1回
2025/09 訪問
この鶏たち資産運用してそうな顔
焼とり 常世長鳴鳥
2025/10/01
YuYu.さま
この度はご来店いただきまことにありがとうございました。
お店の特徴や雰囲気をはじめ、料理ひとつひとつに私どものこだわりを美しい旋律のように表現していただいており、まさに料理をより引き立たせるペアリングのようなコメントに大変感激しております。
最後の「焼鳥」では括れない、ひとつの「芸術」との表現は最高の賛辞であります。
今後もよりいっそうお客様にご満足いただけるよう、そして焼鳥のさらなる可能性を追求するべく誠心誠意努めてまいりますので、ぜひまたお越しくださいませ。
本当にありがとうございました。
2026/02/05 更新
おしゃれの象徴ともいえる表参道。
その喧噪を背に一歩足を踏み入れると、幻想的な音楽が漂い、天井まで日本美が行き渡る空間が広がっていた。磨き抜かれた設えには、凛とした静けさと柔らかな余白が共存し、訪れる者の感覚を静かに研ぎ澄ませる。
最初の幕開けは、鶏のコンソメスープ。
塩のみで仕立てられたその滋味は、胃袋に染みるだけでなく心をも優しく解きほぐす。泡立つブラン・ド・ブラン、クレマンド・ブルゴーニュが寄り添うと、期待感はさらに高まり、最高な幕開けだ。
続く前菜は地鶏の刺身。
胸肉のたたき、砂肝の刺身、そしてささみの昆布締め。驚くべき鮮度によって、肉の弾力や滋味がそのまま舌に届く。柚子胡椒や九州の甘醤油をまとわせると、味わいは幾重にも変貌する。そこに重ねられるのは日本酒「天賦」。ふくよかな甘みが甘醤油と共鳴し、芳醇なハーモニーを描いた。
ささみの串
宮崎県産カラスミが散らされ、繊細な身が深い余韻を得る。合わせるのはニュージーランド・マーティンボローのソーヴィニヨン・ブラン。百合の花を思わせる香りが立ち、焼鳥とワインの関係に新たな扉を開く。
ふりそでにはネギのソース。
酸を帯びたワインと響き合い、軽やかな余韻を残す。さらに現れるのはメンチカツ。だが実態はつくねのフライだ。タイムを忍ばせ、パルミジャーノを振りかけたその一皿には、料理人の矜持が隠れている。
シャインマスカットの白和えは驚きを伴う。
胡麻や豆腐ではなくマスカルポーネを使い、果実と乳のコントラストが新しい情景を描いた。
驚愕は生つくね。
生ハムに着想を得た一皿で、キンカンと宮崎キャビアが積み重なり、口内で弾けた瞬間、旨みが溢れ出す。
しいたけ
ただの焼き物ではない。滴る出汁、鼻腔をくすぐる香ばしさ、その全てが過去の記憶を塗り替えてしまうほどの力を持っていた。
最中
レバームースが仕込まれ、かぶりついた瞬間、想像を超える濃厚な世界が広がる。そこに寄り添うのはピノタージュ。ワインの気高さが、余韻を一段高く押し上げていく。
やがて手羽先、レバー、ささりが登場し、「風の森アルファ1」が並ぶ。菩提酛由来の複雑な酸が響き合い、この夜の物語が終盤へと導かれる。コンセプトは「次章への扉」。その名の通り、新しい焼鳥の世界観を示していた。
締め括りは土鍋ご飯と稲庭うどん。
自然栽培の朝日米が持つ控えめな主張が、素材の旨みを引き立て、最後の一口まで軽やかに心を満たす。
この夜に残るのは、
ただ美味しかったという記憶ではない。
味わいが幾重にも重なって、心の奥に沈殿する余韻だ。
焼鳥という言葉ではもはや括れない、
ひとつの芸術に触れたような感覚。
舞台の幕は下りても、
その香りと響きは胸の内で長く鳴り続ける。
焼鳥の未来を垣間見た夜として。