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麺家 一鶴城川原、越中中島、粟島/ラーメン、つけ麺
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昼の点数:3.5
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 3.5
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|サービス 3.2
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|雰囲気 3.1
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|CP 3.3
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|酒・ドリンク 3.0
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[ 料理・味3.5
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| サービス3.2
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| 雰囲気3.1
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| CP3.3
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| 酒・ドリンク3.0 ]
運命の一杯、昼下がりの一鶴にて
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2025/10/11 更新
休日の昼、富山の空は薄く霞み、冬の気配をどこかに孕んでいた。ふと思い立って訪れたのは、路面電車・越中中島駅から歩いて五、六分ほど——幹線道路沿いに静かに佇む麺屋一鶴。
味のある看板の文字が陽に照らされ、富山で過ごした日々の積み重ねが感じられる。車の往来の音を背に、ドアを開けると厨房から立ち上るスープの香りが鼻を撫でた。
店内には五、六人ほどの客。昼のピークを少し過ぎた穏やかな時間。
「お好きな席どうぞ」と柔らかく声をかけられ、カウンターの端に腰を下ろす。
木のテーブルにはレンゲが整然と並び、奥では湯気の向こうに店主の背中が見える。
注文したのは、濃厚つけ麺とラーメン。
どちらもこの店の看板だろう(いつも通り食券の左上を押したのだ)
10分ほどでラーメンが先に運ばれてくる。
レンゲを手に取り、スープをひと口——その瞬間、思わず息を呑んだ。
「これは、うまい。」
派手さはない。だが、舌の上でふくらむ旨味の厚みは、丁寧に積み重ねられた出汁の層を感じさせる。魚介の輪郭が綺麗に重なり合い、最後に残る余韻が、静かに舌を締める。限られたカロリーをどこに費やすかを常に考える身として、この一口には一切の後悔がなかった。むしろ、ここに注ぎ込むことができた幸福を噛みしめる。
続いて、濃厚つけ麺が登場。太麺が、堂々と丼の中央に鎮座している。照明を受けて光沢を放つその姿は、まるで工芸品のようだ。まずは麺だけを一筋。噛めば小麦の香りがほのかに立ち上り、表面の滑らかさと内部の弾力が見事な調和を見せる。
そして、つけ汁へ——。箸先がスープに沈むと、濃厚な香りがふわりと立ちのぼる。鰹と豚骨、醤油の深みが複雑に絡み合い、麺にまとわりつく。ひと口すすれば、世界が一瞬静止する。
「これも、うまい。」
二杯連続で“当たり”を引くことなど、滅多にない。
まるで見えない幸運の糸に導かれたような感覚だった。スープは濃密だが、重すぎず、むしろ品がある。その奥に、店主の几帳面な性格が透けて見えるようだ。トッピングのチャーシューも、脂の甘みが程よく、噛むほどに旨味が溶けていく。メンマは控えめな塩加減で、全体の調和を壊さない。
一つひとつの要素が「主張」よりも「調和」を選んでいる。それが一鶴の美学なのかもしれない。
食べ終える頃、厨房の湯気が少しだけ薄れ、窓の外に午後の光が差し込む。
カウンターの端で、店主が新しい丼を手にしている姿が見えた。その背中に、職人としての静かな矜持が漂っている。
店を出ると、幹線道路を走る車の音が戻ってくる。
冬の風が頬を撫で、まだ残るスープの余韻と交わる。
「また来よう」——そう自然に口にしていた。
ただし、次は他の名店をいくつか巡ったあとで。
この味の本当の価値を、改めて確かめるために。
それでも心のどこかでは、すでに知っているのかもしれない。また来るということを