「海鮮」で検索しました。
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――殻の中に詰まっていたのは、冬の海の濃密な甘みだった。 函館「海光房」。 活きのいい海鮮で有名なこの店で、今回頼んだのはカニの刺身盛り。 運ばれてきた皿の上には、透き通るようなカニの脚。 箸で持ち上げれば、ほんのりとしたぬめりと、繊維のしなやかさが伝わってくる。 その一口め。 口の中でほぐれていく身の甘さは、刺身というよりも果実に近い。 噛み締めるたびに、海のミネラルと旨味がじんわりと広がっていく。 鮮度の高さがストレートに舌を打つ。 ――醤油やわさびは、もはや添え物だった。 素材がすでに完成している。 昆布の香り、潮の気配、静かな余韻。 函館の海、そのものを食べているような体験だった。
2022/07訪問
1回
――旅の途中、新潟で立ち寄ったのは「ぽんしゅ館 魚沼釜蔵」。 駅直結の立地で、観光客にも地元の人にも親しまれる和食処。今回はお刺身御膳を注文。白米の横に丁寧に盛られた刺身は、どれも脂がのっていて驚くほど新鮮。中でも、白身魚がふわっととろけるようで特に印象的だった(何の魚かはわからなかったが…)。 小鉢や味噌汁にも手が込んでいて、定食としての完成度が高い。さらにアラカルトで頼んだカキフライは、大粒で衣が軽く、レモンをひと搾りすれば旨みが一層際立つ。 ――「新潟に来たらここで米を食べろ」そんな声が聞こえてきそうな一膳。 派手ではないが、誠実で滋味深い。土地の味をしっかり受け取れる、旅先での理想の和定食だった。
2025/08訪問
1回
――湯気の立つ味噌汁、つやのある白米、そしてまっすぐに新鮮なまぐろ。 巣鴨ときわ食堂、日曜18時。 行列覚悟かと思いきや、すっと席に通される。 この時間、この落ち着き、この味。妙に嬉しくなる。 定食は奇をてらわない。けれど、ひとつひとつが丁寧。 まぐろはしっとり、筋張らず、しっかりとした旨み。 味噌汁には海の香りがあり、米は艶やかで粒が立っている。 小鉢の漬物がまたよくて、白米が進む。 ――食べるほどに、身体が日常へ帰っていくようだった。 「何か食べたい」というより「ちゃんと食べたい」日に、また来たくなる。 この定食が、日常の真ん中にあるという安心感。
2025/06訪問
1回
――空港でこれが出てくるとは、正直うれしい誤算だった。 ここは函館空港にある「HAKOYA」。 市内の五稜郭近辺に本店を構える居酒屋の空港支店。 店構えは素朴な食堂のようで、正直あまり期待していなかった。 だが、運ばれてきた海鮮丼を見て、その考えはあっさり裏切られた。 丼からあふれんばかりのマグロ、サーモン、その他さまざまな魚の切り身。 その上には鮮やかなトビコがたっぷりと降りかかり、目にも鮮やか。 一口頬張れば、魚の旨味とプチプチとした食感が混ざり合い、気づけば箸が止まらない。 空港でこのボリューム、そしてこの価格。 観光地価格を覚悟していた身としては、まさにご褒美のような一杯だった。 ――旅の終わりにもう一度、北海道の味を噛みしめる。 HAKOYAの海鮮丼は、そんな締めくくりにぴったりの一杯だった。 空港ごはん、なめちゃいけない。ここは間違いなく“当たり”だった。
2024/12訪問
1回
――白米が、止まらない。 「越玄一斗」――なんとも気になる名前の店に入った。唐揚げ定食に、ご飯のお供を選べるだと? しかも、ご飯おかわり自由?これは…危険だ。 目の前に現れた唐揚げは、揚げたてジューシーで衣はカリッと。 中はふっくら、噛めば肉汁がじゅわっと広がる。これだけで、茶碗1杯は軽く消える。 だが、ご飯のお供がまたやってくれる。塩辛、生卵、シラス…一つひとつが白米泥棒。 これはもはや、炊き立ての白飯に対する総攻撃だ。 気づけば茶碗は3度目のおかわり。…もう、いいだろう。今日くらいは白旗をあげさせてくれ。 ――満腹なのに、妙に清々しい。 「越玄一斗」、侮れないぞ。これは、また来てしまいそうだ。
2025/03訪問
1回
――牡蠣と鶏。海と陸の共演が、ひと皿にぎゅっと詰まっていた。 「エスカル」厚岸。 港町・厚岸の名物、牡蠣を心ゆくまで楽しめる店だが、この日はカキフライとザンギのセットを選択。 カキフライは、衣が薄くて軽やか。中の牡蠣は大ぶりで、噛んだ瞬間に潮の香りと旨味が一気に広がる。これが厚岸の実力かと、思わずうなる。レモンをひとしぼりすれば、コクの中に爽やかさが立ち上る。 一方のザンギは、ガツンとした生姜醤油ベースの味付け。外はカリッと、中はじゅわっと肉汁があふれ、期待を裏切らないボリューム感。カキフライの上品さと、ザンギの豪快さのコントラストが面白い。 ――やっぱり、名物には理由がある。 この一皿で、厚岸の豊かさをまるごと味わった気分になれた。カキフライ好きなら、わざわざ足を運ぶ価値あり。
2023/08訪問
1回
――道玄坂の喧騒に溶け込むように、目立たぬ入り口がぽつりとある。 薄暗い階段を降りた先に、「三太夫」は静かに佇んでいた。 干物で知られる店だが、この日はあえて豚肉の炭火焼定食を注文。 目を引くのはその一本まるごとのロース肉。 炭火で焼き上げられた香ばしさが立ちのぼり、食欲を刺激する。 外はこんがり、中はしっとり。余計な脂は落ちていて、旨みだけがしっかり残っている。 ナイフで切り分け、まずはそのまま一口。 口の中でじゅわっと広がる豚の甘み。 柚子胡椒を少しのせれば、風味に輪郭が生まれてさらに箸が進む。 添えられた白米も、もっちりとしていて完成度が高い。 “ごはんが進む”という言葉の本質を教えてくれる、そんな組み合わせだった。 味噌汁や漬物も丁寧な仕事ぶりで、全体のバランスが心地いい。 ――決して派手ではない。でも確実に満足をくれる定食。 道玄坂の地下で、炭火と米の力強い競演に出会えた一食だった。
2019/03訪問
1回
――渋谷の喧騒を抜けてたどり着いたのは、赤の濃淡が美しいマグロの海だった。 「オートロキッチン 渋谷」。 店名の“オートロ”に少し身構えたが、店内は明るく入りやすい雰囲気。 注文したのは、インドマグロの丼。 運ばれてきた丼には、赤身と中トロがそれぞれ丁寧に並べられていた。 まずは赤身。キュッと締まりがありながらも、筋張った感じは一切なく、瑞々しい。 噛むごとにじわじわと旨味が広がる。インドマグロ特有の濃い味が、心地よく舌を包む。 続いて中トロ。脂が程よく乗っていて、赤身とのコントラストが鮮やかだ。 舌の上でほんの少しとろけながら、くどさのない後味を残して消える。 酢飯はふっくらと炊かれており、酸味は控えめ。マグロの存在感を立てる役回りに徹している。 わさびのツンとした香りとともに、海苔の香ばしさが食欲をさらに引き立ててくれる。 ――派手さはない。でも、確かに満たされた気持ちが残る一杯。 “高級感”というより“良質感”。これが、渋谷でこの価格で食べられるとは。 気取らず旨いマグロ丼。 今日の渋谷は、いい赤に出会えた。 ――赤い、赤い、どこまでも赤い。 まぐろ好きにはたまらない空間だった。 訪れたのは「オートロキッチン」。 まぐろ料理に特化した専門店で、壁からメニューまで、何もかもが“まぐろ尽くし”。 まずはランチのまぐろ丼。 大ぶりに切られた赤身がこれでもかとご飯の上に乗り、見た目も食べごたえも圧倒的。 とにかく量が多い。だが、筋っぽさはなく、しっとりと舌に寄り添う上質な赤身。 これだけで丼が完結しているのに、価格も良心的。まぐろ丼界のコスパ王者と呼びたい。 そして圧巻なのは、まぐろの5点盛り。 頭、赤身、ほほ肉、中トロ、大トロ――それぞれが明確に異なる表情を持ち、まぐろという魚の奥深さを改めて知る。 各部位2切れずつというのも嬉しく、一人でも、シェアしても楽しめる設計になっている。 ――安くてうまいまぐろなら、どこでも食べられる。 でもここは、その先を見せてくれた。 「まぐろって、こういう味もあるんだ」と思わせる体験。 オートロキッチン、ただの専門店ではなく、まぐろの“テーマパーク”だった。 次は炙りや漬けにも手を出したい。食欲が赤く燃え上がっている。
2025/07訪問
2回
――これがランチか、と一瞬目を疑った。 テーブルいっぱいに広がる皿の数々。昼とは思えないほどの迫力だ。 ここは「万作」。宮崎料理の専門店。 ランチで頼んだのは、炭火焼き地鶏、天ぷら、刺身、小鉢に味噌汁までついた贅沢な定食。 値段は2,000円前後と、少し背伸びした価格だが、それでも納得できる内容だった。 地鶏の炭火焼きは、香ばしさとしっかりした歯ごたえ。 噛むほどにジワジワと旨味が広がる。 刺身は新鮮で、特にまぐろがとろけるような質感。 天ぷらもサクサクと軽く、箸を運ぶごとに違う楽しさがある。 ご飯はつやつやで甘みがあり、何を乗せても合う。 そして味噌汁をひとすすりすれば、胃袋がじんわりと落ち着いてくる。 ――食後の満足感は、価格以上。 「ランチでこれだけ出すなら夜は…」と思ってしまうけど、むしろ昼にこのクオリティを味わえるのがうれしい。 渋谷のビルに入った場所で、宮崎を感じるひととき。 贅沢な昼ごはんだった。再訪、確定。
2024/11訪問
1回
――まるで、刺身の山に登るようだった。 小ぶりの丼に、これでもかと盛られた鮮魚のスライス。 赤、白、ピンク。魚ごとに異なる色とツヤが、美しく重なり合っている。 その山頂に、ネギと白ごまがさらりとかかって、見た目からして食欲を引き寄せてくる。 ここは、“魚の旨い店”。 ご飯はおかわり自由、大盛りも無料。 しかも、後半はお茶漬けにもできるという二段構え。 刺身はどれも新鮮で、歯ごたえと旨みがしっかりある。 醤油を少し垂らして頬張れば、ご飯が止まらない。 そして最後は、熱々の出汁を注いでお茶漬けに。 サラッとした口当たりの中に、魚の旨みがふわりと広がる。 ――難点があるとすれば、店の狭さ。 カウンター席に案内されたときは、身動きすら一苦労。 だが、この味と満足感の前では、それすらも些細なことに思える。 また来たい。 次は、どんな魚の山に出会えるだろうか。
2025/05訪問
1回
――海鮮丼に大事なのは、見た目の華やかさだけじゃない。ひと口目に感じる「鮮度」がすべてだ。 「海鮮山」池袋。 駅近のにぎわいを抜け、ふと目にした海鮮丼の写真につられて入店。 注文したのは、マグロといくらがたっぷりのった豪快な一杯。 まず驚いたのは、マグロの質。 赤身と中トロの中間のようなバランスで、脂がさっぱりしていて食べやすい。 切り方も程よく、ご飯との一体感がある。 これは当たりだ、と最初は思った。 しかし、そこに追い打ちをかけるように盛られたいくら―― 見た目は立派だが、口に入れると弾けない。 プチッという食感も、塩気の奥行きもなく、妙に水っぽい。 マグロの完成度が高かっただけに、このいくらの弱さが目立ってしまう。 味噌汁や付け合わせは標準的で、全体のボリュームとしては申し分ない。 ただ、丼の主役がふたりいるなら、どちらにも全力を尽くしてほしかった。 ――海の幸は、誤魔化せない。 そう思いながら、マグロだけを丁寧に箸で追っていた。
2025/07訪問
1回
――波音こそ聞こえないけれど、ここは確かに“浜”だった。 鴨川の「浜の食堂」。 用意された銀色のトレーとトングを手に、目の前にずらりと並ぶ新鮮な海の幸を吟味する。イカ、ホタテ、サザエ、ハマグリ……どれも今にも動き出しそうなほどにみずみずしい。 選ぶ楽しさ、焼くワクワク、香ばしい匂いに包まれながら、じりじりと火を入れていく。じゅうっと音を立てるその瞬間に、旅の気分は最高潮を迎える。 ――五感を総動員して食べるとは、まさにこういうことだ。 ただ食べるだけじゃない。体験そのものがごちそうになる場所。 鴨川に来たなら、この“浜のごちそう”は外せない。
2025/06訪問
1回
――名前に勢いがある。だが、味は繊細だった。 ここは渋谷の「てっぺん 女道場」。 向かいには「男道場」もあり、通りごとに“勝負”の気配が漂っている。 看板メニューは串焼き。とくに名物「てっぺん焼き」は、長ネギと鶏の旨味が重なったネギマの究極形。 それだけでも十分に満足できる内容だったが、この日、本当に驚かされたのは別の一品だった。 それが「プチプチポテトサラダ」。 まるで軍艦巻きのようにいくらが乗り、その下には明太子入りのポテサラ。 ひと口すくえば、まずいくらのプチプチ感が口内に弾ける。 そのあとに来る、まろやかなじゃがいもと、ぴりりとした明太のアクセント。 甘さ、塩気、食感――完璧な三重奏だった。 ――派手な串の陰で、密かに存在感を放つ名脇役。 てっぺん、女道場。串を目当てに来て、ポテサラに恋をした夜だった。 次も、必ずこれを頼む。串より先に。
2025/06訪問
1回
――まるで海の中でそのまま捌かれたかのような、透明な美しさ。 「いか清」函館。 観光地としても名高いが、味の本気度は観光客向けの枠をはるかに超えている。 目の前に運ばれてきたのは、透き通ったイカの活造り。 吸盤がまだ動いており、鮮度の高さに思わず息を呑む。 コリッとした歯ごたえ、噛むたびに広がるほのかな甘み。 透明だったイカが、徐々に白く変わっていくその変化もまた、味の一部に感じられる。 何もつけずとも美味しいが、ほんの少し醤油をつけると旨みがさらに引き立つ。 そして嬉しいのが、ゲソ部分を希望すれば唐揚げや塩焼きなどにしてくれること。 今回は唐揚げをチョイス。サクサクに揚がった衣の中から、弾力あるゲソが顔を出す。 これだけで酒が進む。 ――函館に来たら、必ずもう一度行きたい店。 イカの概念が一つ変わる、そんな体験だった。
2022/07訪問
1回
――湯上がりの身体に、濃い味の肉は、効く。 ここは「スパジアムジャポン」内の食事処「山水草木」。 風呂でたっぷり整えたあとに選んだのは、トンテキ。 皿に広がる、艶のある濃厚なタレ。そして分厚い豚肉。 箸で持ち上げると、重みがある。 口に運ぶと、甘辛いソースがしっかりと肉に染み込んでいて、想像以上に深い味。 にんにくの香りもほんのり立っていて、食欲が止まらない。 千切りキャベツと一緒に食べれば口がリセットされ、また次の一切れへ。 ご飯が進む。いや、進みすぎる。白飯との相性があまりに良すぎる。 ――スパ銭の食事と侮るなかれ。 風呂も飯も、ここまで満足度が高いとは。 次に来るときも、湯とトンテキ、セットで決まりだ。
2025/01訪問
1回
――一口すすった瞬間、鯛が静かに主張してくる。 決して派手じゃない、けれど確かにそこにいる。そんな存在感。 ここは「ま石」。注文したのは鯛ラーメン。 透き通ったスープには脂がほとんど浮いておらず、上品な仕上がり。 その中に鯛の旨味がぎゅっと詰まっている。 あっさりしているのに、物足りなさはまったくない。 鶏チャーシューはしっとり、柚子の香りがふわっと立ち上がり、水菜の清涼感が後味を軽くしてくれる。 細めのストレート麺もスープとの相性が良く、つるつると気持ちよく喉を通る。 味玉の半熟具合も絶妙で、全体に一切のムダがない構成だ。 ――魚介系のラーメンって、時にクセが強すぎることもあるけど、 この一杯は“ちょうどいい”の美学を極めていた。 出汁で勝負してるラーメン、やっぱり好きだ。 ま石、またひとつ、心に残る店が増えた。
2025/01訪問
1回
――真ん中に、カニがちょこんと乗っている。 それだけで、もう少し贅沢な気分になれる。 「かにチャーハンの店」。 そのまんまのネーミングに、逆に潔さを感じる。 頼んだのはもちろん、カニチャーハン。 ふわっと香る卵とご飯の香ばしさ。 パラパラだけど、油っこすぎない絶妙な炒め具合。 カニの身は見た目より控えめだが、しっかりカニの風味がご飯に染み込んでいる。 スプーンで掘り進めるごとに、ちょっとずつ味が変わるのも楽しい。 上に乗ったカニを後半にとっておいて、味変として混ぜ込む。 その計画性すら、楽しくなる一杯。 ――派手さはない。でも、ちゃんとうまい。 看板に偽りなし。これは、“ちゃんとカニチャーハンの店”だった。
2024/02訪問
1回
――これは…海鮮の山。いや、宝石箱だ。 いくら、マグロ、ホタテ…そのすべてが惜しげもなく高台に盛られている。上にはキャビアのような黒い粒――なんだこれは、もう“海の祭り”だ。 豪快だが、品がある。 レンゲでひとすくい、口に入れれば……うまい。間違いなくうまい。 魚の脂といくらの塩味、酢飯との一体感。口の中が贅沢でいっぱいになる。 こりゃあもう、脳が喜んでる。 値段を見て「ふむ、インバウンド価格だな」とは思った。 でも、それでもいい。たまには、こういう“自分へのご褒美”も必要なんだ。 ――よし、あと一口、もう一回だけ宝石をかきこもう。 今日の俺は、ちょっと贅沢な気分なんだ。
2025/03訪問
1回
――炙りの香ばしさが鼻先をくすぐる。 この瞬間だけで、もうこの店がただ者じゃないとわかる。 店の名は「KINKA」。 照明も洒落ていて、客層もどこか異国の風。実際、海外の客が多い。 それに合わせたかのように、価格も堂々たる“グローバル価格”だ。 それでも、炙り寿司は確かにうまい。 ひとつひとつ丁寧に炙られたネタは、香ばしく、脂がほんのり溶けてシャリと一体になる。 和牛、サーモン、鯖――どれも主張が強く、それでいて調和もある。 そして名物「KINKAロール」。 彩りも鮮やかで、トビコのプチプチ感が楽しい。 味は濃いめで、どちらかというと“つまみ寿司”。酒が進む味だ。 ――たしかに高い。だが、雰囲気も味も、それに見合うだけの満足感はある。 “映える寿司”と“旨い寿司”の絶妙なバランス。 今日はちょっと、そういう夜でもいいじゃないか。 ――舌の上で、香りが弾けては消えていく。 「KINKA」渋谷。 カナダ発の創作寿司ダイニングは、和の枠に収まりきらない自由な美学を持っていた。 名物の“炙りシャス”は、まさにその象徴。 寿司なのに、ナイフとフォークで食べたくなるようなビジュアル。 炙られたサーモンや鯖が、香ばしさと共にとろけるような脂をまとって現れる。 その上にほんのり効かせたソースや柚子胡椒、青唐辛子のアクセントが、まるでひと皿ごとに違う物語を語っているようだった。 ネタの新鮮さというより、香りと温度とソースの三位一体で構成される味の設計図。 白米はあくまで土台。主張しすぎず、全体を支える陰の主役。 ――「寿司」を食べているはずなのに、これはもう「一品料理」だ。 和でも洋でもない、炙りでも生でもない。 そのあいだに揺らぐ余白のうまさを、この店は教えてくれる。
2025/03訪問
2回
――懐かしい顔に、久しぶりに会った気分だ。 店の名は「北の富士」。もう何年も通っている。 変わったのは、値段くらいなものか。いや、そこは結構変わった。でも、味は――変わらない。 目の前のきしめんは、やわらかくて、幅広で、つるりとした喉ごし。 そして、透き通った鶏の出汁。クセがなくて、でも薄くもない。旨味の輪郭がしっかりしてる。どこまでも丁寧で、どこまでもまっすぐな味だ。 わかめと鶏肉、ネギ。シンプルな具材が、主役の出汁を引き立てている。 一口すすって、ふう、と息をつく。心がほどける感じがする。 ――値段が上がった? そうだな。 でも、この一杯を前にすると、不思議と納得してしまうんだ。 変わらないものがある。その尊さを、ここで噛みしめている。 ――ほんのり甘く、そしてスパイシー。 一口で冬の寒さがほどけていく。 旭川「北の富士 櫻屋」。 歴史を感じさせる暖簾をくぐると、重厚な器にたっぷりと注がれた「カレーきしめん」が現れた。 まず目を惹くのは、とろみのあるカレー餡。見た目は濃厚だが、香りは優しく、食欲を静かに刺激してくる。 一口すすれば、スパイスの輪郭がしっかりと感じられつつも、和風のだしがそれを包み込む。 味の構成は複雑だが、まとまりがあり、まさに「和」のカレーといった印象。 きしめんは平打ちでコシがあり、汁をたっぷり絡めて喉を滑る。具材の鶏肉は柔らかく、噛むほどに旨みが広がる。 トッピングの青菜が清涼感を添えて、バランス感も良い。 派手さはないが、ひとつひとつの仕事が丁寧で、カレーきしめんの完成度としては高い一杯。 寒さの厳しい土地だからこそ、この温かさが沁みるのだろう。 ――体の芯まで、じんわりとあたたまる。 この一杯が、今日の午後を少し優しくしてくれた気がした。