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夜の点数:5.0
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¥20,000~¥29,999 / 1人
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2025年ベスト
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2026/01/11 更新
年の瀬を締めくくる一軒として選択。つるとんたんやFUFUで知られるカトープレジャーグループで商品開発部長兼エグゼクティブシェフを務め、Plaiga TOKYOやホセルイスの立ち上げにも関わったという“成功請負人”の店で、以前から気になっていた。
弧を描くカウンターテーブルで、全員が調理とドレッセを見られる構成。オープンカウンター形式自体は珍しくないが、仕上げの微修正や火の入れ方まで可視化される距離感はやはり楽しい。手元の意図がそのまま味の説得力に接続する。
冒頭はミキュイしたオマール海老を忍ばせたガスパチョ。何気ない一皿に見えて、器と花の散らし方で美意識を示し、味はトマトの青さを立てながら練乳とオマールで甘みと甲殻の旨味を“足し算”して輪郭を太くする。素材を削って端正に寄せるのではなく、素材の個性を肯定したまま増幅していく方向性が一発で伝わる。なお店名はフランス語で紫陽花を意味し、角度で表情が変わる器の設計もその文脈だそうで、コンセプトの落とし込みがきちんとしている。
続くアミューズが圧巻。写真では小粒なのに、口に入れた瞬間の情報量が異様で、後から写真を見返して「このサイズにこの密度が入っていたのか」と驚く。手数が多いのに味が散らず、主役がどれかがバリッと分かる“輪郭の料理”。香りのトップ、塩の決め、脂の置き方が明確で、複雑=ぼんやりにならない。記憶の限りで(上から時計回り→中央へ):
・大分のトラフグ白子を忍ばせたはまぐり+わさび
・塩水うに+野菜のプリン様
・水炊きで炊き出したとうもろこしスープを含ませた“いくら的”ボール
・フォアグラ+フランボワーズ系
・シェーブルのタルトレット+ほぐした柑橘
・じゃがいものコンフィ+いわしマリネの春巻き
・もなかベーコン+パルメザン
・里芋とトリュフのコロッケ+じゃがいものエスプーマ+白トリュフ
続いて蟹の一皿。ローストしたパプリカと毛蟹のババロワを下に敷き、蟹コンソメのジュレ、さらに春菊×毛蟹のジュレを重ねた三層構造。エスプーマは毛蟹エキスと生姜、ムースは蟹味噌で、全方位“毛蟹尽くし”。旨味を前面に出しつつ、パプリカの甘いロースト香、春菊の苦味、生姜の辛味でベクトルを分散させ、単調さを徹底的に避けている。技術と美意識が同時に走っていて芸術的。蟹料理でここまで納得感のある一皿には、そう簡単に出会えないと思う。
魚はクエのロティ。ソースはモロヘイヤ×蟹×マッシュルーム(だったはず)で、ラビオリにも蟹とマッシュルームが入り、同じ語彙で皿の中を統一してくる。付け合わせのごぼうは鶏で出汁を取り、ホタテはシンプルにソテー。調理中、フライパンにクエを思い切り押し付けていて、その分“体脂肪率の低いマッチョ”な仕上がり。皮目の香ばしさを作りながら身の締まりを狙い通りに持っていく火の当て方で、見ている側にも納得が生まれる。
肉は飛騨高山の牛。子牛と鶏のジュに、生わさびをすり下ろして合わせたソースが抜群に合う。言葉だけだと“わさび醤油ステーキ”を連想させるかもしれないが、実態はもっと野性的な旨味をまとわせた「わさび風味のジュ」で、かなりクラシックフレンチの文法。左端は牛タン、中央に根セロリと黒トリュフのピュレ、左奥に肩ロースの赤ワイン煮をおやきで焼いたもの。黒いのはごぼうをコンソメで炊いてから揚げたフリット、その下に縦に立てたじゃがいものミルフィーユソテー。クラシックを踏みつつ、パーツの組み立てとテンポで現代的な速度感を出してくる。
締めは貝類3種(ホッキ、ホタテ等)のリゾット。香草バターとエゴマのパウダー、春菊フレーバーのグリーンオイルで香りの方向を“和”に振りつつ、ベースは西洋の米料理として成立している。米はこの日、ホームページにある夢心地米ではなくつや姫だった気がする(違っていたらすみません)が、粒立ちとソースの絡みのバランスが良く、重さを残さない。
さらに野菜・魚介の端材を使ったスープ。食材と生産者への敬意が料理として成立しているのが良い。海苔の風味が乗り、貝出汁が強く、やや白濁しつつ澄んだ印象もある。締めの“おまけ”ではなく、ひと皿として完成している。
デザートはさつまいものブリュレに、マスカルポーネを層にして、ほうれん草やスパイスのクランブル。ミントのパウダーとゴルゴンゾーラのアイスが乗り、甘味の中で香りと塩気がアクセントとして機能する。重く終わらせず、口の中を立て直して着地させる設計。
総じて2万円ちょい。破格。モダンフレンチにありがちな「和要素が強すぎる」「引き算しすぎて味がぼやける」「難しいことをしてまとまりがない」といった不安を、輪郭の強さと統一感で全部潰してくる。恐ろしいほど手が込んでいるのに、結果が“分かりやすく美味しい”に着地しているのが凄い。自分の中では間違いなく2025年のベストフレンチ。
オペレーションはシェフ+スタッフ2名の計3名体制のようで、海外の方々には自動音声翻訳機で説明しようとしてくれるなど、良い意味で粗削りな部分もある。ただ、それを補って余りある熱量と完成度。季節を変えて再訪し、新しい出会いを回収したい。