無料会員登録/ログイン
閉じる
携帯電話会社の提供IDはこちら
食べログ
味は好きずき
メッセージを送る
Maignan (男性・東京都) 認証済
この口コミは、Maignanさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら
利用規約に違反している口コミは、右のリンクから報告することができます。 問題のある口コミを報告する
1回
夜の点数:5.0
2019/12 訪問
西健一郎さんの思い出
三回忌にあたり、西さんを偲んで、思い出を綴っておきたい。京味の西健一郎さんには、本当に色々と教えて頂いた。僕は、京味の客の中では若輩者、それゆえ西さんの話(教え)を聴くには好都合な立場で、おかげで色んな事を学べたと思う。「料理は季節のものを出すのが一番ですな」から始まり、「京都の料理の元は三つ、お茶の席で出す懐石、お寺の精進料理、家庭で出すお惣菜」、「お魚をあんまり寝かすのは感心しませんなぁ、一夜でええです。(マグロ以外の話)」、「料理は余計なことしたらあきません、新しいものを作ろと思って余計なことする人が多い」、「手間を惜しんだらいけまへん、色々と手をかけてこそ良い料理になります」「松茸は、フライとすき焼きが好きやなぁ、油と合いますから」、「松茸の土瓶蒸しはあんまり好きやない、うちは、鍋にして出します」、「虫の付いた木は、倒して遠くに運ばなあきまへん、良い松茸ができなくなる」「魚は、一汐のぐじが一番」等など。。。西さんの教えにより、今の僕の食に対する考え方のベースが出来ていると感じる。西さんは、義理を重んじる暖かい方だった。お年になってからも、新年には自ら日帰りで京都に挨拶に行かれていたと聞いた。フォアグラが好きと聞いたので、フランスのお土産にフォアグラをお持ちしたら、後日、鰆の味噌漬けと墨で手書きしたお礼状が届けられた。別の料理屋をご紹介頂いた時には、わざわざ、よろしくという電話をして頂いた。負けん気の強い方でもあった。僕が「やっぱり京味が一番ですねぇ」と言うと、「他のもんに負けてるようやったら、もう店やりまへん」と返された。昔、西さんが料理を勉強していた時代は、「誰も教えてくれまへん。盗むんですわ。鍋の残りを味見しようとしたら、すぐにざざっと洗われるんです」というような時代で、そんな中、のし上がるためには、負けん気も強くなければ話にならなかっただろう。京都が好きで、「お米も京都が一番」、「松茸は、丹波のもんでなかったら、ただのキノコや」と。僕は、未だに、食べて丹波産とそれ以外を見分ける自信はないが。言うまでもなく西さんの日本料理への貢献は多大だったと思う。西さんは、昔の料理をとても良く勉強されていて、それを再現し改良し、現在の日本料理に深みと幅をもたらされた。僕の思う西さんならではという料理は、芋茎の吉野煮、鼈の玉子豆腐のお椀、茄子の雲丹田楽、アブラメの葛叩きのお椀、コシアブラの天ぷら、ハラスご飯、枚挙にいとまがない。お弟子さんも数多く残され、それぞれが活躍されている。きちんとお弟子さん達を育て、独立させ、西さんの料理の遺伝子を後世に残された。これは、日本料理界にとって素晴らしい事なのだが、僕個人にとってもありがたい。西さんの遺伝子を引き継ぐ料理が食べられるから。ある冬の日、西さんが「来月はカニ鍋でも食べてみまへんか?」と仰るので、「是非是非」とお願いした。その後、知ったのだが、カニ鍋は、漫画「美味しんぼ」でも日本の絶品鍋料理として紹介された京味の代表的料理の一つ。カニしゃぶも美味しいが、蟹味噌の土佐酢がけとそれに続く蟹味噌の雑炊がめちゃめちゃ美味しい。1人に一杯半の蟹を使う。それ以来、毎年冬にカニ鍋をいただいた。昨年の冬(2020年1月)は、食べられなかった。西さんが2019年の夏にお亡くなりになられたから・・・ごく最近、またカニ鍋を食べることができた。新橋でお店をする西さんのお弟子さんが再現してくれたのだ。僕には全く同じものに感じた。有難い話だ。できれば、これから、毎年食べたいと思っている。本も沢山残された。西音松 著「味で勝負や」は、実質的には西さんが書かれたとのこと。西さんの勧めでアマゾンで5万円で買った(中古しかない)。食べたことのない料理がいっぱい出てくる。西さんは、2019年に入って、手術のために入院された。高名な外科医が執刀されるとのこと。「もう帰ってこんかもしれませんなぁ」と仰るので、「「何を仰いますやら!まだまだ料理作ってもらわな」とやりとりした。手術後1ヶ月ほどしてか、お店に復帰され、一度お会いした。胸元に手術の跡が見え、少しお元気がないように伺えた。西さんがお亡くなりになってから、京味が12月末に閉店するまでに二回予約があって伺った。奥さんやみっちゃんと名残を惜しんだ。※「鮎は骨抜くんやったら、尻尾をとってから、真ん中で皮と身を切って二つに分けて抜いたらよろし」(実際にやってくれた)※「香箱蟹も外子は美味しいない、二杯使って内子だけで一人前にして出します」※「煮物、焼物、揚げ物、どれか一つは上手にできるもんはおる。全部上手にできるもんはおらん(自分だけ?)」※「梅原(龍三郎)先生とこへ、ご飯を作りに行ってまして、ある日、これあげるというて、先生の描いた鯛の絵を頂きましたんや」(上の階から持ってきて見せて頂いた)※「まだお店を始めて間のない頃、富士銀行の本店へ、役員会の昼ご飯作りに通てました」※「お店が日曜休みやから、日曜やってる中華によう行きまんな。富麗華とか維新号、最近、桃の木いうとこも行きました。ああいうのもアリでんな。富麗華の北京ダックは美味しいけど、ジャリジャリしたもんが入っているのは頂けませんな」※「お寿司はやっぱり数寄屋橋次郎が美味しいんとちがいますか。いっぺん一緒に行きまひょか(実現していない)。マグロは西麻布の星条旗通りの鮨寛が美味しいと思いますな。※何かの返礼に、香港の商店街の片隅でしか買えない葉っぱをオリーブ油漬けにした瓶を頂いた。「ご飯に入れて焼飯にしても美味しいですよ」「しかし、なんの葉っぱでっしゃろなぁ〜?」と仰るので、(たまたま香港通のオフィスの同僚から聞いて知ってたので)「カラシの葉っぱらしいですよ」と言ったらスルー。料理のことで僕から何か言うのはお気にめさない様子。※「巻き寿司にキュウリは入れない方がええんちゃいますか」※「初めて来たお客さんが『もう一回来たい』と思うような店でないといけまへん。もう一回食べたいという料理を出さなあきまへん。二回目来るかどうかが勝負の分かれ目やな」足が悪くなられてからも、お客さん皆んなに、来店時には自らエプロンを付けられ、帰る時には、姿が見えなくなるまでお見送りされ、おもてなしの心を示された。
2021/08/19 更新
エリアから探す
開く
このエリアを地図で見る
ジャンルから探す
指定なし
ランチ
夜10時以降入店OK
夜12時以降入店可
始発まで営業
朝食
カード可
個室
貸切可
駐車場
飲み放題
食べ放題
子供可
ペット可
クーポン
テイクアウト
家族・子供と
デート
女子会
合コン
大人数の宴会
接待
一人で入りやすい
知人・友人と
禁煙 分煙を含む
喫煙可
ワインあり
日本酒あり
焼酎あり
オシャレな空間
カップルシート
カウンター席
ソファー席
座敷
三回忌にあたり、西さんを偲んで、思い出を綴っておきたい。
京味の西健一郎さんには、本当に色々と教えて頂いた。僕は、京味の客の中では若輩者、それゆえ西さんの話(教え)を聴くには好都合な立場で、おかげで色んな事を学べたと思う。「料理は季節のものを出すのが一番ですな」から始まり、「京都の料理の元は三つ、お茶の席で出す懐石、お寺の精進料理、家庭で出すお惣菜」、「お魚をあんまり寝かすのは感心しませんなぁ、一夜でええです。(マグロ以外の話)」、「料理は余計なことしたらあきません、新しいものを作ろと思って余計なことする人が多い」、「手間を惜しんだらいけまへん、色々と手をかけてこそ良い料理になります」「松茸は、フライとすき焼きが好きやなぁ、油と合いますから」、「松茸の土瓶蒸しはあんまり好きやない、うちは、鍋にして出します」、「虫の付いた木は、倒して遠くに運ばなあきまへん、良い松茸ができなくなる」「魚は、一汐のぐじが一番」等など。。。西さんの教えにより、今の僕の食に対する考え方のベースが出来ていると感じる。
西さんは、義理を重んじる暖かい方だった。お年になってからも、新年には自ら日帰りで京都に挨拶に行かれていたと聞いた。フォアグラが好きと聞いたので、フランスのお土産にフォアグラをお持ちしたら、後日、鰆の味噌漬けと墨で手書きしたお礼状が届けられた。別の料理屋をご紹介頂いた時には、わざわざ、よろしくという電話をして頂いた。
負けん気の強い方でもあった。僕が「やっぱり京味が一番ですねぇ」と言うと、「他のもんに負けてるようやったら、もう店やりまへん」と返された。昔、西さんが料理を勉強していた時代は、「誰も教えてくれまへん。盗むんですわ。鍋の残りを味見しようとしたら、すぐにざざっと洗われるんです」というような時代で、そんな中、のし上がるためには、負けん気も強くなければ話にならなかっただろう。
京都が好きで、「お米も京都が一番」、「松茸は、丹波のもんでなかったら、ただのキノコや」と。僕は、未だに、食べて丹波産とそれ以外を見分ける自信はないが。
言うまでもなく西さんの日本料理への貢献は多大だったと思う。西さんは、昔の料理をとても良く勉強されていて、それを再現し改良し、現在の日本料理に深みと幅をもたらされた。僕の思う西さんならではという料理は、芋茎の吉野煮、鼈の玉子豆腐のお椀、茄子の雲丹田楽、アブラメの葛叩きのお椀、コシアブラの天ぷら、ハラスご飯、枚挙にいとまがない。
お弟子さんも数多く残され、それぞれが活躍されている。きちんとお弟子さん達を育て、独立させ、西さんの料理の遺伝子を後世に残された。これは、日本料理界にとって素晴らしい事なのだが、僕個人にとってもありがたい。西さんの遺伝子を引き継ぐ料理が食べられるから。
ある冬の日、西さんが「来月はカニ鍋でも食べてみまへんか?」と仰るので、「是非是非」とお願いした。その後、知ったのだが、カニ鍋は、漫画「美味しんぼ」でも日本の絶品鍋料理として紹介された京味の代表的料理の一つ。カニしゃぶも美味しいが、蟹味噌の土佐酢がけとそれに続く蟹味噌の雑炊がめちゃめちゃ美味しい。1人に一杯半の蟹を使う。それ以来、毎年冬にカニ鍋をいただいた。昨年の冬(2020年1月)は、食べられなかった。西さんが2019年の夏にお亡くなりになられたから・・・
ごく最近、またカニ鍋を食べることができた。新橋でお店をする西さんのお弟子さんが再現してくれたのだ。僕には全く同じものに感じた。有難い話だ。できれば、これから、毎年食べたいと思っている。
本も沢山残された。西音松 著「味で勝負や」は、実質的には西さんが書かれたとのこと。西さんの勧めでアマゾンで5万円で買った(中古しかない)。食べたことのない料理がいっぱい出てくる。
西さんは、2019年に入って、手術のために入院された。高名な外科医が執刀されるとのこと。「もう帰ってこんかもしれませんなぁ」と仰るので、「「何を仰いますやら!まだまだ料理作ってもらわな」とやりとりした。手術後1ヶ月ほどしてか、お店に復帰され、一度お会いした。胸元に手術の跡が見え、少しお元気がないように伺えた。西さんがお亡くなりになってから、京味が12月末に閉店するまでに二回予約があって伺った。奥さんやみっちゃんと名残を惜しんだ。
※「鮎は骨抜くんやったら、尻尾をとってから、真ん中で皮と身を切って二つに分けて抜いたらよろし」(実際にやってくれた)
※「香箱蟹も外子は美味しいない、二杯使って内子だけで一人前にして出します」
※「煮物、焼物、揚げ物、どれか一つは上手にできるもんはおる。全部上手にできるもんはおらん(自分だけ?)」
※「梅原(龍三郎)先生とこへ、ご飯を作りに行ってまして、ある日、これあげるというて、先生の描いた鯛の絵を頂きましたんや」(上の階から持ってきて見せて頂いた)
※「まだお店を始めて間のない頃、富士銀行の本店へ、役員会の昼ご飯作りに通てました」
※「お店が日曜休みやから、日曜やってる中華によう行きまんな。富麗華とか維新号、最近、桃の木いうとこも行きました。ああいうのもアリでんな。富麗華の北京ダックは美味しいけど、ジャリジャリしたもんが入っているのは頂けませんな」
※「お寿司はやっぱり数寄屋橋次郎が美味しいんとちがいますか。いっぺん一緒に行きまひょか(実現していない)。マグロは西麻布の星条旗通りの鮨寛が美味しいと思いますな。
※何かの返礼に、香港の商店街の片隅でしか買えない葉っぱをオリーブ油漬けにした瓶を頂いた。「ご飯に入れて焼飯にしても美味しいですよ」「しかし、なんの葉っぱでっしゃろなぁ〜?」と仰るので、(たまたま香港通のオフィスの同僚から聞いて知ってたので)「カラシの葉っぱらしいですよ」と言ったらスルー。料理のことで僕から何か言うのはお気にめさない様子。
※「巻き寿司にキュウリは入れない方がええんちゃいますか」
※「初めて来たお客さんが『もう一回来たい』と思うような店でないといけまへん。もう一回食べたいという料理を出さなあきまへん。二回目来るかどうかが勝負の分かれ目やな」
足が悪くなられてからも、お客さん皆んなに、来店時には自らエプロンを付けられ、帰る時には、姿が見えなくなるまでお見送りされ、おもてなしの心を示された。