2回
2023/12 訪問
――ほんのり甘く、そしてスパイシー。
一口で冬の寒さがほどけていく。
旭川「北の富士 櫻屋」。
歴史を感じさせる暖簾をくぐると、重厚な器にたっぷりと注がれた「カレーきしめん」が現れた。
まず目を惹くのは、とろみのあるカレー餡。見た目は濃厚だが、香りは優しく、食欲を静かに刺激してくる。
一口すすれば、スパイスの輪郭がしっかりと感じられつつも、和風のだしがそれを包み込む。
味の構成は複雑だが、まとまりがあり、まさに「和」のカレーといった印象。
きしめんは平打ちでコシがあり、汁をたっぷり絡めて喉を滑る。具材の鶏肉は柔らかく、噛むほどに旨みが広がる。
トッピングの青菜が清涼感を添えて、バランス感も良い。
派手さはないが、ひとつひとつの仕事が丁寧で、カレーきしめんの完成度としては高い一杯。
寒さの厳しい土地だからこそ、この温かさが沁みるのだろう。
――体の芯まで、じんわりとあたたまる。
この一杯が、今日の午後を少し優しくしてくれた気がした。
2025/08/10 更新
――懐かしい顔に、久しぶりに会った気分だ。
店の名は「北の富士」。もう何年も通っている。
変わったのは、値段くらいなものか。いや、そこは結構変わった。でも、味は――変わらない。
目の前のきしめんは、やわらかくて、幅広で、つるりとした喉ごし。
そして、透き通った鶏の出汁。クセがなくて、でも薄くもない。旨味の輪郭がしっかりしてる。どこまでも丁寧で、どこまでもまっすぐな味だ。
わかめと鶏肉、ネギ。シンプルな具材が、主役の出汁を引き立てている。
一口すすって、ふう、と息をつく。心がほどける感じがする。
――値段が上がった? そうだな。
でも、この一杯を前にすると、不思議と納得してしまうんだ。
変わらないものがある。その尊さを、ここで噛みしめている。