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1回
昼の点数:4.5
2025/08 訪問
昼の点数:4.5
ジビエが紡ぐ、滋味と静寂の饗宴
2025/08/24 更新
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土曜日、18:45訪店。ひっそりと佇むレストラン。
タクシーを降りると、灯の届かない暗がりに、空気の温度と匂いまでも変わるような静寂が広がっていた。
深呼吸すると、草木の香りを含んだ涼やかな風が肺を満たし、食の冒険が始まる高揚感が胸に広がる。
ここは、ただのレストランではない。ジビエを通じて“命をいただく”という行為と向き合う空間だ。
【料理】
アミューズからメインまで、終始ジビエ。
鹿、猪、雉、そして熊。多様な命を、最適な火入れで、一皿ごとに違う表情で見せてくれる。
すべての肉が驚くほど丁寧に処理されているため、野趣に頼らない。
1つ目アミューズを口にした瞬間は、つい「どこかに獣の臭みはないか」と探しに行ってしまったのだが、見つからない。
その安心感があるからこそ、二つ目のアミューズからは、口内でゆっくりとジビエを転がし、旨みをとことん搾り取る愉しみが生まれる。
特筆すべきは、月輪熊の脂身。
「熊は重い」という先入観を軽く裏切り、澄み切った旨みと甘さが広がる。自然の中で育まれた力強さと繊細さが同居する、まさに逸品。
【ワイン】
ワインは、シェフ自らが料理に合わせて選ぶ。
一般的なソムリエのペアリングを超えるのは、シェフ自身が火入れを知っているからこそ、料理に最も寄り添う酒を選べるためだろう。
どの一杯も、その日の皿に溶け込み、口中で旨みを昇華させる。
【空間と接客】
店内は温かみがありながらも、接客は凛とした緊張感を保っている。
格式ばりすぎず、かといってカジュアルにも寄らない、絶妙な距離感。
「いただく」という行為を尊び、料理と向き合う時間を大切にしてくれる。
【コストパフォーマンス】
このクオリティのジビエフルコースを東京で食すなら、価格は3倍以上もおかしくない。
ここまで高いレベルで、かつ適正な価格で体験できる店は希少だ。
【総評】
ジビエを素材として消費するだけでなく、
「命をいただく」という営みを料理として体現した店。
ワインとジビエを贅沢に楽しみたい夜に、再訪すべき一軒である。
ただし、ランチで訪れるならば、お酒を断ってこの世界観を受け止め切れるかどうか、少し悩ましい。