10回
2024/09 訪問
4年ぶり9回目となる蒲田の初音鮨。創業130年を超える初音鮨はいま大きな変革の中にいる。4代目の中治勝大将は海外などで精力的に活躍されていて、お店はいま5世代目となる砂原隼人氏率いる若いながらもポテンシャル溢れるチームが挑戦を続けている。
10月からはさらに新しいコースも始まるという。
130年の伝統や勝大将が作り上げた初音鮨の型を学びながら、いつかその型を破っていく。そんな期待に溢れるひとときだった。
シャリ味見
鮪の竜田揚げ
厚岸 赤身 塩
厚岸 トロ
すき身の手巻き
アオリイカ
小鰭
江戸前の牡蠣
車海老
鯵
海老の頭
北海道 鰤
鰹の漬け
イクラ
鮎の塩焼き
あら汁
芝海老の玉子焼き
自家製フィナンシェ
2024/09/21 更新
2020/08 訪問
初音という料理、初音鮨
だいぶご無沙汰してしまった初音鮨。
入り口で手の消毒をしてから、席に案内される。もはや
飲食店のスタンダードな手法となった。
配膳を見ると今回はなんと4席のみ。なんと贅沢な。
そしてマスクをしまう紙袋まで用意されている心遣いはさすが。
茹だるような夏の初音劇場がスタート。
一品目はいつもの鮹から。相変わらず噛めば噛むほど味が滲み出る。そして早くも松茸が登場。岩手さんの松茸は包丁を入れるとフワリと芳しい香りが漂う。
そしてつい最近登場し始めた、大きな鎌倉海老。伊勢で取れたら伊勢海老、鎌倉近海で上がったものは鎌倉海老というそうだ。
そして今回出色だったのが鱧。夏の代表的な魚のひとつだが、なんと鱧の白子も使い、松茸も載せて握るというとんでもない一貫が登場。鱧の白子は大変珍しく、初めていただく。口の中で色々な風味と食感が入り混じって唸る。今日のナンバーワン。
今回は季節もあってか熟成というよりは素材の味をストレートに活かしたものが多く、夏らしいコースとなった。
そう、初音という料理、そんなお店。
2020/08/10 更新
2019/11 訪問
初音という料理、初音鮨
晩秋の初音鮨。
リニューアル前も含めて、この季節に伺うのは初めて。
最も高級な食材が集まるためこの期間は値段も55000円に上がる。果たしてそれに見合ったものはあるのか…。
結果から言うと、そんな心配は愚かな杞憂でしかなく、圧倒的な食材とそのポテンシャルを最大限引き出す大将の技、そしていつものパフォーマンスに圧倒された。
大間の鮪は良質の脂が乗り、抜群の口溶けで魅了される。とんでもない仕入れ値のこの鮪をふんだんにツマミ、ヅケ、全部入り手巻きとこれでもかと出してくる。
天然鰻はカリカリの皮目とふっくらの身に旨味が凝縮し、今だけの香箱蟹、あん肝、皮剥の肝の乗せなど、
この瞬間の最高レベルのものが次々と出てくる構成は圧巻だ。
この季節、初音鮨に登場する名物といえば、白トリュフ。じゃが芋かと思うような大きな白トリュフは塊のままでも魅惑の香りが鼻をくすぐる。それを鱈の白子に山盛り投下。もう白子が見えない。これはもう言葉が出ない。
恒例の本日最高の一貫選びにこんなに悩んだのは初めてだ。どれもこれも本当に甲乙つけ難い逸品。
悶絶した挙句に選んだのは白川(白甘鯛)。じっくり寝かせて熟成が進んだ白川は信じられないくらいの旨さだった。
いつまでも噛み締めていたい欲望に駆られる。
これだけの食材が揃うともはや鮨という概念を超え、初音という料理なんだと思うと腑に落ちる。
次は真冬の季節にお邪魔したい。
そう、初音という料理、そんなお店。
2020/11/29 更新
2019/05 訪問
新・唯一無二、初音鮨
あの初音鮨が戻ってきた。
新生初音鮨は店内も改装して「山」と「海」という名前の2部屋に分け、それぞれ鮨部屋と喫茶部屋となっている。
それに伴い、今までになかったツマミから始まるコースに変更したり、スタッフの数も増員された。
スタイルは変わったが、初音鮨の本質は変わらない。
最高の食材を最高に美味しくいただく。
加えて最高に楽しく、だ。
まずは佐島の蛸から。以前は握りで食べていたがツマミで食べても当然美味い。ひと噛みごとに旨味が広がる。
八寸も焼き鰻や鮑なども食欲を掻き立てる。
今日の鮪は那智勝浦の158kg。那智勝浦の鮪はきっちりと脂が乗っていて、赤身よりも中トロ大トロを楽しむのに向いている。今回は刺身を塩で供された。脂と塩味が馴染んで舌に溶けていくのがわかる。
さあいよいよここから握りだ。
今回特に際立ったのが小鰭と白皮だ。小鰭は絶妙な酢と塩味のバランスで締められ、口の中に爆発的に旨味が広がる。もう一貫の白皮とは白甘鯛のことで、京都ではぐじと呼ばれる高級魚のことだ。今回その白甘鯛を1ヶ月以上も熟成させ、限界ギリギリまで旨味を引き出している。そんなに長期間寝かせたのは初めてだったが、大将の技術の為せる技なのだろう。
初音鮨恒例の行事で本日最高の一貫をお客がそれぞれ発表するというのがあるが、悩みに悩んで今回は白皮とした。
そのほかにも大振りの牡蠣や大トロの炙りなど、初音鮨でしか食べられない握りのオンパレード。本当に復活してくれて良かったとしみじみ思う。
さて食事が終わると海の部屋に移動する。ガラッと雰囲気が変わり、寿司屋というよりホテルのバーカウンターのようだ。
ここでは葛切り、コーヒーに、自家製のアイスクリームまで出てくる。
なんと素敵な時間なのだろうか。
これからも女将さんのお身体に障らない範囲で末永く続けて欲しいと願う。
そう、新・唯一無二、そんなお店。
2019/05/12 更新
2018/01 訪問
やっぱり唯一無二、初音鮨
冬の初音鮨は初めて伺う。
前回は秋の松茸だったので今回は一体どんな逸品が味わえるのか。
シャリの味見からはじまり、蛸へと続くのはもはや定番の流れ。この蛸は今までの初音の蛸の中で一番旨味が溢れていた。
今回は貝類が充実していて赤貝、煮蛤、牡蠣が供されたが煮蛤は酒以外の味をつけず天然の塩気のみで蛤そのものの味を最大限に引き出していた。
牡蠣は蕗の薹の味噌と合わせ、味噌のほろ苦さが牡蠣の円やかさの絶妙なアクセントとなっていた。
熟成系では金目鯛が群を抜いた完成度だ。
8日間寝かせた金目鯛は水分が抜けて、爆発的な旨味を醸成していた。恒例の鯵の熟成も相当美味いが今回は金目には敵わない。
そのほかにも河豚&白子、毛蟹、あん肝など珠玉の鮨が目白押しだ。
思う存分初音劇場を堪能させてもらった。
やっぱり唯一無二、そんなお店。
2019/01/25 更新
2016/07 訪問
唯一無二、初音鮨
初音鮨の存在を知ってからどれくらいたったろう。
とにかく予約が取れない。電話がつながらない。指が痛くなるくらいリダイヤルして、
やっとつながったと思ったらもう満席。そんなことがずっと続いたが、数か月前に奇跡的につながり
今回念願の初訪問となった。
残念なお知らせになるが、もう電話での新規のお客さんは取らないことにしたそうで、
これから初めて初音鮨に行きたい方は、誰かの予約に便乗する以外にはなさそうだ。
場所は蒲田駅から徒歩7~8分といったところ、鮨屋のイメージとはかけ離れたカラフルでかわいいアルファベットの
「HATSUNE」の文字が。
運よく一番奥のカウンターに案内され、いよいよ「中治劇場」のスタートとなった。
まずは赤酢のシャリの味見から。みなさんのレビューにあった通りだ。
劇を作り上げ、完成度を上げるには演じ手だけではなく、観客、つまり食べ手にもレベルが求められる。
今回は「空気を読まない」客もまじっていて大将もちょっとやりづらそうな気配もあったのがやや残念。
それはさておいて、大将と客の「最高の食材」を通しての真剣勝負が始まった。
まずは佐島の蛸から。舌の上に乗せ、5秒まって口内で香りを膨らませてから
ぎゅっと蛸をかみしめる。
塩もみして茹でたシンプルなものだが、噛めば噛むほど蛸のうま味があふれ出てくる。
次は小浜の鯵。鯵は味がいいからアジというそうだ。
鯵は普通の鮨屋だと葱や生姜などと合わせて供されることが多いが、初音では違った。
最高の鯵を2週間寝かせて仕上げてくる。
写真を見ていただければわかるように、水分が抜け、見た目も鯵というか、ハムのように変わっている。
舌に乗せると、熟成によりうま味成分がとんでもなく急増しているのを感じる。
熟成によるものなのか、スモークしたような風味すら鼻に抜けてくる。
こんな鯵は初めて食べた。味がいいからアジも納得だ。
全部のネタを説明したらキリがないので、特筆すべき印象深かったものを抜粋すると、
千葉大原の鮑。900g級のかなりの大物を蒸しあげ、惜しげもなく肉厚に切っていき、
肝を間に挟んで握られる。これほど美味い肝は初めてだったので目を見開く。
そして1.9kgの天然鰻。大振りゆえに大味な想像を大きく裏切り、ギュッと身がしまった
肉厚な歯ごたえと、香ばしい皮目がたまらない。
毛ガニも、ほぐされた身と味噌を和えたシャリがまるでオニギリのような大きさ。
怒涛のマグロシリーズもさすがの出来だった。好みの問題かもしれないが、脂の乗った
トロも美味いが、それよりも熟成された赤身の美味さが秀逸だった。
赤身にあるちょっとした酸味が爽やかな後味となる。
もう、満足すぎて言葉にならない。
大将のサービス精神は果てしなく、写真撮影もにこやかにポーズをとってくれる。
ただ、その笑顔が食材を切りつける瞬間、キッと真剣勝負の顏に変わる。
エンターテイメントの顔と、真剣勝負の職人の顔。
これがここまで多くの人を引き付ける魅力の源泉であることに気づかされる。
最高の食材を、さらに上のステージに引き上げる職人の仕事はさすが、ここでしか味わえない
唯一無二のものだ。
食べる喜び、そんな言葉が浮かんだ。
帰り際に次の予約を申し出ると。。なんと次は来年の3月。
きっとその時には、さらに期待を上回る劇場となっているに違いない。
唯一無二、初音鮨。
かわいい外観
佐島の蛸
2週間熟成させた小浜の鯵
2週間熟成させた小浜の鯵
イカとばちこ
イカとばちこ
900g級の鮑
鮑
鮑の肝を挟んで
20kgの熟成ヒラマサ
20kgの熟成ヒラマサ
1.9kgの天然鰻
皮目がパリッパリの鰻
青森産のマグロ
赤身(塩)と赤身(漬け)
赤身(塩)
赤身(漬け)
ウニ
鮎
鮎
中トロ(塩)
中トロ(漬け)
毛ガニ
毛ガニ蒸しあがり
身をほぐし、味噌はシャリと合わせて
蛇腹
大トロ炙り
大トロ炙り
マグロ全部入り!
マグロ全部入り
干瓢
玉子
2016/07/24 更新
蒲田の老舗、初音鮨。いまカウンターに立つのは第五世代の若き職人たち。大将から受け継いだ仕事に、彼らなりのまっすぐな解釈が宿る。江戸前の技と若さが交差する。
この日のおまかせはこちら。
• 尻労産 赤身
• 中トロ
• 鮪叩き
• 小鰭(1週間寝かせ)
• 平政
• 春子鯛
• 鯵
• 蛤 酒蒸し
• 鮃
• 真鰯
• 甘海老
• 鰹 漬け
• あら汁
• 穴子
• お椀
• 干瓢巻き
• 出汁巻き
特筆すべきは、光り物の締め。小鰭は一週間寝かせて旨みを引き出し、酢のあたりも実に穏やか。鯵、真鰯といった青魚も、香りと脂がバランス良く整えられ、口の中で調和する。春子鯛もやわらかく締められ、身の輪郭を崩さない絶妙な加減。
若い勢いと、初音の流儀に忠実な丁寧な仕事。両者が共存する稀有な一席。
老舗の風格を残しつつ、これからどんな表情を見せてくれるのか。
また季節を変えて訪れたいと思わせる、余韻に酔う粋な一夜。