3回
2017/06 訪問
【再訪】秋田の魅惑的な天ぷら『巻海老の微妙な揚げ方に旨さの違いが・・・』
やっぱり秋田の天ぷらみかわさんは、何かしら雰囲気がいいね。これは旨い天ぷらはもちろんですが、きっと大将の笑顔と女将さんの内助の功であろう。
秋田という街は、底知れずなにがしかのインパクトを持った料理屋さんの集合体のような気がする。たまたまお隣に座っていた年輩のご婦人達に秋田は素晴らしいところですねと力説しても、最初はそうですか~みたいな反応。しかし、徐々に県外の小生から言われて少し納得された様子。やはり、いつもの生活の場では比較のしようがないのかも。
今日は先日とは違うコースをお願いします。
■注文 おまかせ6500円
・巻海老(2匹)
~最初はちょっと生っぽくジューシーに揚げてあるので、甘く蕩けるよう。次は、しっかりと火をとおしてあるのでパリッとした食感。大将によると海老は火をとおしても旨い魚なので、また違った旨味を感じるとのこと。確かにまた別物と思えるくらいにどちらも旨い。
・巻海老の頭
~カラリと揚げられてサクサク。やはり塩が旨い。
今回は天ぷら粉用の箸がなぜ太いのかという疑問。天ぷら粉は水分を含むとグルテンになる。これはイコールうどんのこと。従って天ぷら粉に水分はいらないのでだまにならないよう太くしているとのこと。大将はみずから太くて使いやすい箸を作るので、独自のいわゆるマイ箸らしい。
また、だし汁の作り方をお聞きしましたが、ちょっと企業秘密かも。厚い鰹節と薄い本枯れ節を使い分けており、一番だし100%プラス一番だし10%。濃くのなかにあっさり感がでるようでお店の色になっているのかな。小生に教えて頂くレベルですから、さらに奥深い何かがあるはずですが。
・真こち
~こちは、独特な濃い味のする魚なので、大好きですね。
・紫アスパラガス
~穂先は甘く塩があう。根の方は出し汁があうとのことだが、その通り。
ここでお酒にするが、新政酒造で唯一の定番生酒である「NO.6(ナンバーシックス)」に。6号酵母の魅力をダイレクトに表現することを目的に醸造されたお酒とのこと。本来、日本酒の生酒は冬の新酒から翌年の春先まで、つまり気温が低い時期のみ出荷するのが妥当らしいので、無殺菌で酵素も失活されていない日本酒の生酒は、6度以下、つまり冷蔵庫の中でしか品質を維持できないお酒。
・雲丹の大葉巻き
~ちょっと火が入り過ぎてるような気がするかな。大将の考えるところとは違うと思いますが、もっとトロッとした食感にして頂く方が旨いと思うが・・・。
・キス
~これまた綺麗な透明感のあるすっきりした味わい。江戸前だなと思える逸品。
次は、秋田県天寿酒造の鳥海山「伝口切辛」。味わいは電光石火のように切り口爽やかな辛さを持っており、いつでも家庭で飲めるお酒がコンセプトらしい、庶民的なお酒。
・穴子
~いつもながら、とにかくさっくりとした食感と天ぷらならではの味わいが素晴らしい。確か対馬の穴子だったと思いますが、本当にどこに行っても対馬の穴子は評価が高い。いつもは博多で刺し身で頂くので、天ぷらも嬉しい限り。
・椎茸
~嵩が高く肉厚で旨味を閉じ込めてあり、ジュワッとした食感がいいな。
・かき揚げ
~前回はかき揚げの出し汁漬けだったので、今回は純粋にかき揚げを味わいます。う~ん、結局どちらも美味しかったな。
・デザート
今回は小生以外のお客様が2組でしたので、大将とは軽くお話するだけだったが、余計に天ぷらを揚げるときの集中した姿を見ることができた。やはり、真剣勝負なので、話しかけるタイミングを学ばせて頂いたようです。
帰りに、明日は福島の小判寿司に伺う話をすると、大将もよくご存知とのこと。やはり一流の料理人は交友関係が広いですね。最近伺った料理屋さんには何がしかの縁がある方がいるが、いつも不思議なものだなと感心させられる。
それと、みかわ是山居の大将がNHK スペシャルに出演したとのことだったが、見逃してしまった。「みかわ是正居」早乙女哲也さんと「すきやばし次郎」小野次郎さんの番組、本当に残念。
【PS】
翌日、小判寿司の和知さんとは北嶋さんの話題で盛りあがったので、これまた美味しいお酒が飲めましたよ。よろしくお伝え下さいとのこと。
ごちそうさまでした。
2019/08/16 更新
2017/05 訪問
秋田、天ぷらだけで勝負する『大将の心意気に感心するばかり・・・』
贅沢にも、小生一人だけに天麩羅を揚げて頂くことに。予約して伺いましたが、ラッキーなことにお客は小生のみ。ですから、ゆっくりと生ビールを飲みながら、熱々の天麩羅を頂くという贅沢な時間を過ごすことができた次第。場所は、秋田駅西口から歩いて4~5分くらいでしょうか。
大将は、東京門前仲町にある老舗天ぷら屋「みかわ 是山居」の店主・早乙女哲哉氏のもとで約4年修業してきた方。天ぷらの名店から暖簾わけしてもらえるとは大変なことであり、更にオープンの日には早乙女氏が自らお店に駆けつけて実際に天ぷらを揚げたらしい。
その日は、元々早乙女氏が来る予定は全くなかったらしく、いきなり早朝に早乙女氏から「今から行く」との連絡あり初めて知ったようだ。弟子の門出を祝いに駆けつけたのだが、終日天ぷらを揚げる手伝いしたあとは最終の新幹線でさっと帰って行ったとのこと。ちょっとかっこ良すぎる。
注文は5000円のコースをお願いする。まずは、生ビールで喉を潤すが、さっそく春の山菜としてはそろそろ終わりとなるタラノメが揚がってきた。綺麗な形はそのままに油もしっかり切れている。余計な水分が抜けてタラノメらしい歯触りと食感が嬉しい。
お次は、巻海老(車海老)だが、頭と身の部分を分けて揚げてある。身はふんわり、頭はカリッと揚げ方が違う。お見事。天ぷら屋「みかわ 是山居」でも、海老は芯だけをレアに仕上げて “甘み” を極限まで引き出すらしいのでしっかり受け継がれている。因みに、車海老は成長とともに呼び名が変わる。小さなものから「小巻」→「才巻」→「巻」→「車」→「大車」と変化していく。こちらでは巻海老だが、お鮨では才巻くらいが調度良いのかな。
地元のお酒をお願いすると「天の戸夏田冬蔵」が・・・。「フレッシュさが残る味わいの純米大吟醸で、きれいな甘さと奥底にわずかな野性味が余韻として残る仕上がりで、春の野の息吹の山菜の天ぷらとよく合う。」蔵元のコメントからするとナイスなチョイスかな。
それからアナゴがまた素晴らしく、揚げたてをさいばしで割ると香ばしい湯気が一気に立ちのぼる。ただでさえ、大好物のアナゴなのでパリッとした食感と濃厚な甘味が香り立ち、旨すぎて目眩がしそう。
次は、空豆。これがまたいいんだな。最近「銀座みを木」で焦げ目がつくくらい焼いた大きな空豆にちょっと塩かけて頂いたが、めっちゃ旨かった。串で刺した空豆の天ぷらは季節ものらしく春を感じる逸品であった。
天ぷらを頂きながら、大将と色々なお話しを・・。大将は16歳から料理の世界に飛び込み、26歳の時に、早乙女氏の著書を読んでいたく感動し、意を決し「みかわ是山居」の門を叩いたとのこと。しかしながら、よく早乙女氏から弟子にしてもらえましたねという問には「断られるはずがない」と思っていたとのこと。岩をも穿つ熱い思いは天ぷらの天才にも通じるんですね。いい話やな~。
次は、キス。外側はパリッ、内はふんわりとした上品さ。小生はハゼが大好物であり、ややキスと似た上品な白身が旨いが、大将によると秋口に使うこともあるとのこと。是非チャンスがあれば頂きたいものだ。
若鮎は、キリッとした姿にパリッとした食感が素晴らしい。見た目も綺麗な逸品。最後は、ウドの天ぷら。ウドと言えば白いイメージだが、こちらは鮮やかな緑色。これが自然なウドの色合い。
最後は、かき揚げか出汁茶漬け。女将にどちらがお薦め?悩みながらも、かき揚げはよくあるので出汁茶漬けを選択して頂いた。出汁は、鰹節と昆布だしのブレンドらしく、てっきり魚の骨からとった出汁かと思えるくらい濃い目で旨かった。
天ぷら屋さんと言えば江戸前料理ですが、大将によると天ぷら専門店のほとんどが東京にあるらしい。江戸前料理は、天ぷら、お鮨、蕎麦と和食のルーツでもあるから奥が深い。しかしながら、天ぷら単独で商売するのはなかなか難しいらしく、地方の専門店も結局は鮨や他の和食を加えて幅を広げ集客力をあげるようになってしまうようだ。
銀座ならまだしも、人口の少ない秋田で天ぷらだけで勝負する大将の勇気に感服した次第。また女将さんもタイムリーに話に加わって頂き楽しい時間を過ごさせて頂いた。その後、丁寧なお礼のハガキまで頂き感謝する次第。秋田のワクワクするような天ぷら屋さんであった。
ごちそうさまでした。
2017/09/24 更新
いきなり【休業】と表記されていますが、店舗建て替えのため9/4からお休みして11/20から再オープンの予定ですので、ご安心下さい。(大将談)
やっぱり秋田の天ぷらみかわさんとは、何かしかの縁があるようだ。今回予約の連絡した際には、奥さまから「すいません。残念ながら満席なんです。」と気落していると、すぐさま「良かった。キャンセルがでました。」と明るいご返事を頂いた次第。
今夜はサッカーワールドカップ予選、大事なオーストラリア戦があるので、開店早々に伺うことに。本日は一番乗りらしく大将と奥さまとお話する機会が。
やはり、本日の話題はお昼に伺った山王のイタリアンのお店で「みかわさん、お店建て替えるらしいですよ。」との会話から。大将に聞くとお店を建て替えるので、3ヶ月ほど休業されるとのこと。ということは今週末が最終営業日であった。なんとラッキーなことか。やっぱり縁があるのかな。
話してばかりでは、ご主人が天ぷらに取りかかれないので、前説はこれくらいで生ビールを注文する。最初にちょっとした摘まみが出てきた。
・酒肴豆(枝豆)
~普通の枝豆との違いがちょっとわからないかな。
・本マグロ(八森産)
~八森産の本マグロは初めて頂きます。軽い赤身のマグロだが、あまり頂いたことがないような食感。
・蓴菜
~蓴菜に軽く酸味のある味付けした1品。お酒にはよく合うんだよな。
■注文 おまかせ7500円
・車海老(天草産)
~前回は、2匹の車エビの揚げ方の違いによる楽しみ方。今回は工夫を凝らした車エビの楽しみ方。まずはシンプルにちょっと生っぽくジューシーに揚げてあるので、甘く蕩けるよう。天草は車エビの産地なので、改めて車エビの旨さを認識させられた。
ここでお酒にするが、小玉醸造の「太平山天巧」。
~大正2年から酒造りを続ける小玉醸造。旨味とキレ味の太平山の特長は生もと仕込みによるものらしい。天巧とは自然天然に咲しめられた天巧の妙味という意味で命名され、リンゴのような香しい芳香と抜群のキレがある。ANAのファーストクラスで提供されている逸品らしい。
・車海老の頭
~カラリと揚げられてサクサク。やはり塩が旨い。
・車エビの大葉包み
~これはちょっと趣向を変えた初めての天ぷら。毎晩、なにがしかの魚の刺身で晩酌している小生としては、必ず刺身のつまはミョウガか大葉ですから馴染みの味わい。これは合うと思うな。
ここで大根の話に。出汁にいれる摺り大根は青森産らしい。なぜか?地元の大根は水っぽいらしく出汁に合わないらしい。確かにしっかりとした食感が残る大根なので薬味としてよりも存在感がある。
・真こち(秋田産)
~こちは、独特な濃い味のする魚なので、大好きですね。先週は、札幌で八角を頂いたが似たような姿形に白身の味わいがあるが、こちの方が身が締っている。
・紫アスパラガス
~穂先は甘く塩があう。根の方は出し汁があうとのことだが、その通り。揚げ方も穂先は軽く、根の方は堅いのでしっかりと焦げ目がつくくらい、繊細さが光る。
次は、新政酒蔵の「やまユ」
~ラベルがピンクで綺麗だが、お酒の名前が読み取れないくらいに薄い印字。飲み口は滑らかで味わいはフルーティーな感じ。独特な酸味を感じるがそこまでしか表現できない。気になるのは、裏ラベルに「お客様におかれましては、さらに貯蔵しお好みの味に育てるもよし」と記載されているので、寝かせると旨くなるのでしょうか。奥さまからはちょっとお高いですがと優しいアドバイス。
・雲丹の大葉巻き
~前回、ちょっと火が入り過ぎてるような気がしたが、今回はトロッとした食感が残り安心した次第。雲丹に火を入れるのはなかなか難しいでしょうね。さすが、あ・うんの呼吸で一発回答。
今度は休業中の話題に。「その間は何するの?」との問いには、主に東日本の同年代の天ぷら屋さん行脚を予定しているとのこと。そうですよね。こんな機会は一生ないからね。奥さまも一緒に食べ歩きするのではなく、大将だけの人脈形成の期間らしい。奥さまは子供と留守番らしいが、大将の将来がかかる大事な時期ですからやむ得ない。言うなれば将来のための投資であり充電期間。
それに、特筆すべきは地方の卸業者に漁師を紹介頂き、個人的なルートを持つことも考えているとのこと。小判寿司の和地さんがやっていることと同じである。やはり、これからの料理人は信頼できる目利きの卸屋さんだけでなく、自ら素材を仕入れる時代になってくるんだな。リスクは高いがそこまでやらないと一流ではなくなる時代かも。個人レベルの流通革命であろう。
・スミイカ
~イカの子供。柔らかく今の時期にしか頂けないような1品。捌くのも大変だろうなと思う次第。鮨屋さんの新子のようなものかな。
・キス(秋田産)
~これまた綺麗な透明感のあるすっきりした味わい。江戸前だなと思える逸品。時期がきたら、是非東京湾のハゼを使って頂きたい。ハゼの天ぷらが大好物なもので。
・むかご
~懐かしい、いい香りと味。昔は野山でたくさん採れていたもの。ご飯に炊き込むむかごご飯もまた旨い。ちょっとホクホクした食感と粘りのある舌ざわりがやはり芋類だと感じさせる。
次は、秋田酒蔵の「ゆきの美人」。
~小さな蔵元だが、最新鋭の設備で年間醸造を可能にしているとのこと。上品でかつフレッシュな香味があり、後味もいい味わいは飲み口爽やかな辛さを持っている庶民的なお酒。因みに、大将はあまりお酒は飲めないらしく、もっぱら奥さまが飲み役らしい。お酒の横に奥さまに立って頂き写真撮影したが、あらためてお酒の名前とおりの秋田美人である。
・穴子(対馬産)
~いつもながら、とにかくさっくりとした食感と天ぷらならではの味わいが素晴らしい。箸を使った切り方がお洒落でちょっとした演出としては解りやすい。本当にどこに行っても対馬の穴子は評価が高い。いつもは博多で穴子刺しで頂くので、天ぷらも嬉しい限り。
・椎茸
~嵩が高く肉厚で旨味を閉じ込めてあり、ジュワッとした食感がいい。
・芝エビのかき揚げ
~今回も純粋にかき揚げを味わう。出汁がちょっと濃く感じたので、いつもの醤油ではないように感じたが、大将に聞くのを忘れた。
最後に、大将はある有名な大企業経営者の公演を聞きに行ったらしく、参考として小生の企業人としての仕事の取り組みかたや考え方も聞かれることに・・・。話ながら思ったのは、どんなに住む世界が違っても、学歴や仕事が違っても、ベーシックな考え方や取り組む姿勢は一緒ですよねという結論に至った次第。(ちょっとざっくり過ぎるかな。)
こんな前向きな話をされる職人さんはなかなかいない。目指すところが高いので、やはりこれからの秋田を引っ張る存在になっていくのでしょうね。北嶋さんといい、小判寿司の和地さん、粋・丸新の熊倉さんといい、地方を拠点に地元の良さを情報発信しようとする試みに、いつもこちらが勉強させられる。こういう地元を大切にする職人さんとお話するのはワクワクして楽しみで仕方がない。
秋田は地方都市ながら料理人のレベルは高いようなので大変でしょうが、陰ながら応援してます。いつもながら、楽しく有意義な時間をありがとう。今からサッカー日本代表をご夫婦の分まで応援してきます。(結果はお陰さまで2-0の勝利)
ごちそうさまでした。