3回
2025/10 訪問
「焼津 温石」旬の味覚で季節の移ろいを表現し、異次元のバランスで魅了するスペシャリテ"白甘鯛"
灯る看板に季節の移ろいを感じさせる
カウンター
◉生ビール
◉大七純米生酛 冷やおろし / 大七酒造(福島県 二本松)
◆先付け 焼津の落花生豆腐、三島のイチジク、銀杏
温もりのある口当たりの豆腐と落花生のソース、さらに砕いた落花生から生まれる風味とコクの統一感。イチジクの潤いで和らげるように味覚を優しくアイドリングさせる。
◆焼津の鯵の胡瓜巻き この日は特に良い鯵が入ったと添える言葉に自然と期待が膨らむ。
圧をかけると抵抗なく解ける鯵に滲むあぶら。敢えて薄い胡瓜で食感を出して引き締め、僅かに乗せた梅肉が味を全面に押し出す。 つい今しがたまで泳いでいたかのような雑味のない澄んだ旨さに陶酔させる。美味しい!
◉磯自慢 青春 特別純米 特A地区山田錦58 / 磯自慢酒造(静岡県 焼津)
◆焼津の梭子魚、静岡の天然ほうき茸 ほうき茸は魚の出汁で炊いたもの。梭子魚の上に叩いた葱は伸ばすようにして頂きます。
梭子魚は箸で解けながらもハリのある食感に葱を作用させると、花穂紫蘇の仄かな輪郭を纏いながら、出汁に隠しきれない旨味。 対照的な天然のほうき茸、口に運ぶ寸前に旨味であふれ、口で魚介出汁の旨味を潤沢に炸裂させる! 残った出汁は麺を投入したいほどの旨味に満ちて、飲み干せば訪れる多幸感。
◉無窮天穏 齋香 さけ 生酛純米吟醸 佐香錦 / 板倉酒造(島根県 出雲)
◆お椀 焼津のイトヨリダイ、焼き茄子
クリアな昆布出汁の中に堂々と映える旨さのイトヨリダイ。特に皮目に旨味を秘めていて、崩すほどに出汁を円やかに変えて、トロンと甘い茄子の香ばしさがお椀のなかで調和を生む。
◆お造り:寒コチ 一枚目は塩わさびで頂きます。
僅かに飴色に染まった身。ムッチリとした口当たりに澄んだ甘みを広げ、咀嚼が進むにつれてじっくり深まる旨味へと着地。ミシミシとした塩が尻窄みに味わいを引き立て、茗荷の香りと醤油のコクで強固な旨さをただただ育む、堂々たる存在感を魅せるコチ。
◉初亀 特別純米 ひやおろし 原酒 / 初亀醸造(静岡県 藤枝)
本日の食材
先に供されたのは生しらす
◆甘長とうがらしの米粉揚げ
一口そのままかぶりつくと、キメ細やかな小気味よさと滲ませる油分で甘長とうがらしは確固たるご馳走に。
●生しらすのソフトクリーム しらすの青みと甘長とうがらしの青みが一致し、衣の油分で繋ぎ止めるように尾を引く旨さに。日本料理の応用から静岡らしい生しらすにフォーカスを据えた見事なる味の相乗で愉しませる。
◉御日待家 吟醸生酒 / 土井酒造場(静岡県 掛川)
◆焼津のドウマンガニご飯
噛むほどに肉厚な繊維から膨らむ甘みと個性的な香り。 アクセントとして塩麹に染まった紫蘇の実で輪郭を与える。
カニのみで炊いたお米を合わせると、口で完成するマッチョな一体感が堪らない。
◉七本鎗 無農薬純米 無有 / 冨田酒造(滋賀県 長浜)
◆藤枝の椎茸 蒸し焼き 大きな一口に溢れだす潤沢な出汁を広げ、同時にみなぎるほどの香りが余韻にまでハイトーンでつながる味わい。
新たなスペシャリテの予感…
◆焼津の白甘鯛、栗チップ乗せ 白甘鯛の下には実山椒の醤油で敢えて変化をつける。皿との一体感も良い。
秋らしい栗チップの軽やかな食感に香りが立ち、その先に待ち構える白甘鯛のふくよかなる極上の旨味。下からは山椒の香りと醤油の引き締めでプレスするように両方向から引き立つ味わいに恍惚とさせる。 添えた白髪ねぎのフレッシュな清涼感が絶妙に重なり、全体の纏まりが完成するヒトサラ。 スペシャリテである白甘鯛に変化を付けるところが温石としての新たな価値をはっきりと見い出す。
◆葛氷 掛川や菊川の葛アイスをイメージされた、驚くほどに一瞬でリセットする力を持つ口直し。
◆長芋そうめん 削りたての鰹節とうずらの卵を忍ばせて。
長芋由来のトロみのなかでも主張するのが鰹節。シャリシャリと解けるその凛と澄んだ味わいで全体を纏め上げる。
◆栗ご飯 秋の味覚の栗は表面だけ焼いた後、出汁で煮込まれたもの。この手間暇を惜しまない先に格別な味わいが生まれる。
お米の炊き上がりは煮えばなそのもの。そこに忍ばせた栗からジンワリ滲む甘旨味をお米にダイレクトに反映! 実に食欲の秋らしい味わいに満ちる1膳目。
◆焚き合わせ 太刀魚の衣揚げ、掛川の石川小芋、イグチ、オクラ "イグチ"は足の速い茸で、ほとんど流通しないもの。全てが静岡で統一されたヒトサラ。
ほろりとした石川小芋、出汁に染まったイグチ、オクラの穏やかな甘み。そのなかで際立つ太刀魚の旨さは全体のバランス感に富んで、各々の素材から滲んだ煮汁が繋ぐ旨さに自然の恵みを全面に魅せる。
◉森本 純米酒 杉樽は猶及ばざるが如し / 森本酒造(静岡県 菊川)
炊きたてのお米の香りだけをお裾分け
本日は秋らしく松茸と舞茸に鯛を添えた土鍋ご飯
◆松茸舞茸鯛の土鍋ご飯 ご飯のためだけに用意された特別な松茸の香りでリードを担う。
柔らかなお米の炊飯に香り高き松茸の味わい、そして舞茸の土感と風味が寄り添いながらも、主役級の鯛が堂々とした旨味を放つ。 コースの統一感をだし、全てにおいて焼津らしさを誇張する秋のご飯もの。
◆お椀 魚のアラのエキスがグッと引き立つ滋味さが沁みるおいしさ。
◆香の物
◆鰯の生姜煮 絶大なる相性を添えるご飯のお供
◆白米:ハナダイ丼 2膳目は軽く酢〆したハナダイを乗せた丼ぶり。 なんと前田氏が神経〆から下ろしまで施したもので、その数ざっと1000枚!!
柔らかな口当たりに溢れ出る上質な旨味。ナチュラルにほどけていけば酢〆とした仄かな塩気で旨さをグングンと煽る! 前回の豆アジといい、この小さな身をみなぎるほどに力強く表現する味わい。素晴らしきバトンリレーが生きる瞬間が今ここに在る。
◆松茸舞茸鯛の土鍋ご飯 思わずおかわりを所望。。
一膳目からやや時間を置かれると土感が増して、厚みを出すお米の粘度に乗せた胡麻のライトさを持たせながらダイレクトな旨みが押し寄せる。
◆甘味 シャインマスカット、梨 どちらも瑞々しく、潤いに抜ける味わいでスッキリとリセットさせる。
◆薄焼きどら焼き
極うすい皮の香ばしさと餡はまだ温かく、味覚を甘く染めては抜ける香りを心地よく余韻に残す。
お茶を立てる音とともに茶懐石としての誇りがフロアを包んでいく。
◆お抹茶 三つ葉葵の御紋の茶碗が趣きを与える。
気泡が醸す香りとともに心が温かくなり、名残惜しいひとときが終わりを迎える。
2025/11/08 更新
2025/06 訪問
「焼津 茶懐石 温石」静岡のうまい魚を差し出すヒトサラ、その一瞬の煌めきに込めて
梅雨明けしたかのような晴天が続く6月下旬。
降り立つ焼津駅から馳せる想いを胸にして、海へと近づく潮風を仄かに感じながらゆっくり歩くこと25分。
焼津の静かな住宅街に灯る表札と波を模した暖簾。
ガラス戸の縁側が広がるお庭を抜けて辿り着くアプローチ。
期待を胸に歩いてきた革靴をそっと脱ぐと、木板の感触が一瞬でリラックスを与えてくれ、カウンターの奥へと案内された。
静寂のなかに穏やかな照明で引き立つ手元、目に映るもの全てがそっと趣きのある情景を醸し出す。
杉山氏が一人ひとりのお客に対してしっかり目を見て、深々とお辞儀するように持て成す。スタッフが焼き台に炭をセッティングし、小窓を開けると用意された食材とともにコースが始まっていく。
息を呑むような作業で惹きつけ、目の前に差し出された瞬間に広がるヒトサラの豊かな表情。
口へと放ったジンドウイカ。感じたことのないレアさを併せ持つ食感に墨塩を煌めかせ、優しく手を差し伸ばすようにあふれる旨味。
お椀は気品高き白甘鯛。
お出汁のフィルターを透すことで身の繊細な味わいや輪郭がしっかりと表れ、添えた管ごぼうの土感との思いもよらぬ相乗で旨さを彩る。
お造りとしたアオリイカの食感や味の移ろい、マハタは3日寝かせて素材のポテンシャルを見事に爆発させる。
焼津らしさを漂わせる練り物は葉生姜を使った揚げ真薯。食べログGOLD店が地元の魚を使って作ったらこうなりました。と言わんばかりに漲る旨さを形成。
泳がせの梭子魚にはモロヘイヤを合わせたセンス溢れる逸品で繋ぐと、お食事前のメインディッシュは不動となる金目鯛の鱗焼き。
この日は年に一度お目にかかれるかどうかという素晴らしい食材と巡り会えた。
それは鮪。
豊洲で仕入れたよくある本マグロではない。焼津の定置網にかかったものを前田氏より譲り受けた、正真正銘、焼津の生本まぐろ。
これを大胆にもお出汁で湯引きし、ねぎま=葱鮪として炊きたてのお米に合わせてくれた。絶妙な火入れがもたらす口どけと瞬発力のあるミルキーな味わいにグッと陶酔する。
さらに同じ個体の赤身を浅く浸けた漬け鮪ご飯、静岡県で振る舞われるまぐろ丼のなかでもいきなり頂点に躍り出たかのような極上の一杯を堪能。
他写真に簡単なコメントを添えておりますので、ご参考頂けましたら幸いです。
随所に「茶懐石」としての趣きを感じられシンプルさがあり、素材の味をストレート且つ奥行きを与えるようにヒトサラを深く表現する。
そのピークは間違いなく差し出されたその瞬間だ。
食事が終わる頃には温まる身体に心地よく招き入れるお抹茶が美味しさ届けるとともに、一連のベースは茶事であることを改めて体感させる。
2品目の由比のメバル。
特別な一本釣りもので、わざわざ由比から焼津のサスエへと卸すこだわりの漁師が居る。その理由は一つ、漁師を理解している前田氏に売りたいから。
漁師から好かれる魚屋の一面を垣間見える逸話。
僅かに昆布で味を乗せ、メバルのゼラチン質な脂を絡めれば、数滴の醤油によって誇張されるようにグッと引き立つ素材の旨さ。
特別な魚を"料理"として最高の状態でお客に差し出す、豊かな海が育むバトンリレーは途絶えることがない。
素晴らしい魚屋に気に入られた静岡の料理人は幸せだ。
最後に頂いたものは以下の通り。
「お任せ コース 19,800円」
◆先付け
焼津の鯵の胡瓜巻き 梅肉ソース
◆由比のメバル 蒸し
◆ジンドウイカ ルッコラ・蕗・わらびのお浸し
◆お椀
焼津の白甘鯛、管ごぼう、柚子
◆お造り
マハタ、アオリイカ
◆葉生姜の揚げ真薯 自家製柴漬け添え
◆焼津の泳がせ梭子魚
◆口直し
藤枝のズッキーニ トマト
◆炭焼き金目鯛
◆枝豆の摺り流し
◆お食事
焼津の本鮪のねぎま
太刀魚と甘長とうがらしのご飯
本マグロの漬け丼
◆甘夏紅茶ゼリー
◆蓮根餅
◆お抹茶
◉生ビール
◉磯自慢 スプリングブリーズ 純米大吟醸 / 磯自慢酒造(焼津)
◉開運 涼々 純米酒 / 土井酒造場(掛川)
◉森本 純米勘造り六十五 / 森本酒造(菊川)
◉播州一献 純米吟醸 渡船弐號 / 山陽盃酒造(兵庫 宍粟)
◉霜 SOU 2024 ROSE / 98WINEs(山梨 甲州)
◉志太泉 純米吟醸 辛口 / 志太泉酒造(藤枝)
◉鳴鏑 別撰 生酒 / 根上酒造店(御殿場)
◉志太泉 純米原酒 開龍 / 志太泉酒造(藤枝)
□焼津 茶懐石 温石
所在地:静岡県焼津市本町6-14-12
電話番号:054-626-2587
営業時間:12:00~、18:30~
定休日:不定休
外観
暖簾
茶懐石 三州屋 温石
趣きのあるお庭を抜けるアプローチ
カウンターセット
箸置き
◉生ビール
◆先付け 焼津の鯵の胡瓜巻き 梅肉乗せ
薄い胡瓜で包まれた焼津の鯵。そのムチッとした口当たりと清涼感が重なり、梅肉の酸味で纏め上げる。 仄かな胡麻の風味を立てながら、挨拶代わりの魚の持ち味を魅せ、"涼"をつくるようにアイドリングさせる。
◉磯自慢 スプリングブリーズ 純米大吟醸 / 磯自慢酒造(焼津)
◆由比のメバル 蒸し ゆっくりと蒸し上げたメバルからやわらかく揺らぐ湯気。メバルの目玉をイメージした一体感ある器も素晴らしい作品。
穏やかに粘膜へ降りていく甘み。そこに昆布がそっと寄り添い、トロっとしたゼラチン質なエキスは醤油によってグッと引き立つ異次元の旨味。味付け、素材、想いまでもが最大限に活かされたヒトサラがここに完成する。
◉開運 涼々 純米酒 / 土井酒造場(掛川)
◆ジンドウイカ ルッコラ・蕗・わらびのお浸し イカ墨塩を散らし、玉ねぎ餡を添えて。
まるで生きているかのような抜群の口当たりと歯ごたえに圧倒され、ミシミシとした咀嚼の一つひとつにイカ墨の芳ばしさと塩を瑞々しさに煌めかせ、少しの油分を感じながらただただ旨さを誘う。 青みを添えるお浸しが良い意味でストッパーとなり、食べ合わせとしてベストなバランスをつくる。 温石が持つコンセプトがはっきりと表れたヒトサラ。
◉森本 純米勘造り六十五 / 森本酒造(菊川)
◆お椀 焼津の白甘鯛、管ごぼう、柚子 柚子はお庭で取れた温石産の柚子を添えて。
クリアながらふくよかな旨みに抱かれるお出汁。白甘鯛がほろりと解け、映えるように計算された僅かなえんみが粘膜へとナチュラルに届ける素材の味わい。 出汁のフィルターを介して交わるごぼうの土感ある力強さ。溶け出す白甘鯛のエキスがひとつにまとめ上げるように、慈悲深き一体感を届けながら、気付けば旨さの境地へ惹き込まれている。
◉播州一献 純米吟醸 渡船弐號 / 山陽盃酒造(兵庫 宍粟)
◆お造り 一枚目はそれぞれお塩で頂きます。
◆アオリイカ サクサクとした歯ごたえはねっとりへと移ろい、淡白な味わいは甘みへと咀嚼を愉しませる。
◆マハタ 3日寝かせ 口へとしっとりフィットすれば肉厚な歯ごたえにグッと引き出される甘旨味。咀嚼が深める素材の持ち味に思わず夢中にさせる。
◆葉生姜の揚げ真薯 真薯に使う魚はグチ。自家製柴漬けを添えて。
一口で生姜の風味が彩り、揚げ真薯としての押し寄せるような旨さの一体感に圧倒される。一流店の練り物は異次元の味わい。
◉霜 SOU 2024 ROSE / 98WINEs(山梨 甲州)
◆焼津の泳がせ梭子魚 モロヘイヤと葱を叩いたもの、花穂紫蘇で香り付け。
身は香ばしくもあと引くような旨みに満ち、そこにモロヘイヤのトロみと青みが心地よくマッチ。 どこか中華のエッセンスを覚える味わを感じさせながら、隠しきれない梭子魚の存在感と強かな余韻。
◆口直し 藤枝のズッキーニ トマト
炭焼きされたズッキーニ。歯ごたえに瑞々しく潤いある旨みを広げ、香ばしさと潤沢にリセットさせる。 トマトは目を見張るほどの糖度だ。
◉志太泉 純米吟醸 辛口 / 志太泉酒造(藤枝)
丁寧に皮目をカットし、食べやすさの配慮までも欠かさない。
◆炭焼き金目鯛 実山椒醤油を添えて。
パリッとした皮目とふくよかな身が生み出す食感の緩急、そしてスポンジのように蓄えた脂を瞬発的に炸裂。 炭火と身の水分が絶妙なバランスで織りなす逸品に陶酔する。
これほどまで素材の味わいをはっきりと誇張できる金目鯛に仕上げるレストランは間違いなく温石のみ。ここでしか味わえない極上の仕立てだ。
◆枝豆の摺り流し
舌にあたるザラつきの全てがフレッシュな青さの一体感として押し寄せる。
◉鳴鏑 別撰 生酒 / 根上酒造店(御殿場)
おや?鮪?と思った通り、この日はなんと焼津の定置網に迷い込んだ本まぐろ。 聞けば、年に一度程度となる貴重な鮪です。
お出汁に浸してしゃぶしゃぶに。
◆焼津の本鮪のねぎま 奥には静岡の折戸なすを忍ばせてあります。
絶妙な火入れによって口に入ると一瞬でミルキーと化し、その甘旨味は味覚を駆け巡る。葱に沁みた出汁感がまた堪らなく旨い。
◆新生姜のご飯
素晴らしく粒が立ち、艷やかに澄んだ味わいに満ちている。
◉志太泉 純米原酒 開龍 / 志太泉酒造(藤枝)
◆太刀魚と甘長とうがらしのご飯
甘長とうがらしは穏やかな辛味を舌に伝えながら、油分のある味わいでお米と実に心地よくフィット。 そこに太刀魚が漲る旨さで主張し、青みと対極させた味の引き立て方でお米を染める。
◆焼津の生本マグロ 漬け丼
浅漬けとすることで鮪本来の味わいをボヤけさせず感じさせ、その凛とした旨味を色鮮やかに魅せつける。思わぬ水揚げにマグロ丼としての価値を高める結果に。
◆甘夏紅茶ゼリー ハマゴウの香りを付けたシロップ添え。
全体を繋ぐ紅茶の落ち着いた味わいをベースに、甘夏の大きな粒感を破ると爽やかな酸味を広げ、そこにハマゴウの優しい香りが寄り添う。
◆蓮根餅
◆お抹茶 渋みと甘みを両立させた味わいで、本日の余韻に心地よく浸ることができました。
ご馳走さまでした!
拝見しましたが、感銘を受ける素晴らしい内容の番組でした!
2025/07/26 更新
2024/05 訪問
「焼津 温石」漁師、魚屋、料理人が綺麗につなぐ"おいしさ"のバトンリレー
焼津の静かな住宅街にそっと佇む「茶懐石 温石(おんじゃく)」さん。
満を持して初めて訪れる機会に恵まれましたのでご紹介。
☆The Tabelog Award 2024 Gold 受賞店
☆食べログ 百名店 日本料理EAST 2023 選出店
今や知名度と評価ともに圧倒的な高さを誇り、県内外問わずして多くの食通を足繁く通わせる名店。
その真髄に触れるべく、馳せる思いを胸に車を走らせます。
場所はJR焼津駅より徒歩25分。
空腹に拍車をかけたくて、夕暮れに染まる港町のロケーションをゆっくりと向かうと、一軒の家屋の前にそっと立たれるスタッフにより丁重に迎え入れて頂きました。
表札の文字にネクタイをキュッと正して暖簾をくぐると、苔と草木の緑が調和する趣きのあるお庭を抜けて奥へと進むアプローチ。
靴を脱いで上がり、通り抜けてきたお庭を望む縁側に繋がる広い空間が主役となるカウンター。
目の前にはアクリル越しに焼き場と、まな板はフラットか一段低く、少し覗き込むように眺めやすく伝わる臨場感。
厚く淡い色味のカウンターに向かって一直線に降り注ぐ調光が舞台となる手元をしっかり照らしてくれる。あくまでもお料理を主役として引き立たせるかのよう。
静寂に包まれながら足先から伝わる温もりは自然と落ち着きを与えるとともに、古き良き民家を蘇らせ、その情景がなんとも心を奮わせてくれる。
9名のゲストが揃ったところで、店主 杉山 乃互(だいご)氏が奥からやってくると一人一人に訪れた感謝と深い一礼をし、待ち焦がれたコースが始まる。
お料理はお任せコースのみの提供となります。
頂いたものは以下の通り。
「お任せ コース 19,800円」
◆鯵の胡瓜巻き 梅肉ソース
◆焼津のジンドウイカとルッコラのお浸し
自家製マスタードと自家製イカ墨塩
◆お椀
イトヨリダイと蓮根団子
焼津の浜菜とお庭の柚子
◆お造り
ヒラアジ(焼津)
ハタ(焼津)
◆葉生姜の揚げ真薯
◆焼津のとらふぐ グリーンアスパラの黄身酢掛け
◆ズッキーニ 玉葱醤油漬け
◆焼津のエボダイと春菊 たたきトマト添え
◆金目鯛の鱗焼き
◆あやめ雪蕪 焼き
◆藤枝の枝豆 摺り流し
◆新生姜ご飯
◆焚き合わせ
丸茄子、蛸の柔らか煮、平貝、オクラ
◆食事
カマスご飯、お味噌汁、香の物
◆甘夏のババロア 浜香のシロップ掛け
◆半熟カステラとトウモロコシのアイス
◆お抹茶
◉生ビール
◉磯自慢 純米吟醸 大井川の恵み・薆瞬(かおるとき) 誉富士 / 磯自慢酒造(焼津)
◉磯自慢 純米大吟醸 cha-kaiseki onjakuラベル / 磯自慢酒造(焼津)
◉天狗舞 零 REI 2023BY / 車多酒造(石川 白山市)
◉麒麟山 金雲母 / 麒麟山酒造(新潟 奥阿賀)
◉開運 純米 涼々 / 土井酒造場(掛川)
美味い魚を主体に焼津の魅力をギュッと詰め込んだ、ここでしか頂けない焼津懐石!
やっぱり魚が美味い!
伝説の魚屋と称される焼津の「サスエ前田魚店」さんより仕入れているが、きっと素晴らしい信頼関係のもと卸してもらっているであろう特別なものばかり。一口でその味にグーッと引き込まれていくような味わいに満ちている。
譲れないスペシャリテは金目鯛の鱗焼き。初めて体感する鱗の煌めきとレアな火入れの身に降りてくる旨味と香りに舌鼓を打つ。
またお刺身は旨味全開とばかりに主張するヒラアジ。
そして包丁を入れている瞬間のミシミシとした裂ける音の正体はハタ。淡白ながらもこんなにも味がしっかり伝わるのかと一人で驚きを隠せず、思わずその多幸感に顔がほころぶ。
他にも焼津で獲れたヒラエボダイ、とらふぐとすべての魚が口で放つ衝撃的な旨さへ昇華させる。
食材の持つポテンシャルをそのままに、杉山氏の慣性や努力でヒトサラに味の煌めきを与えていく。
一品毎の簡単なコメントを写真に添えておりますので、ご参考頂けましたら幸いです。
思わず見惚れてしまうのが杉山氏の料理人としての手腕と所作。
限られた時間内で最高な状態に仕上げる感覚と、何気ない味見も欠かさずに提供するその瞬間にベストコンディションをもっていく徹底ぶり。
また一品毎のお料理の支度によって香りを起点にした空間の空気がガラリと変わる。個人的に堪らない瞬間であり、次の一品へと自然と気持ちを向かせてくれる。
直ぐに提供させるべく、常にベストな状態をアシストするスタッフのチームワークも素晴らしい連携。
またフロアには常時2名のスタッフが立たれることで、配膳と下げ膳、お酒のお伺いにもそっと気付いてくれる安心感。
"至れり尽くせり"とはまさにこの事、最後まで一つの抜かりも感じさせない居心地を体感させて頂きました。
おいしい魚を獲る漁師。
おいしい状態の魚を見極める魚屋。
そしておいしい魚をそのままの味わいで届ける料理人。
このバトンリレーを綺麗に繋いでいるからこそ多く認められる高い評価であり、価値と感じさせてくれる。
焼津の魅力に惹かれ、そして通う理由がここにはっきりと在ります。
□焼津 茶懐石 温石
所在地:静岡県焼津市本町6-14-12
電話番号:054-626-2587
営業時間:12:00~、18:00~
定休日:不定休
滞在時間:約3時間
お会計:27,610円税込
外観
茶懐石 温石
趣きのあるお庭を抜けるアプローチ
カウンターセット
箸置き
運転の疲れを潤す至福の生ビール
◆鯵の胡瓜巻き 梅肉ソース 胡瓜の軽やかな響きと清涼感を起点に、プリプリと弾む鯵の旨味を浸透させ、さらに梅肉の酸味が輪郭を形成。 不思議と爽やかな纏まりで彩られ、始まるコースへとアイドリングさせる。
◆焼津のジンドウイカとルッコラのお浸し 自家製マスタードと自家製イカ墨塩 絶妙な火入れと薫香が乗ったイカ。滑らかな舌触りに浮かぶ香ばしさ、マスタードで引き立つルッコラの香り。そこに墨塩の香りとえんみを優しく降り注いで纏め上げる! 咀嚼で重なる禁断のひと時。美味い!
◉磯自慢 純米吟醸 大井川の恵み・薆瞬 誉富士
◆お椀 イトヨリダイと蓮根団子 焼津の浜菜とお庭の柚子 円やかなで深みのある綺麗なお出汁。イトヨリダイのしっかり主張する旨味、崩すほどに滲んでくる仄かなえんみとエキスが、よりお出汁に躍動感が生まれていく。 柚子の仄かな香りを乗せて美味しさを彩る。
◉磯自慢 純米大吟醸 cha-kaiseki onjakuラベル
◆お造り ヒラアジ(焼津) ハタ(焼津) それぞれ一枚目は塩と山葵で頂きます。
◆ヒラアジ(焼津) 熟成させたかのように旨味全開とばかりにパーンと広がり、粗塩が解けるほどに旨さをグッと持ち上げる!茗荷醤油で頂けば、香りの統一感が生まれ、後味にまで残す香りの余韻が堪らない。
◆ハタ(焼津) ムチムチと張り裂けんばかりに香りと甘みが膨らみ、さっぱりと淡白な身質ながらもこれほどまでに味を主張させる事に驚き。 塩だけで十分過ぎる甘さを放ち、ちょっとの醤油や茗荷だけじゃブレず染まらない! ミシミシと噛みしめる多幸感、そして旨味脂が口を覆い尽くす!すげぇ!
◆葉生姜の揚げ真薯 焼津の名産である練り物をイメージ。 ファーストタッチは練り物らしい甘旨味、そして咀嚼で浮かんでくる生姜の香りとほんのり響く酸味。温かさと円やかな味の一体感はどこか懐かしい味わい。
◆焼津のとらふぐ グリーンアスパラの黄身酢掛け
踏み込まなくてはいけないほどの食感から溢れ出すクリアな甘み。薫香と黄身酢の酸味を見事に調和させ、一口の愉しみ方を最大限且つ贅沢に表現させてくれる。 瑞々しいアスパラが添えるバランスも最良◎。
◆ズッキーニ 玉葱醤油漬け 一口にみずみずしく違和感なく溶けていくズッキーニ。玉葱のコクと旨味がジャストな融合を魅せ、どちらの素材が持つポテンシャルをそのままに掛け合わせて生まれる美味しさ。
◉天狗舞 零 REI 2023BY
◆焼津のエボダイと春菊 たたきトマト添え エボダイと春菊は蒸したもの。
エボダイの優しい甘みにフィットさせるようにトマト出汁を効かせた存在感。 それぞれの食材がぶつかり合うことなく見事なまでに調和され、咀嚼は抵抗なく一つの味にしていく。 素晴らしいバランス感!
このお塩がまたおいしい!
◆金目鯛の鱗焼き 言うまでもなく、サスエ前田魚店とタッグを組んで定着させた温石のスペシャリテ。
衣が与える綺麗な煌めきは香りを立ち上がらせ、目を閉じて抱かれる香ばしさに委ねてみれば、研ぎ澄まされる感覚に浮かんでくるえんみと脂の攻めぎ合い! 一人で余韻に酔いしれる至福の時間へ。
◆あやめ雪蕪 焼き 丸ごと炭に放り込んで焼かれた蕪。 レア感を残したみずみずしい自然の旨さと、噛み締めて膨らむ土感はこの仕立て方でしかできない。
◆藤枝の枝豆 摺り流し 夏らしい清涼感とナチュラルな青みで口をリセットさせてくれる。
◆新生姜ご飯 炊きたてをぜひこの瞬間に頂いてほしいとして、塩を一摘みパラッと添えて。 艷やかな甘さと瑞々しさ、そこに生姜の香りで炊き立てのお米の美味さを彩る。
◉麒麟山 金雲母
◆焚き合わせ 丸茄子、蛸の柔らか煮、平貝、オクラ 踏み込みほどに香りを尻窄みに膨らませる平貝、接したカラシがほんのり輪郭を与えてくれる。 甘みと旨味がしっかり感じ取れる絶妙な食感の蛸。抜ける香りに思わず気付く多幸感。 フレッシュな弾けのオクラからも素材の美味しさをそのままに。
◆香の物
◆ほうじ茶
◆カマスご飯 2つに分けた身はそれぞれガリと胡麻大葉で味の違いを比べられる心遣い。
カマスの味をしっかり楽しめる2つの味付けがご飯を運ばせてくれる。 少し蒸らしたお米は当然の事ながら、焼き魚との相性が抜群すぎる。
お味噌汁
◉開運 純米 涼々
2膳目はお塩を乗せて愉しみます。 少しの塩気がじんわり滲むようにお米の純な甘みで、一口の恵みとおいしさを感じさせてくれる。
◆甘夏のババロア 浜香のシロップ掛け 甘夏の酸味をベースに浜辺に自生している浜香という野草のミント感で相乗させるように爽やかな口どけでリセット。
◆半熟カステラとトウモロコシのアイス とうもろこしの香りと味に抱かれながら、カステラのエアリーさを潰すとチーズのような芳醇な味に。 この2つが合致するとコク深い甘味としてコースを綺麗に締める。
◆お抹茶 最後は杉山氏自らが点てたお抹茶。 渋みが心地よく余韻に残り、抜ける香りと共に抹茶の美味しさが引き立てば、素晴らしいコースを迎え入れた胃に優しく浸透していく。 ご馳走さまでした!
2024/08/27 更新
季節は秋に差し掛かり、たどり着くと夜の帳が下がる店先に温かく灯る看板。
小庭を抜けるアプローチも秋の音色に包まれ、駅から歩いてきた靴を脱いで感じる床の冷たさ。
静寂に包まれたカウンターをそっとライトで照らしだし、木目の温もりが季節の移ろいに深みをだす。
定刻通り大切なゲストが揃ったところで、店主杉山乃互氏の礼を尽くす深い挨拶を一人ひとりと交わし、待ち焦がれたコースが始まっていく。
先付けには焼津の落花生豆腐とソースにイチジクを合わせ、自慢の魚を前に地元の食材で持て成す。
その後にやってきたのは「焼津の鯵の胡瓜巻き」。
敢えて胡瓜で食感を出すほど柔らかく、梅肉をそっと効かせた抑えきれない旨さの存在感にいきなり圧倒させる。
初めて出会う天然ほうき茸は魚出汁で炊き上げ、湯で火入れした梭子魚を主役に最高の状態に仕上げたヒトサラ。
叩いた葱を身に塗るようにして運ぶと、出汁に染まりながらも厚みのある旨味がグッと口を包み、ほうき茸に沁みた旨味と土感で華麗なる調和を生む。
この日のお椀は「イトヨリダイ」。クリアな昆布出汁のなかにも実直な旨味を反映させ、焼き茄子の焦げた香りと甘みでバランスを形成。僅かに柚子を纏わせると澄んだ中にも奥深さや立体感を自然と形づくる。
しっとりと切りつけられていくお造りは「寒ゴチ」。
寝かせたかのような飴色に染まり、歯応えに比例させるように強かに引き立つ旨味が堪らない。塩、茗荷、醤油との相乗は素材のポテンシャルのままに極上な旨さへ昇華。
いつもは浜名湖なのにこの日は焼津で獲れたという「ドウマンガニ」。
しっかり身の詰まったハサミに安堵すれば、ドウマンガニならではの香りとその味わいにカニ出汁で炊いたシャリと見事なる合致。
温石のスペシャリテは"サスエ"自慢の「白甘鯛」、でもこの日はいつもと違う。
炭焼きした身に栗チップを乗せて、底には実山椒醤油を敷いて合わせたもの。
秋らしい栗チップの食感と香り、底からは実山椒の風味と醤油のコクでプレスすれば、相互のバランスに共鳴する白甘鯛をこの瞬間だけの特別なものへと表現。
日本料理の枠を超えるアプローチはローカルガストロノミーの独創性であふれ、目の前のヒトサラへと夢中にさせる。もう絶品!
またこの日はご飯ものだけで「栗ごはん」「松茸舞茸鯛ご飯」「ハナダイ丼」の3つを堪能。
どれも甲乙つけ難いが、サスエ前田氏が自ら神経〆し捌いたとする"ハナダイ"の力強い旨味に圧倒される。小さな一切れに漲る旨さは焼津が育んだバトンリレーそのものだ。
これがあるから静岡、焼津にまた来たくなる。
名残惜しいひととき、最後にお茶を立てる音とともに穏やかな余韻で締め括る。
他、写真に簡単なコメントを添えておりますので、ご参考頂けましたら幸いです。
秋となり静けさを強く感じられたカウンター。
魚の皮を剥ぐ音、焼き串を抜くジュッとした音、ご飯をよそう木しゃもじの温りあふれる音。
その小さな沢山のワンポイントが「温石」として愉しませてくれる。
季節の移ろいが真価を魅せる、日本を代表する和食の一店です。
最後に頂いたものは以下の通り。
「お任せ コース 19,800円+α」
◆先付け
焼津の落花生豆腐、三島のイチジク、銀杏
◆焼津の鯵の胡瓜巻き
◆焼津の梭子魚、静岡の天然ほうき茸
◆お椀
焼津のイトヨリダイ、焼き茄子
◆お造り:寒コチ
◆甘長とうがらしの米粉揚げ
生しらすのソフトクリーム
◆焼津のドウマンガニご飯
◆藤枝の椎茸 蒸し焼き
◆焼津の白甘鯛、栗チップ乗せ
◆葛氷
◆長芋そうめん
◆栗ご飯
◆焚き合わせ
太刀魚の衣揚げ、掛川の石川小芋、イグチ、オクラ
◆食事
①松茸舞茸鯛の土鍋ご飯
出汁椀、香の物、鰯の生姜煮
②白米:ハナダイ丼
◆甘味
①シャインマスカット、梨
②薄焼きどら焼き
◆お抹茶
◉生ビール
◉大七純米生酛 冷やおろし / 大七酒造(福島県 二本松)
◉磯自慢 青春 特別純米 特A地区山田錦58 / 磯自慢酒造(静岡県 焼津)
◉無窮天穏 齋香 さけ 生酛純米吟醸 佐香錦 / 板倉酒造(島根県 出雲)
◉初亀 特別純米 ひやおろし 原酒 / 初亀醸造(静岡県 藤枝)
◉御日待家 吟醸生酒 / 土井酒造場(静岡県 掛川)
◉七本鎗 無農薬純米 無有 / 冨田酒造(滋賀県 長浜)
◉森本 純米酒 杉樽は猶及ばざるが如し / 森本酒造(静岡県 菊川)
□焼津 茶懐石 温石
所在地:静岡県焼津市本町6-14-12
電話番号:054-626-2587
営業時間:12:00~、18:30~
定休日:不定休