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夜の点数:5.0
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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2025/12/14 更新
旅先での昼食というのは、不思議な重みを持つ。移動で少し疲れた体と、まだこの土地に馴染みきれていない心。その中間に、静かに差し出される一膳が、その日の印象を決めてしまうことがある。今回訪れた「ごはん屋 季譚」は、まさにそんな一軒だった。
訪れたのは昼どき。観光地の喧騒から少し外れた場所で、店の前に立つと、外の音が一段階落ちる。暖簾をくぐると、木の質感を生かした内装が目に入る。派手さはないが、丁寧に整えられた空間で、余計なものが視界に入らない。旅先でふと立ち寄った店として、理想的な距離感だと思った。
案内された席に腰を下ろし、「お刺身てんぷら御膳」を注文する。店内には、同じように旅行中らしき夫婦や、地元の方と思われる落ち着いた年齢層の客が多く、会話の音量も控えめ。どこか時間の流れが緩やかで、急かされる感じがない。こういう空気は、それだけで食事の味を底上げしてくれる。
ほどなくして運ばれてきた御膳は、写真で見ていた以上に整っていた。木の盆の上に、白いごはん、澄んだ色合いの椀物、刺身、天ぷら、小鉢が過不足なく並ぶ。主張しすぎない配置だが、一つひとつがきちんと役割を与えられているように見える。
まずは刺身から箸を伸ばす。透明感のある身は、角が立ちすぎておらず、包丁の入り方が穏やかだ。口に含むと、ひんやりとした温度とともに、魚の旨みが静かに広がる。醤油をつけすぎる必要がない。香りも強すぎず、旅の途中の昼食としてちょうどいい塩梅だった。
続いて天ぷら。衣は軽く、音を立てずに歯が入る。野菜と魚介、それぞれの素材感が残っていて、油の存在を意識させない。抹茶塩と天つゆが用意されているが、どちらも試したくなる。抹茶塩で食べると、衣の甘さが際立ち、天つゆでは出汁の輪郭が見えてくる。同じ天ぷらでも、表情が変わるのが面白い。
ごはんは粒立ちがよく、噛むとほのかな甘みがある。派手な主張はしないが、刺身や天ぷらを受け止める土台として、きちんと仕事をしている。椀物もまた静かで、喉を通るたびに体が少し落ち着いていく感覚があった。
小鉢や香の物も、添え物というより、食事の流れを整えるための句読点のような存在だ。途中で箸を休め、味覚をリセットする。その繰り返しが、御膳全体を最後まで心地よく食べさせてくれる。
接客は必要以上に踏み込まず、それでいて目が行き届いている。お茶が減るとさりげなく声をかけてくれ、料理の提供も間がいい。旅先では、こうした距離感がありがたい。こちらの時間を尊重してくれている感じがする。
食事を終える頃には、来店時に感じていた移動の疲れが、少しだけ軽くなっていた。派手な驚きや記憶に残る演出があるわけではない。ただ、きちんと美味しく、きちんと落ち着ける。その積み重ねが、結果として強い満足感につながっている。
「またこの土地に来たら、ここで昼を食べたい」。そう思える店は、意外と多くない。ごはん屋 季譚は、その数少ない一軒になった。旅の途中で立ち寄り、静かに腹と心を満たしてくれる場所として、長く記憶に残りそうだ。総合評価は5点。理由は単純で、食後に何も足したいと思わなかったからだ。