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昼の点数:3.6
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 3.6
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|サービス 3.2
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|雰囲気 3.5
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|CP 3.8
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|酒・ドリンク 3.0
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[ 料理・味3.6
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| サービス3.2
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| 雰囲気3.5
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| CP3.8
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| 酒・ドリンク3.0 ]
山あいにひっそりと佇む、幻のそうめんを求めて
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2025/10/20 更新
平日の昼下がり、少し人里を離れて車を走らせる。季節は秋の入り口、山の木々はまだ青さを残しつつも、ところどころ色づき始めている。向かう先は「そうめん金龍」。夏の間だけ姿を現す幻のような存在で、寒くなればその暖簾は下ろされてしまう。ギリギリ間に合った、という安堵と期待を胸に、山間の細道を抜けてようやくたどり着く。
暖簾をくぐり、席につけば迷う余地はない。看板の「そうめん」を注文する。そして、ふと目に留まった「煮物」もつい追加してしまった。季節の終わりに巡り合った偶然のご褒美は、こうした衝動に従ったときに訪れるのだろう。
電撃のような一口目
程なくして、器が運ばれてきた。まずは店員さんにすすめられるまま、スープをひと口。――その瞬間、全身に稲妻が走ったような衝撃を受ける。透明感のある出汁に、幾重にも重なる旨味の層。鰹や昆布といった単純な説明では追いつかない、何か奥行きのある深さがある。口の中で広がる滋味が、体の隅々まで染み渡る。
続いて、麺をすする。そうめんといえば、普段はあまり積極的に手を伸ばすことのない私だが、この一口もまた、電撃だった。細いはずの麺に、確かな存在感と弾力。茹で加減も絶妙で、出汁をまとった瞬間、そうめんの概念が覆される。これまでの「そうめん嫌い」という自己認識が、一瞬で崩れ去っていった。
脇役の煮物が放つ主役感
さらに期待を込めて箸を伸ばしたのは、追加で頼んだ煮物。これがまた見事だった、山菜はじっくりと煮含められた味わいは、時間という調味料を惜しみなく注ぎ込んだことを物語る。家庭的でありながら、家庭では到達できない次元の仕上がり。看板商品の影に隠れるどころか、むしろ「もう一度これを食べに来たい」と思わせる完成度だ。
山を越えてでも訪れる価値
食べ終わって席を立つころ、胸に残っていたのは「来てよかった」という充足感だった。決してアクセスが良いわけではない。むしろ車でわざわざ足を伸ばさなければ辿り着けない場所にある。しかし、この一杯を味わうための距離は、道のりの長さすらも特別な演出に変えてしまう。
次回は誰を連れて来ようか。そう考えている自分がいた。友人か、家族か、それとも食にうるさいあの人か。誰であれ、この体験を共有したいと強く思わせる。再訪は確実、いや、それ以上に「ここを薦めずにはいられない」という確信がある。
結びに
そうめんは夏の象徴。しかし「そうめん金龍」の一杯は、季節を超えて記憶に残る特別な体験だった。食べる前はただの昼食、食べた後は一篇の物語。主人公となってその味に出会う旅路は、訪れた者だけに開かれる秘密の扉のようなものだ。
ここに来たことが偶然ではなく、必然だったのだと思える。山あいにひっそりと輝く金龍の暖簾。その下で出会う一杯は、確かに人生のページを彩る一節となった。