5回
2023/05 訪問
「麻布十番 膳処末富」日本が誇る五感で満たす、最高峰の薫香レストラン
麻布十番の路地裏にひっそりと佇む「膳処末富」さん。
素晴らしき香りの記憶を脳裏に焼き付けてくれる焚き火料理店。
☆食べログ 百名店 日本料理TOKYO 2023 選出店
オーナーシェフは末富 信氏。
かつて麻布十番にあった魚料理の名店「さかなや 富ちゃん」の2代目ながら、「肉匠堀越」「鈴田式」「薪鳥新神戸」「麻布室井」と予約困難にさせるほどの薪焼の仕掛け人。
ご自身のやりたい事を形にされたのがこの「膳処末富」となり、異国の地で魅了された焚き火という製法を自己流にアレンジされた、食材の味を最大限に引き出す究極の香り付け。
場所は麻布十番駅2番出口より徒歩3分ほど。
古川の橋を渡って住宅街の細い小道を進んだ先で、「麻布室井」さんの左手へ石畳のアプローチで2階へ。
暖簾をくぐると広がる屋根裏の隠れ家のような6席のカウンター。
どのお席からも中央に設置された焚き火台を眺められる設計となり、さらには薪焼き台と2つを巧みに使い分けて食材に香りづけされていきます。
6名の特別なゲストが揃ったところで、末富氏の「はじめよう!」と引き締まるお声とともに一斉スタートとなりました。
メニューはおまかせコースのみの提供となります。
頂いたものは以下の通り。
「おまかせコース」
●先付け:北海道のともろこしのピューレとジュレ
●藁焼きした冷製空芯菜
●鰹のたたき 特製ダレ
●お椀:金目鯛、玉ねぎ
●牛ヒレ丼
●アオリイカとアロエのセビージャ
●蛸と椎茸のタルト
●アスパラガス 味噌卵黄ソースがけ
●高坂鶏のたたき:もも肉
●ほおずきの白和え
●薪焼きマッシュルーム きのこのソース
●ウイスキー樽で燻した牛タン
●炊きもの:北海道のじゃがいも
●薪大根ご飯
用宗生しらす(静岡)、卵黄と山椒、太刀魚と柚子胡椒
●薪うどん
生カラスミ
●北京の世界紅茶
●デザート:レモンのジュレ
●セロリと粗塩のアイス
・COEDO 瑠璃 Ruri
・ハイボール
一皿に表現する味の組み立て方、香りというエッセンスを纏わせて完成される唯一無二の味わい!
始まりを告げるように藁で燻されから冷やされた空芯菜。
冷たい食べ物でこれほどまでに香りが乗り、美味しい!と思えるものは存在させないほど!
咀嚼の度に茎の空洞に宿した心地よい香りに満ちあふれるお決まりの逸品。
今回のさかなや 富ちゃんから伝わる特製ソースをあしらった一皿は鰹のたたき。
皮目を軽く薪火で炙って香りを乗せ、旨味たっぷりのソースで薫香と共に旨味を思惑通りに爆発させる!
そして牛ヒレ丼のお肉が過去イチで美味い!
分厚いのに極上の柔らかさで噛み切ると、繊維の一つひとつから旨さが伝わり、焦がすように香りを乗せた玉ねぎによって降りてくる甘みが身の旨味と合致!
こんなにも贅沢な丼ぶりを構成できる発想がいつもながらに凄い!
今回は鶏つくねの変わりに高坂鶏のたたきを提供。
レア感を残しつつも皮目は薄くパリッと焼かれ、噛み締めると滲む鶏の甘くて上質なあぶら!
皮目とレアな身とともに極上すぎる旨味に深く浸れた薪鳥!
ウイスキー樽のチップで燻し焼いた牛タン。
樽の甘さ、香り、水分が身へと宿り、弾むような食感から溢れ浸る至極の旨さ!
もちろんハイボールと香りと味のマリアージュで。
今回の土鍋は薪大根ご飯。
大根にしっかり纏わせた薪の香りは、噛み締めて瑞々しくあふれる憎さで演出!
1膳目はそのまま香りを楽しみ、2膳目は静岡用宗の生しらすを乗せ、3膳目は卵黄と山椒、4膳目は隠し種の太刀魚ご飯!もう全部旨い!
〆のうどんにまで薪塩で香りを纏わせ、えんみと交わる一本に対して究極の深みを与えてくれる。
2杯目は生カラスミを混ぜてさらに強い旨味へと導かれる。
デザートには天然水と砂糖とレモンだけで仕立てたジュレ、そしてセロリと粗塩のアイスでこれまでの強い香りをスッキリと。
末富氏のこだわりの究極の香り付け、心置きなく存分に堪能させて頂きました!
今まで感じたことのない味わいを伝えてくれた。
想像もできない味なのに、訪れる度にさらに上へと越えてくる逸品と出会える。
これが楽しみでもあり、末富氏の発想と努力の賜物だと感じさせてくれる。
素晴らしい器のセンスも光り、視覚でもおいしさを彩り、提供されるお皿の向きにまで重きを置かれて魅せるように表現し、細やかな所作までもが次の品への期待へと繋げていく。
そして焚き火の炎を見つめ、炭が弾ける音、食べ手を上手く刺激させる空間。
味わいに香りをプラスさせた唯一無二のアプローチ。
貴重なお席に4回も訪れることができて、もう完全に虜になりました!
またどこかで違う形でお会いできる日を心よりお待ち申し上げております。
□膳処末富
所在地:東京都港区三田1-10-15 2F
営業時間:17:30、20:30の2回転
定休日:不定休
滞在時間:約2時間
お会計:38,720円税込
予約:前回訪問時、次回ご縁があれば必ず!
門構え
カウンター
●COEDO 瑠璃 Ruri
藁焼きされる空芯菜がコースの始まりを告げます。
●先付け:北海道のともろこしのピューレとジュレ
ジュレの爽やかな旨味に包まれたとうもろこしの奥深い甘み。 口をすっきりと整えるように味覚をアイドリングさせる。
前回は極上メジマグロ、今日は鰹かな?
●藁焼きした冷製空芯菜 藁の香りを茎に詰め込んだ名物です。 素敵な器も映えます。
シャキシャキと食感は茎を潰すほど、ひと噛みする毎に藁の薫香であふれる! あぶらから伝わる旨味、そして冷製なのに香りを最大限に纏った、末富さんならではの究極の焚き火料理。
●鰹のたたき 特製ダレ 薪で皮目をさっと炙った鰹、さかなや富ちゃんのタレをたっぷりと絡めて頂きます。
身の柔らかさにグッと響く締まったタレの旨味! 降りてくる旨味に薫香をしっかりマッチさせて抜群のおいしさが形成!
一品に対する情熱に溢れる末富氏。
お椀です。
●お椀:金目鯛、玉ねぎ お出汁には2年熟成の利尻昆布を4日間かけて抽出。
円やかな出汁は舌に纏わりつくように馴染むと、上質な旨味と昆布の香りが奥からグッと引き立つ。 やわらかな身は出汁に負けず相乗しあい、旨味に満ちる! 玉ねぎは不思議なほどに輪郭を残しつつ、その甘さが口の中で際立つほど。 実に綺麗なお椀でした。
お待ちかねの今日の丼ぶり~♪
●牛ヒレ丼 玉ねぎを焦がしながら焼き上げてあります。
この厚みにも関わらず、驚きの食感が待っています。
4度がすべて脳裏に焼き付いて離れない、至極の丼。
しなり方を見ても想像できるように、軽い咀嚼だけで歯切れするほど! 繊維の一つひとつから旨味が滲むようにあふれ、噛みしめるほどにやわらかく降りてくる玉ねぎの甘み、香りと交わり極上の味覚をつくる!
●アオリイカとアロエのセビージャ 酸味の一品でお口直し。
アオリイカ特有のねっとり感ではなく、しっとりさらっとさせて、塩水でヌメりを取ったような舌触り。 軟らかなえんみをアロエの食感が馴染みを良くさせ、冷たさにハーブの香りと余韻でこれまでの口を一旦リセット。
●蛸と椎茸のタルト 蛸の柔らか煮と薪焼きした椎茸のタルト。
一口で頂いてほしいと末富氏。
生地の風味が膨らむと蛸を見つけて食感と香りが立ち、さらに椎茸と薪の薫香が二段階で抜けていく。 タルト生地の軽やかな香りに響かせるように香りを重奏させる西洋風な美味しい逸品。
●アスパラガス ホエー、味噌、卵黄をソースとしてあしらったヒトサラ。 農家さんより直接仕入れるこだわり。
アスパラガスの一つひとつは瑞々しさに乗せて膨らむ薪の薫香、奥深くに忍ばせた味噌の色濃いコクがソースに深みを出してふくよかな味わいに! 言葉に詰まるほど美味い!
本日の牛タン、これから下味を付けて焼かれていきます。
●高坂鶏のたたき:もも肉 無菌鶏の高坂鶏にこだわって使用。
極うすい皮のパリッとした食感と旨味!咀嚼の圧で滲むように降りてくる甘いあぶらがめちゃくちゃ美味い! 後味はあぶらの余韻に包まれ、シンプルながら薪焼きの賜物と感じさせる一体感。
●ほおずきの白和え 愛知の食用のほおずき。
噛みしめると瑞々しいミネラルと共に香りがふわーっと広がって後に残す酸味。白和えがしっかりと味を引き締めて、これぞ味わったことのない味覚!
あの逸品に合わせてハイボールにシフト。
●薪焼ききのこ きのこのソース
濃厚なソースに浮かぶキノコはさらに色濃い旨味を纏い、口で噛みしめるとみずみずしく旨味を炸裂! 持たせた水分量がより味に深いコクを与え、メインディッシュにも引けを取らない堂々とした逸品!
●ウイスキー樽で燻した牛タン 樽の甘さ、香り、水分を纏わせながら焼かれたもの。
弾むようなパワフルな食感ながら、ひと噛みごとに脂を引き出し、心地よい樽の薫香に包まれる! 下味もしっかり旨味として作用させ、味と香りに包まれ余韻高い、素晴らしい一皿。 ハイボールとの香りの相性、ぜひ感じてください。
●炊きもの:北海道のじゃがいも シンプルに昆布出汁で炊いたもの。 じゃがいも農家さんから美味しいじゃがいもを特別に譲ってもらったんだそう。
そんなに甘くなる?と、驚かされるほどにしっとり口に馴染む甘さ。出汁は薄味ながらも旨味が舌で転がるように存在感を放ち、じゃがいものおいしさを引き立てます。
ご飯に仕込む食材の準備です。
火遊びが大好きな末富信氏。笑 料理人としても素晴らしい才能で、手掛けるお店はどれも予約困難とさせるほどの手腕の持ち主。
◯ガリ 弾けは弱く、みずみずしく甘みが広がり、後味に酸味を響かせて。
●薪大根ご飯
先ほど薪焼きされていたのは大根。 あぶらと共に薫香を纏ってお米と同化するように潜み、噛みしめるとみずみずしく香りがあふれる憎すぎる演出を生む! 大根をご飯に合わせられるのは末富氏だけ。
●用宗生しらす(静岡) 二膳目は生しらすを乗せて。 混ぜるよりも縦に箸を入れて。
しらすのほんのりとしたほろ苦さが薪の香りと交わり、最高の一膳を感じさせる。
●薪うどん 名物の薪塩を纏わせたうどんです。
薪の香りがしっかりと伝わり、もっちりとした一本がえんみと香りでじっくり味わいの深まる究極の薪うどん。
●生カラスミ薪うどん
2杯目は生カラスミを添えて
からすみの塩気がしっかり旨味を高めていき、膨らむ味わいは贅沢すぎる旨さに!
●薪大根ご飯 3膳目は卵黄と山椒で。
卵黄のねっとりと濃厚な弾け、しっとり広がる旨味が包み込む!
なんと奥にはお肉を忍ばせる粋な計らい!
●薪大根ご飯 4膳目は太刀魚に柚子胡椒を薬味に。
そのままでも太刀魚の甘みに薪の香りであふれ、柚子胡椒で尖った旨味へと変化させる! 間違いない美味しさが最後まで爆発!
●北京の世界紅茶 円やかな口当たりと包み込まれるような香り。
●デザート:レモンのジュレ 天然水、レモン、砂糖のみで仕立てたジュレ。
すっきりとした甘さにレモンの柑橘な味が空気感に引き立つバランスの良さ。
●セロリと粗塩のアイス
セロリは香りのみで苦味は粗塩から感じさせるという味の足し算。粗塩もしっかり美味しい〆のアイス。
焚き火を見つめることでこの場所に向き合う姿勢ができ、未知の味を体感させてくれた素晴らしいレストラン。まさに語り継がれていく伝説のお店。
2023/06/25 更新
2023/02 訪問
「麻布十番 膳処末富」訪れる度に進化を遂げる、究極の薫香レストラン
あの香りが恋しくなる頃、待ち焦がれる気持ちを抑えながら石畳のアプローチを抜け辿り着く屋根裏のような隠れ家。
薪焼き台を囲むように6席、この日はカウンターの中央に陣取ります。
一連の流れはわかっていても、訪れる度に新しい発見がある。
香りにばかり気を取られがちでも、深い旨みを感じ取れる昆布出汁。
北海道の白子。昆布のお出汁に浸かっているものの、その出汁の味わいはクリアながらいたって主張せず、白子がしっかり昆布の豊かな香りを纏ったかのような極上の味。海水の塩分濃度でさっと湯通ししただけでも、冷たさのなかにある白子の綺麗な美味しさを表現する昆布出汁、これは感動するレベル。
〆の薪うどんのお出汁にも綺麗な昆布出汁を感じられ、昆布の旨みと薪の香りを出汁に閉じ込めたかのような素晴らしい味わい。
また丁寧な火入れと香り付けも見逃せないポイント。
丁寧に香りを乗せるだけではなく、その乗せ方も末富氏の計算通り。
薪を燻した上にさらに桜チップで香りを上書きするメジマグロ。
メジの旨みを引き出す火入れ、咀嚼から降りてくるソースの旨みを身の甘みと融合させ、抜群の薫香が余韻へと綺麗につなげる。
素材、味、香りのベクトルが一直線となり、思惑通りに旨さ爆発!
面白い作品はタコと椎茸のタルト。
タルト生地の食感と風味に薪で香りを乗せた椎茸がつくる一体感。口で混ざるほど落ち着いた旨さを深めていき、洋とかけ合わせたアミューズのような作品。
ご飯はシンプルに薪ごぼうご飯とし、以前のような牛肉を使わずにとも素材を楽しめるものへと一新。
強烈な薪の薫香を纏ったごぼうが粒立ちの良いお米に香りを移し、口でその味をグッと印象づけるように放つ。
前回に比べて1万円ほど高くなっており、情勢を踏まえて致し方ないかと思いますが、すべての一皿に抜かりを感じさせない逸品揃い。
訪れる度に未知の領域へと進化を遂げる末富氏の焚き火料理。
やりたい事をそのまま形にされた、お気に入りの素晴らしき薫香レストランです。
今回、頂いたものは以下の通り。
「おまかせコース 33,000円」
●先付け:サラダえのき 春菊と梅肉添え
●藁焼きした冷製空芯菜
●メジマグロのたたき
●お椀:白魚のしんじょ
●牛ヒレ丼
●白海老のセビージャ
●竹で燻した鶏つくね
●蛸と椎茸のタルト ビスク
●白子(北海道)
●薪焼きマッシュルーム きのこのソース
●ウイスキー樽で燻した牛タン
●茄子の炊きもの
●ご飯
薪ごぼうご飯、しぐれ煮、生姜
●薪うどん
●デザート:月光ゆり根と豆腐ソース
●金萱茶のアイス
●北京の世界紅茶
・城陽 純米大吟醸 2019 / 城陽酒造(京都 城陽市)
・クラシック仙禽 無垢 2022 / せんきん(栃木 さくら市)
・日日 Nichi nichi / 日々醸造(京都 伏見区)
お会計:約47,000円税込/人
予約:前回訪問時、次回5月
※写真に簡単なコメントを添えておりますので、気になる方はご参考頂ければ幸いです。
膳処末富
石畳のアプローチ
カウンター
胃を温めたくて最初はお茶を頂きました
●先付け:サラダえのき 春菊と梅肉添え えのきの食感を残して、纏った油が伝える薪の香り。そのえんみが優しく包む。 春菊の香りに寄り添う油に乗せて薪の香りが始まりを告げるように高ぶる気持ち。
●藁焼きした冷製空芯菜 お馴染みの空芯菜。 シャキシャキとひと噛みごとに空洞に込められた香りを放ち、冷たさのなかにある香りと旨さに浸れる挨拶代わりの逸品。
料理人として素晴らしき器量の末富氏。手掛ける他店をも流行らす食の仕掛け人。
城陽 純米大吟醸 2019
●メジマグロのたたき 藁で燻した香り付けに加え、桜チップで香りを上書きするように乗せる。
踏み込む食感から甘さが引き出され、タレと交わる身の旨み、そして薫香が融合されて旨さの極地へ! 降りてくるソースと咀嚼で溢れる甘みが一致し、堪らない味を生む! 当然のことながら余韻も素晴らしい!めっちゃ美味しい!
ひたすら旨みを放ち溶ける食感とゼラチン質な身を併せ持ち、口で旨みがしっかり留まり感じられる旨さ!
●お椀:白魚のしんじょ 2年熟成の昆布は濃縮した円やかな旨みの出汁。しんじょが甘みを昆布が優しく包み込むように、穏やかで綺麗が味わいに満ちたお椀。
お水はいつものヒルドン
●牛ヒレ丼
薪と炭、そして玉ねぎで蒸し焼きに。 咀嚼で引き出される玉ねぎの甘さと香り。ご飯にも寄り添う薫香感を見つける。
ストレスなく歯切れする極上の柔らかさ。 思いっきりかぶりつく幸せ!美味しい!!
●白海老のセビージャ
白海老のしっとりした質感を噛み締めて甘みを覚え、酸味として口直しさせてくれる一品。
クラシック仙禽 無垢 2022
つくねがスタンパイ
●竹で燻した鶏つくね
高原比内地鶏と高坂鶏を合挽きした鶏つくね。 焼き加減は極めてレア。
ぷるんぷるんと弾むような身を噛み締めれば、溢れる甘旨な脂がジューシーに炸裂!
竹の燻した香りが咀嚼で降りてくると、旨みと同じベクトルで余韻へと繋げる。 薪鳥新神戸さんで唯一出さないつくねをこちらで食べられる特別さと多幸感。
●蛸と椎茸のタルト ビスク これまでになかった新しい試みの作品。
一口で食べてほしいというタルト。 タルト生地の食感と風味が先行し、蛸と椎茸が咀嚼から旨味と薪の香りを引き出す。
末富さんらしくなくても香りが見事に一致させる新感覚の一品。
○ビスク 室井さんや鈴田式で使う魚の中骨を濃縮したもの。ザラッとした舌触りに濃厚な風味を炸裂させ、しっかりとした旨みを放つ一杯!
●白子(北海道) 海水の塩分濃度でさっと湯通しした白子を昆布出汁に浸したもの。
奥行きのあるクリアな出汁、それに反比例するかのように昆布の旨味をしっかり纏った白子。 シンプルに冷たくて美味しい素晴らしい逸品。 これまで食べた白子史上No.1と思えるほどに驚愕の味!
●薪焼きマッシュルーム きのこのソース 薪焼きしたマッシュルームにチーズとキノコを合わせワインビネガーやお出汁を合わせたソース。
塩気のあるソースをベースにマッシュルームの風味を豊かに且つ綺麗に相乗させる旨さ!
●ウイスキー樽で燻した牛タン
舌に着地する寸前に香り出すウイスキー樽の風味、そのまま口全体に甘みが降りてくる。 以前に増して風味と甘みは強烈に、心地よい食感に引き出される旨味。そして極上の余韻に酔いしれる。
●茄子の炊きもの 一日かけて茄子にお出汁を含ませながら炊いたもの。
蓄えたお出汁が咀嚼で吹き出すように広がり、落ち着いた逸品ながらもしっかり印象づける末富流の箸休め。
日日 Nichi nichi すっかり大好きなお酒です。
しぐれ煮
生姜
今回はシンプルに牛蒡のみを土鍋で炊いた牛蒡ご飯
●薪ごぼうご飯 お米のお煎餅をふりかけにして添えてあり、薪の香りが咀嚼でしっかり降りて、噛む度にご飯の甘みに乗せて豊かな味わいを感じさせる。
●薪うどん すうどんながらもむっちりとした太さに纏わせた綺麗な薪の香り。えんみも心地よく咀嚼を進ませ、旨さの味わいに浸れる。
このむっちりした身に綺麗に香る薪の風味が素晴らしい味わい!
二杯目はお出汁を注いて頂きます。 お出汁に纏った薪の薫香が極上の旨味をつくり、昆布の深い味わいをベースに薪の香りをお出汁に閉じ込めたかのような口当たりがさらに美味しい!
お出汁を纏ってツルッと豊かな風味と味わいを全面に押し出してくれます。
おかわりの二膳目はしょっつる葱を添えて。 お米は星空舞という品種で、粒が小さく甘みがギュッと詰った美味しさ。牛蒡に纏った油でバラけ良く、その空気感から香りが素晴らしく良く立ちます。
焚き火料理のスペシャリスト 末富氏。この光景、もはや何職人だかわかりません。 ただ言えることは末富氏の追い求めた究極がこの姿。格好いい!
●デザート:月光ゆり根と豆腐ソース ゆり根と柚子とザラメを豆腐のソースで絡めて。
風味豊かに馴染んでいくゆり根をフルーツで提供する発想が凄い! しかも月光!
●金萱茶のアイス お水とお茶と砂糖だけで仕立てたアイス。 口に入れた瞬間にスッと香りを伝えて儚く口どける〆のアイス。
●北京の世界紅茶
ご馳走さまでした!
今宵も焚き火に魅了されました。
2023/03/27 更新
2022/12 訪問
「麻布十番 膳処末富」薫香付けのスペシャリストに磨きがかかり本領発揮!最高峰の焚き火料理
心待ちにして止まなかった2回目の訪問。
麻布十番の路地裏にしっとりとした石畳を抜けてたどり着くアプローチ。
階段を上がると強い風圧で吸い込まれていくフロアに広がる6名のゲスト席。
囲炉裏を囲むような感覚にさせる薪焼き台にこの火も炎が灯されます。
前回の秋らしい食材を抜群の香り付けでアレンジされる焚き火料理。
今回はさらに焼きのレベルが上がり、香りの乗りは増し、研ぎ澄まされる五感を使って頂く素晴らしいお料理を堪能させて頂きました。
メニューはおまかせコースの提供となります。
頂いたものは以下の通り。
「おまかせコース 33,000円」
●先付け:北海道の白子 キタアカリのピューレ添え
●藁焼きした冷製空芯菜
●鰆のたたき
●お椀:カニ(富山)
●ヒレ丼
●白海老のセビージャ
●薪焼きマッシュルームときのこのソース
●竹で燻した鶏つくね
●茄子の炊きもの
●薪焼きレタスと牡蠣ソース
●牛タン
●ユリ根の炊きもの
●牛しゃぶと牛蒡の炊き込みご飯
●薪うどん
●デザート:代白柿と豆腐ソース
●北京の世界紅茶
●金萱茶のアイス
・COEDO 瑠璃 Ruri
・冩樂 純米酒 / 宮泉銘醸(福島 会津若松)
・新政 改良信交 コスモス / 新政酒造(秋田 秋田市)
・ハイボール
秋の味覚が多かった前回よりも落ち着いた素材ではあるものの、そのどれもが抜群なほどに香りが乗って、心地よく抜ける薫香感にうっとり!
まずやってきた香りものは藁で焼かれた空芯菜。
冷静にすることでより香りを高めたいとする末富氏の構想を形にし、冷たくてこれほどまでに香りを楽しめる逸品はないほど。
さかなや富ちゃんのから受け継ぐ玉ネギソースが堪らない旨みをもたらす鰆、強烈な旨みと桜チップで極上の香り付け。
薪と炭、そして玉ねチップを使って燻し上げたヒレ丼。
玉ねぎで蒸し焼きにすることで、肉厚な表面から甘さが降りてくるような素晴らしい味への着地点!
頬張る柔らかさたるや、堪らない旨さに酔い浸れる瞬間。
今回のつくねは静岡の竹で燻し焼いたもの。
ホロリとした瑞々しさは前回と一変、心地よく塩気を響かせて噛み締めて膨らむ極上の旨みと薫香感!
レタスの薫香が主役の牡蠣ソースに、ウイスキー樽のチップで樽香を纏わせた牛タン。ミズナラのハイボールで合わせる演出が憎い!
〆は牛しゃぶと牛蒡の炊き込みご飯。
それぞれの食材を活かした味が交わり、口で生まれる至極の余韻。
確実に前回を上回る香りに酔いしれました!
もう一つの〆は薪うどん。
そのままでも薪塩がもちっとした食感に響いて抜群なおいしさ!
お出汁に付ければさらに香りが膨らんで、昆布と椎茸の香りを上手にプラス。
これら香りの味わいを爆発させる要因が、間に挟んでリセットさせる一品。
極端すぎるこの緩急が素晴らしい味わいを生み、躍動感を見事に高める末富氏のねらい。
いやー、今回も存分に堪能させて頂きました!
そして嬉しかったのが、次回のチャンスがまだある事。
6席2回転は既に予約困難ではあっても、訪れる機会が与えられるなら未知の味に出会うことのができる、香りに満ちたレストランです。
□膳処末富
所在地:東京都港区三田1-10-15 2F
営業時間:17:00、20:30の2回転
定休日:不定休
滞在時間:約2時間
お会計:42,042円税込
予約:前回訪問時、次回2月
膳処末富
麻布室井さんの入口横の小路を進むアプローチ
壁には目立たぬ店名が刻まれます
内観
カウンター
COEDO 瑠璃 Ruri
始まりを告げるように空芯菜が燻し焼かれます。
最初の器
●先付け:北海道の白子 キタアカリのピューレ添え
3年熟成のキタアカリをゆっくりビューレにして白子にあしらったもの。
白子のクリーミーなほどけからねっとり旨みを伝え、コーンの甘みがしっかり味わいを膨らませる! 後味に残るようなコクがいきなり美味い先付け。
●藁焼きした冷製空芯菜 旨さと香りを穴に詰め込むように出汁と一緒に藁焼きされたもの。
冷たさの口当たりから伝わる昆布の旨み。そして抜群の香りが鼻へと抜けて、味わい深くうまさを届ける! 敢えて冷やすことの意味を発見できる挨拶代わりの香りづけ。
●鰆のたたき ソメイヨシノのチップで燻し焼きされた分厚い鰆。
ほろりとした極上のレア感にかかるソース。さかなや 富ちゃん秘伝の玉ねぎソースが強烈な旨みを爆発!
香りも乗って文句なしの堪らない美味しさ!
●お椀:カニ(富山) 二年熟成の昆布で甘さをうまみを引き出した出汁、そこに浸るカニしんじょ。
カニの香りと甘みが繊維の一つひとつに生きていて、昆布出汁が融合することで綺麗な旨さを表現!
冩樂 純米酒
お水はHILDON
●ヒレ丼 薪と炭に加えて、玉ねぎを使って蒸し焼きにしたこだわりの逸品。
容易く噛み切れる極上のヒレ肉。旨みを炸裂させながらも、咀嚼からふわっと降りてくる玉ねぎの甘みが絶品!
とんでもない肉のカタマリです!
●白海老のセビージャ マリネでさっぱり口休めながらも美味しさを掻き立てる酸味の一品。
むちっとした白海老の身から透明な甘さが招き入れやすく、さっぱりした味わいで肉々しいヒレ肉を見事にリセットします。
●薪焼きマッシュルームときのこのソース マッシュルームは薪焼きして香り付け。上にはカダイフを添えて。
きのこのソースがクリーミーで濃厚、マッシュルームからあふれる水気でソースの色濃さを心地よく中和。 ワインビネガーが細やかな味のアクセント。
●竹で燻した鶏つくね
薪鳥新神戸さんでもメニューとして提供されていないつくねを贅沢に竹で香り付け。
前回よりも瑞々しく、ホロリとした食感が印象的。 心地よく響くえんみが食感ごとに旨みへと膨らませていく格別な美味さはどこまでもみずみずしく!
末富氏の安定感あるリードでテンポ良く進んでいきます。
●茄子の炊きもの 一日かけて出汁を吸わせて炊いたお茄子。
しっとりと含んだ出汁の味わい。落ち着いた甘みと奥深い旨みが口を休める。
●薪焼きレタスと牡蠣ソース 出ました!香り付けの変態の領域! メインは紛れもなく牡蠣ではなくレタスです。
40~50分燻し焼かれたレタス、噛めば噛むほど瑞々しく薫香を放ち、牡蠣そのものの旨みとコクをギュッと詰めたソースで膨らむレタスのおいしさ! 香りの楽しみ方を面白く表現された素晴らしいヒトサラ。
次のお料理のペアリングとして頂いたのは?
チェイサーとしてミズナラのハイボールを合わせます。
●牛タン ウイスキー樽のチップを使って燻し焼いた牛タンです。
脂でみずみずしく弾むような食感、表面にしっかり纏わせたウイスキーの樽香が甘い! 噛み締めてタンの旨みとウイスキーの甘みが合致して着地する極上のおいしさ! 思わず目を閉じて味に更ける、そんな4切れを堪能!
ご飯物の準備が進みます。
●ユリ根の炊きもの 末富氏が一番好きな素材ということでシンプルに昆布の二番出汁で炊いただけのユリ根。
出汁に潜んでいたとは思えないほどにナチュラルな甘みが優しく全体を包む!
末富氏 渾身の土鍋ご飯!
本日は牛しゃぶと牛蒡の炊き込みご飯です。
●牛しゃぶと牛蒡の炊き込みご飯
色は真っ黒でも香りが凄い!
粒感のあるお米が牛のあぶらでしっとりさらっとお米に絡み、牛蒡が食感を与え、口で高まる薫香を爆破!
二膳目は小葱を添えて頂きます。
葱がやわらかな青味を香りに乗せて美味しさ膨らみます。
●薪うどん
薪塩でそのままでも十分美味しく香ります。 太めのもちもちしたうどんを噛み締めて薪が香る、そんな不思議なおいしさ!
不揃いさがまたいい味を出します。
後半はお出汁で頂きます。
出汁には干し椎茸がベースで昆布出汁を合わせて。 そんな出汁に浸ることで味わいに乗せて昆布と椎茸の香りで溢れます。 うどんの食感をキュッと引き締めてくれ、あふれる旨み。
おかわり頂きました。
●デザート:代白柿と豆腐ソース
熟した柿の甘みに豆腐ソースがしっとりと畳み掛けるような甘さを伝えていきます。 ソースにはホワイトアスパラが隠し味に。
●北京の世界紅茶
●金萱茶のアイス ミルクを使わずに卵白のみで、溶け出す生感が儚くくちどける。金萱茶の余韻も良く。
気がつけば焚き火料理の虜になってしまいました。
2023/02/04 更新
2022/10 訪問
「麻布十番 膳処末富」焚き火に魅了された店主が織りなす、最高峰の薫香を纏うおまかせコースを堪能
麻布十番の裏路地にしっとりと構える新店「膳処末富(ぜんしょすえとみ)」さん。
焚き火料理をいうジャンルを確立させつつある注目の一店。
店主 末富 信氏。
かつて麻布十番にあった魚料理の名店「さかなや 富ちゃん」の2代目ながら、今や「肉匠堀越」をはじめ、「薪鳥新神戸」「麻布室井」などを手掛ける薪焼の仕掛け人。異国の地で魅了された焚き火という製法を末富流にアレンジされた、究極の香り付け。
焼き場は薪焼き台と中央に設計された焚き火台の2つを巧みに使い分け、厳選された食材が丁寧な火入れ且つ抜群の香りづけ。薪に加えて藁や桜チップにウイスキー樽のチップ、さらには竹を使って燻すという発想はもはや変態の領域。
末富氏がやりたいことを好き勝手やっている、そんな自由奔放ながらも食べ手を面白いほど惹きつけます。
場所は麻布十番駅の2番出口より徒歩3分ほど。
住宅街の狭い小道を進んだ先で、先日お伺いした「麻布室井」さんの左側に入口があります。
しっとりとした石畳のアプローチを抜けてお二階へ。
暖簾を潜るとそこに広がる落ち着いた和空間。
綺麗に照らされる立派なカウンター、6名のゲストが揃うのを静かに待ちます。
メニューはおまかせコースの提供となります。
頂いたものは以下の通り。
「おまかせコース 33,000円」
●先付け:イクラ キタアカリのメレンゲ添え
●藁焼きした冷製空芯菜
●鰹のたたき(鹿児島)
●薪焼き茄子の田楽風 和製ハリッサ
●お椀:鱧(淡路)
●ヒレ丼
●帆立のセビージャ
●つくね 栗チップス
●とうもろこしとピューレ
●薪焼きレタスと牡蠣ソース
●タン
●柿の白和え
●牛しゃぶと松茸の炊き込みご飯
●薪うどん
●燻製ババロア
●北京の世界紅茶
●金萱茶のアイス
・黒ビール 石垣島
・緑茶
香りをメインの味として奏で、薫香がいつまでも寄り添い続ける至高のおまかせコース!
今まで食べてきた料理のなかでも、これほどまでに香りを意識した瞬間はないほど。
その良さを知ってほしい、末富氏の情熱が一品のお皿に表れており、食べ手の気持ちが一つになった「おいしい」という言葉に気持ち良いほどの御礼で応えてくれる心地よさ。
味と味との相乗はもとより、お店とお客とが相乗して作られる素晴らしい空間。これも6席というおもてなしを最優先された末富氏の想いの表れ。
始まりを告げるように豪快に焚き火台で焼かれる空芯菜。
その空洞の身にしっかりと藁の香りを詰め込んだり、鰹には薪焼きにプラスして桜チップで燻して香りを乗せる。
素晴らしい重厚感のヒレ丼。なんと玉葱を熱源にして焼き上げたもので、噛めば噛むほど甘みが増して、うっとり夢中にさせる咀嚼から降りてくる極上の甘旨味は絶品!
最も香りで印象付けたのがとうもろこし。竹で燻された香ばしさをしっとりと纏い、やわらかな苦味に噛み締めたコーンの甘みが膨らむ。この発想の凄さ、末富さんでしか感じられない究極の一体感。
薪鳥新神戸さんでは唯一出していないつくねをこちらでは末富氏の意向で特別に提供。溢れ出すクリアな脂、その甘みとえんみが交わり着地する美味しさは格別!
ご飯ものはどちらも薪で炒めるように焼かれた牛と松茸を使った炊き込みご飯。
食材に香りが素晴らしく乗り、且つ松茸の素材を崩さない抜群すぎる仕立て。お土産として残ったご飯でおにぎりを結んで頂き、翌朝にその香りで蘇る贅沢なひと時と余韻。
〆はなんと薪うどん!
半分はそのままでということですすると、薪の薫香を纏ったお塩でしっかり香り付けされ、うどん出汁をも薪の風味を綺麗に表現!
デザートのババロアまでオリーブオイルに香りを纏わせ、終始、香りに酔いしれ、余韻高い内容。
他、写真に簡単なコメントを添えておりますので、ご参考頂けましたら幸いです。
人気グループ店のエッセンスが所々に忍ばせてある、膳処末富でしか味わえない至極の香り付けコースに仕上がっておられます。
一つひとつの作品に末富氏が表現されたい理想があり、口休めの一品が次の味覚を確実に爆発させる!
オープンされて間もなくても統率の取れたオペレーションと、テンポの良さが光ります。
焚き火料理に魅了された者が発信して一つのブームを創り出し、新しい波を起こしている源に触れられたひととき。
通常は考えつかない閃きが、今まで感じたことのない味や香りとの出会いを生み、新しい慣性が養われた時間でもありました。
1人の料理人がやりたい事をそのまま形にされた「膳処末富」さん。
もしお誘いを受けたなら、新たな感覚を研ぎ澄ませてくれる味に出会える素晴らしい膳処です。
□膳処末富
所在地:東京都港区三田1-10-15
営業時間:17:00、20:30の2回転
定休日:不定休
滞在時間:約2時間
お会計:35,200円税込
予約:グルメなレビュアー様にお誘い頂きました。
この場を借りて御礼申し上げます。
膳処末富
入口へのアプローチ
暖簾
内観
カウンター
黒ビール 石垣島の地ビール
こだわりの焚き火台
開演を告げるように焼かれる空芯菜
薪火の上に藁を敷いて香り付け
●先付け:イクラ キタアカリのメレンゲ添え 北海道のイクラに合わせるのは北海道のキタアカリは二年熟成。
きめ細やかなメレンゲはエアリーな口当たりから甘みを伝え、イクラが力強い弾けとともにミネラルが溢れておいしさをつくる。 綺麗な余韻を残す先付け。
●藁焼きした冷製空芯菜 焚き火台で薪をベースに藁で炒めたものを冷製に。
空芯菜の穴という穴にしっかり染み込んだ藁の香り。食感からどんどんと香りが圧倒的に溢れ、冷製にすることで香りはさらに強く。 野蛮な感じを掻き立てるえんみも絶妙なバランス。
鰹です
●鰹のたたき(鹿児島) さかなや 富ちゃんの玉葱ソースを今風にアレンジ。 たっぷりと絡めて頂きます。
玉葱の芳醇な旨味を纏った鰹。桜チップと薪の香りが綺麗に抜け、咀嚼は揺りかごのごとく旨味を心地よく膨らませる。 目隠しすれば一瞬、焼肉かと想像するほどのソースの旨味。
普段は柔らかい笑顔の末富氏ですが、料理に向き合う姿勢は気持ちいいほど真っ直ぐ。
●薪焼き茄子の田楽風 和製ハリッサ添え ハリッサの上に乗せられるのはアーモンド。
田楽風でも味噌の味だけに染まらず、茄子の瑞々しさが綺麗に調和。 そこにハリッサの酸味が味をしっかり締めて、全体のバランスに長けたヒトサラ。
●お椀:鱧(淡路) 3年熟成の利尻昆布で取ったお出汁に浮かぶ揚げた鱧。
食感のなかにふわっと咲くように鱧の甘い身。浸透していく昆布出汁が包み込んで、舌にしっかり乗る昆布のコクと香り。 香りの強いお出汁だからこそ、淡白な白身と良く合う、そんな綺麗な相性を表現されたお椀。 これは美味しい!
レタスを薪焼きします
●ヒレ丼 蒸したてのお米に焼き立てのシャトーブリアンを乗せて。
厚みを感じさせないやわらかな咀嚼から、円やかな旨味がジュワーっとあふれる! 玉ねぎを纏った身、噛めば噛むほどに甘みが増していき、咀嚼するほどに至福の時へ。
至極の逸品!
●帆立のセビージャ マリネでさっぱりとした口直し。
帆立のやわらかな食感と甘みに酸味が優しく響き、山椒が香りを添える。
こ、これは?!
●つくね 栗チップス 新神戸さんで唯一出していないつくねを薪焼きで。 器も素晴らしい彩り。
プリップリの身は粗挽き感がありながらも、ほろりとしたやわらかさ。
クリアな脂は甘みを伝え、軽く乗った塩気が口で混ざり完成する極上の旨味! めちゃくちゃ美味い!
炎をバックにしたお気に入りの一枚
緑茶
●とうもろこしとピューレ 静岡藤枝の竹で燻したとうもろこしに冷たいピューレをあしらって。
一見、邪道とも思える組み合わせでも、それを面白いほど覆す竹の香り。 噛み締めて感じるほのかな苦味に、コーンの甘みが広がり調和。ピューレとの温度の濃淡はバランスが取れ、余韻高い新感覚の逸品。 こんな手法があるのか疑うほどに凄い!イノベーティブ・末富・フュージョン!
●薪焼きレタスと牡蠣ソース 実は主役は牡蠣ソース!レタスは付け合せです。
薪の薫香に染まったレタス、牡蠣の濃厚なコクに海老の甲殻類の香りを添えて。 余韻高く、食べ終わって伝わるレタスの脇役感。笑
●タン あまり厚すぎると香りが乗らないため、ギリギリの厚みを攻めたタン。 薪にプラスしてウイスキー樽のチップで燻して焼いたもの。
抜群の火入れは心地よい咀嚼を生み、噛み締めてあふれる表面の甘みは樽の薫香。 香り付けから味付けまで焚き火でやってのける、これぞ末富らしさあふれる逸品。
●柿の白和え このあとの一品につなげるための絶妙な口休め。
クリームの濃厚な旨味、柿がみずみずしく調和。
●牛しゃぶと松茸の炊き込みご飯 松茸は長野産
それぞれの食材は驚くまでに香りを吸ってダイレクトに届く香り。堪らない。
松茸の素材の味や食感を崩さず、さらに薪の香りを相乗させる至極のご飯もの! もう、めちゃくちゃ旨い!
薪うどん
まずは半分そのままで頂きます。
なんと薪塩で味付けされて、えんみの響きに乗せて驚くほどに立つ薪の香り!
残りの半分はお出汁で
お出汁も薪の味わいが乗り、冷たさから香りの一体感をより一層高める〆のうどん。
●燻製のババロア 甘みに響く塩味。ウイスキー樽の燻製をかませたオリーブオイルが抜群の薫香を放つ。 室井さんで頂いたピスタチオアイスを思い出させる香り。
北京の世界紅茶
爽やかな香りが寄り添う透明感あふれる味
●金萱茶のアイス ミルク未使用で卵白のみ。 はっとする優しい口どけに、後味は金萱茶の余韻で包まれる。
おみやは先ほどの炊き込みご飯で作ったおにぎり
自宅でもしっかり余韻に浸れる素晴らしいお土産です。
2022/10/28 更新
2024年、有終の美を飾るのは間違いなくこのお店。
訪れた沢山のお店の中で、最も待ち遠しく、その日に心を踊らせたに違いないはず。
もう二度と味わえる事はないと思っていたあの特別な薫香。
香り付けのスペシャリストは今も健在だ。
末富氏みずから赴き仕入れた白トリュフをふんだんに使ったヒトサラの連続に舌鼓。
薪火と白トリュフ、今まで融合したことのない至極の一口を生む。
定番の薪うどんにだって白トリュフ掛けに。
スノードームのようなワイングラスのデザートにも惜しげもなく削られて降り注ぐ白トリュフ。
またいつの日かお会いできる事を心待ちにしております。
ご馳走さまでした。
□膳処末富
所在地:非公開
本年も多くの方にご覧頂きまして誠に有難うございました。
個人の感性のもとお店を選定して、思わず足を運びたくなるようなお店の魅力を僅かでも届けられるように努めて参りました。
同時に大きく変わってしまったプラットフォームに対して残念でなりません。
皆々様にとって2025年が食を通じて素晴らしい一年となりますよう、ささやかながらお祈りしております。