24回
2025/10 訪問
秋のおくりもの
すっかり秋めいてきましたね、この日は樋口さんへ。秋の味覚をたのしみにしておりました。原宿の雑踏、喧騒を抜けて閑静な住宅街をあるきますと、秋風がここちよい。暖簾をくぐり店内へ、その刹那こころがおどりはじめます。
席につき早速ビールを、この日いただいたものですが(◎はお酒)、
◆ グジの栗蒸し
葛と鰹の出汁餡がかけられたグジの栗蒸し(最初は茶わん蒸しと錯覚)、出汁餡にからめていただけばグジの甘味と出汁で伸ばされた栗の上品な香りが際立つ一品
◆ 琵琶湖の落ち鮎と銀杏
落ち鮎は一日陰干しされた子持ち鮎、炭火でていねいに炙られ仕上げに醤油をひと刷け(秋は醤油の香りがよく合う)、骨抜きされた鮎は水苔のかおりがただよう上質な仕上がり、翡翠色の銀杏とのコントラストも美しい
◎ 黒龍 しずく
◆ お凌ぎ
お凌ぎは万願寺ともち米、からすみをまぶされたもち米の甘味と軽く炙られた万願寺の甘味が絡み合い、そしてからすみのほんのりとした海の香りが追いかけてくる、技あり
◆ お椀
お椀は白甘鯛と松茸、お椀の蓋をあければ、本枯節、白甘鯛、そして松茸の香りが重層的に立ち上りクラクラと軽いめまいを覚える、白甘鯛の程よく脂がのり淡白で上品な味わい、銀白色の皮もうつくしい、松茸は小振りでほどよい弾力、森の水分とたっぷりと吸いしっとりとした茎が印象的、そしてすべての出汁を含んだ冬瓜、突き抜けた感すらあるお椀
蛇足ながら、お椀につき一言
漆塗りの艶消しの黒、内側は松葉と松ぼっくりがデザインされたお椀は上品な存在感がある、輪島の職人さんと相談しながら仕上げてもらった由
◆ シロカワカジキ(五島列島)と真鯛(八幡浜)
シロカワカジキは初めていただくが一週間寝かせた砂ずりはきめ細かさを感じる身質でさっぱりとしたうま味、真鯛は強い弾力の中に透明感のある甘味とうま味をかんじる
◎ 喜久泉
◆ トロ鰆(答志島)
藁で皮目を炙られたトロ鰆は身の甘味がとろけるよう、薫香が立ち上る皮目とともに楽しむ
◆ モクズガニのひろうす
白味噌を加えまったりとした濃厚なビスクのだし汁、モクズガニと枝豆のひろうすにからめていただけば、モクズガニの濃厚なうま味と甘味をひろうすがやさしく包み込み、重層的な味がひろがる
◎ 一歩己
◆ フエフキダイの炙り
氷で締め一週間寝かせたフエフキダイ、炙られたフエフキダイは香ばしい皮の風味ときれいな脂と甘味が際立つ
添えられた栗はマロングラッセのような上質さ
◆ 鰊とゼンマイと里芋の炊きもの
出汁と炊かれた生の鰊を一口いただけば、青魚の豊かなうまみがあふれ出る、鰹出汁で炊かれた里芋はねっとりとした食感がたまらない、たっぷりと出汁を吸ったゼンマイは噛むごとにうまみがあふれでる
◎ 黒龍 福
◆ 香茸、舞茸、熊のひき肉の唐揚げ
唐揚げされた香茸は独特の凝縮された香り高さが立ち上り、一口いただけばうま味へと昇華する
熊のひき肉は実山椒をまぶしどっしりとした風味を楽しむ、土の滋味を感じる舞茸がいい脇役として存在感
◆ 松茸ご飯
貫けるような松の強い香り、新米が銀のように光る、繊維がびっしりとつまり心地よい歯ざわりの松茸が新米の甘味、うま味をはやし立て、幾重にもおしよせてくる、日本人の喜びをかんじる松茸の炊き込みご飯
◆ 鴨の炊き込みご飯
こちらは打って変わった炊き込みご飯、鴨肉から出た上質な脂と旨味が新米に溶け込み、コクと香りが口いっぱいに広がる
◆ お蕎麦
◆ 水菓子(梨、シャインマスカット)
この日は秋のおくりものを楽しみにしていましたが、期待をおおはばにうわまわるお料理ばかり。改めて、樋口さんの技量、引き出しの多さ、想像力に大いに唸らされました。この日はなんといっても松茸ですね、お椀も炊き込みご飯も言葉を失うほどの至福の味わいでした。先月までは岩手の松茸は凶作との報道でしたが、先週くらいから急に獲れはじめたようで、間に合ってよかったです。また、最初にいただいたグジと栗蒸しははじめていただく一品、意外な組み合わせのようにもかんじましたが、そこは樋口さんのこと、鰹出汁と葛の餡かけとの一体感におおいなる創意工夫をかんじさせていただきました。
お酒はいつもながら奥様におまかせなのですが、お料理の特徴を把握し、おいしさを増幅させる冷酒選びは外れがありません。端麗なものからふくよかなものへの切り替えもすべて的確で存分にたのしませていただきました。
出張続きで疲弊した心身が癒され感謝のひとことです。
2025/10/04 更新
2025/07 訪問
夏の味覚
この日は楽しみにしていた樋口さん、少し前にマイレビ様がお出でになられており、ご投稿を拝読しつつ想像を膨らませていた次第です。いやがおうにも、期待が高まります。
18時30分に合わせて到着、さっそくビールをいただきます。夕暮れ時の熱い空気がよどんだなか、神宮前から雑踏のなかを歩いてきたせいかことのほかビールがすすみます。
この日いただいたものですが
◆ 焼き茄子と赤海胆
梶の葉がそえられ季節を感じる、かすかな炭の香りをまとった焼き茄子が赤海胆の雑味のない濃厚な甘みをひきたててくれる、心躍る序章
◆ イチジクとヤイトハタの天ぷら、胡瓜のおろし酢
イチジクの天ぷらははじめてだが、凝縮された香りと甘味を楽しむ、添えられたほうじ茶で香りづけされた白和えは味に深みをあたえてくれる、ヤイトハタは沖縄地方ではミーバイとよばれる高級魚、胡瓜のおろし酢の控え目な青い香りの清涼感をかんじつつ上質な白身をいただく
◆ はまぐり出汁の茶わん蒸しととうもろこしご飯
やや固めに炊かれたとうもろこしご飯、ほのかな海のかおりが漂うはまぐり出汁の茶わん蒸しとからめていただけば、とうもろこしの草原の甘味がひろがる、夏の恵みをかんじさせる一品
◆ 冬瓜と鰻のお椀
お椀のふたをあければ、白髪葱がそえられ圧倒的な美しさのお椀、お出汁を一口いただけば雑味のない本枯節のうまみ、かおりがひろがりクラクラするほど、控え目な脂ののった鰻は、本来のうまみ、滋味深さを感じさせてくれる
◆ お造り
鯛が入らないとのことでマコガレイ、最上質の香り、うまみ、甘味ではないが、夏らしく満足、一方、肝と和えていただけば輪郭がくっきりとしてくるからこちらの方がいいのかもしれない
◆ 鱧の焼き霜
リズミカルな骨切のここちよい音を聞きながら、期待感で心躍る瞬間、ごくかるく皮目のみを炙った焼き霜は身がしまり、鱧のうまみ、あまみが口中に広がる、かすかな炭の香りとともに楽しむ、玉葱じょうゆとからめていただけばまことに至福
◆ スナップエンドウの春巻き
北寄貝の出汁をまとったスナップエンドウの春巻き、夏野菜のさっぱりとした香りと甘味が封じ込められた揚げ物
◆ 鰊と加茂茄子
深みのある煮汁をふくんだ鰊はふっくらとやわらかく甘味がひろがる、一方、加茂茄子は上質なかつお出汁をたっぷりと吸いとろけるような食感、深みのあるうま味をたのしむ
◆ 鮎の炙り
高津川の鮎、にごりのない清流の水苔の香り、そしてほんのりとした苦み、かすかな炭の香りが渾然一体となり、うまみ、甘味とともに押し寄せてくる逸品、自然の恵みをかんじる
◆ 夏鹿のモモ
夏のジビエは脂も少なく、その分野生本来の滋味、重量感をかんじる、山葵、塩でいただく、赤身が豊富ですっきりとした後味
◆ 鮎の炊き込み
お米の甘味、うまみが鮎の魅力を極限まで高めてくれる
◆ 蕎麦
お料理に最後にいただくお蕎麦は、お蕎麦は本職として成立するほど、切り口もうつくしくそろっており、香り、のど越しは出色
◆ 水菓子 桃
果物にはあまり思い入れはないが、この桃は別格、果汁にあふれ、桃の繊維をかんじつつもとろけるような食感、甘味と抜けるような香りが一気に押し寄せてくる
この日のお料理も最初から最後まで圧倒されました。自然の恵みのともいえる選び抜かれた食材のもつ本来のうまみ、力、おいしさを卓越した技量でひきだす樋口さん、味付けは最小で最大の魅力を引き出す熟練の技術には感服するしかありません。こちらを訪問する都度、あらたな調理、新たな食材に巡り合うことができ、現状に甘んじず常に高みをめざす姿勢には敬意しかありません。これからも通い続けたいと強くかんじております。
お酒は女将さんの見立てですが、
◎ 黒龍 福
◎ 遊穂 (石川)
◎ 磐城 壽 亀の尾
黒龍は名脇役としてお料理を魅力を高めてくれますし、(はじめていただいた)遊穂は酸味とうまみのバランスがよい、磐城壽は洋梨のような香りですっきりとした後味、夏鹿の魅力をひきだしてくれました。いつもお任せなのですが、はずれがありませんね。お話していてもとても楽しい方ですし、お料理とお酒の相性に心を砕いておられるのだろうな、とかんじています。
この日もとても満足の行く時間をすごさせていただき深謝いたします。
2025/07/20 更新
2025/05 訪問
今宵もすてきなお料理
今年は天候不順で五月晴れらしい日が数えるほどしかなかったですね、まもなく梅雨の季節となりますが、今宵は樋口さんへ。小雨まじりの道中ですが、こころは晴れ。お店が近づいてきますと、お香の香りが漂ってきます。
カウンターにつき早速ビールを。うすはりのグラスでいただくきめ細かい泡のビールにはいつも心躍ります。
この日いただいたものですが、
◆ そら豆のすりながし、からすみ添え
ていねいにていねいに裏ごしされたそら豆の鮮烈なかおり、青い香りと凝縮された実の味をたのしむ、からすみはすり流しを吸い複雑なねっとりとしたうま味
◆ 穴子の焼き霜
まもなく旬をむかえる穴子、軽く火入れされたしっかりとした身の穴子は、皮目の香りもよい、歯ごたえさえ感じる弾力のある身からは穴子のうまみ、甘味がにじみ出る、最初は山葵で、つづいて梅酢をふくんだお出汁でいただく
◆ アマゴの炙り
鮎で名声を博する和良川のアマゴ、見事に中骨を抜く技量に感嘆しつつお出しいただいたアマゴは川魚特有の芳香がたちのぼる、ヤングコーンの素揚げ、田楽味噌、たっぷりの木の芽をのりで巻いていただけば渾然一体としたうまみがひろがる一品
◆ 毛蟹と独活のお椀
蓋をあければくらくらするほどの本枯節のかおりがたちのぼる、身のしまった毛蟹はうまみがひろがる、食べすすめば真ん中から蟹味噌がのぞきあらためてこの時期らしい日高の毛蟹の濃厚な蟹味噌をたのしむ、薄く切られた独活のシャキシャキとした食感もよい
◆ お造り(鯛・ムラサキウニ)
厚めに切られた明石のタイはぶりぶりとしたつよい弾力、上質な白身魚特有の香り、うまみ、甘味が比類ない、身のしまったムラサキウニはキレが良く特有の香り、濃厚なうまみがおしよせてくる
◆ お造り(イサキ)
1㎏を超える大型のイサキのお造り、切り身の白と赤のコントラストがまぶしいほど、磯魚ゆえ藁でかるくあぶられているが、梅雨時のさっぱりとしたイサキを玉葱のスライス、茗荷とともに鰹の出汁醤油でいただく
◆ 鮎(高津川)
支流を含めダムのない高津川は水質がもっとも良好な清流のひとつ、そこで獲られた鮎を頭からいただくが、透き通るようなきれいな水苔のかおり、ほのかな苦みとともに甘味がひろがる
◆ つぶ貝、インゲン、スナップエンドウ、白アスパラの胡麻和え
それぞれの素材は、出汁と上質な白ごまでくっきりとした輪郭をだしつつ全体としてまとまりがよい、とくに薄く切られコリコリと歯ごたえのよいつぶ貝からは耽美なうまみがにじみ出てくる
◆ 牛たたきと加茂茄子
牛の部位はイチボ、きめの細かいしまった身からはきれいな脂がおしよせてくる、水分をふくんだ加茂茄子の素揚げはジューシーでかおりもよい
◆ 天草の鰻の炊き合わせ
鰻の骨と昆布でとられた出汁でいただく、散らされた青ネギを薬味にしつつ上質な鰻の土の香り、深いうま味がひろがる逸品
◆ 新生姜の炊き込みご飯
◆ 蕎麦
◆ 水菓子
こちらにはずいぶんと通っていますが、この日お出しいただいたお料理はアマゴなどはじめていただく素材もいくつかあり、あらためて探求心というか研究熱心なお料理人だな、とあらためて感銘をうけた次第です。こうした姿勢でお料理と向き合っておられるので、お客はいつも(はじめてお店をうかがうような)新鮮な気持ちにひたれ、これこそがお客をひきつけてやまない名店たる証なのでしょうね。高津川の鮎、和良川のアマゴ、日高の毛蟹、明石の鯛など日本有数の素材を取り寄せつつ、卓越した技量とあくなき探求心で昇華されるお料理には賛辞を述べてやみません。
お酒はいつも奥様におまかせしていますが、この日は黒龍 しずく、新政アース、而今といただきました。新政アースははじめていただきましたが、キレのあるさわやかな酸味がほのかな甘み、苦みのバランスが素晴らしく、しばし余韻に浸るほど。どのお酒もお料理をひきたててくれました。
今宵も素晴らしい夜となり、感謝申し上げます。
2025/05/31 更新
2025/01 訪問
魅力的なお料理のオンパレード
今年の冬は冷え込む日も多いですね、この日の夕方もそうした寒さでしたが、神宮前からこころなしかうきうきした気分であるきます。お店の少し手前からお店のお香のかおりがただよっており、打ち水された石段をあがり暖簾をくぐります。張り切りすぎてすこしはやく到着してしまいましたが、お通しいただきさっそくビールを。
お献立ですが、
◆ 白味噌と海老のお出汁
お正月ということで紅白、切り干し大根餅そしてふきのとうがそえられたお出汁、雑味がみじんもない海老の香りで濃厚かつまろやかな白味噌椀、お椀は黒一色でよけいに白味噌が映えます、ふきのとうは春の香り
◆ 海老芋の素揚げ、からすみ、山ごぼう
朱の器にウラジロの設え、富田林の海老芋はねっとりとした食感と上質なうまみがひろがります、からすみは干し具合がすばらしく、やわらかく濃厚なきめの細かさ、添えられたお餅といただけば甘美なからすみ特有の風味
◆ セイコガニのお粥 内子 聖護院蕪
名残りのセイコガニのお粥は塩昆布がまぶされくっきりとした輪郭をかんじます、内子の濃厚な甘味とセイコガニのしっかりしたうま味、聖護院蕪のしゃきっとした食感が全体をしめてくれます
◆ 甘鯛とタラの芽のお椀
こちらのお椀はいつもたのしみ、お椀のふたをあけますと本枯節のすっきりとして上品なかおり、一口いただけば清澄、まろやかで深みのある出汁が口いっぱいにひろがります、葛うちされた甘鯛は脂がたっぷりとのりつつ身がしまった上質なもの、湯通しされたタラの芽、白髪葱、山椒といただけばまことに春をかんじます、うすだいだいのお椀がうつくしい
◆ 白甘鯛のお造り
煎り酒でいただきますが、白甘鯛特有の上品な甘味とかおり、控え目で上質なうまみ
◆ 平目とメジマグロのお造り
旬の平目は透明感のある甘味、皮目を炙られたメジマグロはきれいな脂、くどさはなくマグロ特有のうま味がひろがります
◆ フグの石焼と生白子
フグは片面のみを焼いてたんぱくな白身を楽しみます、生白子は濃厚だがとろけるようなすっきりとした透明なうまみ、かすかなフグの香りがよい
◆ 津居山の松葉ガニ
暴れる松葉ガニをその場で神経締め、出汁に湯通しされた蟹の足をむき身にしてしゃぶしゃぶでいただきますが、半生の蟹のせんいをかんじつつ上品な甘味がひろがります、蟹味噌は焼きガニを混ぜて潮の香りの濃厚なうま味
◆ 芽芋
ねっとりとした葛をからめていただきますが、体のあたたまる一品
◆ 尾長鴨の炙り
炙られた尾長鴨のだき身はあやしく美しい朱色が目に飛び込んできます、尾長鴨の滋味深いしっかりとしたうまみが印象的な逸品、おくちなおしのキンカンのなれずしは果実のフレッシュさが残るシャープな味わい
◆ 芹ごはん
◆ フルーツ(紅マドンナ)
樋口さんには毎年1月におじゃましていますが、お献立の構成は大きく異なりどれだけの引き出しをおもちなのだろうと畏敬の念をいだきます。最小かつ最大の仕事で素材のもつ魅力を最大限引き出しておられるお料理の品々は、五感を揺さぶり、記憶に刻まれます。この日のお献立も、次はなんだろうと想像する時間さえ心地よくかんじられるくらい圧倒されました。すべてのお料理が逸品かつ主役、小生にはこれ以上の満足感はないのですが、ご主人は「知る者は言わず、言う者は知らず」そのものですね。
お酒は女将さんの見立てで、黒龍しずく・福、開春、磐城壽といただきました。前半の黒龍はお料理のじゃまをしない名脇役、開春、磐城壽は奥行やボディもしっかりしてお料理の魅力をしっかりと引き出してくれした。
この日はうれしいサプライズが。ちょうどマイレビさまとの邂逅もあり、すこしお話することができました。新年のたいへんいい時間を過ごすことができ帰路につきました。
2025/02/04 更新
2024/10 訪問
秋の贈り物
秋の樋口さん、これからの季節は食材がたのしみですね。今年は9月も連日の真夏日、秋の味覚の象徴ともいえる松茸の生育がしんぱいでしたが、さて、どうでしょうか。
カウンターにつきさっそくビールを。うすはりのタンブラーでいただくきめの細かい泡、のど越しがなんともいえません。
本日のメニューですが、
◆ 香茸とレンコンの素揚げ、はまぐり出汁
ごく薄く衣をまとった香茸の香りの高さ、レンコンの歯切れのよいシャキシャキとした食感をたのしむ、はまぐり出汁がうまみを増幅
◆ 白甘鯛とマスカット
かすかな柑橘をかんじる出汁でいただく、昆布締めされた白甘鯛の上品なかおりと甘味
◆ モクズガニの飯蒸し
ふんだんのからすみが振られた飯蒸し、鮮度の高いモクズガニの出汁をたっぷりと吸いうまみが口中に広がる、秋の訪れをかんじる一品
◆ お椀
松茸とグジ、蓋をあければクラクラとするような鮮烈な松の香り、本枯節のお出汁でいただくが、松茸は水分をたっぷりふくみしっとりとしたきわめて上質なもの、グジはしっかりとした身質で上品な甘味がよい
◆ カマスの刺身
皮目を軽く炙りうま味をましたカマス、皮目にまぶした白ごまのかおりがよい
◆ お造り(真鯛)
天候の関係で竹岡の真鯛、深み・甘みの点で明石には劣るが、質はよい
◆ 鱧と松茸の春巻き
春巻きの中で熱せられ、香りを封じ込めた一品、甘味と香りの二重奏
◆ 鰆の炙り
魚編に春ではあるが、脂がのるのはこれからの季節、かるく炙られた鰆は桜色の身がうつくしい、玉葱醤油でいただけく
◆ 牛肉(みすじ)
脂は控え目なみすじ、上質な牛肉の濃厚なあじわいを楽しむ
◆ 穴子の炊き合わせ
穴子といえば梅雨時だが負けず劣らずの香り、よく炊かれた穴子は口の中でほどけるような食感がよい
◆ 松茸ご飯
秋の贈り物、やや固めに炊かれた新米といただけば甘味・香りが比類ない
◆ そば
年々気候がきびしくなりますが、それでも季節はきちんと訪れてくれますね、冒頭の気がかりは杞憂でした。こちらの松茸は毎年岩手からとどけられますが、今年のものもとても上質。この日のために、一年がんぱってきてよかったと思えるほどでした。ほかにも白甘鯛、グジ、カマス、香茸、モクズガニなど季節をかんじる食材ですが、素材そのものの魅力を存分に引き出す樋口さんの卓越した技量には、まいどのことながら感服させられます。
お酒はいつも女将さんにおまかせですが、寶剱(ほうけん)、鄙願、無窮天穏 齋香(さけ)、新政 タンジェリン、といただきました。無窮天穏 齋香はふくよかさ、香り、奥行きととてもバランスのとれたよい酒、新政はワイングラスでいただきましたがすっきりとしたきれいな酸味、よく伸びるうま味が出色ですね。
次回は冬、これからも通い続けたいお店です。
2024/10/05 更新
2024/07 訪問
鱧の骨切りの季節
夏の樋口さん、先日マイレビ様方がこちらを訪問されていたこともあり、皆様のご投稿から予習をしつつ期待感で胸をふくらませておりました。柳がゆれるアプローチから暖簾をくぐり店内へ、いつものことながら樋口さんならではの静謐な、そしてあたたかみのある佇まいをかんじます。
カウンターにつき早速ビールを。薄はりグラスに注がれたきめ細かい泡のビール、ビールの鮮度はもちろんのこと、グラスやサーバーのお手入れが行き届いていますね。
さて、本日のお献立ですが、
◆ 鱧の煮凝りを添えたウニと茄子
炙られた茄子の甘味と海胆の濃厚なうま味、鱧のさっぱりとした煮凝りが香りよい
◆ 鮑と新銀杏の素揚げ
身のしまった黒鮑のほのかな磯の香り、新銀杏はすこし塩をかければみずみずしさがひろがる
◆ 鱧すし
肉厚な脂ののった鱧のうまみ・甘み、軽くふられた山椒で輪郭がくっきり
◆ うなぎと冬瓜のお椀
香り・うまみが爽やかな本枯節の出汁、うなぎはとろけるようなあまさ、白髪葱・冬瓜・うなぎ・山椒を同時にいただけばまことに口福
◆ のぼり鰹
備長炭で軽く皮目を炙られたのぼり鰹は特有のきれいな、すっきりとした脂がよい
◆ 鱧の焼き霜と鯛
リズミカルな骨切りの音にこころがおどる、よけいな脂をおとした焼き霜に酢橘をひとしぼり、甘み・うまみ・かおりとバランスの取れた鱧
◆ 黒むつの素揚げ
たっぷりと脂がのりながらも、素揚げで封じ込められたうまみ・甘み・香りは秀逸
◆ 和良川の鮎
郡上の奥、飛騨川の支流の和良川、備長炭で炙られた鮎は頭からいただけば水苔の清冽な香り・さわやかな苦みがひろがる、おかゆで溶いた蓼酢との相性は筆舌しがたい
◆ 南高梅
お口直しの一品、直径3cmはあろうかと思われる立派な南高梅、夏を感じる青いうまみ
◆ 蛸、蕗、茄子の炊き合わせ
蕗のシャキシャキとした食感、茄子のまったりとした甘み、蛸は滋味深いうまさ
◆ 夏鹿の内腿炙り
軽く炙られた夏鹿(伊那)、夏鹿はおもったよりも淡白だが、しっかりとした滋味・野生らしい重み
◆ トウモロコシのご飯、鱧のお茶漬け
◆ 水菓子(メロン)
夏の食材をいただくことにこころ踊らせておりましたが、「満足」という言葉では言い尽くせぬほどは格別なお料理の品々をいただき上質なひとときをすごすことができました。お献立は流れるような統一感があり、それがさらに一品一品のレベルを増幅させてくれ、お料理に真摯に向かう樋口さんの真摯な姿勢を反映しているようです。
この日の夏鹿という食材ははじめていただきましたが、単に仕入れるということではなく、伊那まででかけ、生息している山に入り猟師と時間を共にし、そして猟師ならではの調理法を目にする。やはり食材に対する思い入れが違いますね、こうしたプロセスに十二分に裏打ちされたお料理を堪能させていただきました。
お酒はいつもながら奥様におまかせですが、朝日栄・勝駒・而今(有機山田錦)・喜久泉・黒龍(火いらず)、といただきました。お料理に合わせ見立てていただくのですが、黒龍が頭抜けて鮮烈でした。また、而今はそのものが主役という存在。黒龍も而今も懇意になさっておられる酒屋さんから一本だけお分けいただいた特別な酒とのことですが、そうしたお酒をお出しいただき感謝の念に堪えません。
次回は松茸の季節、いまからたのしみです。
2024/07/20 更新
2024/05 訪問
風薫る5月のコースは
今週は梅雨の走りのような天候でしたが、この日は朝からは晴天。一年の中でも一番いいくらいの季節ですね、神宮前からの歩みでも心地よい風を感じます。さて、風薫る5月のコース、どんなお料理と対面できるか、この日をとても楽しみにしておりました。柳のなびく涼し気な階段をのぼり、引き戸をを開けますと、ほんのりとしたお香にほっとします。
席につき早速ビールを、うすはりのグラスにきめの細かい生。本日いただいたものですが、
◆ 海胆と鯛出汁のにこごり
天草の海胆とほんのりと色づいたにこごりがいぶし銀の器に映えます、濃厚で香りのよい海胆を鯛出汁の香り良い甘味に絡めていただきます
◆ 鯛の白子と鯛のちまき鮨
ちまきの濃緑と白子の炙りのコントラストが美しい、ちまきを開けば鯛の美しい切り身をまとった赤酢のお鮨、ほんのりとした笹の香りが広がります
◆ 琵琶湖の稚鮎
備長炭で炙られた稚鮎を頭からいただきますと、清冽な水苔のかおり、ふっくらとした身を楽しみます
◆ お椀
鮎魚女、白髪葱、わらび、柚子の花、本枯節と昆布のうまみ・甘みが筆舌しがたい、汁の表面には鮎魚女の脂が小宇宙のようにひろがりうつくしい
◆ お造り1 鯛
やや大味ではあるが、身のしまり・弾力が比類ない
◆ お造り2 とりがい
ごく軽く火入れされた舞鶴のとりがい、噛むほどに磯の芳醇な香りが広がります、シコシコとした歯ごたえもよい
◆ 北寄貝と鶯豆の春巻き
エンドウ豆の甘くほっこりとした食感と北寄貝の潮のかおり
◆ 野菜の炊き合わせ
白アスパラの炙り、レンコンの素揚げ、うるい、こごみ、浅利出汁が山菜をやさしく包み込んでくれます
◆ 鰻の炙り
カリカリに炙られた皮目、脂の乗った濃厚な身を山椒のさわやかな香りととともにいただきます
◆ お鍋
芹、三つ葉、ユキザサ、月山茸、金華豚
山菜の香りが出汁に抽出され、金華豚のきめ細かくやわらかなうまみを増幅
◆ こしあぶらの炊き込み
抜けるようなさわやかな香りの炊き込み
◆ 穴子の炊き込み
そろそろ穴子の本格的な季節、旬の穴子の濃厚なうまみが口中にひろがります、二膳目はほうじ茶でお茶漬けに、立派なサイズのジュンサイの味噌汁とともに
◆ 蕎麦
本職さながらの手打ちそば、出汁とかえしのバランスのよい汁でいただきます
◆ 水菓子 びわとブラッドオレンジ
◆ 甘未 葛切り
風薫る5月のコースをとてもたのしみにしておりましたが、期待以上のすばらしさ。5月に訪問するのは数少なかったかもしれませんが、これまでにいただいたものがないお料理がほとんど。ちまき鮨というあそびごころも楽しいですが、野菜の炊き合わせに浅利出汁をあわせるなんともいえない料理のセンス。そして鰻の芳醇なうまみ。樋口さんの卓越した技量が随所にちりばめられた構成でした。炙りの串打ちや備長炭の炙り、仕上げなどすべて樋口さんが手がけられるので、きわめて高いレベルのお料理が保たれているのでしょうね。店主自らすべて手掛けてお出しいただく、お客にしてみれば最高の贅沢ともいえます。食べあるきの師匠が「真善美」という言葉で表現されておられましたが、その言葉にお店の本質が凝縮されているようにおもいます。
お酒は黒龍「福」、而今、天領、喜久酔といただきました。いつもながら女将様におまかせですが、お料理の内容にあわせて選定いただくので全幅の信頼をおいております。この日は特に而今の純米がよかった、さわやかな香りとほんのりとしたきれいな甘味がお料理をひきたててくれました。
お土産にこしあぶらの炊き込みと穴子の炊き込みのおにぎりをいただき帰路につきましが、次回は鱧のきせつ。いまから待ち遠しいです。
2024/05/11 更新
2024/01 訪問
常に進化15
今週は列島全体が冷蔵庫のような一週間でした、神宮前からの道中も心なし前かがみになり歩みを進めますと、あたたかみのある樋口さんの灯篭がみえてきました。躙り口のような玄関をくぐりますと、いつもながらのお香に迎えられ、気持ちにスイッチがはいります。
1月の樋口さん、今回もカウンターで繰り広げられる感動を楽しみにしておりました。さっそくビールを、いつもながら口当たりのいい薄はりグラスで。きめの細かさが際立ちます。
今回のお料理ですが、
◆ 大根餅の白味噌餡
お汁は本枯節の香りがきわだつまろやかなとろみ、丁寧にすりおろされた大根餅は軽く炙られうまみが凝縮
◆ 酢の物(赤貝・細魚(昆布〆)・花山葵)
黒胡麻酢が素材の滋味を引き出してくれる、花山葵のかおりが春のことぶれ
◆ 海老芋と数の子の西京漬け
ごく軽く西京漬けされた数の子はうまみが前面に、海老芋はねっとりしたきめ細かいうまみ
◆ 甘鯛と新筍のお椀
木の芽の香りがよい、本枯節のうまみ・深みが凝縮されたお椀、新筍は竹林の香り、身のしまった甘鯛は脂ものり群を抜く素材
◆ お造り(鯛・メジマグロ)
鯛は弾力が半端なく甘味・香りが傑出、メジは腹カミ、皮を備長炭で軽く炙られ炭の微かなかおり、透き通るような脂のうまみをかんじる
◆ 河豚と菜の花、ほうれん草
白子の酒盗和えは耽美な海の香り、河豚は3㎏を超えるりっぱなサイズだが数日寝かせた身は軽く熟成され、うまみ・甘味が印象的
◆ 百合根のおかゆ
蛤の出汁はほんのりと甘い香り、うまみが凝縮されている、百合根のほくほくとした食感とともに楽しむ
◆ ホンモロコの炙り
淡水魚ならではの水ごけの香り、淡白ながらふかいうま味は稚鮎を思わせるほど
◆ 聖護院大根
かつお出汁がしっかりと染みた聖護院大根ならではの甘味、うまみ
◆ 鼈の炙り
脂がのりつつ身のしまった鼈、くさみは微塵もない、山椒の香りとともに楽しむ
◆ 芹のごはん
◆ 蕎麦
◆ 水菓子
どのお料理も樋口さんならではの感性がかんじられ、卓越した技量で素材のうまみが引き出されています。仕事は最小限のように見せてはいますが、その実、薬味や隠し味など素材の魅力を引き出すための工夫や試行錯誤、趣向がいたるところに垣間見え、いつもながら、どのお料理にも深い感銘をうけました。ちょうど1年前の同時期に訪問していますが、お料理はがらりとかわっており、お献立に心を砕いておられるのだろうなと痛感した次第です。
お酒は女将さんの見立て、当方の嗜好もご存じですのでもっぱらお任せです。この日は黒龍 しずく、想天坊(新潟)、日高見、貴、喜久泉と少しずついただきました。辛口の想天坊が印象深かったですし、貴の深み、奥行きもよかった。
次は春ですが、待ち遠しいですね。
2024/01/27 更新
2023/10 訪問
常に進化14
今週は季節がかなり進みましたね、秋の乾いた空気はとても心地よく好きな季節です。神宮前からの歩みもなんとなく軽やかな気分となるから不思議です。
さて、今月の樋口さん。訪問をいつもこころ待ちしておりますが、この季節はとりわけ楽しみ。暑い夏が過ぎ、秋の食材がお献立に並ぶのを考えるとそれだけでも嬉々として気持ちとなります。 暖簾をくぐり店内に入りますと微かなお香の香り、この日の幕開けです。
カウンター席につき、早速ビールを。うすはりグラスでお出しいただくビールは滑らかな泡が際立ちます。
本日いただいたものですが、
◆ 白甘鯛と黒無花果の酢の物
香りのよい無花果の葉に覆われた一品、甘鯛は身のしっかりとした弾力、黒無花果は口直しとして香りがよい
◆ 鮎の塩干・バチコ・銀杏の炙り
翡翠色の銀杏は今秋はじめて、半身を控え目に塩干された鮎は風味豊か、バチコは特有の磯の香り
◆ モクズガニの飯蒸し
からすみをまぶされた飯蒸しは、モクズガニの出汁をたっぷりと吸い込みうまみが凝縮
◆ お椀
うすぎりされた松茸がぎっしりと詰まったひろうすのおわん、松茸は深い鬱蒼とした森の香り、お汁は甘味と深みのある昆布出汁
◆ お造り 戻り鰹
たっぷりと脂ののった戻り鰹、しっかりとした身で鰹特有の香りを楽しむ
◆ お造り 真鯛
真鯛の造りはこちらの代名詞といっても過言ではないが、弾力の強い真鯛はうまみ・甘味・繊維質が比類ない
◆ 焼き物 のどぐろの炙り
丁寧に炙られたのどぐろはきれいな脂、くどさは微塵も感じない、間人産とのこと
◆ にしんと京茄子の炊き合わせ
足の速いにしんだが、身がしまった甘味は秀逸、京茄子はたっぷりの出汁がしみた上品なかおり
◆ 香茸とますたけの天ぷら
香茸は滋味深く森の香りがよい、ますたけは初めていただくが色あいがますに似ているキノコ、しゃきしゃきとした食感を楽しむ、蜆の出汁が味に深みを与えてくれる
◆ イチボの炙り
きれいな脂の和牛、赤身肉のしっかりとしたうま味
◆ 穴子と蕪の炊き合わせ
しっとりと密度の高い良質の脂の穴子、穴子特有の旨みと少し土っぽい香りがよい
◆ 松茸ご飯
ごく薄く切られた松茸を竈でたきあがったご飯に散らし10分ほど蒸す手法、松茸の食感とうまみ・香りが凝縮された出色の松茸ご飯
冷酒は、いつもながら、女将さんの見立てですが、鄙願(秋上がり、新潟特有の奥行と深みのある辛口、余韻がいい)、伯楽星(食事のじゃまをしない食中酒、繊細で軽やかな香り)、而今(フルーティーで品のある香り、上品な甘味と程よい酸味)といただきました。お料理の内容により順番に出していただきました、好みもあるのでしょうが、小生には而今が傑出していたようにかんじました。
この日お出しいただいたお料理はどれも昨年の同時期とは異なるものでした。自然の恵みである素材から最小の仕事で最大の魅力を引き出す、これこそ日本料理の神髄との主観ですが、それを具現化しつつも異なるお料理。引き出しの多さ、非凡な才能、驚嘆するばかりですが、お店に通えることに感謝しかありません。
次回の訪問を楽しみにしつつ家路につきました。
2023/10/07 更新
2023/07 訪問
常に進化13
こちらには季節ごとにお邪魔していますが、この季節は鮎・鱧など魅力的な食材が旬ですね。今回の訪問もこころ待ちにしておりました。原宿の喧騒を抜けますと、樋口さんの玄関横にある柳が風にゆれ涼しげに迎えてくれます。微かなお香の香りを感じつつ期待が高まる心持でカウンター席につきます。
まずはビールを、ビールサーバーやグラスの手入れがいいのでしょう、泡のきめ細かさがとても印象的。うすはりタンブラーでいただきます。
本日のメニューですが、
◇ 玉蜀黍のソルベ
目に美しい鮮烈なレモンイエロー、凍ってはいるがどこまでも甘く香りがよい、暑い外からくるとほっとする一品
◇ 鱧の炙り
見事に骨切された身のしまった鱧、完熟梅と青梅の梅肉の薬味の違いを楽しむ
◇ お凌ぎ(にえばな・卵豆腐・鮎の酒蒸し)
卵豆腐をいただくのは何年ぶりだろう、出汁のうまみがとても深い、卵かけご飯のようにいただく
◇ 虎魚と冬瓜のお椀
吸い地はどこまでもやさしい、昆布と鰹出汁のうまみ・心地よさ、虎魚は淡雪のごとき食感
◇ お造り(真鯛・シマアジ)
真鯛は樋口さんの代名詞だが強い弾力の圧倒的な食感、甘味・香りが際立つ
一方、シマアジは上質な藁で炙られ抜けるような香り、身のしまったきめ細かい脂
◇ 鮎
丁寧に丁寧に炙られた鮎は頭からいただく、水苔のさわやかな香りを楽しみしつつ脂ののった身は比類ない
◇ 和牛(いちぼ)
サシが入りつつも脂は抑えられ、赤身の旨味・滋味をしっかり感じる
◇ 小鍋(フカヒレとずいき)
生姜の効いたすっぽん出汁はとろみ・深みが印象深い、立派なサイズのフカヒレは食感がよい
◇ 青鰻の炙り
岡山の青鰻、冷凍・真空保存された花山椒をかけていただくが、青鰻は上質な身のしまり、きれいな脂の乗り、さわやかな香りと三拍子そろった逸品
◇ 新生姜の炊き込み
新生姜のさわやかな香りとともに油揚げの出汁で深みの出た炊き込みを楽しむ
お酒は、女将様の見立てで、黒龍 しずく・日高見 弥助・一歩己(福島)・喜久泉といただきました。お料理にあわせておすすめいただきましたが、序盤は余韻がのこりつつも料理のじゃまをしないすっきりとした辛口、中盤からはボディのしっかりした深み・奥行をかんじる銘柄へ。喜久泉は田酒とおなじ酒蔵、善知鳥が一等のお気に入りですが、喜久泉の華やかな香りを堪能しました。
実は、ちょうど1年前の同じ時期にも訪問していますが、お料理のほぼすべてが一新されておりたいへん楽しむことができました。お客は常にあたらしいものを求めてしまいますが、そうしたわがままにもしっかりとお応えいただける樋口さん。ご本人は和食にたいするご自身の哲学をお持ちであるからこそ、さまざまな応用・発展性があるのでしょうね、軸はぶれていないところが信頼の証かな、と勝手にかんじています。
若手のお弟子さんも増えていましたが、みなさんのキビキビとした動きも緊張感がありよかった。カウンター席でいただく和食は臨場感にあふれ、お料理のたのしさが増幅されますね。
次は秋、いまから待ち遠しいです。
2023/07/08 更新
2023/04 訪問
常に進化12
今週は後半にかけ、初夏らしい天候でした。北の高気圧のおかげで、乾燥した空気の暖かさ、欧州の夏を思い出すほどです。そうした日の夕暮れ時、神宮前からこちらの向かいますが、春から初夏にかけての端境期、どんな食材か楽しみです。
樋口さんはとおりから数段あがった場所にありますが、入口付近の庭木も新緑で鮮やかです。微かにお香のかおる玄関口から、カウンターへ、早速ビールをいただきます。
本日いただいたものですが、
◆ こしあぶら と ふきのとうの天ぷら
鯛の白子と和えていただきますが、こしあぶらは目にも鮮やか。春の山菜のかすかなえぐみが印象的な先付
◆ 筍 障泥烏賊 蕗 の木の芽和え
朱の器に映える黄緑色、蕗のシャキシャキ感、障泥烏賊のねっとりとした甘み、筍のほっこりとした食感
◆ 蛤出汁のおかゆ
白アスパラの甘味、ほくほくとした春の香り
◆ 鮎魚女 わらび 筍豆腐のお椀
本枯節のうまみ・コク・香りが絶妙、鮎魚女のプリプリとした食感・甘味、筍豆腐の凝縮した香り
◆ 鯛、海胆の造り
鯛の弾力・うまみ・甘味、玄界灘の海胆は濃厚なうまみと深い香り
◆ 渡り蟹
内子のオレンジが美しい、身のしまった渡り蟹を独活・こごみとサラダのようにいただく
◆ 蛍烏賊の石焼
シーズン終盤だが水晶のようにうつくしい蛍烏賊、熱せられた石で軽く炙るとさっぱりとしたうまみ・甘味がひろがる
◆ 筍・鯛の子・若芽の炊き合わせ
朝掘りの筍の白い姿と若芽のコントラストが美しい、ふっくらとしたうまみ、さくさくとした食感
◆ 青鰻の炙り
花山椒が散らされた青鰻の炙り、脂の乗ったしまった身・炙られた皮の香りをさわやかな花山椒が包み込む
◆ グジ・水茄子・浜ぼうふうの春巻き
変化球だが、水茄子・浜ぼうふうがグジの甘味に深みを与えている、封じ込められたうまみ
◆ 岩手牛のしゃぶしゃぶ
花山椒をまとったまろやかなしゃぶしゃぶ
◆ 筍の炊き込み
これが一番好きかな、ほっこりとした食感、香りと甘み、山菜特有のほろ苦さをご飯の甘味が増幅
お酒ですが、こちらでは、吟風・しずく・仁左衛門など黒龍をいただくことがおおいのですが、今回はあえて奥様の見立てでセレクトしてもらいました。いただいたのは、鄙願・喜久酔・蒼空・伯楽星、いずれも辛口の大吟醸で深み・奥行き・芳醇さとも出色なのですが、とくに喜久酔がよかったですね。いつものことですが、お料理にあわせてのおすすめいただいた銘柄には感銘をうけるものがあります。
こちらのお店の魅力は、吟味された素材をその本来の味・うまみを最大限かつ最小限の仕事で引き出す技量でしょうか。さりとて、堅苦しいものではなく、時折ご主人とかわす何気ない会話が緊張感をほぐしてくれ上質な時間を過ごすことができます。今回は春の恵みを楽しみにしておりましたが、期待以上のすばらしいお料理の品々でした。
進化のとまらない樋口さん、これからも通います。
2023/04/29 更新
2023/01 訪問
常に進化11
今週は寒かったですね、神宮前からこころなしか前かがみになりながら、お店に向かいます。訪問は4ヶ月ぶり、晩秋にうかがい走りの香箱蟹をいただきたかったのですが、残念ながら予約できず。今回は真冬ですが、どんな食材がいただけるのか、とても楽しみにしておりました。
通りから数段あがり玄関にはいりますと、微かなお香とともに個々のお店固有の香り・空気感とでもいいましょうか、「あぁ、樋口さんだな」と感じます。小生はこうした境界を超え、ハレの次元に入る瞬間に無上の喜びを感じます。
カウンターにつき早速ビールを、寒くてもやはり最初はビール。いつもですが、丁寧に手入れされたサーバーから注がれるビールの泡はとてもきめ細かい。
本日いただいたものは
◆ 雲子・牛蒡のすりながし
粗おろしされ食感のある牛蒡が炙られた雲子のよくからむ
◆ 海老芋とからすみ
素揚げされた海老芋がねっとり甘い、からすみは塩加減は控えめでやわらかく潮の香りをかんじる
◆ 閂と山菜
山菜はこごみ・うるい・うど、黒ゴマを配されたかつお出汁(微かな酢)でいただくこぶ締めされた閂は甘い
◆ 車エビ・大根もちのお椀
車エビのビスクを白味噌で深みをくわえたお椀、海老の濃厚な香りが驚くほど、
切り干し大根は凝縮された味がとてもよい
◆ お造り
淡路の真鯛、真鯛は樋口さんの定番だが、甘味・弾力・うまみとも比類ない
◆ お造り2
石鯛と天草の根つき鯵、石鯛はほとんどいただいたことがないが、独特の手法で神経締めされた石鯛は磯の香りはほとんどかんじない、マナガツオのようなまったりとした味と食感
天草の根つき鯵は脂ののりもよく、藁で炙られ香りもよい
◆ おしのぎ
河豚の骨で出汁をとったおかゆ、繊細な味と香りを楽しむ、海の香りをかんじるぜいたくなおかゆ
◆ 河豚の酒盗
白子ポン酢の和えていただく、ほんのりと感じる橙の香りとともに、河豚の食感をたのしむ
◆ 津居山の焼きガニ
調理寸前まで動いていた松葉ガニ、炭火で炙られた焼きガニは繊維が凝縮され、うまみ・甘味・香りが強烈
◆ 聖護院大根
利尻昆布のまったりとした出汁がたっぷりと染みた一品
◆ 猪肉コンフィ
7時間かけじっくりと煮られた猪肉は獣臭はみじんもかんじない、猪の滋味を感じる
◆ にえばな
こちらに通って10年以上となりますが、いただいたお料理ははじめていただくものがほとんど。ご主人は、イマジネーションをはたらかせ常にあたらしいものに挑戦したいとお笑いになられますが、こうした料理人スピリットがこちらのお店の最大の魅力といっても過言ではないでしょう。厳選された素材の魅力を、出汁のうまみと卓越した調理手法でひきだす技量はうなるよりほかありません。
お酒は黒龍(しずく、仁左衛門)といただきましたが、仁左衛門はやや辛口の大吟醸、深み・奥行きがとてつもない。黒龍は料理の邪魔をしない酒ともいわれますが、仁左衛門がどうしても主役になるくらいの逸品。
本日もすばらしいお料理の品々な繰り出していただき感謝しかありません。
次回の訪問もたのしみです。
2023/01/28 更新
2022/09 訪問
常に進化10
朝晩はずいぶんと涼しくなりましたね、この夏の暑さには辟易することも多かったですが、朝の涼しさにはほっとします。秋は味覚の季節ですが、日本は四季があるため海山の主役もかわります。そうした季節季節の食材を昇華させた日本料理はほんとうに歴史・伝統を感じます。
樋口さんに伺うのはいつも楽しみですが、秋は殊更、心待ちにしていた訪問です。
カウンターにつきさっそくビールを、いつものことですが、うすはりタンブラーに注がれたクリーミーな泡は比類がないもの、先日行った神泡XXとは比較にならないくらい。うりはりは口あたりもよく(乾燥した気候も相まって)進んでしまいます。
本日いただいたお料理ですが、
◆ すっぽん茶碗蒸し
ていねいに出汁をひかれ地味深い
しょうがも体をあたためてくれる
◆ レンコンと香茸のてんぷら
香茸は山のめぐみを感じる
シャキシャキとしたレンコンは
食感がよい
◆ モクズガニ
あまく香りのよいモクズガニを
からすみのパウダーがひきたててくれる
◆ グジとマツタケ
本日一番の感銘を受ける
マツタケは官能的な香りでしっとりと
みがしまっており、ここ数年では上位
グジの身はホロホロとして甘味・
身のしまりとも上質
◆ 造り:タイと唐津のウニ
唐津のウニは香り・濃厚さが印象的
タイはこちらの代名詞だが、弾力・
香り・甘味がしっかり
◆ 鱧とマツタケの春巻き
一口齧るとなかからマツタケの芳香が
たちのぼるが、鱧を合わせ、春巻きとする
ところにご主人のセンスを感じる
◆ 落ち鮎と焼きマツタケ
マツタケは焼きにとどめをさすが、
強烈な香りにめまいを感じるほど
琵琶湖の落ち鮎はこぶりだが
ミズゴケの香りが凝縮
卵のふっくらとした食感もよい
◆ いちぢくの酒蒸し
柚子みそが酒蒸しされ甘みが凝縮された
香りのよいいちじくをひきたてる
◆ 牛モモの炙り
塩コショウのみのシンプルな炙りだが
それだからこそ、素材のよさが光る
◆ 鰊と冬瓜
足の早い生鰊だが、身がしっかり
昆布出汁が鰊のうまみをひきだす
◆ 岡山の青ウナギ
終盤に青ウナギがでるのは驚き
ふっくらとした身は、口に入れると
ふわっと柔らかく、とけるような
食感と肉厚な身が魅力的
◆ マツタケごはん
水晶のように輝く新米み
たちのぼるマツタケの香りが
この日のフィナーレにふさわしい
冷酒は黒龍をいただくことが多いのですが、今回はみむろ杉・宝剣・天領・東北泉という流れでいただきました。お料理にあわせつつ、その冷酒の魅力につき解説をいただき、いつもながら奥様の見立ては出色です。
この日は他のお客様が席をたたれたあと、しばし樋口さんと会話することができました。ご自身でもいろいろなジャンルのお店に行かれ、そのお店のお料理が示唆する魅力をこちらのお料理にも反映なさっておられることもお聞きしました。
こちらのお店の魅力は一言では言い表せられませんが、常に研鑽され料理の質を高めておられるところに感銘をうけています。これからも通い続けたいたいせつなお店です。
2022/10/01 更新
2022/06 訪問
常に進化9
今年の梅雨は短そうですね。じめじめ・しとしとよりは、暑くても晴れたほうがいいかな。気温の上がったこの日、強い南風をうけつつ、神宮前から今夜のお料理に思いを馳せながら歩きます。
お店の玄関口の柳も梅雨時の湿度を吸い生き生きとした印象です。
カウンターにつき、早速ビールを。こちらの生は、泡が非常にきめ細かく、サーバーなど手入れが行き届いておりとても気に入っています。暑い中を歩いた後、うすはりグラスでいただくビールは筆舌に尽くしがたいうまさ。
さて、6月のお料理、何が繰り出されるか心躍る瞬間です。今回いただいたのは
◇ 先付 鱧・焼き霜
いきなりこの時期の主役登場、
肉厚の鱧を完熟の梅肉が甘味・香りを
引き立てる
◇ お通し ウニと芽芋
鯛の出汁ジュレがウニのうまみを増幅
◇ 前菜 メヒカリと花おくらの天ぷら
太白油で揚げられたメヒカリは
上品な鱚のよう、塩がいい
◇ お椀 白甘鯛とにゅうめん
すっきりしつつ深みのある鰹出汁、
皮目を炙り白甘鯛の甘み・うまみを増幅
◇ お造り トリガイの炙り
軽く火入れされたトリガイは香り・甘みが
比類ない、きわめて上質な繊維
◇ お造り2 鯛
樋口さんといえば鯛、弾力・香りが
すばらしい
◇ お凌ぎ 鱧鮨
香ばしく炙られた鱧、茗荷とえごまの
鮨飯が引き立てる
抜けるような香りのえごまを使う非凡さ
◇ 焼き物 鮎
島根・高津川のきわめて上質な鮎
皮は脂をおとしパリッと、ミズゴケのかおり・
脂ののりに感嘆
◇ 揚げ物 賀茂茄子
軽く揚げられた賀茂茄子はジューシーで
水分たっぷり、かおりもよい
◇ 箸やすめ シントリ菜のおひたし
鰹出汁のおひたし、シャキシャキ感
◇ 追肴 蕪の炊きもの
ホタテと鶏の出汁という山海の絶妙な
バランス、蕪は身がしっかりして
香り高い
◇ 焼き物2 鰻の炙り
身のしまり・脂ののり・香りとも
至上の鰻
◇ ごはんもの 新ショウガの炊き込み
お米は水晶のようなうつくしさ、
新ショウガのさわやかな香りが
うまみ・甘味を引き立てる
◇ ごはん代わり もり蕎麦
香り・のど越しとも本業顔負け
◇ 水菓子 メロンと小夏
梅雨時はうまみが増す時期ではありますが、選りすぐりの食材を卓越した技量とイマジネーション、引き出しの多さで繰り出されるお料理の品々、今回も驚きの連続でたいへん楽しませていただきました。こちらは軸はぶらさず、華美ではないが、芯のしっかりした、そして一品一品が主張をもつお料理に大いなる魅力を感じています。
今回のお酒は、当方の好みを知り尽くしていただいている女将さんの見立てで黒龍(しずく・福)、天領をいただきました。お料理に合わせおすすめいただく冷酒も極上でした。
次はマツタケの季節の訪問が楽しみ、暑い夏も乗り切れそうです。
2022/06/25 更新
2022/03 訪問
常に進化8
今週は寒の戻りがありましたが、週末にかけ春の陽気がもどりました。道中の桜は3分咲きといったところでしょうか、それでも季節を感じますね。
本日は春の樋口さんのお料理を楽しみに訪問します。
今回は前日にマイレビ様の投稿がありましたので、しっかりと予習をしました。
磨きこまれた白木のカウンターにつき、まずはビールを。こちらのビールは、サーバーの手入れも行き届いており、クリーミーな泡立ちがうれしい限り。
◇ 先付 車海老・そら豆・蛤出汁
蛤の出汁が滋味深く、少し冷えた体を温めてくれます
そら豆の緑が美しい
◇ お通し 春子・卯の花
春を感じる取り合わせ、かつお出汁のきいた卯の花が
軽く〆られた春子の甘み・さっぱり感を引き出す
◇ 前菜 ふぐ白子と山菜ウド
備長炭で炙られた白子と太白油で揚げられたウドと
絡めていただく、白子はクリーミーかつ濃厚で雑味がない
◇ お凌ぎ ほうぼう出汁のおかゆ
お米に自信なれけば出せない一品、ほうぼう出汁はやさしく
ほんのりとした海のかおり
◇ お椀 鮎魚女とウルイ・わらび
きわめて上質なカツオ出汁が鮎魚女の耽美な甘さを昇華
春の山菜は目にも美しく、季節を感じます
◇ 造り 鯛と初鰹
こちらの鯛は外れがない、弾力がすばらしくうまみ・甘味を楽しむ
藁であぶられた上りカツオは香りもよく、さっぱりとした脂の
魅力を引き出す、玉葱醤油のさわやかさとよく合う
◇ 追肴 蛍烏賊の岩石焼き
透き通った美しい蛍烏賊を熱せられた岩石で火を入れ
香り・音を楽しみつつ、輪郭のはっきりした味を楽しむ
◇ 箸やすめ 若竹煮
本日楽しみにしていたお料理、朝掘りの若々しい
タケノコに木の芽そして若布、滋味深い春の贅沢
◇ 焼き物 さくら鱒
備長炭で皮目を炙られた鱒のしっかりした味を
まったりとしたマッシュルームソースと絡めていただく
◇ 揚げ物 稚鮎の春巻き
太白油で揚げられた稚鮎はミズゴケの香が鼻孔をくすぐる
◇ 止め鍋 近江牛のランプ肉と白アスパラ
近江牛のランプ肉はきれいな脂で地味深い
白アスパラはさわやかな甘味を感じる
◇ ごはんもの 豆ごはん
◇ ごはん代わり 蕎麦はいつもながら本職を凌駕するような香り・のど越し
◇ 水菓子 いちご・オレンジ
お酒は小生が全幅の信頼を置く奥様の見立て、この日は黒龍(しずく・福)・天領・紀土(無量山)。
お料理に合わせ提供いただいき、どれもすばらしいものでした。
この日の樋口さんのお料理の品々は素材を愛で、その魅力を極限まで引き出し提供されるお料理の品々はどれも美しく、芸術性すらかんじます。卓越した技量とセンスを随所にみられました。
常に研鑽を重ねられ進化がとまらない樋口さん、次回も楽しみです。
2022/03/26 更新
2021/11 訪問
常に進化7
霜月の樋口さんへ、といっても来週には12月。こちらのお店にお邪魔して10年くらいになりますが、11月の下旬はほとんどなかったかもしれません。食材に期待膨らませつつ、明治神宮前からの道のりを歩みました。そういえば、気候はすっかり変わりつつありますね。いつもながらの趣のあるアプローチへと到着。
まずはビール、サーバー・グラスとも手入れが行き届き、泡がとてもクリーミー。
◇ 先付 タラの白子(そば粉揚げ)、牛蒡のだし汁
太白油で揚げられた白子は香りもよくパリッとした食感
牛蒡のだし汁は濃厚で地味深い
◇ お通し 海老芋の唐揚げ、アンキモ
アンキモはとても上手に仕事がなされ繊細な仕上がり、ホクホクした海老芋と楽しみます
◇ お凌ぎ 鯖棒鮨
ごく軽く〆られた鯖はとても脂がのっており、この時期ならでは
◇ お椀 鼈
ほんのりと生姜の効いた出し汁はとてもいい香り、鼈は身離れもよく上質で臭みはいっさいなし
◇ 造り 鯛
鯛は弾力がすばらしくうまみ・甘味を楽しむ、これほどの鯛は久しぶり
◇ 造り2 鰆
藁であぶられた鰆は香りもよい、脂がのりつつも身はしまっており玉葱醤油のさわやかさとよく合う
◇ 追肴 香箱蟹
香住のもので極めて上質、宝石のようなうつくしさ
◇ 焼き物 甘鯛の松笠焼き、栗の茶巾
脂のたっぷりのった甘鯛は鱗が松笠のようでうつくしい、甘味・身のしっかり感
◇ 煮物 蕪
鰹出汁で炊かれた蕪は箸をいれるとほろける、上質な鰹出汁
◇ 焼き物2 丹波牛の炙り
脂は控えめで肉本来のうまみ、滋味を感じる
◇ 焼き物3 津居山の松葉蟹炙り
蟹の炙りは香り・甘味・うまみと蟹本来の味が凝縮されています
◇ ごはん 蟹と山椒のご飯
蟹のうまみがご飯にしっかりとにじみ出ているが、山椒のさわやかさがアクセント
◇ ごはん代わり 蕎麦はいつもながら本職を凌駕するような香り・のど越し
◇ 水菓子 柿
この日の冷酒は奥様の見立てにおせ、いただいたのは、日高見(宮城)、喜久酔(静岡)、宝剣(広島)、黒龍 吟風(福井)。辛口からしっかり、淡麗、ふくよかへと出していただいた冷酒はどれもお料理の魅力を倍増してくれました。
こちらのお店は写真は禁止なのですが、あまりに美しい香箱蟹だけ撮らせていただきました。
進化の止まらない樋口さん、今回は旬のはじまった松葉蟹、それも極めて上質な香住の香箱蟹と津居山の松葉蟹を堪能させていただきました。甘鯛の松笠焼きも鱗まで美しくたいへん楽しませていただきました。
次回も楽しみです。
2021/11/28 更新
2021/09 訪問
常に進化6の
すっかり秋めいてきましたね、18時の予約ですが、そのころにはとっぷりと日も暮れ、季節の移いを感じます。
玄関へのアプローチは打ち水が打たれ、すがすがしい気持ちとなります。
前回から2ヶ月ぶりの訪問、今回は秋の味覚を楽しみに伺いました。
今回いただいたのは、
◇ 先付 ウニ・ずんだ・にこごり
大葉の花が散らされた先付は目にも鮮やか
カツオ出汁のにこごりとともにいただきます
◇ お通し 笹ガレイの炙り・銀杏・里芋
銀杏は翡翠のようにうつくしい、笹ガレイは
ゆずに効いた出汁で丁寧に炙られています、
里芋のねっとりとした食感も楽しみます
◇ お凌ぎ モクズガニ
カラスミの散らされたモクズガニの下には
もちごめ、走りのカニはとてもフレッシュ
◇ お椀 鱧・松茸・芋茎
落ち鱧はきれいな脂がのっています、岩手の松茸は
かおり・しっとり感とも比類ないもの
上質な鰹出汁のお椀
◇ 造り 鯛・アオリイカ
鯛は弾力がすばらしくうまみ・甘味を楽しむ
アオリイカは香りもよくねっとり
◇ 焼き物 鰆の炙り
藁の香りが絶妙、鰆は脂たっぷりながら身は締まっており
大味な感じはしない
炙りの直前は骨切り心地よい響きを楽しんだが
脂がのりつつも身のしまった肉厚の鱧、炙りで味は凝縮
◇ 焼き物2 焼きマツタケ
この日一番、土壌・松という自然の香りが焼きによりひきだされている
◇ 焼き物3 鱒の炙り
マッシュルームも出汁に使った醤油での炙り
神経締めされた鱒は身がしまっており、臭みは一切なし
◇ 強肴 香茸と鱧の春巻き
香茸の上品な香りが秀逸、脂をのった鱧をひきたてる
◇ 強肴2 山形牛の炙り
部位はイチボ、香り・上質な脂・しっとりとした肉質、
きわめてバランスのとれた味わい
◇ 追肴 フカヒレと冬瓜
本来は中華の食材だろうが和風にアレンジ、店主の工夫・
イマジネーションを感じる
◇ ごはん 松茸ご飯
炊きこむのではなく松茸を最後に加えフレッシュさを残す
熟練の技
いくら・香の物とともにいただくが、おかわりがとまらない
◇ ごはん代わり 蕎麦はいつもながら本職を凌駕するような香り・のど越し
◇ 水菓子 洋ナシ・巨峰 マンゴー・ココナツソースかけ
この日は秋の味覚の素材をたっぷりと堪能、とくに松茸は過去にいただいた中でも1・2を争うほど上質なもの、自然の産物ですからこれも一期一会ですね。素材をみてもっとも適した調理法で仕上げる店主のイマジネーション・工夫・応用力はほんとうにすばらしい。常に進化しており、客を飽きさせない。通い続けたいお店なのは間違いありません。
次回の予約をとりつつお店をあとにしました。
2021/09/25 更新
2021/07 訪問
常に進化5
前回から3カ月ぶりですが、夏場の訪問はほんとうに久しぶりかもしれません。そうしたこともあり本日の食材を楽しみにしながら明治神宮前から歩きます。他のレストランへの道中もそうですが、ここ数か月入店時間が早いことから、見える風景がことなりなんとなく違和感がありますね。
この日もはっきりしない天気ですが、エントランスへのアプローチはしっとりと雨に濡れ、これはこれで雰囲気があります。
◇ 先付 毛蟹(噴火湾)、白オクラ、焼きナス
ゆずの香りを効かせたジュレがアクセント、
毛蟹は香りもよく繊細な味
◇ お通し 鮑を煎り出汁
出汁で煮含め、片栗粉をつけて揚げた鮑、
鮑の香りが立ち上ってきます
◇ お凌ぎ アナゴのつけ焼き
この季節のアナゴは何物にも代えがたい
深みのある甘さ、しっとりと密度の高い良質の脂を感じる
◇ お凌ぎ2 アンキモとイチジク
アンキモは冬と思っていたがこの季節はさっぱり
表面にアーモンドを削ったイチジクとともに出すのは
なかなかのセンス
◇ お椀 アコウ、ジュンサイ、ゴマ豆腐
アコウは繊細な甘みと旨みが凝縮されとても上品
ゴマ豆腐は葛で仕上げられいい出汁となっている
◇ 造り 鯛、シマアジ
通常は明石だが今年はモノがなく、今日は鹿島
つよい弾力、脂が乗りしっとりと琥珀に色づくうまみ
シマアジは数日寝かせたものだが、上質な脂の深みとコク
◇ 焼き物 鱧の炙り
炙りの直前は骨切り心地よい響きを楽しんだが
脂がのりつつも身のしまった肉厚の鱧、炙りで味は凝縮
◇ 焼き物2 ウナギの肝
きれいな味わいのウナギの肝の炙り、上質な海苔とともに
巻きものにしていただく
◇ 強肴 鮎の炙り
山陰を代表する清流、高津川の鮎、
水苔が凝縮されたとても深い香りでうまさは際立つ
◇ 強肴2 金華豚
しっとりと上品な甘みのある脂と繊細な味わいを兼ね備えた肉質
真っ赤な梅のソースが味を引き締める
◇ 追肴 蕗とバチコの天ぷら
蕗は沖縄?おおぶりでほのかな蕗のかおり、むしろシャキシャキとした
食感を楽しむ、バチコは磯のかおり・濃厚なうまみとも上質
◇ ごはん 新生姜がほんのり効いた炊き込み
新生姜のさわやかな香り・さっぱりとした味わい
◇ ごはん代わり 蕎麦はいつもながら本職を凌駕するような香り・のど越し
◇ 水菓子 メロン・モモ・巨峰 マンゴーソースかけ
◇ 甘味 葛切り
禁酒令となる直前のすべりこみ、まずは生ビールでのどを潤し冷酒へ。
この日も黒龍(しずく・吟風・火いらず)、黒龍は食事を邪魔しない冷酒として
とても気に入っていますが、食事の構成に合わせ最初は比較的やわらかなしずく、
輪郭のはっきりした吟風、とろりとした生酒の火いらずへと移行。
冷酒は奥様の見立てですが、黒龍のラインナップはすばらしく、
食事との相性は比類なくこの日も多いに堪能しました。
次回は9月、まつたけが楽しみです。
2021/07/11 更新
2021/03 訪問
常に進化4
明治神宮前からの道中夜桜もちらほらと観る機会があり、季節の移ろいを感じます。前回から半年ぶり、魚・山菜など春の食材をいただくのを楽しみにしておりました。
◇ 先付 蛤の出汁でとられた空豆のお椀
蛤のうまみがたっぷりと出た上品な出汁、ほくほくした
味のしっかりした空豆を引き立てます。
◇ お通し 春子の卯の花和え
軽く〆られた春子は見た目も美しい、桜の花をほんのすこし
きかせた卯の花とよく絡みます
◇ お凌ぎ 松葉蟹のお寿司
松葉蟹には土佐酢のジュレがそえられ、松葉蟹の甘く上品な味を
ひきたてます
錦糸玉子・三つ葉もからみ、彩りも見事
◇ お椀 アイナメのお椀
うまみのたっぷり出た鰹出汁、アイナメは透明感があるものの
脂が多く、しっとりとした美味しさ
ごく薄い独活がアクセント
◇ 造り 鯛
樋口さんといえば鯛ですが、透き通る身の美しさ
繊維のしっかりした弾力がとても強い、香り・甘味・うまみとも
きわめて上質
◇ 造り2 めじまぐろと赤貝
めじまぐろは赤~ピンクと美しい色合い、若さを感じつつも上品な脂
赤貝は肉厚でとても地味深く、かつ、しまった味わい
◇ 向付 ホタルイカ
熱せられた岩盤が供せられ、思い思いに火をいれます
音・香りなど楽しめる演出、この時期ならではのホタルイカの
密度の濃い味を楽しみます
◇ 焼き物 太刀魚炙り
身のしまったきれいな脂がのった白身、甘味がとてもつよい
◇ 強肴 稚鮎の春巻き
花独活のそえられた稚鮎の春巻き、水苔のとてもいい香りが
広がります
◇ 追肴 ホワイトアスパラとフグ白子の炙り
ホワイトアスバラは炙ることでうまみ・甘味が封じ込められています
白子は破裂しないように皮の部分のみ炙った熟練の技、繊細かつ
クリーミーな味わい
◇ 追肴2 筍と蕨の炊き合わせ
筍は切り口が純白でみずみずしい、歯触りがよく優しい香り
木の芽がアクセント
◇ ごはん 牛蒡出汁がほんのり効いた炊き込み
牛蒡の香りとともにシャリシャリした食感をたのしみます
◇ ごはん代わり 蕎麦はいつもながら本職を凌駕するような香り・のど越し
◇ 水菓子 イチゴ・デコポン・オレンジ
◇ 甘味 葛切り
こちらの冷酒は奥様の見立てですが、この日は日高見・みむろ杉・黒龍(生酒・吟風)といただきました。お料理にあわせて辛口からふくよかな味わいのお酒をおすすめいただきましたが、吟風は上品で落ち着いた吟醸香、軽快でなめらか、それでいて芯のある味わいでした。
樋口さんにはこの季節は何度も訪問していますが、この日のお料理は過去にいただいたことがないものが多く、ほんとうに研究熱心な方との印象をさらに強く持ちました。春の夜の夢心地の2時間半を過ごすことができました。次回も楽しみです。
2021/03/28 更新
寒い日がつづきますね、この日は樋口さんへ。前回は秋でしたので、季節はすっかり進んでしまいました。異常気象とはいっても、日本はまだ(一応は)四季がありますので、ときどきの食材は楽しみ。今回は脂ののった冬。神宮前からの道中は期待に胸を膨らませておりました。
玄関へのアプローチ階段を登り店内へ、なつかしいお香の香りがただよっています。席につき早速ビールを、本日いただいたものですが、
◆ お椀(車海老、大根餅)
白味噌仕立て、車海老の頭、甲羅でていねいにとったビスクのつよい香り、濃厚なうま味とでなめらかな舌触り、車海老のぷりぷりとした食感と大根餅の甘味が調和、冷えきった体をあたためてくれる
◆ 海老芋、餅からすみ、隠元の胡麻和え
素揚げされた海老芋はきめ細かい肉質のねっとりとしたうま味、甘味がひろがる、からすみはお正月の月らしく餅をからめていただくが、凝縮されたボラの卵の香りをもち米がおいかけてくる、味の濃い隠元の胡麻和えはちょうどいい塩梅の箸休め
◆ お椀2(白甘鯛と新筍、独活)
うつくしい白漆のお椀の蓋をあければ、本枯節のつよい香りがたちのぼる、お汁の表面に波紋のようにひろがった白甘鯛の脂がうつくしい、上質な脂をまとった皮目のついた白甘鯛は淡白さにしっかりとした甘みとうま味が凝縮され、透き通ったお汁がひろがる、走りの新筍はごくわずかなえぐみに春のことぶれを感じる、独活はシャキシャキとした瑞々しさ
◆ お造り(鯛と鰆)
淡路の鯛は強い歯ごたえの弾力が印象的、噛むほどに上品な甘味とうま味がひろがる、三重の答志島であがった鰆は上質な藁で炙られ、桜色の切り身がうつくしい、いただけば藁の香りをまとったしっかりとした身からきれいな脂ととろけるようなうま味があぶれ出る
◆ カスリハタ
樋口さんでもはじめてというカスリハタ、すこし寝かせたのかもちっとした食感でつよいうま味と濃厚な甘味がひろがる、炙られた皮目がうつくしい
◆ お凌ぎ
お凌ぎは冬の女王、ズワイガニと聖護院蕪のお粥、内子のつぶつぶとした食感がはやし立ててくれるが、ズワイガニの強い香りと蛤出汁の味の深みが見事に調和した一品
◆ モロコ
モロコの木の芽焼きは、木の芽のタレに浸しつつなんども丁寧にあぶられ、飴色に染まった身がうつくしい、木の芽のやさしい香りが淡白ながらうま味がつよいモロコをつつみこむ、フレッシュな木の芽とともにいただけば、爽やかな春の香りが鼻に抜ける、キンカンの甘露煮がお口直しにちょうどよい、骨のしっかりしたモロコは繰り返し炙ることで中骨の香ばしさが増し、甘みも感じられる、丁寧な仕事が際立つ
◆ 河豚の白子の炙り
新たな仕入先さんからきた河豚の白子、小生一等好みの食材だが、炙られた白子は、上品な甘みとクリーミーなうま味、かすかな潮のかおりが舌の上にひろがる、きめ細かく繊細な甘みは官能的で至福のおいしさ
◆ ひろうす(新若芽、そら豆、百合根、むかご)
上品なかつお出汁をたっぷりと吸ったひろうす、ふんわりとしたひろうすは食材の豊かな風味と食感をたのしむ、百合根、そら豆、むかごのほくほくとした甘みと新若芽の磯の香りで春をかんじる
◆ 鴨の炙り
ロース、モモ、手羽とことなる部位をいただく、官能的なガーネット色のロースの切り身は香ばしい皮の香りと溶けだした脂のうまみがダイレクトに広がる、もも肉はロースよりも鉄分をかんじる濃厚なうま味、手羽は豊富なゼラチン質で皮の食感と脂の旨味が非常に強い
◆ ご飯
炊き立てのごはんに、芹といりごまをのせていただく、春の香りと爽やかな苦味、ごまの香ばしさが一体に、芹特有の清々しい香りが熱々のご飯で引き立ち、茎のシャキシャキとした食感がおいかけてくる
◆ 蕎麦
こちらのお蕎麦は玄人はだし、美しく切りそろえられた蕎麦は香り、のど越しとも比類ない、そばつゆの出汁とかえしの塩梅も高い水準
◆ オレンジ(紅マドンナ)
ちょうど一年前にもおじゃましていましたが、メニュー構成はがらりと変わっていました。、ご主人のお料理に対しつねに真摯に向き合いつつ、高みを目指される姿勢には感服させられます。食材についてもしかり、新たな挑戦を恐れることなく、ご自身の知識と経験を信じ、白眉な一品と仕上げられる技量が随所にかんじられ至福の時間を過ごさせていただきました。現状に満足しないご主人の姿勢こそが、こちらのお店の最大の魅力ですね。
お酒はいつもながら奥様の見立て。この日は黒龍(しずく)、一歩己、よこやまといただきました。お料理の特性を考慮しつつお選びいただきましたが、組み合わせはとても満足いくものでした。お客に喜んでいただこうとの矜持には感謝しかないですね。
これからもすっと通い続けたいお店です