一端を担う卵焼きは
職人に可能性を教えてくれる焼き物なのです。
常に進化を要求して焼き続けるからこそ玉は
鮨店の本当の意味で実力が試されているとも
言われるのだと感じ鍛え抜かれ洗練された玉
だと痛切に感じるものが込められた完成品と
感じる絶品な味覚を実現されておりました。

13.追加:鯵 浅葱

本日は鯵の入荷があるとの事にてこの時期に
珍しくご用意に預かり追加で所望する事に。
初夏を迎える頃が旬の鯵は未だすこし若いと
思いますが大将が薄く切り付けた身の美しい
ピンク色の肉肌を見て驚愕しちゃう。
もう見た瞬間にワクワクドキドキもんですね。
然も血合いなんかも薄らと乗って来ちゃって
この肉肌のエロさを誇るピンクの肌色を見て
舌が俄然唆られてしまっているので有ります。
いや、凄いものを見てしまいました。
そしてキュンと握られた鯵の握りの完成形を
目の前に見て鯵に催促されるままにお口へと
放り投げてやります。
一つの咀嚼が生む感度鮮明なる脂質の優しい
肉肌から垂れ流される至福の旨みが抱き付き
一回の咀嚼毎に切実に感じる舎利と一体的の
美味のメロディが奏でる陶酔感が口内を舞う。

味を飲む
息を呑む
そして
香味舞う

何とも表現し尽くせないもどかしさも有るが
咀嚼して悔いの残らない満足感が満ちており
出逢えて本当に良かったと思える悔い残らず
の素晴らしい一貫との出逢いに感謝でした。

14.追加:鉄火細巻き

15.追加:干瓢細巻き

最後に巻物でサクッと甘く締めて終了。

鮨一幸にまた来たいと思わせる工藤ワールドの
世界観に浸る機会を多くの鮨好きな方々にも
巡り合って頂けることを祈願します。
研究に研究を重ねた素材の在り方を掘り起こし
長年の鍛錬で鍛え抜かれた技ものの握りとの
味覚の調和が織りなす至高のお料理。
単に工藤大将の拘りの為だけに握りを極めて
いる訳ではなくより多層な方々との出会いを
求めて慈愛を込めた握りを追求されてます。
そして未だに微調整を繰り返しながら究極の
一貫を目指している事と思います。
工藤大将に終着駅はどこに有るのかと言う事を
聞いてみたい気がしますが恐らくは常に進化を
続けている工藤ワールドは未だ先の先を見つめ
更なる昇華を目指して進歩し続ける事かと思い
握ることを閉じた時に何を大成したのかが漸く
判明するのでしょうか。

出来れば一人の鮨好き爺いとして何処迄も通い
鮨一幸の世界観にお付き合いさせて頂ければと
存じます。