K.Jamesさんが投稿した辰巳鮨(富山/稲荷町)の口コミ詳細

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K.James (30代前半・男性・東京都) 認証済

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辰巳鮨稲荷町、栄町、不二越/寿司

1

  • 夜の点数:3.8

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 3.8
      • |サービス 3.4
      • |雰囲気 3.3
      • |CP 3.3
      • |酒・ドリンク 3.5
1回目

2025/09 訪問

  • 夜の点数:3.8

    • [ 料理・味3.8
    • | サービス3.4
    • | 雰囲気3.3
    • | CP3.3
    • | 酒・ドリンク3.5
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

神社の闇に灯る一縷の赤光ー辰巳鮨で出会う至福の一夜

一夜の帳が降りる頃、静寂の中に赤光が揺れる。その光は人を導き、食を通して心を満たす。於保多神社の近くに佇む小さな鮨屋。そこには、旅人の記憶を永遠に刻む一夜が待っている。

仕事を終え、東京駅から新幹線に乗り込む。夜の帳はすでに降り、車窓に映るのは闇をかすめる街の灯ばかり。やがて富山駅に到着したのは夜の9時半過ぎ。駅前の賑わいはやや薄れ、残るのは静寂と夜風の気持ちよさである。その中を歩き、今回の目的地である於保多神社近くの辰巳鮨へと向かう。ここは、地元の人から教えられて以来、私にとって富山の夜を締めくくる特別な場所となっている。

連れは会社の後輩。東京から共に来た彼を案内しようと、この店を選んだ。暖簾をくぐった瞬間、外の冷気は断たれ、木の香りが漂う静謐な空間が広がる。店内は決して広くない。だが、その限られた空間に、鮨屋特有の張り詰めた空気と、どこか柔らかな温かさが同居している。

食事はつまみから始まる。白身の刺身は雪のように透き通り、舌の上で静かにほどけていく。酒を合わせると、淡い甘みがふわりと膨らむ。後輩は「これが富山の魚なんですね」と感嘆の声を漏らす。やがて料理は次第に熱を帯び、主役である握りへと進んでいく。

その夜、我々を魅了したのは「のどぐろの塩焼き」だった。脂のりは深く、それでいて重さを感じさせない。皮目の香ばしさと身の柔らかさが調和し、思わず言葉を失う。後輩も箸を止め、「これは東京では食べられませんね。溶けました」と小さく呟いた。

さらに心を射抜いたのは富山湾の宝・甘えび。そのねっとりと濃厚な甘さは、口いっぱいに豊潤な香りを残す。今まで知っていた“甘えび”は一体何だったのかと思うほどの衝撃だ。そして忘れてはならないのが「白エビ」である。透き通るように淡く、儚げな姿とは裏腹に、噛み締めれば甘みと旨みが爆発する。まさに神がかった美味しさで、口の中に一瞬の光が走るような体験だ。富山の海が生んだ奇跡と呼ぶにふさわしい。

他のネタも例外ではなく、一つ一つが唸りを誘い、口に運ぶたびに小さな感動が訪れる。鮨を食べ進めるごとに、後輩の表情も次第にほころび、心からこの時間を楽しんでいるのが伝わってきた。

お酒の揃えも見事である。全国的に知られる銘柄に加え、地元でしか出会えぬ地酒が数多く並び、その一杯ごとに物語が宿る。米の香り、清冽な水の透明感。富山という土地の恵みが盃に凝縮されている。料理と共に流し込めば、旅情はさらに深まる。

そして何より、この店の空気を形作っているのは大将の存在だ。寡黙に見えて、こちらが問いかければ柔らかく答えてくれる。素材の話、富山の四季、魚との向き合い方――どの言葉も実直で、鮨への愛情が滲み出ている。会話は料理と同じく、心に余韻を残す。

会計は2人で3万円弱。富山では確かに高額だろう。だが、東京でこの質を求めれば、3万円では到底収まらない。むしろ6万円を超えても不思議ではない。コストパフォーマンスという言葉では表しきれぬ、唯一無二の価値がここにはある。

そして最後の一椀。優しい味わいのお味噌汁が供される。濃厚な鮨の余韻をそっと包み込み、心と体を柔らかく解きほぐすような一杯。外に出れば再び夜風が冷たく頬を撫でるのだが、このお味噌汁の温もりがしばらく胸の中で灯火となり続ける。

食べログの評価は突出して高くはない。だが、それは土地柄の違いに過ぎない。富山の人々にとって「1万円を超える外食」は特別だ。しかし東京の感覚で見れば、この辰巳鮨は奇跡のような存在だ。鮨そのものの完成度、酒との調和、そして神社という舞台が織りなす空気感――すべてが重なり、訪れた者に深い記憶を刻み込む。

2025/10/20 更新

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