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夜の点数:3.5
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¥10,000~¥14,999 / 1人
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料理・味 3.5
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|サービス 3.6
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|雰囲気 3.6
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|CP 3.4
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|酒・ドリンク 3.4
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[ 料理・味3.5
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| サービス3.6
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| 雰囲気3.6
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| CP3.4
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| 酒・ドリンク3.4 ]
「阿吽の呼吸の串」
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2025/10/20 更新
思い立ったが吉日、という言葉がある。
その日もまさにそうだった。休日の午後、時計の針が三時を少し回ったころ、昼とも夜ともつかぬ時間にふと「美味しい串を、静かに食べたい」と思い立った。陽の傾き始めた富山駅から十分ほど、川沿いを歩く風が頬を撫でる。辿り着いたのは「わたしと串 美いよ」。その名の響きに、どこか親密な温度を感じた。
この店の存在を教えてくれたのは、富山の名寿司店の大将だった。私が食において最も信頼を寄せる人物だ。
「美いよさん、いいですよ。一本一本、丁寧に火を入れてる。」
その言葉を信じて暖簾をくぐる。
「お寿司屋さんの紹介で来ました」と告げると、店の空気がふっと柔らかくなった。カウンター越しに笑顔が広がり、そこから先はまるで旧知の家に帰ってきたような心地よさだった。
店内は清潔で整っており、照明は柔らかい琥珀色。過度な装飾はなく、それでいてセンスの良さが漂う。手書きで私の名前でウェルカムカードをカウンターに置いてあるのが気遣いの塊でああ、ホッとするなぁという感じだ。
カウンターの中では、ママさんと娘さん、そして若い男性の三人が息を合わせて立ち働いていた。阿吽の呼吸とはこのことだろう。焼き台の前で、串が静かに焦げ目を帯びる。その音、香ばしい匂い、そして互いに言葉少なに交わす視線。それらすべてが一皿の完成へと向かう儀式のように感じられた。
串をひとつ、またひとつと頼む。
焼き加減は完璧。鶏の脂は香り高く、外はパリリと、中は驚くほどジューシー。
「串」という単語が、もはや料理の名前ではなく、物語の一節のように思えてくる。
この一本を仕上げるために、この店の空気が、時間が、すべて動いているのだ。
カウンターで一人、グラスを傾けながらその仕事ぶりを眺めていると、不思議と心が静まっていった。
焼かれていく串の数だけ、店の温度もゆっくり上がっていく。
ママさんの笑顔の裏には、1周年という節目を迎えた誇りと安堵が見え隠れしていた。
最後に頼もうと思っていた土鍋系の締めものは、残念ながら売り切れ。
それでも、不思議と悔しさはなかった。
「また来ればいい」と素直に思えたのだ。
この店には、そう思わせる力がある。
料理の完成度だけではなく、そこに流れる時間そのものが心地よい。
人の温かさと火のぬくもりが、同じリズムで息づいている。
支払いを終えて外に出ると、夕暮れの風が少し冷たくなっていた。
それでも胸の中には、炭火のような余韻が残っていた。
「また来ますね」と告げたとき、カウンターの向こうで三人が同時に「お待ちしてます」と笑った。
それがまるで、一本の串を通して心が繋がった瞬間のように感じた。
きっと私は、富山に来るたびにこの店を訪れるだろう。
美味しさというよりも、「人の呼吸」が美しい場所だから。
ご馳走様でした。素敵な時間を、ありがとう。