2回
2017/10 訪問
確かなクオリティー
六本木から移転してきた店。六本木時代は小いわという店名だった。随分前の事だが、
京味からの独立店でもある。
価格帯少し上げてみました・その2。ここは昼は¥1万のコースのみとなる。それにしても
行く前に場所を再確認したら先日行った奥田の真向かいではないか。この辺、あまり
飲食店がないとか書いちゃったよ(-_-;
店は3Fにあるのだが、待ち合わせの人達が結構いる。しかし、皆さん、9Fの近藤に
吸い込まれていった。鮨とフレンチもあるが、どこも有名な店らしい。
入口では既に人が待ち構えていて、店内へ。ガラスで浮いたように見える廊下。その横
に個室もある。白くて明るいカウンター。高い天井がアール・ヌーヴォー調に曲線に
なっているのが面白い。目の前には印象的な掛け軸があるが、月と虫籠で10月の物だと
分かる。端にはガラス?で仕切られた焼き場もある。
〇高砂 純米大吟醸(100ml) ¥1620
飲んだ後に豊潤な香り。メニューではこれが一番高い酒で意外に思ったのだが、どうも
量が少ないと思ったら、ちゃんと100mlと書いてあった。一合¥3000クラスの酒か。
道理で。
水もすかさず提供されるが、FUJIだった。普通の水ファンとしてもこれは嬉しい。
〇昼のコース ¥10800
・先付(茶碗蒸し)
茶器みたいな容器。上にブラウンマッシュルームのすり流し。下の説明が覚えられ
なかったが、特に具は入っていなかった。
カウンターには黒い鉄板のような板が置いてあるのだが、訊いてみると石製だった。
隅に小熊と彫られている。ヒマラヤ産?で建材に使われるそうだ。
・椀(ホウボウ、焼きナス、大黒シメジ)
説明が無く置いていかれたので、おやっと思ったのだが、カウンター内で作業をして
いた大将が手を止めて説明してくれた。焼いて香り付けしたナス。ホウボウも美味しい
が、大黒シメジもぷりっぷりだ。
・向付(クエ、しめ鯖、ケンサキイカ)
最近は薬味が大量にある店も多いのだが、シンプルに醤油で。ホウボウに引き続き、
魚の質がいずれも高い。後で知ったのだが、熟成が売りのようなので、やや寝かせて
いるのかも。
〇うまからまんさく ひやおろし ¥864
2杯目は一番安い酒にしたが、これも一合¥1500クラスだ。
大将はカウンター内で一心不乱に作業していて、饒舌なタイプではないのだが、訊くと
きちんと答えてくれる。すりこぎの棒が何だか凄そうだったのだが、山椒の木だった。
・八寸
(鰆、京都産川エビ、京都産黒豆、きぬかつぎ、山口産無角牛、フルーツほおずき)
盛り合わせという説明だったが、まあ八寸だろう。汁っぽいエビは好きでないのだが、
これはそんな事もない。一つ一つの食材の質が高いねぇ。きぬかつぎの上には田楽味噌。
黒いのは生コショウ。牛の部位はサーロイン?
どうやら今日も貸し切り状態のようだ。この店は一見客には中盤慣れてきたところで
話しかけてくる一番多いタイプのアプローチ。牛のところで大将が見島牛の名前を出して
いたのだが、迂闊にも見島牛が山口産なのを忘れていてスルーしてしまった。どうしても
見島牛が食べたくて、ボニュの2周年に期待してマイレビュアーさんと日程の相談まで
していたのだが…(斜め上すぎる軍鶏だった)。
・焚合わせ(小カブ、ばちこ、京菊菜)
小カブが何とか造りと言って花の形をしているのだが、覚えられず。ばちこは干し魚
かと思っていたが、ナマコの干物(くちこ)だった。やや苦みのある菊菜が全体を
締める。
・食事(岩手産松茸と秋刀魚ご飯)、香の物、留め椀(貝)
う、美味い…。このご飯にはやられた。しっかりと香る松茸、サンマは寝かせていて
旨味を増大、塩気がちょうどいい。どうも割烹の炊き込みご飯は食材ありきな感触を
覚えていたのだが、これは炊きあがりが美味しくなるように計算されているご飯だ。
全部で3杯、と量は多くない。香の物も3種類あって、中央の物は豆か何かだと思ったが
忘れてしまった。
・甘味(栗)
説明が覚えられなかったのだが、栗とミルクを練ってエスプレッソをかけたもの?
それぞれの風味が素晴らしい。栗スイーツの店で行列が出来るレベルだ。
最後はエレベーターまでお見送りいただいた。
□総評
行った時季が良かったのかもしれないが、全体的に既知の店より少しずつクオリティー
が高い。あまり遊びの入れにくい和食でこれは相当吟味しているのではないか。大将は
結構な食材マニアであるらしい。再訪はもう確定。この店、かなりの穴場なのでは?
顔を覚えてもらうと、より快適に過ごせそうだ。
高砂 純米大吟醸(100ml) ¥1620
先付(茶碗蒸し)
椀(ホウボウ、焼きナス、大黒シメジ)
向付(クエ、しめ鯖、ケンサキイカ)
うまからまんさく ひやおろし
八寸(鰆、京都産川エビ、京都産黒豆、きぬかつぎ、山口産無角牛、フルーツほおずき)
焚合わせ(小カブ、ばちこ、京菊菜)
焚合わせ(小カブ、ばちこ、京菊菜)UP
食事(岩手産松茸と秋刀魚ご飯)、香の物、留め椀(貝)
岩手産松茸と秋刀魚ご飯
甘味(栗)
10月の掛け軸
2017/10/17 更新
小雨のぱらつく中、歩いてきたがSONYビルの解体が終わっている。これから建設
フェーズだが、来年には出来るようだ。銀座SIXもそうだったが、予算のある所は
スピードも速い。
相変わらずこのビル(坂口ビル)の1Fは混んでいる。10分前だが上に上って席に
着くと5分前だった。既に先客がいる。実はこの月はこの日しか空いていなかった
のだが、TVで紹介されたのと、昼は2組ぐらいしか入れないようだ。
2月の掛け軸は寒椿。白いのは雪だった。
〇七田(しちだ)(100ml) ¥1080
ラインナップは前回からがらっと変わっていた。税抜きで¥1000~¥2200。いずれも
この量だ。七田はメモに濃いと書いてあるがあまりよく覚えていない。それにしても
日本酒は割と独特な読み方が多いので大変だ。
〇昼のコース ¥10800
・先附(氷魚 木の芽酢)
コマイじゃなくて鮎の稚魚です。釜揚げ。鮎の香りはしない。これに叩き木の芽と
おろし。おろしはやや甘く、後から木の芽が香る。
・椀(明石産真鯛のみぞれ薄葛仕立て)
鯛の他は桂剥きにした椎茸素麺(!)と梅京人参。梅人参は京都の店でも出て来たから
定番のようだ。巻いてあるのはウド。椎茸の食感が面白い。鯛ももちろん、良い物だ。
・向附(長崎産九絵、和歌山産鰤)
この鰤の色!切っている最中から凄いいい鰤だと分かったのだが(ぬちっと切っている
音がする)、酸化するので直前に身から外すそうだ。九絵は2~3週間寝かせて。手前は
うぐいす菜。この時季に収穫するカブの一種のようだ。醤油は酒を混ぜてある。醤油の
方が加賀産だったかな?山葵も鮨に使うものよりまろやかに、という事で但馬産。
この一皿にも大将の食材マニアっぷりが発揮されている。下はワサビ菜。
〇ちえびじん(100ml) ¥1080
次の半合へ。
・焼八寸
(鯧西京焼き、山口産無角牛ヒレ、百合根、筍、蘇、ドライトマト)
焼八寸って何だろう、と思ったが単に焼物中心の意味らしい。鯧、これはunicodeで
ないと出せないのだが、マナガツオ。生胡椒は前にも食べたが、黒胡椒みたいに辛く
なりすぎないので肉に合わせるのに理想的かも。この付け合わせがオオタニワタリだった
らしい。初めて聞く名前だがシダ植物??普通に茎野菜っぽかったが…。中央はメモが
読めないけど百合根を使ったもの。下はユキノシタでこれも食べられる。ドライトマトは
甘みが優る。ガチガチに硬くないが、蒸してあった。見た目もきれいだ。驚きの蘇は
中世には廃れた古代日本の乳製品。固めているだけなので、チェダーチーズっぽくは
ある。
牛が出たところでHPに告知バナーもあった見島牛について探りを入れてみた。そもそも
ボニュ以外に食べられる場所があるとは思わなかったのだが、争奪戦な上、牛の身体も
小さく、入っても2~3kgとのこと。それにしても見島牛の食べたさよ…。どっかで2万
ぐらいで食べられるとこないですかね?(^^;
・焚合(鰆の香煎揚、白髪葱、京菜種)
菜種というか菜花か?下によもぎ麩、上から黒七味をかけて。香煎揚というのはおかき
を使っていて晴山で出て来た時は非常に驚いたのだが、ちゃんと技法としてあるらしい。
インパクトがあるのだが、あまり多用するものでもないのかな?出汁も飲みたかったが
自重した。
・食事(白御飯、鱒之介、蕗味噌、留椀、香物)
まさかの白御飯!?と思ってやや失望したのだが、そこはやはり、ただでは終わらせ
なかった。香の物の山芋がおいしい。1杯目を頂いた後、お代わりをすると何か取り
出してかけているぞ…?山椒の入ったオイルか!オリーヴオイルみたいな旨味があると
思ったら米油だった。おこげを作り、燻香が漂う。3杯目はやにわに鰹節を取り出して
削り始め、これを山葵?と共にかける!色を見れば判るが、血合いと硬い部分は全部
取り除いて小さくなった鰹節だった。
・甘味(ほうじ茶嶺岡豆腐)
豆腐と言っても牛乳と葛で作った物。上はグラニュ糖だが、黒糖のように香ばしかった。
また煉りだが、もうこの店、煉りを極めていると言っていい。
最後に本日のお品書きが出て来た。
エレベーターまでお見送りしてもらうが、ここでショックなお知らせが。4月から昼も
夜と同じメニューになるそうだ。ほとんどの人は昼でも夜メニューを頼まれるそうで…
(^_^; う~ん、厳しいな。夏も行く予定だったのだが…。行くにしても当分先の事に
なりそうだ。