32回
2021/07 訪問
駿河湾の豊熟は杉山氏の掌で悦ぶ
本鮪の中トロとハタ
仕入れ先を変更されたお肉。長崎とのことなので、おそらく雲仙かな?ランプ部位です。炭火にはやはり赤身が合う!付け添えの野菜はオクラと茄子です。
菊川の天然スッポンとクダ牛蒡。配膳する直前でひく山椒の香りが効いておりました。と言っても、スッポンの地味も強い。さすが天然!
卵黄が崩れ落ちます
ハマグリです。モロヘイヤの粘り気、黄身酢の爽快な酸味、トロミを付けたハマグリの出汁が三位一体。しょっぱなからKOでした。
藁科川の天然鮎を一時間ほど天日干し。無駄な水分が抜け、炙るとまさにアユチップ。これはヤバイ。何枚でもいただけちゃいます。
稚鮎よりは大っきくなっちゃっているかな。アユチップにするには丁度良いサイズかも。
天然スッポンのゼラチン質。鶏の皮付き胸肉みたいですね。コクのあるスッポンの汗が舌を愉しませます。まさに愉悦。
さてさて、中身は何でしょう?
擦り下ろした新蓮根に炙り唐墨が乗っかります。蓮根汁の澱粉のトロミと唐墨の塩分がマリアージュ。蓮根って、こんなに美味しかったんだ、アハッ\(//∇//)\
蓮根の澱粉の自然な甘味と、炙った唐墨の香ばしさ、その塩味の三位一体に悶絶
お造りの薬味です。左からお醤油、檸檬の加減酢、塩です
ハタのお腹部位。塩でいただきます。このハタの脂は旨味が充満。地味と滋味の相乗効果に悶絶。間違い無く今夜のナンバーワンです。
ハタに塩と山葵を乗っけて、檸檬の加減酢でいただきます。ウンマイ。朦朧とするような旨味、、
黒ムツの炙り。ハタをいただいた後なので、その違いは一目、じゃなくて一口瞭然。ハタよりはメタボかも、アハッ\(//∇//)\
コリンキー、三杯酢、摺胡麻のどれもが無駄に主張し過ぎない。完璧なハーモニー。異なる多様性を相乗させるワザに感動します。
白ナスのかき揚げ。薬味は白味噌です
白ナスです。ナスと油は相性が抜群。
甘鯛のカマ部位の炭火焼き。炭火でじっくり炙っているので、無駄な脂は無く、蛤や鱧のお出汁にとろみを付けた餡が優しく身を包みます。揚げたウロコの食感の変化も楽しく、これだけでお酒が一合、いけちゃいそう。
甘鯛の中の甘鯛
炭火で炙ったズッキーニ
黒ムツの炭火焼き。薬味は実山椒と山葵と大根おろし
黒ムツの身はこんな感じです。見てくれはゴツいけど、白身はFFのお姫様のように可憐
魚は皮が美味い。文句無しの美味です
朝どれの枝豆の摺流し
煮えばなのお米はウンマイ
オクラのネバネバが好き
鱧のソボロと甘長唐辛子の混ぜご飯
香の物三種
鱧ソボロと甘長唐辛子の混ぜご飯に卵黄をトッピング
お椀も全く手抜き無し
二膳目のご飯。ランプ肉の炙りです
鰯が入りました。青魚のコクが添加され、生姜や胡麻の香りが引き立ちます
浜名湖の青さと自家製辛子味噌の鱧出汁掛けご飯
お焦げが好き
わぁ〜い。桃です。今が旬の山梨の本白鵬。アンマイ!
トウモロコシの葛焼き。表面をカラメリーゼ。メイラード反応が食欲をそそります
お抹茶を目の前でたてていただき、今宵も終幕
たまらず地酒にシフト。杉山氏の推しの森本酒造さんです
二本目の地酒です
さらに三種目の地酒
四種目の地酒。初亀の赤ラベルとは珍しい
五種目の地酒
六種目の地酒。やはり最後は焼津に敬意を評して磯自慢!
お酒の表メニュー
やはりエビス
箸置きはスルメイカです
焼津のゆるキャラ、やいちゃんです
歩いて行く途中の神社です
2021/07/25 更新
2021/05 訪問
駿河湾の天啓は杉山氏の掌で語る
土曜日の夜です。
焼津です。
静岡のホテルにチェックインを済ませ、在来線で焼津に移動。
急に気温が下がり始めます。長袖のボタンダウン一枚なので、ちょっと涼し過ぎるかも。
ここで風邪をひいても困ります。コロナとの違いが微妙なので、検査結果が出るまでドキドキしちゃうもん。
小心者のラッコはめくっていた袖を素直に下ろし、第一ボタンまで閉めようとしますが...
くっ、首が苦しい。ボタンが弾け飛びそうやねん。
これで腰のベルトが長過ぎて半端に余っていたりすると、なんだかセンスのないオヤジみたい。
加齢臭が漂っている分、身だしなみくらいは気にしないと、アハッ\(//∇//)\
前置きはさておき、いつものように駅前からのんびりと散策します。人通りは皆無。お店に到着するまで、誰一人ともお会いしませんでした。
六時過ぎですからね、どちらのご家庭も食卓を囲んでいらっしゃるのかな?
ラッコはというと、予約時間の十分前に到着。
温石の森と呼ぶ中庭を通り、その先の縁側から靴を脱いで中に入ります。
後でお聞きしましたが、横浜からいらした同世代のご夫婦がひと組、既にカウンターでお待ちでした。
折敷を数えると、残り三席。今夜は六名の方を迎えての懐石となるようです。
程なくして裏の厨房から杉山氏がおいでになり、いつものごとく、控え目で爽やかな笑顔でご挨拶。
静かに鼓動の高まるこの間が好き。
輝度を落とした暖色系の照明、背の高い空間、その先には宮大工の手による木目を生かした手彫りの天井板。
ひとつひとつの意匠にいだかれながら、なかなか他にはない、和み、落ち着き、癒やしの本質に心地良く漂うラッコ。
お出しいただいたお皿に手を合わせ、静かに、丁寧に、そして間を空けずに口に運びます。
決して前に出過ぎず、主役はあくまでも一期一会の客。おもてなしの真髄、いや神髄に触れ、今宵も得難い幸せを噛み締めました。
いただいたものは以下の通りです。
基本はコースですが、人様より多めに食べて呑むラッコ仕様になっておりますので、ご注意くださいませ。
ひとつひとつのコメントは写真欄に記載しておりますので、画像と合わせてお読みいただければ幸いです。
そしてご馳走さまでした。
<いただいたもの>
ここ数日の悪天候から魚の水揚げを心配しておりましたが、おっとどっこい。いつもと全く変わらない品揃え。
両の眉を下げながら、『xxxさんのお陰です』と、ご近所の魚屋さんに感謝する杉山氏。
でもホント、その通りなんですよね。
一昨年前の秋でしたか、此方のお店でその魚屋さんの大将とお会いし、お二人が強く太い絆で結ばれていることを知りました。当たり前のごとく数日前から天気予報を確認し、必要と状況に応じて海の生け簀も活用しながら、最善の魚貝を提供されているのではないでしょうか?
お二人の焼津愛に思わず盃を傾けます。
●鳥貝と天然クレソンの黄身酢和え
●豆鯵の唐揚げ
●メバルと管牛蒡のお椀
●黒ムツの皮目炭火焼き
●泥障烏賊のお造り
●枝豆の摺流し
●炙りカマスとピーマンの焼き浸し
●アスパラガスのかき揚げ
●蕪の丸焼き
●平貝の紐と葉ネギの酢味噌和え
●シンシンの炭焼きと丸茄子、オクラの炊き合わせ
●一膳目:グリーンピースご飯
●二膳目:桜海老ご飯
●三膳目:金目鯛炙りご飯
●四膳目:炭火焼きシンシンの振り山椒ご飯
●五膳目:鰹の漬けご飯
●お味噌汁:豆腐
●デザート:
・グレープフルーツと紅茶のゼリー寄せ
・ヨモギ風味の薄皮ドラ焼き
●抹茶
<お酒>
●生ビール
●山本:和韻、純米吟醸、秋田
●五凛:純米、石川
●英君:特別純米、由比
●もりもと:愛のメモリ リターンズ、純米、菊川
●十四代:純米、中取り、山形
静岡なので、気兼ねなくアルコールが充電できます
鳥貝と天然クレソン。鳥貝は蒸して持ち味を消さず、肝も添えます。道理で餌のワカメの味がします。薬味は黄身酢でした
鳥貝の肝です。初体験です。板売りでは入手できないので、丸貝のまま仕入れて店内捌き。産地は明かせません。荒らされてしまいますので。浜値だけ上がって良いことないですもんね
器の鳥貝の殻。綺麗なピンク色ですが、お寿司や和食界ではムラサキと呼びます
たまらず早くも日本酒にシフト
どから、で有名な秋田の酒蔵。和韻の名前の由来ですが、シャルドネ酵母で醸されているから、ワイン、なんだそうです。柔らかくまろやかな口当たりは繊細な鳥貝の地味を壊しません。ウンマイ
地物の豆鰺。これよりさらに大きいものはスーパーで良く見かけますが、ここまでのミニ豆鯵はやはり地元じゃないとお目にかかれません
五尾のミニ豆鯵が仲良く並びます。もうね、お酒を止める術が有りません
表の温石の森で採れたこの季節だけの実柚子。ほのかな香りが貴重です。これをお店になると言うことは、次は椀物ですね
素敵な器です
蓋を開けると立ち昇るカツオの一番出汁の香り。鼻の穴がサブちゃん並みに大きく拡がります。魚は旬のメバル。付け添えは中心をくり抜いたゴボウです
椀物のゴボウ。中心をくり抜き、管牛蒡(くだごぼう)と呼びます。見通しが良いので縁起物かな? お汁の煌めきはメバルの健全な脂です。溜息が出ちゃいますね。
二杯目は石川県は白山市の純米で
上は黒むつの皮目を炭火で焼いたタタキ。脂が半端ないので、大根おろしと茗荷が添えてあります。手前は旬の泥障烏賊
黒ムツ。顔はゴツいけど身はウンマイ
黒ムツに大根おろしとみょうが、本山葵を乗っけてくるリンパ
黒ムツを広げたところです
旬の泥障烏賊。黒いのはこの個体の墨で作った墨塩
枝豆の摺流し。季節を味わえるのも嬉しい
枝豆の青臭い香りが最高
カマスとピーマンの焼き浸し。このカマス、腰が太い。干物とは違う!
由比の酒蔵です。袋吊りからのしずく。これは希少かも?
地物のアスパラガスのかき揚げ。おかきの塩味がお酒と合う
蕪の炭火丸焼き。地味が深いので、シンプルに焼き上げ、オランダ人がハーリングをいただくように、上を向いて口を大きく開けて丸のまま齧るのがベスト
菊川の酒蔵。ネーミングが面白い。
平貝の紐と葉ネギの酢味噌和え。酒を呼びます
シンシンのか炭火焼き。丸ナスとオクラの炊き合わせとともに。
この二週間しか収穫されない幻のグリーンピース。その炊き込みご飯をこれから五膳、いただきます
一膳目はシンプルに豆ご飯と炒りごま。ああっ、ウンメイヨォ
ご飯が出ているのに十四代を所望
この豆がウンマイ。ただもんじゃない。生産者の方に感謝!
豆腐のお味噌汁。鰹出汁が最高に切れ良し
二膳目の揚げ桜海老のご飯。春の漁の真っ最中。揚げてこの大きさなんて信じられない。もうね、ヤンバイ!
三膳目のご飯は金目鯛のお腹の炙り。普通はメインですが、ラッコは焼き魚はカマス。なのでメインと同じサイズのお腹の金目鯛をご飯に合わせてきました。脂の染みた煮切りがご飯に染み込んで、超絶、ウンマイ!
金目鯛の皮。パリッパリに焼けています。魚はやはり皮がウンマイ
四膳目は、豆ご飯にシンシンの炭火焼きを乗っけます。薬味は振り粉山椒
五膳目は鰹の漬け
デザートのグレープルーツと紅茶のゼリー寄席
ヨモギ風味のミニどら焼き
〆は静かにゆったりと杉山氏の淹れる抹茶
2021/05/24 更新
2021/03 訪問
駿河湾の潮音は杉山氏の掌で囁く
土曜日の夜です。
焼津です。
予約時間の六時半まで隙間時間があるので、今日はいつもと異なる反時計回りのコースを選択。
駅の右手に進み、焼津神社の鳥居をくぐります。
シラサギ達の今夜の寝床争いの鳴き声、いや叫び声かな、恐竜のようなドスの効いたダミ声にビビりながらも、薄暮の神域に忍び寄るラッコの影。
境内の横には三畳敷ほどの巨大な石碑が周囲を睥睨。見れば焼津の漁業の礎を築いた先人の碑でした。
そう言えば、小樽の鰊御殿ならぬ、ミナミマグロ御殿が並ぶ街並みかも。遠洋漁業で栄えたんでしょうね。往時の善き繁栄を偲びます。
陽は落ちました。
そろそろ温石さんに向かうかと、車も人の往来も無い暗い夜道をノテノテと歩きます。
土地勘は出来ているのでスマホの地図は不要。
六時二十分に到着。
いつもの日本酒にお詳しいふくよかな女子が、暖簾の奥でお出迎え。
『こんにちは。今年もよろしくお願いします』と暖簾を潜ると、食べログシルバーを祝う磯自慢さんからの胡蝶蘭が鎮座。
うん。
街から愛されていることが伝わります。
今夜は個室のテーブル席に四名、カウンターに七名の計十一名のお客様。
グループ毎に席間も十分。
適時ドアを開放し、換気への気配りも十二分。
裏の厨房から杉山氏が顔を出されます。
『いつもお世話になっております』とご挨拶。
食べログシルバーに奢ることもなく、ごくごく穏やかで自然体の所作。
料理人さんとしての分を弁えた適切な距離感。
そして炭の爆ぜる音しか聞こえない静謐な空間。
心と命の洗濯。
温石さんにお伺いする理由がここにある。
いただいたものは以下の通りです。
一皿毎のコメントは写真欄に記載しましたので、画像と合わせてお読みいただければ幸いです。
そしてご馳走さまでした。
<お料理>
●手掘り浅利と菜の花の温仕立て
●石鯛の玉葱おろし乗せ
●墨烏賊
●大穴子よりデカい穴子の唐揚げ
●鯖寿司
●鮃と椎茸の蒸し物
●春菊の胡麻とナッツ和え
●赤座海老の炭火炙り
●赤座海老の味噌の温仕立て
●金目鯛の炭火焼き
●新玉葱の包み焼き
●めがい鮑の昆布包み蒸し
●虎河豚の唐揚げ
●香の物
●ナメコと豆腐のお味噌汁
●ご飯:
一膳目:生ワカメと筍
二膳目:シンシン炭火炙り
三膳目:炙り唐墨とシンシンの短冊切り
●青首やカルガモの挽肉そぼろ餡掛け細うどん
●デザート:
せとか、紅ほっぺ
●胡桃餅
●お抹茶:
<お酒>
●生ビール:小サイズ
●大井川の恵み:純米吟醸、焼津
●雨後の月:大吟醸、呉
●H.森本:無濾過生原酒、菊川
●磯自慢:純米大吟醸42、焼津
●初亀:大吟醸、愛、藤枝
日本酒は三合弱
三膳目です。炙った自家製唐墨とシンシンの炭火焼き。唐墨をシンシンで巻いてアンムッ。めくるめくグランパラディーソの世界が展開します
通年獲れるものの、個体により岩場の海藻臭さが強過ぎるので、あまりお皿には乗りません。でも産卵前のこの時期だけは全くの別物。昨年口にしてから、一年待たれたとのことでした、、たしかにウンマイ!
メガイの昆布蒸しと藤枝の筍。肝の裏ごしソースがウンマ過ぎる
炭火でゆっくりと火を通し、ご開帳。軽く塩を振り、オランダのハーリングのように尻尾を持ってアシカ喰い、しちゃいます。 上を向いて、アシカの餌付けみ。たいですね
大穴子より大きいあなこの唐揚げ。大根おろしと梅肉ソースです。添え物はプチベールの素焼きでした
焼津神社です
この松の樹上にシラサギが数匹、潜んでおります。『ギイ〜、ギイ〜』とメスを呼んでいるのか、陣地を主張しているのか、ちょっとドキドキする空間でした
県内以外の日本酒のメニューです
根付きの石鯛。〆た翌日。太い。厚い。煌く背鰭下?の部位の脂。産卵前のこの時期だけの美味。サスエさんから『今日は真鯛と平目と石鯛があるデェ?』『石鯛を!』『そやろなぁ、グフッ』と前田氏、とのことでした
生ビールの小でスタート
春を呼ぶ手掘りのアサリと菜の花の温仕立て。一粒一粒丁寧に殻から外し、また一粒一粒、優しくお皿に盛り付けます。美しい! 駿河湾にアサリの掘れる浅い砂地は無いので、これは恐らく愛知かな?
石鯛に串を打ちます。なんで? アハッ、この後、石鯛にとっては拷問とも言える、炭の直当て画素待っています\(//∇//)\
ご近所の磯自慢さんに敬意を払い、大井川の恵みでスタート
石鯛と墨烏賊の二点盛り。塩、煮切り醤油は好みで
左上の石鯛が抜群でした。地物の玉葱の甘味と酸味が脂を優しく中和します。墨烏賊には墨塩?がトッピング。この隠し包丁が身の中心の甘味を最大限に引き出します
墨烏賊の隠し包丁が見えるでしょうか?裏返すと・・・
裏返すと、表とは異なる直角方向に包丁目が。アハッ、そりゃそうか。同じ方向だと切り離れちゃいますもんね。でもこの丁寧な包丁が、内部の一番甘い部位を空気に触れさせ、珠玉の甘さに昇華させます
焼津港で上がった大穴子よりさらに大きい穴子。『アナコンダくらいっすか?』とふざけて問うと『もう、こんなくらいっす』と両手を広げる杉山氏。『だんだん大きくなっているような気が』とお店の女子が笑います
焼津に揚がる鯖もウンマイ
呉の酒蔵です
さてさて、このお椀はなんでしょう? 答えは次の写真で!
ヒラメと椎茸でした。緑は春野菜のうるい葉っぱかな? この椎茸が半端なく、ウンマイ
一塩したヒラメの塩梅が絶妙。脂の七色の煌めきが見えるかな?
活の赤座海老です。そろそろ名残かも? 駿河湾産は旬のど真ん中かな? カブトを剥くと、一尾には青色の卵になりかけの素が入っておりました
三尾が仲良く出番待ち
地物の春菊と胡麻、ナッツのお浸し
なんだかロールシャッハテストみたい。この対称系が何に見えるかで性格が分かるかも。尻尾の付け根の身までかじりとります。
赤座海老味噌です。左側のやや丸い粒々が生ではブルーの卵と思います
大好きな酒蔵です
金目鯛の炭火焼き。熱い油を回しかけた鱗のパリパリが大好き。付け醤油が脂とマリアージュして、なんとも甘い香りと味わいを演出します
白髪ネギをトッピングしちゃいました。少量のミドリが目に優しい彩りを添えます
藤枝だったかな、新玉葱の炭火蒸し。アルミホイルに包んでほぼほぼ一時間の愛の結晶
東城特A山田錦です
近海のメガイアワビの昆布の包み蒸し
もう、たまりマシェン
知多の生ワカメと筍ご飯。ワカメは炊き上がりのご飯に乗せるだけで瞬時に茶色から緑色に変化。香りが違います
香の物。手前は小松菜ですが、ラッコの生まれ故郷の広島菜を思い出しました
一膳目はワカメと筍ご飯
トラフグの唐揚げ付きです
大好きな藤枝の酒蔵ですが、このコロナ禍、町の全世帯にお酒を無償でお配りされたそうです。出荷が滞っていたのかも知れませんが、なかなか出来ることでは有りません。地元愛。愛し愛され、初亀は永遠です
炭火焼きの赤身の塊。シンタマの中心、シンシンです
ゆさか精肉店のシンシン。火入れもパーフェクト
ナメコと豆腐のお味噌汁
これはホントにヤバいっす
青首やカルガモなどの挽肉の餡掛けソボロ。ここまで来ると、流石に所望したのはラッコとほかに一人のみ、アハッ
紅ほっぺとせとか
胡桃餅かな?
興奮していた胃が平静さを取り戻します
ミツバ葵の御紋だぜ
2021/03/07 更新
2020/12 訪問
駿河湾の宝珠は杉山氏の掌で輝く
土曜日の夜です。
焼津です。
いつもの通り、駅前からノンビリと歩いてお店の前に到着したのが、凡そ六時十分前。
玄関脇ではマスク姿の女子が、腰に手を添えてストレッチ中。
『アハッ、真似しちゃった』なんて、女子の二倍は有りそうな腰回りに手を当て、左右に揺れながら近づくラッコ。
マスクもしているし、動きも変だし、髪の毛は薄いし、不審者感満載ですが、女子もさるもの『xxx様ですね、お待ちしておりました』と、キレ良くザビエルハゲのオヤジを一刀両断。
今夜はカップルが三組と、個室に三名様という布陣。
お一人様はラッコ一人なので、そこから類推されたのかな?
中に入ります。
一番乗りでした。
板の真ん前に一人分の折敷がセッティングされていたので、迷わずそちらに座ります。実は炭場の正面が好きなのですが、こればっかりは、お店にお任せするしかありません。
コロナ対策で、左右はひと席づつ空席。いつもよりゆったりと座り、黒星の生で唇を湿らしながら、ほかのお客様の到着を待ちます。
裏で件の女子が『xxx様がお見えになりました』とお声がけ。程なく引き戸を開けて、涼しい目元の杉山氏が現れます。
『今年一年、有難うございました』と深々と腰を折られます。
『いつも沢山ご用意いただき、痛み入ります』と、すかさずカウンターで平伏。
今夜も穏やかで安らげる時間が約束されました。
いただいたものは以下の通り。
ラッコの肉好きをご存知なので、〆に神戸牛のシンシンの炭火焼きを出していただきました。
ラッコだけの特別メニューです。
『でもその代わり、xxxさんにはズワイは有りません』と目尻を下げながら、悪戯っぽく微笑む杉山氏。
『うっ、うううっ、そっ、そりゃあそうですよね』と寂しげに呟くラッコ。
和やかに微笑む周囲のお客様。
そしてご馳走さまでした。
詳細なコメントは写真欄に記載しました。画像と合わせてお読みいただければ幸いです。
<お料理>
『年末なので、まるで在庫整理みたいです』なんて、冗談を呟かれる杉山氏。確かにいつにも増して豊富な食材が目の前に並びました。
作り手の人柄が味付けにも反映されるのでしょう、どのお皿も一見控え目ですが、一皮むけば太い背骨が現れます。全ては、お客への厚い感謝の気持ちとそれを維持する意思の力。素敵なお店かと思います。
●聖護院大根と蛸の柔らか煮
●鯵の棒寿司
●お造り:
・黒むつ:皮目に炭を直当て
・泥障烏賊:薬味はイカ墨塩
●ほうぼうのお椀
●麻機蓮根のかき揚げ
●手長エビの炭火焼き:味噌乗せ
●新玉葱の炭火:アルミホイール蒸し
●金目鯛の炭火焼き
●赤蕪とスナップエンドウ、落花生ソース
●メジマグロ:新玉葱の鬼おろし
●真鴨の治部煮、海老芋添え
●蛤椎茸ご飯
●生シラスの湯通し添え
●神戸牛のシンシンの炭火焼き
●デザート:きらぴ香
●くるみ餅
●お抹茶:二杯
<お酒>
●サッポロ:黒星、生
●磯自慢:大井川の恵み、純米吟醸、焼津
●H.森本:魂醸 勢、菊川
●王禄:丈径、本生無濾過、出雲
●磯自慢:大吟醸、東条山田、焼津
●悦凱陣:純米、香川
●喜久酔:特別純米、藤枝
●志多泉:純米吟醸、藤枝
日本酒は四合弱
焼津の駅前
鮪が街灯を登っています
今夜は黒星の生からスタート
最初の一皿は温かい逸品。冷えてきましたので、胃は喜びますね
蛸の柔らか煮と聖護院大根。静岡おでんにインスパイアされたそう。薬味は出汁で伸ばした白味噌です。落花生のような香りがしました
地物の鯵の押し寿司が勢ぞろい
胡麻と紫蘇、煮切り醤油の香りが口の中に充満します
最初は焼津の磯自慢。大井川の恵みでスタートします
奥はクロムツ、手前は障泥烏賊。いずれも駿河湾の旬物です
障泥烏賊にはきめ細やかな包丁を当て、ムッチリしてはいるけど、歯が無くても噛める柔らかさ。薬味はイカ墨塩です
黒むつです。皮目に炭を直当て。香ばしい香りが辺りに充満します
脂乗りの良い黒むつには茗荷と山葵が良く合います。塩も乗っけました
『こちらは今年一番の大ヒットでした』と笑顔の杉山氏。確かにウンマイ
ホウボウのお椀
ホウボウの身はムッチリ。鰹の一番出汁になじみます
駿河湾の手長海老。活きています
子持ちの手長海老を発見。ボタン海老や甘海老よりは薄めの色合いですが、個体差が有るとのこと
麻機蓮根のかき揚げ。イカ墨塩乗せ
齧るとこんな感じです
島根の王禄にシフト
手長海老を炭火で軽く炙り、腹割りして頭の味噌を乗っけます。尻尾を持ってアシカの餌付けのようにハーリング食い(オランダで鰊の食べる際の流儀です)がお勧め。
地物の新玉ネギのアルミホイール蒸しを四つ割りに。これでもう血液サラサラ
金目鯛が勢揃い。温石さんのスペシャリテですね
金目鯛の炭火焼き。この皮だけを北京ダックみたいにして食べたい
磯自慢の東条山田錦の大吟醸です
赤カブとスナップエンドウ。薬味は落花生ソースです
駿河湾のメジマグロ。若いのに脂乗りがものすごい。薬味は新玉ネギの鬼おろし
メジマグロのお腹。美味いモン、食ってんだろうなぁ!
香川の銘酒です
新玉ネギの鬼おろしをお酒のアテにそっと出していただきます
真鴨の治部煮風。磐田の海老芋添え
旬ですもん。最高にウンマイ
ご飯が炊きあがりました
藤枝の銘酒です
香の物
駿河湾の蛤が出て参りました
炊きたての土釜の中に炭火焼きした椎茸と軽く出汁で温めた蛤を投入
蛤出汁をかけているので、やや硬めの増水のような仕立てになります
やはり藤枝の銘酒
お味噌椀です
蛤椎茸ご飯の二膳目です
出ました。神戸牛のシンシン。この色つや。たまりましぇんヾ(≧▽≦)ノ
KOBE、サイコー
三膳目は白飯に軽く湯通ししたシラスをトッピング
四膳目は神戸牛のシンシンを乗っけます
地元原産のきらぴ香
胡桃餅
懐石なので最後は抹茶を立てていただきます
二杯目です
この夜道を駅まで歩きます
2020/12/27 更新
2020/10 訪問
駿河湾の海音は杉山氏の掌で唄う
土曜日の夜です。
焼津です。
台風に刺激された氷雨がそぼ降るなか、駅前に到着。これから半時間かけて、ノンビリとお店に向けて歩きます。
予約は六時半。
ここ数日の荒天で、品揃えのハードルが上がりました。魚は深く潜るとしても、出漁できなければ是非もありません。
でも逆にいえばこんな時こそ腕の見せどころ。
どんな魚が舌を震わせてくれるのか、どんな海の音色で耳朶を優しく撫でてくれるのか、いつにも増して昂ぶる期待。
そして、先に結論。
今夜で八回目ですが、これまでで最高の品揃え。
駿河湾からは、目光、九絵、茶色丸羽太、伊勢海老、そして白甘鯛。
陸からは、菊川の天然スッポン、麻機蓮根と熊本赤牛のランイチ(ラム芯)
山からは、天然黒舞茸とホウキタケ、そして松茸。
赤牛と松茸こそ他県産ですが、他は全て紛れもなく地産品。
参りました。
ここ数日、台風が迫ってくるなか、これだけのものを揃えていただいたご努力に、心から感服してしまいます。
『いやぁ、このような天候が予想されるなか、お越しいただくんですから、私も気合いが入りました』と控え目に呟く杉山氏。
『天然の舞茸なんて凄いですね。雨が降り始める前に山に入られたのかなぁ?』と半可通なラッコ。
『はい。キノコ採り名人の方がいらして、直接分けていただいてるんです。今日のためにお伺いしたところ、いつもは玄関脇に置いてある筈のキノコが無い。鍵も掛かっていてお留守のようなんですね。
仕方なく朝の五時まで車の中で過ごしました。でもそのお陰で、山から降りてきたばかりの名人から採りたての天然黒舞茸をいただくことが出来たんです。
雨が降る前でしたので、内側に水分が吸収されてグジュグジュになることもなく、こんな上質のものは滅多に手に入りませんから・・・』とのこと。
『ええっ、いつ寝てらっしゃるんですか?』とラッコ。
『ホントにもう、大変みたいですよぉ〜』とお店の女子。
『あははっ、お昼寝してますから』と目尻を下げて相好を崩す杉山氏。
大変な努力を問われるまで隠し、高いハードルを難なく飛び越えるそのお人柄に、惚れてしまいます。
おもてなしの真心。
まさに懐石の神髄を堪能させていただきました。
いただいたものは以下の通りです。
詳細なコメントは写真欄に記載しましたので、映像とご一緒にどうぞ。
そしてご馳走さまでした。
<お料理>
●落花生豆腐:落花生ペーストと銀杏、無花果添え
●ホウキタケの茶碗蒸し:天然スッポンスープで
●目光の唐揚げ:空芯菜添え
●九絵と茶色丸羽太:炭火焼印仕立て
●焼き茄子とズンダ
●天然黒舞茸
●麻機蓮根のかき揚げ
●伊勢海老の炭火焼き:味噌乗せ
●白甘鯛の炭火焼き:鱗の素揚げ乗せ
●天然スッポンの炊きもの:里芋とオクラ添え
●松茸ご飯
●ラム芯ご飯
●秋刀魚ご飯
●ラム芯ご飯:黒舞茸汁かけ
●フルーツ:柿、梨、巨峰
●デザート:焼き菓子
●知覧茶
<お酒>
●エビス:生
●磯自慢 大井川の恵:純米吟醸、焼津
●磯自慢:極上本醸造、東条特A山田錦、焼津
●英君:特別純米、ひやおろし、由比
●森本:純米吟醸原酒、槽しぼり、菊川
●天賦:純米吟醸、日置
●大七:純米生酛、二本松、常温
●天青 千峰:純米吟醸、茅ヶ崎
●王禄:無濾過直組み、東出雲
日本酒は恐らく五合くらい
駅前の人魚姫も濡れる夜
やはりエビスの生で気道を確保
裏漉しした落花生を葛粉でまとめた豆腐と銀杏、無花果の組み合わせ
天然ホウキタケの茶碗蒸し。菊川市で捕れた天然のスッポンスープが絶品。動物系を思わせるこの濃ゆいコクに悶絶しました
ホウキタケ。確かに箒に見えますね
ホウキタケ。これならハッキリと見えるかな?
沼津産のメヒカリの唐揚げと空芯菜。軽く鰹出汁をかけていただきます。皮目にしっとりとお出汁が染み込み、もう、悶絶。空芯菜のネットリ感と出汁の旨味、身の甘さが三位一体を奏でます
地元の銘酒、磯自慢
メヒカリに空芯菜を乗っけていただきます
左が1.5kgの九絵。右が5kgの茶色丸羽太。炭を直に当てた焼印仕立て。取り分け脂の溶けた茶色丸羽太には悶絶してしまいます
脂のりの良さが手にとるように伝わります
茶色丸羽太には塩と本山葵を。コイツは美味でした
焼きナスとズンダペースト。ナスの皮が焼けた際の焦げ臭い香りが、なんとも、たまりません。
先日いらした磯自慢の社長、自らのお勧め品。極上の名が示す通り、東条特Aの山田錦。それを本醸造で。磨けば良いってもんじゃ無いですね。
天然の黒舞茸。土鍋で蒸し焼きに。汗が出たところで鰹出汁を投入、その旨味を煮含ませます。数滴の醤油で味を整え、休ませれば完成。実は白甘の脂拭き用に、鰹のイノシン酸と乳化した汗は、締めのご飯に軽くかけて
麻機蓮根の素揚げ。まさに糸を引くような美味しさ
お酒のメニュー
車海老です。ぎゅーぎゅーと威嚇しています
由比の英君にシフト
伊勢海老炭火焼きの刑。脚をパタパタ、団扇のようにパタパタ!
車海老の炭火焼き。トッピングは粒々の際立つ鮮度抜群の味噌。まったくダレておりません。軽く鰹出汁で温めて供します
馬糞ウニに見えるけど、伊勢海老の頭の味噌。鰹出汁で温めます。これは思わず身を捩ってしまうくらいの美味さ。心の底から悶絶してしまいました
見れば見るほどウニだけど、伊勢海老の頭の味噌の方がウンマイっす!
菊川の銘酒
白甘鯛です。串に打ち、これから炭火でじっくりと炙ります
白甘鯛のカマ部位。素揚げした鱗をトッピング。この大きさですと、松笠仕立てより素揚げの方が適しています
赤甘鯛とはまったく異なる身質。より筋肉繊維が太く、爽快な脂を湛えているものの、喉黒のようにグズグスでも無く、歯茎を押し返すような弾力に溢れておりました
鹿児島のお酒。宝山の酒蔵が醸す日本酒です
そして白甘鯛のカマの骨だけが残った
天然黒舞茸の出番です。火からおろして自然に落ち着かせた土釜から取り出します。その瞬間、カウンターの空気が一変。栽培物には出せない強い芳香に悶絶します
舞茸のグアニル酸と鰹節のイノシン酸が土鍋の中で乳化結合。これだけでもウンマイのに、お皿に残った白甘鯛の脂をコイツで拭き取り、アンムッ。うめぇ!
福島の銘酒
菊川市の天然スッポンです
こんな大振りな形のスッポンは初めてです。泥臭さは皆無。良く煮込まれたおでんのすじ肉のような味わいでした
牧之原台地の新米
岩手県久慈産の松茸が登場。このサイズを惜しげもなく薄切りし、鍋に投入
ご飯に合わせたお漬物
鍋の中で鰹出汁と合わせ、硬めのオジヤ風を調理。これはウンマイ。繰り返します。とんでもなくウンマイ。ほっぺたが落ちるとはまさにこのことか!
今年の岩手の松茸は抜群の出来!
お豆腐とナメコのお味噌汁
熊本の赤牛のランイチ、別名、ラム芯です。ランプ肉の中心の希少部位。やはり牛は赤身が最高
炭火で炙った秋刀魚ご飯。針生姜の香りで何膳でもいけちゃいますが、今夜は八名のお客様なので、おかわりは止む無く断念
茅ヶ崎の銘酒
島根の銘酒
秋刀魚ご飯です
ご飯をおかわりし、ラム芯を乗っけて二膳目。天然黒舞茸の煮汁をぶっかけます。もう、悶絶の最大級!
そしてお肉をおかわり
デザートです
巨峰がデッカい!
焼き菓子です
栗だったっけな?
葵の御紋です
知覧茶をたてていただきました
2020/10/11 更新
2020/08 訪問
駿河湾の貴石は杉山氏の掌で言祝ぐ
土曜日の夜です。
焼津です。
此方に初めてお伺いしたのが、ちょうど一年前の夏。
静謐な空間で、海と山の貴石を愛でることが叶います。
夏祭りの日でした。
夕闇が忍び寄る中、子供たちの神輿を担ぐ掛け声が、優しく耳朶に届きます。心のヒダを照らします(詳細は初回のレビューをご一読いただければ幸いです)
それから七回目の夜。
いまだ出逢えたことのない、此方のお名前を一躍有名にした夕獲れの鰹が今夜、初めていただけるのでしょうか?
答えは、いきなり目の前に。
土曜日は出漁しない・・・
ええっ、ええ〜っ、でもそう言えば、以前お聞きしていたような気もします。
『金曜日にお越しいただければ・・・』と、眉を下げて恐縮される杉山氏。
『ううっ、休暇を取るしか無いですねぇ』と、中空を見つめます。
『そっ、そうですよねぇ』と、深く腰を折る杉山氏。
『いえいえ、天候によりますものね』と、天に運を任せるしかありません。
実は、なんにも持っていない小デブ。
当たりくじを引いたことなんて一度もないし、こういう賭けではいつもハズレばかり。
ふむっ、夕獲れ鰹は諦めます。
だって駿河湾の海の幸は他にも豊富だし、魚は白身が好きだし、地物の珍しい野菜や、ゆさか精肉店の稀少部位も揃っておりますしね、と悔し紛れに素早く気を取り直し、次回も次々回も土曜日で予約を入れていただきました。
さて、今夜いただいたものは以下の通りです。
私の好みを把握された杉山氏。
素材の部位に変化を加え、唯一無二のお皿を演出していただきました。
進化に深化を重ね、魚を肴に昇華させる磨き上げた技と練り上げた気。
まさに光芒四射、光芒万丈。
その輝きは、あまねく大地と海を照らします。
ひとつひとつのコメントですが、読み進めやすいよう、写真欄に記載しました。画像と共にお読みいただければ幸いです。
そしてご馳走さまでした。
<お料理>
●鯵の胡瓜巻き
●落花生豆腐
●イカの揚げ真薯とモロヘイヤ
●目一鯛のお造り
●蓮根餅と炙り唐墨
●豆じんどういかの炭火焼き、
●白ナス掻き揚げ
●甘鯛の炭火焼き
●ドンコの炭火焼き
●黒鮑と冬瓜とオクラ
●ご飯
・一膳目:煮えばな
・二膳目:コロ(ウデ:希少部位)の炭火焼き
・三膳目:あおさ海苔と唐辛子味噌の餡掛け
・四膳目:コロの炭火焼き全部乗せ
●デザート
・梨とブドウ
・クルミアイス
●お抹茶
<お酒>
●エビス:生ビール
●磯自慢:大井川の恵み、純米吟醸、焼津
●磯自慢:東条秋津産山田錦、大吟醸、焼津
●湖濱:特別純米、長浜
●森本:純米、菊川
目一鯛。腹身部位が煌めきます。軽く割り醤油が数滴。そのまま一口、アムッ。これはウンマイ。恍惚、あとはおぼろ・・・、昇天してしまいました。二口目からは塩、本山葵でいただきます
自家製の落花生豆腐。トッピングはローストした落花生のペースト。これはウンマイ。バターに混ぜてウイスキーのアテにしたい。砂地で栽培される落花生、今は浜松産。ひたすら優しく味蕾をくすぐります
甘鯛。カマはウンマイ。他の部位に比べて味が濃ゆい気がします。特に胸鰭周りの身が筋肉質で、牛に例えると赤身肉のよう
丼仕立てにしました
じんどういか。ミナミマグロの隙身と浜名湖の生海苔が詰められています。地元のお寿司屋さんでは、通称、テッポウ、と呼ばれているとか
駿河湾のアジの胡瓜巻き。梅肉をトッピング。青魚臭を全く感じません。食感はあくまでもシットリ。薬味の割り醤油が優しく舌を包み込みます
瓢箪型の器が素敵です
イカの揚げ真薯。緑は富士宮産のモロヘイヤ。魚が肴になりました。もうお酒が止まりません
富士宮産の白ナス。通称、トルコナス。この後、どんな料理に変化するのでしょうか?
駿河湾の目一鯛。三重産は都内でも見かけますが、駿河湾のこれは、まさに夏の白身の女王。脂の融点が低いので、最初に脂が舌の上で溶けました。寝かせすぎると脂が酸化するため、一日寝かせたのみ
目一鯛のお腹。斬り付けをガン見しながら、どのお皿にいくのかな、と気になっておりました。それが目の前に。アハッ、私が腹身好きのことを覚えていらっしゃいました。嬉しい(^◇^)
最近購入された、清朝時代?の中国陶器。素敵です
さてさて中身は何でしょう?
蓮根餅と炙った自家製唐墨。トロミは蓮根のデンプン質です。温かい仕立てに胃が喜びます
じんどういか、別名、ヒイカを炭火で炙ります。中に何か詰め物が?
じんどういか。縁日のイカ焼きの香りが漂います
隠し酒が表のメニューとなりました
白ナスのかき揚げ。衣は砕いた柿の種? 薬味は白味噌。一口、アムッ。ウンマ〜い。思わず、オヤジの大きな鼻息が漏れてしまい、カウンターに笑いが充満します。恥ずかしい
中はこんな感じ。ちょっとボケてしまいました
甘鯛のカマの炭火焼き。薬味は蓼酢と鱗の素揚げ。サイズは1.1キロの大物。このサイズを松笠仕上げにすると鱗が歯にあたるので、素揚げにされています
甘鯛の鱗の素揚げ。お酒のアテにしてしまいました
甘鯛の胸鰭の骨。甘鯛 of 甘鯛
炭火焼きのドンコ
地物の黒アワビ。昆布で挟んで袋に入れ、湯煎、というか蒸し煮に。弾力が半端ない。アワビの汗を吸い込んだ冬瓜もウンマイ
牧之原台地の新米の煮えばな
新米の二膳目
通称、コロ、とゆさかさんでは呼んでいるようです。お肉は地方名があってややこしいのですが、ウデ(前脚)一本から300g程度しか取れない希少部位。赤身の肉臭さがたまりません\(//∇//)\
浜名湖産の青さのりと唐辛子の餡掛け
残ったコロ肉の全部盛り。ゴッちゃんです
山梨の豊水。味わいに特徴を感じたので聞いたところ、白州を数的垂らしているとのこと。納得です
クルミのアイス。もっと食べたかった
知覧のオーガニック茶です
先ずはエビスの生で喉の洗浄
焼津の磯自慢
大井川周辺で収穫された誉富士が酒米。深いコクがあり、ドストライク
焼津の磯自慢。東条産の山田錦。先にいただいた大井川の恵みと比べ、酒米の違いがよく分かります。こちらは柔らかく滑らかな味わいでした
長浜の銘酒にシフト
静岡県警菊川市の地酒。初めてです。これもウンマイ
2020/08/24 更新
2020/06 訪問
駿河湾の宝石は杉山氏の掌で煌く
土曜日の夜です。
焼津です。
静岡駅から在来線で到着したのが夕方の五時半。霧雨に煙る街中を彷徨いながら、ゆっくりと港の方向に歩きます。
今宵は温石さん。
GW中に一度デリバリーしていただいたものの、お店にお伺いするのは凡そ三ヶ月ぶり。
ここ数日の低気圧の影響で、今朝の水揚げこそ期待はできませんが、そこは培った技量とサスエ前田さんをはじめとした仲買や生産者の方々との太い手綱で、一期一会の懐石をいぶし銀のごとく纏めていただけるものと思います。
予約時間の十分前にお店の前の路地を左折します。
長傘をお持ちのお母様がラッコの到着をお待ちでした。というのも、既に青年男子四人組と年配のご夫婦が着席されており、ラッコが最後の客。
ポツンと空いた正面の座席に案内されます。
杉山氏と視線が交錯。
『今日も歩いて来られたんですか?』と杉山氏。
『はい。今夜もよろしくお願いします』とラッコ。
『遠いところ、雨の中をお越しいただき、有難うございます』と腰を折りながら、目尻を下げて爽やかな笑顔の杉山氏。
この控え目な距離感が好き。
『どうだ!』というプッシュ型のお店がインスタ映えするなか、『どうぞ...』という、分をわきまえたもてなしの真心がつたわります。
今宵も満ち足りた時間が約束されました。
遠い街でラッコを待つ人がいる。
無償の笑顔と真心のもてなしで。
焼津に来る理由がここにある。
そしてご馳走様でした。
いただいたものは以下の通りです。
<コース料理>
●枝豆の摺流し:
香りと甘味の強い“かおり枝豆″を使用。もちろん静岡産。茶豆のようなガテン系の土臭ではなく、軽やかで爽快な女形のような香り。
浅利の汗のみで伸ばしているので、生クリームを入れた際の動物臭や邪魔な乳脂肪を感じません。
●鯵の胡瓜巻き:
小振りだけど脂のりは抜群の鯵。今の時期の定番だとか。紅いアクセントは梅肉です。
●アスパラガスのかき揚げ:
家康お気に入りの麻機蓮根は終わり、今は静岡産のアスパラガス。一口齧ると立ち上がる蒸気。砕いたお煎餅の衣が香ばしい食感を演出します。
●甘長唐辛子と生シラス:
炭火で炙った熱々の甘長唐辛子に冷たいシラスを乗せます。唐辛子の余熱でほんのりと頬を赤らめたシラス。身の脂が解けたのか、ムニュッとしたちょいエロの食感に変化しておりました。
熱と冷の競演。京都の万願寺唐辛子とジャコの組み合わせにインスパイヤされたとのこと。
●潮(うしお)椀:
具材は、オガイ、いわゆる黒鮑、風味の強い泥障烏賊の下足の真薯、見通しが良くなる筒ゴボウ、庭に自生している実柚子の薄切り。
輪郭の明瞭な潮汁に悶絶。溜息しか見当たりません。
金平糖くらいの大きさの実柚子ですが、五月に花を咲かせた後のいわば青柚子の子供。夏の到来を予感させます。小さくても鮮烈な香り。
●縞鯵のお造り:
近海天然物、塩と山葵と茗荷でいただきます。一口、アムッ。健全な脂に感嘆。
杉山氏の視線を正面に感じます。
顔を上げて目を細めて頷きます。
ホッとされたかのようにお辞儀される杉山氏。
言葉にせずとも伝わります。気の合う親方とのカウンター懐石は、ことのほか愉しい。
●平貝の手巻き寿司:
三河産の平貝のブツ切りを手巻きに。平貝は薄切りより絶対に厚切り。帆立よりも繊維が太いので、厚い方がその食感を堪能できると感じます。
●金目鯛の炙り:
鱗を熱した米油に軽くつけて松笠に見立てます。軽い米油は胡麻油のように主張しないので、金目鯛の繊細な脂をさらに引き立てます。薬味は白髪ねぎ。
お皿に残った煮切り醤油に皮裏の脂が煌きます。金目脂が乳化した煮切り醤油はあとで椎茸の炭火焼きの薬味とします。
●隠元の胡麻和え:
箸休め。湯がいた隠元を酢洗いしているのでしょうか、若干の酸味を感じます。夏仕様でしょうか?
●椎茸の炭火焼き:
藤枝産。グアニル酸が変化して肉のような食感に変化。素材の力が有り余っているので、ただ炙って煮切りを掃くだけで十分。手数は最小限に仕上げます。
さきほどの金目鯛の脂が椎茸の裏側のシワシワに染み込みます。コクが添加されて何とも言えぬ味わいに変化しました。
●鱧のシャブシャブ:
地物のはしりの鱧。小振りですが脂のりは程良い感じ。太白の胡麻油に山椒の実をつけた山椒オイルでいただきます。
●メバルの唐揚げ:
そろそろ名残のメバル。おろしポン酢でいただきます。ナスとオクラが脇を固めます。
●麦イカの炊き込みご飯:
麦イカと地物の葉葱を炊き込みます。お米は茶畑で有名な牧之原台地産。イカ墨がお米の一粒一粒をしっかりとコーティングし、葉葱の香りと甘さで品良く仕上がりました。
二膳目は山葵の茎を追加。
三膳目は讃岐牛のヒウチの炭火焼きを追加していただきます。
●デザート:
桃とビワのゼリー寄せ。
●デザート
トウモロコシの葛餅。表面に砂糖をまぶしてバーナーで焦がします。
●お茶:
知覧産の茶葉を安曇野で製茶したものです。
素敵なお手前でした。
<お酒>
●ビール:生エビス
●磯自慢 大井川の恵み、純米吟醸、焼津
●磯自慢:本醸造、焼津
●池月:みなとにうかぶ月、吟醸、石川
日本酒は計三合
駅前水路の人魚姫
最初はエビスの生で喉を洗浄します
枝豆の摺流し
鯵の胡瓜巻き。紅いトッピングは梅肉です
ドアップ
地物のアスパラガスのかき揚げ
炭火で炙った甘長唐辛子と冷たい生シラス
専用酒器
お椀。中身はなんでしょう?
黒鮑と筒ゴボウ。奥に寝ているのが泥障烏賊のゲソの真薯です
障泥烏賊のゲソの真薯
天然シマアジ
天然シマアジのアップ
天然シマアジに塩を振り、茗荷と山葵を乗せました
平貝の手巻き
金目鯛が並びます。どの部位をどのお客に回すか、親方の胸三寸
酒器
隠元の胡麻和え
金目鯛の炭火炙り
鱗は米油で松笠に仕上げます
ぷっくらと膨らんだのは炭火の成果
白髪ねぎと煮切り醤油でいただきます
椎茸の炭火焼き。金目鯛の脂が乳化した煮切り醤油でいただきます
はしりの鱧が並びます
軽くシャブシャブ。そこには山椒油が潜みます
鱧の皮目
讃岐牛のヒウチ。部位を当てたら『xxxさん、もう変態ですよぉ』と杉山氏も苦笑い
酒器。模様がお洒落
メバルの唐揚げ。オクラと茄子
炊き込みご飯に仕上げる麦イカ
葉葱の緑が眩しい
麦イカと葉葱の炊き込み後hん
二膳目。山葵の茎を追加します
三膳目です
讃岐牛のヒウチの塊を炭火で焼き、スライスします
桃と枇杷のゼリー寄席
もう桃がいただけるなんて、嬉しいっす
トウモロコシのくずもち
知覧茶葉を安曇野で製茶
素敵なお点前でした
2020/06/14 更新
2020/05 訪問
通常利用外口コミ
この口コミは試食会・プレオープン・レセプション利用など、通常とは異なるサービス利用による口コミです。
駿河湾の恩恵はデリバリーでも色褪せず、の巻
★Be strong but be kind!
五月末までのテレワークも決定。
好きな外食もままなりませんが、しょせんは個人の嗜好。
そんな小さな欲望など懐深くに抑え込み、今はなにより、移らない、移さない、それが最優先。
むやみに出歩かず、オヤジの嗜みとして公共の利益を自覚する今日この頃です。
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五月三日。
いよいよGWの後半に突入。
外出を週二回に控え、自炊の日々が続きます。
もともと料理好きなので苦にはなりませんが、好きなものしか作らないので偏食気味なのもまた事実。
それに凝り始めるとキリがなく、独り者ゆえ、食べ切れない食材を棄てざるを得ないのも心苦しいところ。
そんな四月の中頃、温石さんがGW期間中のデリバリーを実施されると知り、その場でお願いします。
中身もお値段もすべて、当日の水揚げ縛りのお任せ。
世に言う『時価』にビビりますが、予算をお伝えしているので一安心。
それに何より、親方の人となりも存じ上げているので、そこにあるのは『信頼』の二文字のみ。
首を長くして待つこと約二週間。
フォロワー様に教えていただいた送料無料の福岡の酒屋さんから銘酒も取り寄せ、準備万端調えます。
クロネコ冷蔵便がお昼過ぎに到着。
包装をとくと白木の箱を発見。段ボールじゃないところが嬉しい。
な~にが入ってるのかなぁ、なんてデブ猫のように中を覗きこみます。
オオッ!
フフッ、ウフフッ!
一袋ずつ順番に食べちゃお。
日本酒、よ~し!
薬味、よ~し!
DVD、よ~し!
鮟肝を半分残し(全部食べちゃうと確実に痛風とお友達になります)、他は全て昨夜いただいてしまいました。
四時間に及ぶ自宅での宴。
駿河湾の恩恵はデリバリーでも全く遜色なし。
いただいたものは以下の通りです。
そしてご馳走様でした。
<お料理>
●鯵の胡瓜巻き
●障泥烏賊の蕨の和え物
●鰹のタタキ
●麦イカの煮物
●鮟肝
●金目鯛の煮物
●喉黒の炙り
●鮑と蕗の炊き合わせ
<日本酒:これは自前です>
●繁枡:菅原水鏡、特別純米、生、八女、一合
●真澄:純米吟醸、生、諏訪、四合
白木箱に入っていました
蓋を開けたところ
北海道産の鮟肝
麦イカ
障泥烏賊と蕨
鰹のタタキ。白ネギと茗荷と生姜の香味野菜により、一日置いたことによる臭みの発生や乾燥を抑えています
鯵の胡瓜巻
帆立と蕗
地物の喉黒の炙り
金目鯛
味噌柚子胡椒:障泥烏賊とワラビの和え物の薬味
薬味(大葉、生姜、胡麻)は自前
盛り付けはヘタかも
中に大葉と生姜の千切りが潜みます。東日本ではこれから旬を迎えますね。うんまい。まったく変な臭みがありません。駿河湾の恵みに感謝します
障泥烏賊と蕨の和え物。手前は塩を入れたオリーブオイルです
同梱されていた味噌柚子胡椒と和えました。蕨の野性味と障泥烏賊の甘味、味噌の旨味が混然一体化
こちらは味噌柚子胡椒と和えず、塩とオリーブオイルでいただきます
薬味の木の芽は自前。うんまい。悶絶します
麦イカ(スルメイカの子供)の煮つけ。旬の味に感嘆。湯煎して自前の木の芽を乗せました
胴の内側にゲソを忍ばせます。手が込んでいます
初鰹のタタキ。薬味は自前です。
これから冷たい海で太る前なのに、既に皮裏や皮岸に脂が煌きます
ポン酢でいただきます
左上の青緑色の脂のキラメキが見えるかな?
地物のノドグロの炙り。別添えのオカカネギの薬味を乗せていただきます。デカい!
このシットリ感が伝わるでしょうか?日本海側のノドグロのようにくどくはありません。適度な脂が舌を喜ばせます
超辛口の真澄が好き
鮑と蕗の炊き合わせ。空豆は自前です。鮑の琥珀酸が煮汁に溶け出し白濁。勿論、すべて飲み干します
金目鯛。強火の落し蓋で五分で仕上げ。木の芽と生姜は自前です
お汁に浮く金目鯛の脂
北海道の鮟肝です。えっ、今の時期?と思われがちですが、冬に比べ脂が少なく、これはこれで美味しい。いわば青年期の肝でしょうか? そのままお酒のつまみでも良いのですが、薄口醤油とお酒と砂糖で温めました。まだ半分残っているので、今夜が楽しみ
2020/05/07 更新
2020/02 訪問
駿河湾の豊饒は杉山氏の掌で舞う
土曜日の夜です。
焼津駅です。
午前中の快晴も何処へやら。天気予報通り、夕暮れから空の冷たい涙が街を濡らし始めます。
ホテルで借りた傘を手に、水路沿いの人魚姫にご挨拶。
多くのお店がシャッターを降ろす商店街を抜け、薄闇の中、風情の漂う街並みを愛でるように歩きます。
十五分も前にお店の面する路地に到着しました。ちょっと早いので周囲を散歩するかなぁ、と悩みますが、雨脚が強まりそうな気配。
お店の前まで進むと、入り口の暖簾の奥に傘を手にした女子の足元が見えました。
『こんばんはぁ〜』と小デブ。
『はい。お待ちしておりました。XXさんですね?』と女子。
う〜ん。おそらく、お一人様は小デブ一人と言うことなのでしょうが、それでもやはり名前で呼ばれると嬉しい。
靴を脱いでカウンターの前に。折敷は六枚。最初の客です。肩の濡れたダウンジャケットを丁寧に拭いていただき、温かい緑茶を一服。
ふ〜うっ。もてなされている。
これが懐石の真髄、いや神髄か。あまりの心地良さに身も心も緩み始めます。
厨房から杉山氏がいらっしゃいました。
『先日は北九州の夜を楽しまれたようで・・・』といきなりのジャブ。
『ええっ、そうなんですよぉ〜、黒崎のまつXXさんにお伺いしました。ご存知でいらっしゃいますか?』と小デブ。
『はい。もう、勿論』と大きく頷きながら爽快な笑顔の杉山氏。
うっ、一本取られた。
それにしても、なんでご存知なんやろう、バレバレやん。
程なく地元の御常連様がいらっしゃり、今夜の宴がスタート。
駿河湾の幸、駿府の五穀豊穣に感謝し、そしてご馳走さまでした。
いただいたものは以下の通りです。
<お料理>
●ひげ鱈の酒蒸し:
皮膚が金色に輝いていることから、地元では金鱈と呼ぶそうです。皮裏の無駄な脂も抜け、下仁田ネギの滋味深い甘味が優しく身肉を包み込んでおりました。伊賀焼の器も素晴らしく、初皿から魅了されてしまいました
●蛤のお椀仕立て:
お雛様ですからね、やはりここは蛤。それにしても肉厚でデッカい。そして劇的にウンマイ。地元の吉田町産とのこと。昆布出汁に若干の白味噌を加えた吸い地、底にひそむ蓬餅の草の香り、含め煮?した椎茸の旨味の重層構造に瞬死する小デブ。器は輪島塗でした
●鮃のお造り:
まさに駿河湾の恵み。4キロの大物。山葵のみでいただきます。噛めば噛むほど甲殻類の仄かな旨味を感じます。桜海老でも食べてんのかなぁ?
●鮃の縁側の握り:
太い、厚い、デカイ。シャリの上に乗せ、煮切りを一刷毛。真っ赤な炭を当てたその刹那、♪ジュジュッ、ジュジュジュッ♪と着メロにしたいようなドルビーサウンド。すかさず後を追う煮切りの香ばしい薫り。脂はただただ甘く、筋肉繊維の強靭さに虚にうっとりする小デブ
●豆じんどういかの印籠:
串に刺して炭火で炙ります。縁日のイカ焼きの香りが空気を支配します
●鰆の炭火焼き:
赤甘鯛と鰆を炭火でじっくりと炙ります。小デブには鰆。表面の脂がうっすらと煌きます。薬味の煮切り醤油がたまらなくウンマイ。次のお皿の焼き野菜にもつけていただきます
●ブロッコリーの炭火焼き:
地味と栄養を失わないには炭焼きが最適
●新玉ねぎの炭火蒸し焼き:
アルミホイルにくるんで暫し蒸し焼きに。繊維がまったく歯に当たりません。溶けるような味わいです
●喉黒と蓮根のアラレ揚げ:
喉黒は駿河湾産。日本海側と比べ、太平洋岸で獲れる喉黒は脂がくどく無い。まるで体脂肪が一桁の体育会系かも。これなら揚げ油と喧嘩しません。鰆と同様、断面にはうっすらと脂が煌めいておりました。
蓮根は葵区の麻機産。繊維が細い割にはシャクシャクの食感。ウンマイっす
●トウガラシの炭火焼き:
神戸のゆさか精肉店から送られてくる肩甲骨の希少部位。硬めの赤身食感ゆえ『肉を食らう』という表現が最適かも。地味も濃いので薬味は鰹出汁?の薄い塩だけで充分。新筍とえんどう豆が脇を固めます
●鮑と若芽の混ぜご飯:
地物の鮑を斬りつけ、愛知の若芽と一緒に炊き立て土鍋ご飯に投入。若芽の柔らかい塩と香りでいただく逸品でした。二膳目にはすり鉢であたった肝を添えます。この時期は油分が少ないのでオリーブオイルを添加。もう何杯でも胃に入りそう
●デザート:
きらぴ香、メロゴールド、藤枝のブラッドオレンジ
●桃源餅:
葛粉にカカオパウダーを纏わせます
<お酒>
・生ビール:エビス
・磯自慢:純米吟醸、大井川の恵み、焼津
・磯自慢:吟醸、焼津
・一白水成:純米吟醸、秋田
合計三合
トウガラシ
喉黒と蓮根のアラレ揚げ
地物の蛤のお椀
入り口
手間のかかる仕事です
女子の足元が写ります
生ビールで喉を洗浄
ひげ鱈の酒蒸し。トッピングは下仁田ネギ
駿河湾の王様
縁側の太さに驚愕
輪島塗
酒器
鮃
薬味は山葵のみ
鮃の縁側です
豆じんどういか、ヒイカですね、を炭火で炙ります
当然、一口でアムッ
鰆の炭火焼
脂の煌きが見えるでしょうか?
ブロッコリーの炭火焼
新玉葱の蒸し焼き
ピンク色に煌く喉黒の脂
地物鮑が登場
秋田の銘酒にシフト
炊き立て土鍋ご飯に鮑をトッピング
若芽の香りがスンバラしい
お椀です
図太い肝
摺鉢であたった肝をのせます
一皿目のデザート。メロゴールドのグレープフルーツを除きいずれも地元産
カカオパウダーを纏ったお餅
中はこんな感じでした
2020/03/01 更新
2019/12 訪問
駿河湾の恵みは杉山氏の掌で踊る
土曜日の夜です。
焼津です。
今夜は凡そ二ヶ月ぶりの温石さん。
前回通り早めに焼津駅に到着し、方向を見定めてからゆらりゆらりと夜の港町を散策します。
静かです。
人の流れも車の往来も無く、静寂に包まれた街。
好きだなぁ、この雰囲気。
小一時間のブラ散歩を済ませ、お店の前に到着したのは六時前。別のお客様が車でいらしたようで、お店のお若い女子二人が柔らかい物腰で佇んでいらっしゃいます。
来訪を告げると『xxx様ですね、お待ちしておりました』なんて、目を見て呟かれます。
一目惚れしちゃうやないか。
何度か静岡を訪れるようになって感じたのですが、皆さん、なんだか、おっとりされています。温暖な気候がそうさせるのか、そんな穏やかでしっとりとした笑顔で迎えていただくと、お尻がモゾモゾしてきちゃう。
庭を横切り、奥のアプローチから靴を脱いで部屋に入ります。
最初のお客。
カウンターには五枚、一つ空けて二枚の折敷が置かれておりました。どこに座れば良いのかな、と迷っていると、二枚の折敷の手前側、板の正面の席を引かれます。
ああっ、嬉しい。
かぶりつきやねん。
目の前で調理の様を見つめられるのって、この上ない愉しみ。
程なく忘年会らしきお母様方五名、ラッコと同じくお一人様のオヤジ、個室に四名、総勢十一名で今夜の晩げがスタート。
いただいたものは以下の通り。
年末と言うこともあり、地物のシラカワや赤座海老などの大盤振る舞い。初めて二枚を超えましたが、五合もきこしめしているので、それも当然。
冬の海 ひねもす のたりのたり かな
by 与謝ラッコ蕪村
そしてご馳走さまでした。
●掻き揚げ:
静岡市葵区産の麻機蓮根を、砕いたお煎餅の衣で包みます。小腹にしっとりと染み込む余韻。お伺いして良かった、と納得の一皿でした
●どうまん蟹:
浜名湖産が有名ですが、これは地元の定置網にかかった迷いどうまん。1キロ超えの大物。外海が見たかったのかな?
オレンジ色の塊は内子です。食感は栗のよう。味は濃ゆい。まさしく濃縮卵黄。そして安納芋のように甘い。半生の身肉の繊維は長く、なんだか長生きしちゃいそう。蟹味噌と白葱を和えたソースが絶妙でした
●鮃:
駿河湾産。サスエ前田さんから。超絶肉厚。ぶっとい縁側。脂が煌きます。この鮃は超ド級。バーレスクの豊満なダンサーみたい、行ったことないけど\(//∇//)\
●赤座海老:
焼津産。活を炭火焼きで。僅か十秒程度の半生で提供。なんだろう、この儚く霧のように消えていく甘味は。火を通し過ぎてレモンで誤魔化すイタ飯の炭火焼なんて、ごめんなさいだな、もう
●イトヨリダイ:
こんなにデッカいのって見たことないよぉ〜。超絶肉厚の豊満ボディ。地物の椎茸とのお碗仕立て。うんまいよぉ。鰹節の一番出汁も効いています
●アオリイカ:
活シメなので甘味が半端ない。藤枝の赤蕪とスナップエンドウを添えて。赤白緑の色合いでクリスマスを演出。牧之原のオリーブオイルが全てを丸くまとめます
●鮃の縁側鮨:
砂地の魔王、降臨。
もはや縁側を超越。並の二倍の厚み。もうどんだけヒラヒラさせたらこんなに分厚くなるんやろう。
白シャリで握った後、表面に墨をあてます。そして煮切りをひとはけ。化学変化だと思いますが、バター香が漂います。悶絶!
●シラカワ:
地物の1.8キロの白甘鯛。
年末なので大盤振る舞い。噛むとシャリシャリとした音が頬骨を通じて耳に届きます。下敷きのお出汁はイトヨリダイを湯引きした際のお出汁を煮詰めたもの。絶句。思わず跪きます
●蕪の炭火焼き:
ただただ甘い。素材の実力でしょうか。牛肉にシフトするプロローグとしては絶妙。舌と胃の興奮を鎮めます
●ブロッコリーの炭火焼き:
ただのブロッコリーなんだけど、何々この青い香り。煮切り醤油の香ばしさにも思わず悶絶
●マルシン:
赤身肉の王様を炭火でじっくり炙ります。
磐田産の海老芋を添えて。肉は前回と同様、神戸のゆさか精肉店から。
フィレ肉は柔らか過ぎてつまりません。四つ脚の獣臭も無く、キ○タ○が付いてんのかよぉ〜、なんてね。
やはり赤身は内腿の鼠蹊部に限ります。肉本来の香りも強く、柔らか過ぎず適度な歯応え。
焼けた端っこを味見されようとする気配を察したラッコは、掟破りの一言。
『端っこって、美味しいですよねぇ〜』と周りに聞こえないように甘えます。片頬を上げた杉山氏が、もう、しょうがねぇなぁ、といった感じでラッコのお皿に乗っけて下さいました、アハッ
●蛤のおじや:
吉田町産。デカイ。桑名まで赴く必要無し。
蛤の汗をタップリと含んだかき卵が舌の上で優しく踊ります。
●マルシン乗せご飯:
先ほどのマルシンで炊き立て土鍋ご飯を包み込み、パクッと一口。たまんねぇ〜
●お味噌椀と香の物:
ナメコ汁に白菜、大根、赤蕪でした
●デザート①:
クルミの赤砂糖の求肥まとい
●デザート②:
紅ほっぺのFカップと洋梨
<お酒>
・生ビール:エビス、中グラス
・磯自慢:吟醸、焼津
・磯自慢 大井川の恵み:純米吟醸、地元限定
・初亀:純米吟醸、藤枝
・志太泉 ラヂオ正宗:純米吟醸、藤枝
・喜久酔:純米吟醸、藤枝
日本酒は全て一合で、計五合
★追記:
この後、お隣で親しくなった地元のオヤジさんと駅前のビールスタンドで二次会。終電でなんとか静岡駅にたどり着きました。
そのお店は食べログ未掲載なのでエントリーしたかったのですが、肝心のお店の名前が分かりません。
来年二月にお伺いした際、確認します。
焼津もクリスマス
お約束の人魚姫
なぜ焼津で人魚姫かは不明
先ずはエビスで世俗の垢を落とします
まさかの鳥唐揚げと思いきや、蓮根でした。地元では有名な麻機蓮根と呼ぶのだそうです
ねっ、蓮根でしょ
迷いぼうまん。外海の定置網に捕まってしまいました。内子が栗のようにホクホクで安納芋のように甘い
内子を先にいただいちゃいました
ぼうまん蟹の身肉。半生です。繊維が長い
たまらず地酒にシフト
底にお茶の文字が
鮃です。背中側なのに分厚い。今季ナンバーワンのお味でした
鮃は塩と山葵で茗荷を挟んでいただきます
こんな感じで
地物の赤座海老。真ん中の憎い奴がハサミを振り回して暴れます
赤座海老は軽く炭焼きで
半生の赤座海老。薬味は無し。海老の旨味がダイレクトに伝わります
赤座海老をひっくり返したところ
イトヨリダイが勢揃い
マルシンを炙り始めます
さてさて、このお椀はなんでしょう?
先程のイトヨリダイでした。肉厚の身に悶絶
イトヨリダイの煌めく脂が見えるでしょうか?
捌きたてのアオリイカを赤蕪とスナップエンドウ、オリーブオイルで和えました
鮃の縁側。表面に炭を焼きごてのようにあてます
この厚みにビックリ。どんだけピラピラさせて来たのかなぁ
白甘鯛です。デカイ
脂の煌きが良く分かると思います
このパリパリの皮が美味しい
土の香りのする蕪
酒器もおしゃれ
口直しの炙りブロッコリー
蛤さん、登場
マルシンの焼き上がり。見えないけど、土台は海老芋でした
炙ったマルシンの端っこ
蛤の卵閉じ
もちろん半生
胃に染み渡るうんまいお出汁のナメコ汁
香の物。いずれも手抜き無し
更に追いマルシン
洋梨とあまおう
胡桃の求肥
デカイ。Fカップと呼ぶのだそうです
懐石なので最後はお抹茶で
撮っちゃった。女将さんでは有りません(^◇^)
2019/12/22 更新
2019/10 訪問
杉山氏が奏でる令和の懐石
土曜日の夜です。
焼津です。
初訪問でいきなり魅了された温石さん。今夜はおよそ二ヶ月振りの訪問です。
幸い空も泣き止みましたので、前回と同様、焼津駅前からゆらりゆらりと散策します。
夜の帳のおりた港から海を眺め、一台の車も通らない、道行く人も誰もいない、暗く静寂に覆われている旧い街並みを縫うように歩きます。
玄関に到着したのは予約の十五分前ですが、すでに淡い暖色系の灯りがともっておりました。
近づくと、暖簾の奥から素敵な女性が自然な所作で静々とお出になります。足音に耳を澄ませていらっしゃるのかな。
板前の正面に案内され、生ビールをお願いします。
折敷の枚数からカウンターは七名、個室にも三名のお客様を迎える準備が整っておりました。
厨房から杉山氏が顔を出されます。
挨拶の後『今夜はサスエの前田さんがいらっしゃいますので、ご紹介しますね』と杉山氏。
ああっ、それは嬉しい。
編集された番組で拝見するのと、直にお話しできるのとでは天地の差。
これはラッキーでした。
素人目線でお魚のこと、色々と聴いちゃいましょう。
それでは本題のお皿の数々に。
いただいたものは以下の通りです。
そしてご馳走様でした。
●落花生豆腐と無花果:
地物の生の落花生を潰してエキスを抽出し、ニガリと共に加えます。砂糖は入っていないので、癖がなく柔らかな甘味が口中を満たしました。トッピングの落花生ソースは、オーブンでじっくり一時間加熱して香ばしさを添加した豆の裏漉し。この一手間で香りが倍増。器は気鋭の木村隆氏の作品
●松茸と鱧のシャブシャブ:
目の前で引いた鰹節の一番出汁で、松茸と愛知の鱧をシャブシャブします。松茸で勝負しない、とのことで、カナダか中国の輸入物。全く気になりません。国内の二級品より外地の特級品が勝りますものね。それにブラインドで出されたら、判別出来ません。
鱧は葛粉をまぶしてプルプル食感を演出。器の底に敷かれた角の取れた煮切り醤油が一番出汁に溶け込み、日本人ならではの繊細な妙味を堪能します
●ハタ:
柵の厚みが半端ない。聞けば五キロ超えの大物とのこと。目の前で柵を斬りつけます。煌めく脂。刃に吸い付く艶っぽい肌。皮目を軽く炭で炙り、余分な脂を落とします。薬味は茗荷、山葵と煮切り醤油。
ウンマイ。これは悶絶もの。左隣の前田氏がドヤ顔で頷きます
●南蛮海老と紫水菜の和え物:
南蛮海老は地物。まさか太平洋岸で獲れるとは知りませんでした。駿河の海の懐は計り知れません。それ故、写真を見てもお分かりの通り、抜群の鮮度。甘みとネットリ感が際立っておりました。富士宮の紫水菜と和え、食感の変化を演出します。薬味は酢橘と塩
●イトヨリ鯛のお椀仕立て:
下拵えの切り身を拝見して、勝手に甘鯛かなぁ、と妄想しておりました。焼いても煮ても癖のない白身ですが、地物の蓮根のスリ流しに浮かんで、なんだか幸せそう。山葵と白味噌の薬味が見目麗しい皮目を引き立てます
●伊勢海老の炭焼き:
ザルに数尾の伊勢海老が登場。ギューギューと鳴いているのは、身にふりかかる炙り地獄の運命を予見しているのか?
杉山氏が手首を回して、遠慮なく頭と胴体を外します。お腹の団扇状の脚をパタパタさせて苦しむ様が、まるでラッコの貝割りみたい。なんだか親近感が湧いてしまいます。
さらに火鉢に乗せられ、海老反りながらも尻尾をフリフリ。命をいただく原罪の重さに、真摯な想いを馳せざるを得ません。有難うな。堪能させていただくからね、とつぶらな黒い瞳を見つめて呟くラッコ。
表面に軽く熱が入った頃合で炭火からおろします。中は半レア。薬味は頭の味噌。お酒が進みます。
前田氏によれば、台風が来ると塩水濃度が低下し身が緩くなるとのこと。従い台風が近づく前に捕獲し、お店の水槽で調整、落ち着いたところで納品されるのだそうです
●蕪の蒸し焼き:
富士宮の蕪を炭火の中に埋めます。一種の蒸し焼きでしょうか。振りかけられた黒い粒は自家製のイカ墨塩。掘り起こした際の土をイメージしています。
頭の茎を手で掴み、オランダ人がハーリングをいただくように、真上から口の中に落とします。
美味い。レフェルヴェソンスの蕪を思い出しました
●梭子魚の炭火焼き:
酢橘をタップリと振りかけます。
『立て塩は?』と前田氏が問います。
『これは八分で仕上げました』と杉山氏。
頷く前田氏。
『こんなに皮が薄くて歯に当たらない梭子魚は初めてです』と喜ぶラッコ。
『それはもうサスエさんの魚ですから』と杉山氏。
『いやいや、それはもう焼く腕ですよ』と前田氏。
男の固い絆を感じ取ります。なんだか良い感じ。妬けちゃいます
●黒舞茸の蒸しもの:
地元のキノコハンターが山で収穫した天然物。希少品です。大き目の土瓶の中で蒸しますが、その蒸気穴がラッコを向いていたせいか、その香気に思わず朦朧とするラッコ。
『アロマ攻撃ですぅ〜』と何故か嬉しそうな杉山氏。
ドSかよ?
お店で見かける白舞茸とは明らかに別物。まるでポルチーニと鶏肉を掛け合わせたような食感でした
●イチボの炭焼き:
仕入れは今、注目度がうなぎ上りの『ゆさか精肉店』。三代目が差配する神戸の小さなお肉屋さん。イチボは一目で特上ものと分かるルビー色の煌めき。思わず頬ずりしたくなってしまいます。
醤油と味醂に漬けて、遠火の炭で表面を炙ります。香ばしい芳香が周囲に漂います。
串から外し、まな板の上で斬りつけます。褐色の肌の内側に潜む柔肌。熱が入り、ルビー色がシャネルピンク色に変化しておりました。
『なんだよぉ〜、照れてんのかよぉ〜、コイツぅ』なんて呟くラッコ。
『お食べになっておくんなましぃ〜』と、乱れた風情ではすっぱに囁くイチボ嬢。
ウンマイ。超絶、ウンマイ。もうなんも言えねぇ!
湯布院の無量塔で衝撃を受けた、豊後牛の味噌漬けを思い起こします。麹漬けのような旨味を舌が感じ取りますが、恐らくは醤油と味醂の化学変化。付け添えは里芋。ネットリとした食感がイチボの強い脂を絡めとります
●イチボご飯:唐墨乗せ
牧之原産の新米釜炊き。一膳目はタタキオクラと先程のイチボでいただきます。二膳目は自家製の唐墨の薄切りをイチボにトッピング。
あ〜っ、ウンマイ。身体が弛緩する。
首が座らず、頭がガクンと後ろに傾き、白眼を剥きながら虚ろに天井を見つめ続けるラッコが一匹。
きっと腑抜けたような情け無い顔をしているんだろうなぁ〜。でも良いもん。素顔だもん。それに今夜は一人だから、たとえ鼻毛が見えたとしても恥ずかしくないもん。
●お味噌汁:
具材はシメジと冬瓜。一番出汁が効いております
●香の物:
胡瓜、茄子、蕪。いずれも抜かりなし
●果物:
山梨産のロイヤル南水、柿、シャインマスカット。
無類の梨好きという前田氏には、ロイヤル南水だけの特盛をご提供
●甘味と抹茶:
餅米粉の薄皮どら焼き。中には渋皮栗の餡が。この薄皮生地は何枚でもいただきたい
<お酒>
●生ビール:中グラス
●初亀:純米吟醸、ひやおろし、藤枝
●富久長 海風土:純米、広島
●喜久酔:特別純米、藤枝
合計約三合
サスエさんのハタ
蓮根のスリ流しに浮かぶイトヨリ鯛でした
中はレア。頭の味噌をつけていただきます
イチボの炭焼き、里芋と合わせます
梭子魚の塩焼き
静岡駅前もラグビーで熱狂
途中の神社では何かの神事が行われておりました
焼津港から海を臨みます
玄関
最初は生ビール
落花生豆腐とイチジク
松茸と鱧。下には煮切り醤油?かな
ここで地酒にシフト
お猪口ではなく大振りのシェリーグラスで
地物の南蛮海老
南蛮海老とムラサキ水菜の和え物
中身は何でしょう?
地物の伊勢海老が登場
胴体を捻り取られてもラッコに視線を投げ続ける伊勢海老
お腹の脚がパタパタして可愛い
頭が3個
炭火で炙ります
熱いよぉ〜
蕪を熱した炭で蒸し焼きに。シンプル イズ ザ ベスト!
広島の銘酒
地物の黒舞茸。希少品です。白よりはるかに強い香りに悶絶
香の物
何かなぁ〜
シメジと冬瓜のお味噌汁でした
新米です
地元の銘酒
イチボの炭焼きが白米のアテに出てきました
おコゲ、大好き
追加のイチボ
自家製の唐墨
イチボに唐墨をのっけます
デザート
渋皮栗の一口どら焼き
めくりました
懐石なので抹茶は外せません
杉山氏と前田氏
2019/10/20 更新
2019/08 訪問
温めた石を懐に入れ空腹を凌ぐ、すなわち懐石
謝意:
あまりにも感動しましたので、紀行文のような内容になりました。
駄文が長々と続きますこと、ご容赦ください。
特にお料理にご興味の有る方は*****で区切った箇所からお読みいただければ幸いです。
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日曜日の夕方です。
静岡から在来線で焼津に足を伸ばしました。
今回の短い旅の最終目的はこちら、温石さん。
おんじゃく、と読みます。茶懐石のお店です。
恥ずかしながら私は、ぬくいし、と勝手に読み違えておりました。
いつもお声がけいただく愛知の食べ友様からお誘いを受けた、六月の朝獲れ鰹のシャブシャブ。
海の凪いだ平日にしか出逢えない逸品なんですよね。
都合が合わず、泣く泣く断念しましたが、しばらくは後ろ髪を引かれる日々を過ごしておりました。
その後も敬愛するフォロワー様達からの、熱く、深い感嘆の溜息に触れ、ようやく待ちに待った今日のこの日を迎えます。
時刻は五時。
予約は六時。
一時間ほど、寄り道をしながら、のんびりと散歩する算段です。
♪知らない街を、歩いてみたい
♪知らない海を、眺めていたい
♪愛する人に、巡り逢いたい
♪何処か遠くに、行きたい
永六輔氏の詩を軽く口ずさみながら、人通りの少ない路地をのたりのたりと這うように歩きます。
家々の軒先には、夕暮れの南風に揺蕩う行燈が。
夕涼み中のお母様に尋ねます。
『この行燈はお盆の飾りなんですか?』
『いえいえねぇ、この辺りではお盆は七月なんですよぉ〜、これはね、お祭り用なの...』
お盆が七月。
不勉強にも存じ上げませんでした。
行燈とお母様のポートレイト撮影を願い出ますが、『あらぁ〜、恥ずかしい・・・』と奥に引っ込まれてしまいます。
まだまだ修行が足りませんね、ラッコ殿。
通りを歩いていると、たびたび会釈を向けられます。
ふむっ?
意外です。
港町なので、気っ風の荒い土地柄と勝手に想像しておりましたが、恐らく地元を離れた家族が祭りに合わせて帰省されており、日頃見かけない珍しい顔でも、まっ、ご挨拶しておこう、といった感じなのでしょうか?
港の堤防までたどり着きました。
あいにくの工事中で、残念ながら突堤までは進めません。遠くに青い海を見つめながら空を見上げると、もうすぐ十五夜を迎える月がお出迎え。
知らない街の肌合い、知らない海の息づかいを楽しみ、お店の前に佇んだのは六時数分前。
ラッコのローファーが見えたのでしょう、暖簾の奥で待たれていた杉山氏が、静かに、端正なお顔を出されます。
目が合います。
偽りの無い真摯な眼差しを感じ取ります。
お若い。
三十五、六歳でしょうか。
ゆっくりとした所作で、左手の奥の上がり框までご案内いただきます。茶懐石のアプローチなのでしょう、靴を脱いで部屋に入ります。
カウンターには四枚と、一つ席を離して一枚の折敷が置かれています。察したラッコは右端の一枚の前に座ります。
他のお客様の到着は遅れるようで、生ビールで唇を湿らしながら、ラッコは先に走り始めます。
お陰で周囲に遠慮することなく、杉山氏との会話を楽しむことが出来ました。
初代のお爺様の代はお蕎麦屋さんでしたが、東京の大学に進学されたお父様が目白の和幸でアルバイトされた際、茶懐石の魅力に開眼され、実家に戻られてから蕎麦屋をたたみ、今のお店を始められたとのこと。
三州屋の看板に蕎麦屋の名残りが伺えるかのようです。
その意味ではお店は三代ですが、茶懐石としては今のご主人、杉山乃互氏で二代目。
お父様とご同様、和幸で修練を積まれ、荒木町の大原氏にも薫陶を受けられた、三十代半ばのまさに働き盛りの壮年。
和幸といえば、茶懐石の名店として夙に有名でした。
辻留の辻嘉一翁、NHKのきょうの料理で有名でしたよね、の一番弟子、高橋一郎翁の奏でるお皿の数々に魅了された方も多いのでは。
三十代の頃、亡き家内と『まだ敷居が高いよ。爺様と婆様になったらお伺いしてみようね...』なんて、憧憬にも似た想いを抱いておりましたが、翁の鬼籍入りに伴い、惜しまれつつも閉店。
愛する人と和幸、との夢はかないませんでしたが、まさかその流れをくむ料理を此方でいただけるとは。杉山氏とお話ししながら、思わぬ偶然がもたらしてくれた幸運を素直に喜びます。
茶系で統一された内装は、心より安らげる空間。
質実だけど、何だか余裕のある、傾く手前の粋な風情を感じます。
訊けば、橋本夕紀夫氏にお願いされたのだとか。
建築意匠に興味のあるラッコは知っておりました。
ペニンシュラ東京やコンラッド大阪の作品で、知る人ぞ知る著名なインテリアデザイナー。
ふううっ~、落ち着く。
静寂、静謐、沈静...
今夜も呑んじゃいそう。
日暮れが訪れてきました。
『そいやぁっ~、ほうれいっ~...』
外の路地から子供神輿の掛け声が届きます。
青く黄色いソプラノが海からの南風に乗り、熱い興奮と混ざり気の無い高揚感が、手にとるように伝わります。
全くの偶然ですが、年に一回しかない耳心地の良い至高のさざめき。
好運でした。
続いて、夜のしじまが扉を開け始めます。
そして眼の前には連綿と続く珠玉のお皿の数々。
また通いたい名店を見つけてしまいました。
***************************
ここからいただいたもののコメントです。
魚はご存知の通り、情報番組で名を馳せたサスエ前田さんからの仕入れ。
それとなく気になっていたことを尋ねます。
『丸で仕入れてこちらでさばかれているのですか?』と不躾な質問。
『はい。勿論、そうですけど...』と最初は戸惑われるも、意図を察して片頬を上げる杉山氏。
そうだよな。良かった。ホッとしました。
イタリアンやフレンチはともかく、和食ですからね。
やはり、自身で包丁を当て、刃の滑り具合で脂を感じ取り、塩梅を決める。
それが基本だと再認識いたしました。
いただいたものは以下の通りです
そしてご馳走さまでした。
<コース料理>
●前菜:じんどういかと生食カボチャの和え物
じんどういかとは、いわゆる、赤いか、のこと。
生食カボチャはコリンキーと言うのだそうです。一見、パパイアと思いましたが、齧ると確かにカボチャ。
●前菜:鮎の唐揚げ
安倍川の鮎を早朝から九時までのわずかな時間、天日に干します。
このひと手間で身質に旨味が充満。唐揚げのパリパリ食感を芯から引き立てます。
●吸い物:血鯛の切り身と吸い地を別々に提供
密閉された袋を開封。鰹節の香りが一瞬で鼻腔に刺さります。それを眼の前で一番出汁に。
ああっ~、もうたまんねぇ!
この香りの前ではどなたも口を閉じ、サブちゃん並に鼻の穴を大きく広げ、周囲に漂う香りを窒息寸前まで吸い込む筈。
別に仕立てて冷やしていた真昆布と利尻昆布の出汁と合わせ、その中で地物の血鯛にゆらりゆらりと火を通します。
器の底に加減酢(この季節は地物の檸檬とのこと)をひそませ、熱で皮目が縮み、海老ぞりした血鯛を乗せます。薬味は生姜。
うん。うんまい。鮃も鰈も鱸も持ち合わせない、ほんのりと甘く濃い脂に悶絶。まさに白身の王様。
血鯛をいただいたのち、吸い地を器に張ります。
真昆布、利尻昆布、鰹節の三乗アミノ酸に、血鯛の脂汗がマリアージュ。ただただ鼻息荒く溜息の連続。
●刺身:真ハタ
九州産の7.1kg。
串に刺し、無駄な脂を抜くために、炭で皮側の脂を炙ります。
部位はハラシモ。脂の筋というか繊維が密集しており、炙ると溶けて旨味に変化します。
薬味は塩と山葵、茗荷と加減酢。
アムッ、とひと噛み。弾力が半端ない。良質な脂が舌の上に迸ります。
ブラインドだと、牛肩ロースのレア焼き、と言われても信じてしまいそうな食感でした。
もちろん、真ハタの脂汗の溶け込んだ加減酢をも残さず一気飲み。
●蒸し物:黒鮑
静岡県産の酒蒸し。産地はお聞かせいただきましたが、ここでは書けません。
肝は軽くすり鉢で当たります。
潮風の薫風が鼻腔を駆け抜けます。モニュッとした食感が歯ぐきを、海藻を食べて育った旨味が味蕾を刺激します。
お酒のアテにしようと、お皿に肝を少し残します。
杉山氏がお皿を下げます。
鮑をモグモグしていたラッコは、言葉にならない声で『うあっ、ああっ、あうっ...』と呻きます。
『ご心配なく。分かっておりますから』と杉山氏。
白シャリを脇に置き、追い肝したうえでラッコの眼の前に再登場。
憎いねぇ~!
惚れちゃうじゃありませんか。
●焼物:金目鯛
皮は軽く熱い油をかけて松笠仕立てに。串に刺し、炭の上で遠火に炙ります。
付け醤油の焦げる馥郁たる香りが食欲をそそります。産卵後とは思えない脂にびっくり。
まるで中華の皮付き豚肉の炙りにインスパイアされたかのよう。
つけ添えは、じっくりと時間をかけて炭火加熱したズッキーニ。適度に水分が内側に留まり、本来の甘さが引き立ちます。
●煮物:鱧の卵、松の舞獅子唐の炭火炙り添え
鱧の卵が出てきたということはメインは鱧焼きかな?
ラッコの浅はかな想像は最後に良い意味で裏切られます。松の舞とは、別名、南禅寺獅子唐。お酒のアテに最適でした。
●焼物:天然うなぎの白焼き
浜名湖産。赤玉葱のみじん切りと山葵を薬味にいただきます。ただただ悶絶。蒸しも良いけどお酒には白焼きに限る。
●口直し:蛸と長茄子とオクラ
酢の物ではありませんが、お皿の流れから口直しでしょう。蛸は三河産。表皮を見れば叩いていないのは一目瞭然。でも柔らかい。不思議です。訊けば、煮る温度帯が決め手とのこと。見栄えも優先する懐石ならではの手技。
●ご飯:鱧と枝豆
鱧は三河産。隠し味は金目鯛の脂。バターと一緒でお米の表面をコーティングする狙い。
二膳目も所望。おこげをいただきます。
三膳目も所望。自家製コチュジャンのおじや仕立て。
コチュジャンは静岡川根町の唐辛子。思わずむせるくらいのカプサイシン効果に脱帽。
●お味噌汁:
荒節がベース。さすが焼津。削りたてなのでしょう。
●お漬物:胡瓜、茄子、蕪
漬物も美味い。これだけでお酒が一合、いけちゃいそうです。
●果物:マンゴーとブドウ
なんちゃってマンゴーじゃなくて、沖縄か宮崎の国内産...の筈
●菓子:ゴールドラッシュのアイスクリーム
白味噌が隠し味
●静岡茶:
<お酒>
●生ビール:エビス
●磯自慢:地元限定、純米吟醸、大井川のめぐみ、焼津
お店から数分の距離にある酒蔵。地元限定酒なので都内でも入手困難。ふくよかな旨口でした。
●初亀:純米吟醸、藤枝
●若鶴:辛口 玄、砺波
●志太泉:純米吟醸、ラヂオ正宗、藤枝
●杉錦:きんの介、藤枝
各半合程度なので、合計三合弱
駅前に小泉八雲の焼津紀行文の記念碑が。
駿河湾に続く水路。なぜか帆立の飾りが。洗礼名がJacobsのラッコは思わず立ちどまります。サンチャゴデコンポステーラへの巡礼路?確かに海は続いているよな、アハっ
家康公と関係のある土地柄なんですね。戦国時代の罪を洗い流すものだそう
由来が書かれております
お祭りの行燈。お話をお聞きしたお母様とポートレートを撮ろうとしたら、奥に引っ込まれてしまいました
入口。三州屋の屋号は初代の蕎麦屋さんの名残り?
江戸時代、この場所に高札が立てかけられていたようです
港の堤防から遠くに海を臨む。工事中でこれ以上は入れませんでした。空には満月手前の月が
焼津のマンホール。街歩きをした際、マンホールは記念に必ず撮影します
奥の入口
掛け軸の書がボケてしまいました
窓の奥が厨房です
エビスの生ビール。お手拭きはPOLO
赤いかと生食カボチャの和え物。一見、パパイアと勘違いしちゃいました
安倍川の鮎の一夜干しの唐揚げ
天日干ししたことで旨味が充満
一番出汁用の鰹節
日本酒はシェリー風のグラスで
お酒の表メニュー
血鯛の一番出汁
昆布と鰹節と血鯛の出汁。悶絶
炭火でズッキーニと松の舞獅子唐をじっくりと時間をかけて炙ります
真ハタ。手前は加減酢
一枚目は塩で、二枚目は加減酢と山葵でいただきます
真ハタの脂が溶け込んだ加減酢を飲み干します
地物の黒鮑の酒蒸し。肝添え
藤枝の銘酒
金目鯛の炭火炙り。鱗は松笠仕立て。皮目がパリッパリで皮付き豚肉の炙りのよう
もはや豚肉?
ズッキーニの炙り
砺波市の銘酒
敢えて残した黒鮑の肝にシャリを追加。更に追い肝
酒器
お猪口一覧。『どうぞ、そのまま置いて自由にお使いください』とのこと
松の舞獅子唐と鱧の卵の出汁煮
浜名湖産の天然鰻
藤枝の銘酒
酒器
天然鰻が炭火で地焼きに
鰻のトッピングは赤玉葱のみじん切りと山葵
赤玉葱の酸味が天然鰻の脂を斬ります
皮目もお見せします
こちらは鱧。愛知産です
蛸と焼きナスとオクラ
藤枝の地酒
香の物
酒器
鱧の炙りと枝豆の混ぜご飯
お味噌椀
一膳目
二膳目のおこげ
静岡茶
縁側
裏口
マンゴーとブドウ
玉蜀黍のアイスクリーム
中庭
祭りの行燈は十時過ぎでも点灯中
駅前の水路
何故か人魚姫が
ラッコをちょい見せ
駅前南口です
2019/08/13 更新
土曜日の夜です。
今夜は焼津の七夕祭り。お店の女子によれば、子供たちの夏休みに合わせて今の時期なのだそう。
マスク姿の『やいちゃん』も登場し、アシスタントに手を引かれて商店街をトコトコ、練り歩きます。
日も既に西の空に隠れ、乾いた海風が心地良い。
今夜は二ヶ月ぶりの『温石』さん。
昂る期待に胸を弾ませながら、お祭りの人だかりを避けるように裏路地をノテノテノテ。
正面の路地に入って玄関先に近づくと、外でお客さんさんの導線を案内している女子がすかさず『xxxさん。こんにちは。お待ちしておりました』とお声がけ。
マスク姿でも分かっちゃうのかな?
お一人様はラッコだけ、と言うことかな?
靴を脱いでカウンターに座るラッコ。
落とした照明。
天井の板の木目の美しさ。
開放感のある大きめの窓。
ふう〜っ!
落ち着きます。
炭のはぜる音を聴きながら、エビスで唇を湿らせます。
奥の厨房から杉山氏が現れます。
『お越しくださいまして、有難うございます』
柔らかく涼しい目元が麗しい。
そのお人柄が手にとるように伝わります。
『今夜もタップリとお願いします』と、恥ずかしげもなく貪欲なラッコ。
いけませんね。うん、いけません。
食べ過ぎはダメダメ。飽食はハートに無駄な脂肪をつけてしまいます。
でもね、それは無理と言うもの。
豊かに熟した静岡の山海の美味が杉山氏の掌で悦ぶそのさまに接すると、そんな小さな決意なんて最初から無いも同然。
さてさて、それでは本題。
いただいたものは以下の通りです。
取り分け、天然スッポン、ハタのお造り、天然鮎の天日干しチップ、ランプの炭火焼きがラッコのワガママな胃を黙らせます。
しかと堪能させていただきました。
次回は秋の天然キノコを求めて十月の膳。
そしてご馳走さまでした。
<お料理>
詳細は写真欄に記載しましたので、画像と一緒にお読みいただければ幸いです。
●蛤とモロヘイヤ
●天然鮎チップ
●天然スッポンと管牛蒡
●新蓮根と炙り唐墨
●本鮪の中トロとハタ
●黒ムツのタタキ
●コリンキーの三杯酢和え
●白茄子かき揚げ
●甘鯛:炙り
●ズッキーニ:炙り
●黒ムツ:炙り
●枝豆の摺流し、朝どれ
●煮えばな
●長崎和牛ランプの炭火焼き:オクラと茄子
●鱧ソボロ甘長唐辛子ご飯卵黄乗せ:一膳目
●ランプ炙りご飯:二膳目
●鰯と鱧と甘長唐辛子ご飯:三膳目
●鱧出汁掛けご飯:四膳目
●糠漬け
●抹茶
●デザート:山梨本白鵬
●デザート:トウモロコシの葛焼き
<お酒>
お酒にお詳しい女子が控えていらっしゃいます。
好みを伝えれば、表メニューだけではなく、色々な隠し酒を提供していただけます。
●生ビール
●小夜衣の詩:純米吟醸、生酒、限定品、菊川
●若竹:純米、島田
●小夜衣:純米、菊川
●初亀:純米吟醸、藤枝
●正雪:純米吟醸、静岡
●磯自慢:大井川の恵み、純米吟醸、焼津