4回
2017/01 訪問
再訪多数 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
前回よりさらに脂が乗ってきたみかんヒヨドリスパイスフリット
田シギのタルタルをタルトに乗せてキュイスと脳
タルタル絶品。肉が馬のようだけどさらに旨味がある。少量のマヨネーズで和えたのみ。そして鮮度良い為脳のクリーミーさも抜群。
小綬鶏と田シギ
小綬鶏のロティ、下に焦がした赤軸ほうれん草を敷いてマデラをクレメした甘いクリームソース、ゴボウのチップ、トリュフ
これは王道ながら旨い!濃厚な甘みあるソースに滋味溢れる小綬鶏。下にソースを吸い込んだ赤軸ほうれん草にトリュフの妖艶な香り。小綬鶏の旨味の引き出し方は既にこの際より進化している。
雷鳥のパイ包み、ソースサルミ、菊芋のピュレ
火入れは完璧。好みとしてはサルミに酸味を与え、もう少しその分トピナンプールのピュレの濃度をあげる様な皿の中のバランスが僕は好み。
ベカスのロティ、コラトゥーラとコニャックを入れた七草がゆにベカスのビスクを注いで
ビスクをかけて
七草がゆが少し柔らかいのとお皿にアクセントが欲しいけど構成はかなり良い感じ。コラトゥーラをベカスの魚臭とリゾットの繋ぎにしている。ナッツなどはコクと食感の観点などからも良いかもしれない。
バターを少し入れたデトランブでおったフィユタージュのガレット・デ・ロワ
焼き込んであり中まで香ばしいフィユタージュ。ガリガリとした食感でバターの風味、メイラード反応の風味などは圧巻。素晴らしい!
2017/04/25 更新
2016/12 訪問
ベカスと魚を合わせた一皿。
そんな問いへの室田シェフの回答は自分の一番得意とするソースを捨てることでした。
2週間寝かせたベカスのロティ、燻製をかけたかますのポワレにスープのようなソースサルミ
適度な熟成のベカスは青魚までの風味が苦味なく綺麗に引き出される。
そこに強めの薫製の香りをまとわせたかますのポワレ。水分をかなり抜かれ、プリッとした食感と燻製の香りはベーコンを連想させる。
その2つを繋ぐのはさらっとしたゼラチン質はぼぼないソース。
鳥やベカスの旨味と血のスープだ。
シェフが得意とするフォンとワインを煮詰めに煮詰めた粘度のあるソースは皿の完成度を考えて捨てたという。
そのソースは赤ワインビネガーの酸味と軽めのテクスチャーがまるで伝統的に魚に添えられるソースヴァンブラン。ベカスの血のソースながらもかますに馴染み引き立てる。
薫製の香りとかますに乗った脂がこれが伝統的に添えられるベーコンのよう。
ベカスにさらに風味と旨味を与える。
クラシックな味の構成をポアソンとヴィアンドを一皿に組み上げて作り上げられた素晴らしい一皿だった。
他にも白子とジビエを合わせて欲しいとの話から1週間熟成の雉胸肉と雉のコンソメに合わされた白子は、どこか胡椒のようなスパイシーな風味ある雉肉とコンソメにコクとまろみを与えクレメせずとも口内で自然なポタージュ化し、とても良かった。
月の輪熊のスグリとポルト煮込みは月の輪熊の脂は厚みが2cm弱の素晴らしい脂乗りとソースも超濃厚で大迫力の仕上がりだった。ただこれは濃度とゼラチン質がすごいだけにもう少しのアクセントと更に煮込んで脂がより溶ける方が好みではあった。
デセールはエルダーフラワーのシロップでマリネされた苺、苺のピュレ、バニラアイス、飴のチュイルなどの構成。エルダーフラワーの抜ける香りがとても華やかなものの味的構成にもう少し複雑味があると面白いかもしれない。
季節の肉に季節の魚介と野菜のお皿たちが古典的技術と新たなアプローチの上で舞う。
いつも本当にありがとうございます!
今一番歩みを止めないレストラン。
〜今回いただいたもの〜
キジバトのムース、焦がしバターのパートに乗せて
1ヶ月熟成の孔雀の胸肉のロティ、孔雀のコンソメ、白子のムニエル、銀杏、くわい、トリュフ
月の輪熊バラ肉の赤ワイン、ポルト、スグリの煮込み
2週間熟成ベカスのロティ、強く燻製をかけたかますのポワレ、スープのようなソースサルミ
エルダーフラワーの香りをまとわせた苺、グラスバニーユ、飴のチュイル
ミニャルディーズ、コーヒー
ほんのりとコニャック香るキジバトのムースを焦がしバターのパートに乗せて
一ヶ月熟成孔雀の胸のロティと孔雀のコンソメ、白子のムニエルと銀杏、零余子、トリュフ
軽くゼラチン質でべたっと。孔雀のスパイシーな香りと味も強いのが白子でジャストに。白子なしでは印象変わったと思う。
赤ワインとポルトにスグリを効かせた月の輪熊バラ肉の煮込み、根セロリのピュレ
良質な脂がものすごく乗った月の輪熊。キュイソンも超濃厚。
2週間熟成のベカスのロティ、スープのようなソースサルミ、強めの燻製のかます
さらさらの酸味のあるソースは通常と違い流れる、塩気と旨味、粘度のバランスが完璧に食材を繋ぐ。
エルダーフラワーのシロップでマリネした苺とグラスバニーユ、苺のソース、飴のチュイル、
栗のガトー。これは素朴すぎ?
2017/01/28 更新
2016/12 訪問
再訪多数 我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
〜6回目 11月中旬〜
みかんひよどりのスパイスフリット、ミカンのジュでラケにして、焼きミカンとバターミルクとハーブのソース
スパイスの香りが立ち込めた。
シェフが調合したスパイスの香り。
クミン、ターメリック、コリアンダーが主張する一般的なカレーと違い、フェヌグリークやアニスのドライな干し草のような香りと甘い香りが快活に鼻腔に飛び込んでくる。
ひよどりはさっと揚げられることで脂は残しつつも身はプリプリと、骨は鮎のようにバリバリと。
餌にしているミカンの果汁を身に塗ってフランス料理の照り焼きである。
頬張り、骨が口の中で砕け、コクと香りが炸裂する。起源的興奮を抑えきれない味だった。
ひよどりは都内で数件扱うお店がある。だが、一様にしてグリエされる。香ばしさはあるものの小さい身ゆえ香ばしさが身に対して強すぎる。骨も硬い。
揚げたらどうですか?という問いに応えてくれた一皿。
肉も柔らかく少し骨は硬いがいける。さらにそのスパイスも素晴らしかった。インドのマサラでも使われるのが限られるスパイス、ニゲラまでもを使う柔軟性に驚き実際にその香りの相性の良さに驚いた。
ただひよどりは完璧であったもののつけ合わせの焼きミカンは水分量が多くヒヨドリの充実した身と一体感がなかったのだけは気になった。
とはいえここまで考えて料理されるひよどりは幸せだ。
ヒヨドリ料理の最前線だ。
今回いただいた尾長鴨のロティと牡蠣のフリカッセの一皿は海の風味のある尾長鴨と牡蠣の相性は間違いないと思わせる相性。ゆるい牡蠣と尾長のテクスチャーの一体感がもう一つだったものの尾長鴨の味は今まででトップレベル。
熟成させてジビエの香りを出し、サルミソースというのがジビエ料理であった。
だが違う次元に進化しつつある。
ジビエを味わうだけではなく作りたい一皿から逆算したジビエの熟成とサルミにこだわらないソース。柔軟なガルニチュール。
デセールもかぼすの酸にホワイトチョコの甘みとナッツのコクが合わさり間違いない美味しさでした。
絶え間ない努力と進化がとまらない。刺激的。ありがとう!
〜5回目? 10月下旬〜
沖縄の幼雉のロティ、香茸と黒皮と雉のジュのソース
背徳的な味だった。
限度を超えた快感は何かいけないことをしている様な気にさせられる。幼児を喰う、カニバリズムとはこういう事なのだろうかとまで。
撫子色の身は、処女性までをも感じる初々しいしさと柔らかさに満ちていた。肉の中に走る一本一本の血管そして血までも何一つ穢れないような味。
脂は仄かに黄色がかり優しく良質なバターを思わせる甘み。
撫子色と黄色い味が混ぜると桃色の肉になる。
余りにピュアで柔らかな自然の命。
その下のソースは柔らかさに相対する。
雉や子牛の出汁に香茸と黒皮。松茸と並ぶ茸の共演。
軽やかながら煮詰めに煮詰められたドミグラスの様な仄かな苦味、そして漂う香茸の果実と醤油の合わさったような香り。
柔らかき産まれたばかりの甘い肉に、大地が育んだ土のコクと苦味が絡む。
大自然の端と端を結び、数世紀前のソースシャスールが完全に日本の豊穣で甦った、唯一無二のお皿。
文明が誕生するまでの気の遠くなる程長い年月、人は知恵のみを頼りに肉を得て、食物をさがし、自分の技で1日1日を生き延びた。
国境は大陸や時代を超え張り巡らされ、大地という大地を人間という種が踏みしめる。
狩り、料理する。
室田シェフの料理。
時を超え受け継がれ、積み上げられた技を用いながら、生命を扱う彼の料理が教えてくれる。
「生命で生命を繋ぎ、僕たちは語り、踊るんだ」
デコからラチュレになり変わったことが多数ある。
ガルニチュールがアラミニット、添え物でなく引き立てるものに。
前菜類の魚も熟成をかけてみたり面白い。
ジビエのコンソメやビスク、スフレなどここでしか味わえない味が多数ある。
さらにオープン初日、1ヶ月と比べてもどんどんと料理の幅が増え同じ料理でも質が上がってきている。
パティシエさんも挑戦的で、またぎ茶のデセールやローリエと山崎のデセールなども残る味。
タテルヨシノ銀座でメートルドテルを勤めた山本さんの造詣の深さ。
お値段もデコよりリーズナブルに、心意気を感じます。
もちろんスペシャリテのジビエもより磨きがかかり、ロティに限らずポッシェなども。シェフ自らもとる日本の野生のキノコの種類も多数、徐々に野草も料理に取り入れつつさえある。
日本の豊穣、自然が全てが注ぎ込まれる。
忘れられない味が多数。雷鳥のコンソメポッシェ、穴熊のパテ、パイで覆われた雉のコンソメ、鹿節とコンソメのスープなど。
多分一生忘れない。一度行くだけではシェフと自然の深さはわからない。ぜひ何度も足を運んでみてほしい。
タヒチに移ってゴーギャンが人類の起源と生命について考えたように。
僕たちはここでも考えることができるだろう。
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか。
ヒヨドリは仄かに甘く素晴らしいスパイスの香り。味も香りもご馳走!
ヒヨドリのスパイスフリット、ミカンのジュでラケして、焼きミカンとハーブのソース
ヒヨドリ
ヒヨドリ
ヒヨドリ頭ー。頭はちっちゃいのでそこまで
ニゲラ、フェヌグリーク、アニスなど自家製スパイス
尾長鴨
尾長鴨のロティ、牡蠣のムニエルの軽いラグーとカルガモのジュとキノコにフォアグラのソース
牡蠣と尾長鴨の風味は抜群に合う!あとはソースがもう少し濃くても。
尾長鴨の脂のりと香ばしい火入れで肉も極上!繊維細かくて熟成度によっては青首より好きかと。最高の一羽をありがとう!
カボスとホワイトチョコ、ナッツのヴァシュラン
ナッツのメレンゲとホワイトチョコにカボスの酸味。大好きな味!ホワイトチョコ板がもう少し薄くてもいいかも。
ヒヨドリは本当に内臓がみかんの色に
翡翠のソースが綺麗すぎて
これソースと共に深く旨い!黒皮と香茸なんて1番滋味がある茸の共演。幼雉に黒皮と香茸のソース
穴熊のコンソメ、パイ包み
雷鳥と天然舞茸のコンソメポッシェ、その出汁で
雷鳥の苦味と天然舞茸の土の香り高さがからむ、茹で雷鳥
穴熊のロティ、小豆のチュイルなどなど。やっぱり穴熊は大好物。
キジバトのスフレ。カリッとはしていないがものすごいふわふわとした空気感の中にキジバト全てからとった濃厚な肉の風味
鹿節のジビエコンソメ。
鹿節
スズキのパイ包みブールブラン、鮎の時よりソースのキレが良くなってました
かますの冷燻
黒イチジク、フィナンシェ、ロングペッパーのアイス、小笠原みりんをかけて
シャルトリューズでマリネしたフレッシュな次郎柿と追熟した蜜柿、下に黒豆の菊醤をアクセントにしたプラリネ、フィユタージュを散らして
崩してしまったけれど、竹炭のメレンゲ、フォアグラのムース、トリュフのアイスに赤ワインソース、下はショコラでまとめて
鹿、猪、熊、フォアグラに鹿コンソメのパテアンクルート
穴熊パテ。穴熊の脂を活かしきってるなぁ。パテって言っても溶けるよ。見た目地味だけどめちゃ旨!
雷鳥のバロティーヌ、フォアグラを巻き込んで、コニャックなどの香りはどんどん抑えてる感じ
猪のパテ、パイに乗せて
牡蠣のグラチネ、もちろんサバイヨンからアラミニット
秘密のアイス、クイズでした。
穴熊のケークサレ
山本さん取り分け綺麗
初めと温度変えることで美味しくなった鹿の血のマカロン
熊の脂のフィナンシェ
天然白舞茸
雷鳥
沖縄高麗雉
フェザンの完璧な火入れわかるかなー
こっちは幼雉、さらに繊維が細いよ
鹿のブーダンも初日より美味しく
白身にだけどぴったり、今回の為に入れてくれてありがとう
2017/04/25 更新
2016/08 訪問
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
つい先日でオープンして一周年を迎えたラチュレ。
現在、東京でジビエを扱うレストランとして有数の人気を誇るお店である。
ラチュレの前身となったレストランdecoで室田シェフから独立の話を聞いたのは2015年の冬の事。
そして約1年前、室田シェフがdeco時代からの中本さん、樋口さんに加え、サービスの山本さん、パティシエールの美也さんを迎えラチュレを青山大学側にオープンした。
その頃、写真こそ偶にとっていたものの食べログはほぼ書いていなかったので載せていなかったオープンの際にいただいたメニュー。
それから1年を経ての進化も少し書こうかと思う。
季節が一周した事もあり、先日訪問した際にオープンの際と同じメニューを数品いただいた。
だが、それは明らかに別のレベルの料理に昇華されていた。
この時はアミューズの鹿の血のマカロンは温度が低すぎて口溶けが悪かったり、ポワソンの鮎のパイもフィユタージュやソースのバランス、火入れも好みから外れるものだった。
だがこの少し後に伺った際にはマカロンの温度管理もしっかりされるようになり、口溶け良く変化。
2017年の鮎パイに至っては鮎も天然へと変え、フィユタージュは薄くした上で中のファルスへの火入れはさらに柔らかく。と全く別の次元へと進化していた。
そしてこの時はまだdeco時代の料理が前菜類に見られたが、現在は今年から始めた海亀の料理が前菜として提供されるなど、此処でしかいただけない料理ばかりとなっている。
現在はさらに厨房スタッフも1名増え、素材もさらに多岐に渡っている上、料理の幅やクリーエーションという部分でも明らかに進化していると感じる。
今月末にはシェイノで巨匠シェフ達とのコラボディナーも控えているし、まだまだ挑戦したい素材や料理があるという。
更には他ジャンルの料理人とのコラボにも意欲的な室田シェフ率いるチームラチュレ。
この1年で一気に東京でもトップクラスの人気店になったが、その進化にまだまだ期待したい。
いつも本当にありがとう!
一周年おめでとうございます!
〜いただいたもの〜
鹿の血のマカロン
猪のベーコン ジロール ポムピュレのタルト
とうもろこしのヴルーテ
ヴォライユ入り
キャラメルポップコーンをまとわせたフォアグラのムース
阿寒湖エクルヴィス マレンゴの再構築
愛知2日熟成鯵と桃 バジルオイル バターミルク
帆立 鮎 生海苔のムース 鮎のフィレのパイ包み焼き ソースブールブラン
島根雌猪ロースのロティ 赤ワインとポルト、黒にんにくのソース セックにしたよもぎ たまご茸のバターブレゼ
山梨皮ごと食べられるマスカット、ソースアングレーズをグラチネして、ビーツと山葡萄のピュレとそのソルベ、ビーツを山葡萄のジュにつけたチュイル、クランブル
鹿の血のマカロン
猪のベーコン ジロール ポムピュレのタルト
キャラメルポップコーンをまとわせたフォアグラのムース。フォアグラのテリーヌにクリームと卵黄を加えて極めて柔らかな口溶けに。
とうもろこしのスープはヴォライユ入りで。
阿寒湖エクルヴィス マレンゴの再構築
エクルヴィス入りのルーローと奥のトマトソルベの口溶けの差が大きく過ぎる印象でした。
愛知2日熟成鯵と桃 バジルオイル バターミルク
帆立 鮎 生海苔のムース 鮎のフィレのパイ包み焼き ソースブールブラン
フィユタージュは今年はより薄く、ファルスは鮎のフィレへの火入れはより繊細に変化。別次元の完成度に。
島根雌猪ロースのロティ 赤ワインとポルト、黒にんにくのソース セックにしたよもぎ たまご茸のバターブレゼ
これは流石の美味しさ。雌猪の肉質は柔らかな上、ジャストな火入れ。脂はもちろん猪の甘みと口溶け。ソースはポルトの甘みに加え黒にんにくのコクに満ちる。
タマゴタケはバターも言わずもがなの相性で美味。
2017/08/27 更新
デコ時代からは勿論、ラチュレになってからも前に進みづつける事、その挑戦で魅力してくれる室田シェフ率いるレストランである。
味だけに留まらず、スタッフ全員のホスピタリティや人柄に惹かれ相変わらず月1回以上お邪魔している。
これは年始の事となる。
色々とご相談し、冬の豊穣をいただきに伺った。
今回いただいたものどれもジビエの力強さと滋味深さに溢れていた。
今回の白眉は田シギのタルタル。
赤身で肌理細かく綺麗な身質。
鮮度も極めて良い状態であった為、癖一つない。
身は極細かい脂肪が噛んでいるような旨味がある。
火を入れると脂の少ない個体も多い為、パサつき易く山シギに比べると風味にかけると感じていたが火を入れきらないでいただくその肉は滑らかで噛んだ瞬間の旨味から咀嚼後の余韻までもが長く、ピュアさと共に他の赤身を凌駕する味わい。
特性、状態を見極めた室田シェフならでの素晴らしい一品。
雷鳥のパイ包みも流石の精度。
カリッとした食感の後にバターがジュワリと広がる芳醇なフィユタージュに包まれた雷鳥は穏やかな香り。
サクサクと歯切れが良くパイの中ながらも完璧な火入れの身にフォアグラが絡み、更にソースサルミが絡む。
サルミはごく濃厚。フィユタージュに合わせるには後少し酸などがあってもキレとして気持ちよく作用するようにも感じたが、とても美味しく、技術を感じる一皿だった。
小綬鶏は軽めの熟成により上品な仕上がり。
癖がない白身である為、濃密なヴォライユベースのソースマデラをクレメしたという、甘くクリーミーなソースとの相性は抜群。
雉などより仄かな野性味を宿した身は、プリプリとした食感で水分は少なく味の凝縮感がある。
その野性味に野性と洗練を結ぶ良質の黒トリュフの相性は抜群であり、誰もがうなづく王道な良味。
鵯も今シーズン此方で戴いたものの中では一番の脂乗り。皮目をからはじゅわりと後口がごく軽やかな脂が弾け、小さい見ながらも満足感に満ちる。
ベカスは冷汁という皿の構成までのリクエストに応えていただき感謝。ベカスの身、ビスク、米という仕立てで作っていただいた。
丁度年始であった為、米は春の七草を入れた軽いリゾットの様な仕立て。
風味が豊かで風味のバランスはとても良かったものの、米が柔らか目であった事や、ビスクの繊維質が比較的粗めであった事な細部の相性にはまだ改善点が感じられた。雑穀やバスマティなどの食感や風味などは更にガルニとしてのアクセントになりそうだ。
只、非常に旨味、風味の構成は素晴らしく来年素晴らしい一皿になる事を予感させた。
最後のデセールは圧巻。
年始なのでガレット・デ・ロワ。
見た目は極王道で別段目を惹く訳ではないが、その深化が素晴らしい。デトランプ生地の中にもバターを練り込んだといい、焼き込みといい風味といい香ばしさと風味が抜群。
古典をもしっかり掘り下げられており、実に感銘を受けたデセールだった。
この訪問時から2ヶ月後ほどに戴いた小綬鶏などは熟成方法を変え、旨味と食感が向上するなど既にさらなる進化を遂げている此方の料理。
現在禁猟期間となっているが、魚ではドービーソールやオンブルシュヴァリエとフランスの極上素材やシェフが渓流で釣ってくるマスなどが並びどれも素晴らしい味わい。
肉では北海道、白糠町の極上のサフォークラムも入っており、2年ほどぶりに戴いたこの羊だが旨味の点では、焼尻島を含め、他日本サフォークラムを凌駕すると実感。
ラムがお好きであれば肉、脂双方の圧巻の旨味を試してみて試してみていただきたい。
他にも野草や面白い肉も入っており、ジビエに限らず進化する。
値段もジビエに比べれば安価に戴く事が出来るし、他では戴く事の少ない極上素材も並ぶ為、一度足を運んでみては如何だろうか。
〜いただいたもの〜
蜜柑ヒヨドリのスパイスフリット、クレソンのソース
田シギの軽く火を入れたタルタルをタルトな乗せて、腿肉のロティと
小綬鶏のロティ、赤軸ほうれん草、マデラを効かせたクリームソース、牛蒡のチュイル、黒トリュフ
雷鳥とフォアグラのトゥルト、ソースサルミ、菊芋のピュレ
ベカスのロティ、コラトゥーラとコニャックを入れた七草粥にベカスのビスク
ガレットデロワ