検索条件が指定されていません。
1~20 件を表示 / 全 78 件
鯛の極致なる表現——壮士寿司で味わう驚きの夜 もし壮士寿司に来なければ、鯛がここまで弾力に富み、美味しくなるとは想像もしなかっただろう。一般的なマグロとは異なり、ここで提供される鯛は繊細でありながら、圧倒的な存在感を放つ。例えば炙り鯛(P2)、皮の艶やかな焼き色を見ただけで、その美味しさが伝わってくる。口に入れると、薄くパリッとした食感とゼリーのような柔らかさが共存し、鮮やかな甘みが一気に広がる。この味わいは、東京ではなかなか出会えない逸品だ。そして、この驚きを生み出したのは、屈強な体格を持つ店主。その見た目からは想像できないほど繊細な技術と洗練された手さばきで、まるで張飛が針の穴を通すかのような職人技を披露してくれる。 瀬戸内の恵み、鯛が主役の夜 ここで使われる食材の多くは、広島・瀬戸内海産。素材の魅力を最大限に引き出した寿司は、どれも唯一無二の存在だ。今回のテーマは、まさに鯛。コースの最初から最後まで、鯛が主人公として物語を紡いでいく。 まず、シャリは先に酸味が感じられ、口の中でふわりと消えた後、ほんのりとした甘さが余韻を残す。このシャリが、最初に登場した塩〆の白甘鯛の温かく弾力のある身をしっかりと支える。烏賊は細やかに包丁目が入れられ、繊維がほどけるような滑らかな口当たり。塩の旨みと烏賊本来の甘みが、一瞬にして口の中に広がる。車海老はサイズこそ控えめながら、自家製の海老味噌ソースが添えられ、一口食べると濃厚な旨味がダイレクトに押し寄せる。 暴力的なまでの脂の旨さ 後半戦は、大竹産の鯵から始まり、一気に脂の旨味を堪能する流れに突入。鰤にはほんのりとした青菜の香りが加わり、脂の甘みを程よく中和。皮剥(カワハギ)は口に入れた瞬間、じゅわっと溢れる旨味がたまらない。この緩急ある流れの中で、ついに登場したのが白子の握り。とろとろで形を保つのが難しいほどの柔らかさだが、当然ながら絶品。「神秘的」と表現しても過言ではないほどの美味しさだった。 締めくくりには、特に気に入った二貫をおかわりでプレゼントしてくれるという、店主の豪快な心遣い。まさに”猛男の熱情”を感じるひとときだった。 ビストロのような寿司屋——温かい空間と職人技 最後に登場したのは厚焼き玉子。店の奥でずっと火にかけられていた小さな鍋が、ようやくその姿を見せる。「目の前で焼きたての玉子焼きを作る寿司職人」を、どれほど久しぶりに見ただろうか。 貫数は多めだが、店の雰囲気があまりにも良く、時間の流れがゆったりと感じられる。店主は驚くほどの速さで握りながらも、気さくに話しかけてくれ、まるでビストロのような和やかな空間が広がる。寿司屋とは思えないほどリラックスした雰囲気の中、左隣の老紳士は孫とともに楽しく話しかけてくれ、右隣の寡黙な男性も時折会話に加わる。伝統的な格式ばった寿司屋ではなく、それでいてハイクオリティな寿司を提供するこの店——たまらなく好きになった。
2024/11訪問
1回
至高の満足感——仁修楼で味わう極上中華 仁修楼に来るたびに、心も胃も満たされる——たとえ東京から京都へ移動し、さらに金閣寺近くまで足を延ばしてでも。この店には、その価値がある。 今月のコースは、北京ダックと広東式焼き鴨の技法を融合させた「焼鴨四吃」。さらに、一人一皿の大排翅(フカヒレの姿煮)をはじめ、贅沢な品々が続く。 今回は早めに到着したため、シェフが手際よく鶏やフカヒレ、焼き物の下準備をする様子を目の前で堪能。まず提供されたのは、竹笙(チクホン)と羊肚菌(ヤマドリダケ)を使った滋味深いスープ。ほんのりとした酸味と旨味が見事に調和し、食欲をそそる。続いて、前菜の小皿が八寸スタイルで登場。中でも、干し肉(毎回お土産に買うほどの逸品)と焼き物が絶品。 特に、今回の焼き物は撮らずにはいられない(写真4)。見ただけで伝わる、このパリッとした皮の食感。口に入れると、軽やかな歯応えとともに脂と肉汁が広がる。それでいて、余分な脂を感じさせず、たった一切れでも完璧なバランス。 そしていよいよ、メインディッシュの焼鴨。シェフによると、北京ダックと広東式焼鴨の技法を掛け合わせたこだわりの一品とのこと。艶やかな皮は香ばしくパリッと焼き上げられ、噛むたびに果実のようなほのかな香りが広がる。提供スタイルも秀逸で、オレンジピールソースとともに包んで食べる鴨胸の皮、脂の少ない部位をシンプルに味わうスタイル、皮と肉のバランスが絶妙な部分を包んで楽しむスタイル、そして、色鮮やかに盛り付けられた焼鴨の大皿と、食べ進めるごとに異なる魅力を堪能できる。 さらに、チャーシューやアワビを贅沢に使用した「鮑羅万有」、そしてフカヒレの豪快な一皿へ。濃厚な旨味が口いっぱいに広がる一方で、添えられた豆苗の爽やかさがアクセントに。野菜が苦手な自分でも、これは美味しく感じるほどの完成度。そして、たっぷりのフカヒレを存分に楽しみながら、ご飯を二杯おかわり。満足感は言うまでもない。 最後は、アサリの汁そばで口をさっぱりと整え、可愛らしいデザートへ。干支にちなんだ蛇年の流沙包(とろけるカスタードまん)は、特別に蛇のパーツを分けて作り、見た目と食感の両方で楽しめる工夫が施されていた。 やっぱり中華は最高。友人が貸し切りでオーダーメイドの特別コースをお願いしたそうで、その創造性あふれるメニューにも期待が膨らむ。 P.S. ここでは、毎回メニューが手書きなのも魅力のひとつ。ただ美しく整った字というだけでなく、料理の名前にもセンスが光る。これを手がけているのが純日本人のシェフだというのだから、驚きと敬意を抱かずにはいられない。 あのときのコーステーマは、忘れもしない《アワビ大作戦》。 前菜からデザート前まで、まさかの全編アワビづくし。 生アワビに始まり、とろりと煮込まれた半熟アワビ、炒め・蒸し・干し・あんかけと、まさにアワビのフルコース。あまりにも楽しすぎて、食べながらずっと心の中で「最高!」と叫んでいた。 シェフは香港で修業を積んだ経験もあり、実力は折り紙付き。それだけでなく、料理だけでなく文化や書の素養も感じられる美しいメニューに、思わず見入ってしまうほどだった。 一品一品の詳細な説明は正直難しい。なぜなら、どれも口当たりがなめらかで、鮮味が濃く、香り高く、完璧だったから。次の皿が来るたびに心が躍りっぱなしで、感想をメモする余裕すらなかった。 そして最後に起きた、ちょっとした楽しい出来事。 「シェフのチャーハン食べたい!」と皆で盛り上がった結果、まさかのその場で一人一皿ずつ炒めてくれることに。 火入れも技術も完璧で、粒立ち・ふくよかさともに申し分なし。ただ、もしかしてちょっと塩が少なかった?(疲れてたのかも?) …でも、素材のうま味を引き出していたから、もしかしたらそれが狙いだったのかもしれない。 おそらく日本最高峰の中華のひとつ。わざわざ新幹線に乗ってでも訪れる価値が、間違いなくある一軒。
2025/02訪問
2回
もしうにが好きなら、このお店は必ず訪れるべき一軒。特に夏の時期は、その魅力が一層際立ちます。ここでは日本でも、いや世界でも屈指といえるほど多彩で最高級のうにを取り揃えており、その贅沢さには圧倒されるはず。シェフやスタッフもとてもフレンドリーで、最良の体験を提供する術をよく知っています。私自身、このお店が大好きで、夏に必ず訪れたい一軒となっています。 魚料理は本当に素晴らしい、実際、この価格帯では超えていると言っても過言ではありません。特にマグロ、ウニ、そして剥皮魚(ホウボウ)は、食べた瞬間、まさに最高の一品です。酒肴の中でも「喉黒魚」の揚げ物は、パリッとした皮が完璧で、内部は口の中でとろけるようにジューシーで、まさに絶品でした。 ここの寿司と酒肴の一品の量は実際にはあまり多くなく、また寿司が酒肴の後に出てくるというわけではなく、交互に出てきて、リズムよく味の変化を楽しませてくれます。まるで、最後のウニの豪華な盛り合わせに向けて、少しずつ味を高めていくような感覚です。 尚充さんはとても気前が良く、初日は友達とその友達で大いに盛り上がり、二日目にはラッキーにも非常に面白く、素晴らしい香港からのお客様と一緒に、ウニの東京タワーを楽しむことができました(笑)。そのおかげで、尚充さんのお弁当箱を初めて見ることもできました。 また、尚充さんはとても気遣いがあり、翌日また訪れたことを覚えていて、私がお酒を飲まないことを知って、色々なお酒を試させてくれました。本当に恐縮でしたが、常に素敵な体験をさせてもらっています。 PS:面白いことに、二日目の途中で富士テレビの取材が入って、カメラマンがキッチンで撮影していたのですが、その際、尚充さんは撮影のために特別に寿司の盛り合わせをガラスのトレイに乗せて準備してくれました——これが初めて見た尚充さんのお寿司の盛り合わせです。撮影が終わった後、尚充さんはカメラマンに食事を振る舞いましたが、カメラマンはお支払いをしようとし、全員に謝意を表してその後帰られました——それでも、そのおかげで店の雰囲気はさらに良くなり、本当に素晴らしい雰囲気でした。
2025/07訪問
2回
The Tabelog Award 2026 Gold 受賞店
食べログ 寿司 TOKYO 百名店 2025 選出店
水天宮前、人形町、茅場町/寿司
名店の中でも、ここまで凛と立ち上がる車海老と烏賊の握りはなかなか出会えない。その佇まいは、大将の端正で堂々とした姿そのもののようだ。 私がSugitaを好きな理由は、彼のオマカセコースが常に「一つの完成された流れ」を描いている点にある。単なる名品の集合ではなく、味が互いに受け渡されていく構成だ。今回のコースを一言で表すなら「醇香」。全体の鮮度と旨味の起伏は、どこか緩やかなM字カーブのように感じられた。 序盤の刺身は、肉厚で歯切れの良い帆立が食欲を呼び起こし、季節の終わりを感じさせるウマヅラハギが続く。次に供される柚子香る白子は、驚くほど軽やかで、まったく重さを残さない。大好物のあん肝が一気にコクを引き上げ、前回飲んだ陽乃鳥が黒龍に変わっていたものの、それでも相性は抜群だった。 火入れの見事な焼き魚と茶碗蒸しを挟み、小肌と烏賊で握りが始まる。心地よい燻香をまとった鰆は、今回も完璧な“橋渡し役”。トロの質も文句のつけようがない。さらに印象的だったのは、ふっくらと弾力のある貝類で、特に赤く、わずかに発光しているかのような赤貝は本当に素晴らしかった。 日本酒のラインナップも、訪れるたびに驚きが増している。一合進んだところで、大将が少し意味ありげに「秘密の一本があります」と出してきたのは、見たことのない十四代。その後に勧められたのが、産土の四農香子・山田錦の混醸で、今日の寿司の香りをさらに引き立ててくれた。 料理をカメラで撮るという行為も、ただの寄りの記録写真から、「この一瞬」を切り取ること自体が楽しくなってきた。 やはり好きだし、また通いたい。 夏に二度訪れたが、二度目のほうが恐ろしいほどの完成度で、日本一の高評価を誇る鮨店の名にまったく恥じない。端正で美しい仕事はもちろん、軽やかさの中に繊細なディテールが幾重にも折り重なり、その一貫ごとの余韻がまさに“夏の鮨”としての心地よさを運んでくる。運よく、空気がふわりと沈み込むあの瞬間まで最も鮮明に撮れたのも印象深い。 特に12時一斉スタートの昼席は、店の実力が最も伸びやかに発揮される時間帯。禁漁期と不漁が重なる夏は寿司屋にとって難しい季節だが、すぎたは国内の冷凍鮪に頼らず、あえて外洋(カナダ)の鮪を選択。意外性に満ちた判断ながら、その質は驚くほど秀逸だった。赤身は外側から内側へほどけていく軽い抵抗の中に“サクッ”としたような独特の歯切れがあり、加えて幼魚の旨味が重なることで、意図したのか偶然なのか、これ以上ないほど夏らしい涼感のある味わいを形作っていた。 夏の二度目の訪問。夏季の出品の強さが本当に際立っていて、正直言って圧倒された。技術の美しさは言うまでもなく、軽やかでありながら細部まで作り込まれた味わいが心から楽しい。偶然とはいえ、(おそらく)ネット上でも最も鮮明な「空気が沈む瞬間」を撮れたのも印象的だった。 特に12:00スタートのランチ回は、最も実力が発揮される時間帯だと感じる。禁漁期や水揚げ不足が重なる夏は、どの寿司店にとっても試練の季節だが、Sugitaではあえて冷凍を使わず、外洋(カナダ)のマグロを採用していた。少し意外に聞こえる選択だが、その品質は予想以上に素晴らしい。 赤身はとりわけ印象的で、外側から内側へとごく軽い抵抗を感じながら歯を入れた瞬間、身が切れるところにわずかな「シャキッ」とした歯切れがある。そこに若い個体の要素も重なり、意図的かどうかは分からないが、結果として驚くほど“夏らしい”感覚に仕上がっていた。 5月に再訪したすぎた。今回は鯖ではなく鰯の棒寿司だったけれど、その完成度の高さはやはり群を抜いていた。カット面の美しさ、まるで鏡のように反射する艶、そして一体感のある味わいは、他店ではなかなか出会えないレベル。 すぎたに通いたくなる理由のひとつが、つまみのレベルの高さ。滑らかに包丁が入ったホタテやイカ(今回はホタテはなかったけど)、そしてしっとりとしていて旨味が凝縮された棒寿司、さらに私の大好物・あん肝と、つまみだけでも満足度が高すぎるラインナップ。 今回特に感動したのが金目鯛の茶碗蒸し。金目鯛の脂の旨味が卵にじんわり染み込んでいて、上にかかった餡のとろみと艶感が、蓋を開けた瞬間に視覚でもう「美味しい」が確定するビジュアル。ひと口でふわっと口の中がとろける感じに、思わずため息が出た。 その後に続く紫ウニの手巻きと甘海老の握りも抜群の鮮度。特に紫ウニは、ほんのり果実のような甘い香りが立ち上がり、旨味がゆっくりと寿司飯と一体になって広がっていく。じわじわと口の中で膨らむこの“遅れてくる旨味”の感じが本当にクセになる。 やっぱりすぎたは、握りもつまみも、ひとつひとつが完璧に計算されていて、五感すべてが満たされる。何度でも通いたくなる名店。 出品は相変わらず光り輝き、空気の中に沈むような滑らかさを感じさせます。 冬の終わりに差し掛かる食材たちは、まさに完璧でした。特に、小肌は先月と比べても格段に素晴らしく、その美味しさには思わず追加で二貫頼んでしまうほどでした。また、貝の季節を迎え、赤貝がデフォルトのコースに登場し、さらに私が大好きな魚「クエ」も味わうことができました。印象的だったのは、安康魚の肝が一時的に泥状の状態を試みた後、元の形に見事に回帰した点です。ただし、表面の処理方法には新たな工夫が感じられ、常に進化を続けていることが分かります。やはり、素晴らしいものは無意識のうちに細部まで磨き上げられていくものだと実感しました。 味も、飲み物も、どれも非常に美味しく、昼食として本当に心地よい時間を過ごすことができました。たとえ食材が最上級でなくとも、その扱いや味のバランス、出品の細部においては常に一流であり、味の安定感は群を抜いています。これが「すぎ田」の魅力です。 追伸:同行の友人は、1日に2回「すぎ田」のメインコースを食べた唯一の記録保持者でもあります。
2026/01訪問
5回
名物である「鮑のウェリントン」は、このレストランを訪れるべき最大の理由のひとつ。鮑の持つ弾力とわずかに感じる歯切れの良さ、そして香ばしく繊細なパイ生地の食感との融合は、一般的なビーフウェリントンでは決して味わえない唯一無二の体験です。そして、私がこの「Otowa Restaurant(オトワレストラン)」に魅了された理由もまさにそこにあります──異なる食材の組み合わせがもたらす、食感と風味の奥行きを存分に楽しめる構成。 このレストランは、宇都宮に構える家族経営のフレンチレストラン。東京からは車で1時間ほどと距離はありますが、その料理の完成度、空間の設え、サービスレベルはいずれも都心の一流店と比肩するほどの高さ。日本の風土や食文化を丁寧に反映させた“ローカライズされたガストロノミー”という思想のもと、ただ単にフランス料理に和素材を使った“和風フレンチ”にとどまらない、深い哲学と創造性を感じさせる料理が並びます。 PRによる話題性や“予約困難”を売りにするのではなく、地に足のついた信頼の味で勝負するスタイルは、まさに新時代のフランス料理を切り拓く一軒。料理の核には、ミシュラン星付きの店を経験した家族シェフたちの卓越した技術と美意識が息づいています。 コースはフルで堪能しても3万円に満たず、東京からの往復新幹線代を合わせても3万円台前半。味・サービス・空間すべてを考えれば、むしろ驚くほどのコストパフォーマンス。距離を越えてでも訪れる価値がある、真に推薦できる一軒です。
2024/08訪問
1回
こちらは2年連続で食べログゴールドを受賞している名店。その実力は、驚きに満ちた料理の数々だけでなく、価格設定にも表れており、都内の一般的なレストランよりもむしろお得感すら覚えるほどです。お酒を数杯楽しんだうえでの会計が2万5千円未満、提供された料理は全25品——その一品一品に独自の設計とコンセプトが込められており、中にはタヌキ肉といった珍しい食材も登場し、強くおすすめしたくなる内容でした。 この店を「わざわざ行く価値がある」と感じさせる最大の理由は、料理そのものに加えて、シェフの姿勢と語りにあります。一皿ごとにシェフが情熱を込めて、食材の組み合わせや料理に込めたアイディア、発想の背景を丁寧に、かつテンポよく解説してくれるのです。その語り口は知的好奇心をくすぐり、料理を味わう際の感覚や注意力を自然と高めてくれます。そして実際に、すべての料理に味の変化や意外性があり、細やかな調味や工夫に何度も驚かされました。 25皿という構成でありながら、テンポも快適で重たさを感じないコース設計も見事です。 唯一惜しいのは、アクセスの面でやや距離がある点。東京市内からはやや離れ、成田空港近くまで電車で片道1時間ほどかかりますが、ここまで独自性と満足度の高い食体験ができるのであれば、その時間も十分に報われることでしょう。
2025/01訪問
1回
10年限定、1日1組(最大4名)という特別なスタイルを貫くこのレストランは、訪れるたびに新たな驚きを与えてくれます。もはや“和のフレンチ”ではなく、「シェフ自身の料理」と呼ぶべき唯一無二の体験。今回で4度目の訪問となりましたが、片道2時間半のドライブも気にならないほど、私はこの場所が好きです。 理由は明快。他のどこでも出会えない、あるいは誰も試そうとしないような、型破りで魅力的な食材の組み合わせと発想に出会えるからです。 たとえば、“マンゴーステーキ”。牛肉のように火入れされたマンゴーの果肉は、肉とは異なるジューシーさと香りで驚かされます。蟹肉と蟹味噌を巻き込んだ茄子の一品は、ふんわりとした衣と繊細な旨みが重なり、口に広がる豊かさに思わず唸るほど。皮が軽く香ばしいミニトマトの一皿は、噛んだ瞬間に灯籠のように弾けるジューシーさが印象的。そして、香り高く旨味の強い枝豆の湯葉に、鱗を立てて焼いた魚を合わせる一皿は、風味も食感も意外性に満ちていて、食べるたびに楽しくなります。 シェフ自らが山の斜面に建てたこの一軒家でのひとときは、たとえ雨の日でも、周囲を散策するだけで心がほどけていくような静けさ。4時間半のコースも一瞬で過ぎてしまうほど、豊かな時間が流れます。 このレストランを私が深く愛している最大の理由は、どの一皿にも「次は何が来るんだろう」という期待と、予想を超える驚きがあること。そして、ノンアルコールペアリングの組み合わせも、清涼感がありつつも料理に寄り添う味わいで、本当に素晴らしいです。
2024/09訪問
1回
東京で最も予約困難なフレンチの一つ。 和洋介シェフの華やかな経歴と、紹介制という特別なシステムが、この店を東京美食界の殿堂に押し上げている。今年のTabelogで金賞評価を逃したとはいえ、その繊細さ、豪快さ、火入れの正確さ(特に魚料理)や味付けは、むしろ金賞を獲得した一部の店よりも優れていると感じるほどだ。 シェフは一見厳格な表情だが、実はとても温かい人。食材もボリュームも惜しみなく提供し、気に入ったものがあれば「もっと食べる?」と追加してくれる。黒鮑、Sugalabo特製の米、真鯛、松茸、和牛のフライは、繊細さと豪快さが共存する旨みの塊。そして、定番の生ハムと、驚くほどふわふわのポテトブレッドは、いつ食べても心を掴まれる。ワインを少し合わせると、最後まで重さを感じずに楽しめるのも魅力。 さらに、久々に登場した濃厚なプリンも嬉しい驚き。去年は提供タイミングや構成に少しばらつきがあったが、今年はその心配もなく、完璧な流れで楽しめた。 今回は、カウンターでのダイナミックな肉・魚尽くしの食体験について書いたが、料理のボリューム感やテンポ感も心地よく、ここまで満足度の高いフレンチは東京でもそう多くない。間違いなく、わざわざ訪れる価値のある一軒。 次回は、テーブル席での体験についても振り返ってみたい。
2024/09訪問
1回
清らかで上品──まさにそんな言葉が似合う一貫一貫だった。女主厨が描く“夏”は、冒頭の季節魚と野菜を閉じ込めたフランス風アスピックの時点で、その世界観がはっきりと伝わってくる。毎回思うが、Meiさんの寿司には“フレンチの呼吸”がほんのり溶け込んでいて、それが決して主張しすぎず、むしろ寿司の奥行きをそっと広げている。 例えば、ふわりと鼻に抜ける柚子の香りが層を作り、舌の上でほどける細やかな粒立ちが余韻を生み、マグロは選びや漬けのニュアンスがとても繊細で、最後にすっと残る“ほんのりした甘み”が、単なる脂の旨さとは違う“美しい締め方”をしてくれる。軽く炙った鰻の握りも秀逸で、薄くて細かく砕ける焦がしの表面が、香ばしさを上品に纏わせてくる。 店内の柔らかい暖色、均一に落ちるやさしい光、肩の力が抜ける穏やかな空気感。そして彼女のトレードマークの微笑み。友人と軽く飲みながら過ごす時間までもが味になって、全体としてとても“温度のある”心地よい寿司時間だった。 2025年になっても、トップクラスの女性寿司職人は依然として少ない。 (性別の問題ではなく、単純に実際に目にする機会の少なさとして。) そんな中で、彼女はまさに今最も「正統派」な寿司職人の一人。性別を問わず、その技術と存在感は圧倒的で、寿司を握る姿には独特の優雅さと気迫がある。 彼女の寿司は、見た目も味も常に安定しており、一貫ごとに繊細な弧を描くような美しさがある。それは、計算され尽くしたディテールの積み重ねによるもの。例えば、中トロ・大トロ(p12/13)の口当たり。内側はなめらかでクリーミー、表面にはわずかに弾力があり、程よい脂の旨みが広がるが決して重すぎない。例えば、車海老。表面にほんのり海老の卵を纏わせることで、微かなサクッとした食感をプラスするなど、細部へのこだわりが光る。 そして、今回のコースの締めくくりとして登場した**季節限定の蜜柑入り玉子焼き(p18)**が、個人的には忘れられない一品。玉子焼きの層の間に、漬け込まれた蜜柑ピールのようなフィリングが2~3層重なり、口に入れた瞬間、柑橘の香りがふわっと広がる。違和感はなく、むしろ食感の奥行きをぐっと深めるアクセントになっている。 本来は食事を締めくくる甘い一品のはずなのに、むしろ味覚をもう一度リセットし、「もっと食べたい」という衝動に駆られる、そんな魅力を持つ一皿だった。
2025/09訪問
2回
春の味覚の中でも、今年一番心を掴まれたのが、この一本のとうもろこしのように甘くてジューシーな筍でした。普段はあまり野菜を好まない私ですが、一口食べた瞬間に「これは別格」と思わせるほどの衝撃。シャキッとした食感に、口いっぱいに広がる香ばしさと甘み…惜しむらくは、一週間後の再訪ではすでに季節の移り変わりでメニューから外れていたこと。まさに一期一会。 蛍烏賊と筍の炊き込みご飯にはピーマンが加わっており、その組み合わせはまるで中華の「青椒小炒肉」のような懐かしさすら感じる味わい。もしかすると、シェフが上海旅行で得たインスピレーションかも? 桜鱒の大盛りご飯を思い切り頬張れる幸せ、そして山崎の空気のような居心地の良さ。チームの温かい雰囲気も変わらず健在で、何度訪れても癒される名店です。 最後にもう一度言わせてください。この筍、本当に、本っ当に美味しかった!!試食シーンをちょっと煽り気味に投稿したのも納得です(笑) いつもながらの美味しさに加え、メニューにも少し変化が。 特に、ふぐの食感がさらに洗練され、より弾力のある仕上がりに。そして、フォアグラ鰻のソースも改良され、味の一体感が一段と増していた。 山崎シェフは、常に自身の料理を磨き続け、特別な技法や新たな組み合わせに挑戦し続ける職人。その探求心が、一皿ごとに確かに感じられる。 大口で蟹を頬張り、大口で魚を味わい、大口で絶品ジェラートを楽しむ…(今回はシャンパンストロベリー!)。 気づけばこの1ヶ月で4回も山崎へ通っていた。ほぼ同じコースながら、冬の食材は何度食べても飽きることがない。安定したクオリティはもちろん、山崎シェフは毎週のように細部をブラッシュアップし続けている。 特に印象的だったのは、フォアグラ炭火焼き鰻の進化。カリッとした表面はより繊細に、軽やかな食感に仕上げられ、フォアグラは単なる“とろける食感”ではなく、厚みを増すことで生まれる絶妙な口当たりの変化が楽しめる。そして、ソースのバランスも微調整され、より重たさを感じさせない仕上がりに。 さらに、揚げすっぽん、焼きすっぽん、すっぽん鍋の特別メニューも制覇。季節が深まるごとに、すっぽんの旨味もどんどん濃厚になっていくのを感じた。 次は、さらに上のスペシャルメニューに挑戦できるよう精進したい。
2025/04訪問
3回
「Tabelog金賞、都心、予約簡単、美味しくてコスパ抜群、食材一級品、サービス最高」——このキーワードがすべて揃っている店なんて、本当にあるの?と疑ってしまいますが、Chez Innoはその“ありえない”を実現してくれる奇跡のようなフレンチレストランです。 最初にこのお店を知ったのは、寿司「すぎた」の杉田大将との何気ない会話の中。「あそこはいいよ」とさらっと勧められて訪問したのがきっかけでした。歴史ある正統派フレンチでありながら、肩肘張らずに楽しめる空気感。重厚でクラシックな空間に漂う“オールドマネー感”と、温かく活気ある雰囲気が絶妙に共存しています。 ランチコースは一万円台で、ボリュームも内容も大満足。まず一皿目は桜鱒。見た目はシンプルなのに、ひと口で印象が一変。絶品のソースが織りなす奥深い味わいと、魚の繊細な質感に合わせて調整された“ほんのりザラつき”のあるソースが、次の料理への期待を一気に高めてくれます。 続くロブスター料理は、温・冷の二皿構成。どちらもロブスターは一人前まるごと(ハサミ肉まで!)。アスパラやパリッとしたチップス、バリエーション豊かなソースが一体となって、満足感は極まります。 メインはさらに濃厚で印象的。金目鯛×イカ×リゾットの組み合わせは、ソースが染み込んだお米が絶妙なバランスで、最後のひとさじまで夢中にさせてくれる美味しさ。鱸(スズキ)の方は、まるでフィッシュインフィッシュ——柔らかな身の中にサクサクした粒子感が潜んでいて、驚きのある食感です。 締めの牛ホホ肉は、もはや説明不要の“とろける”美味しさ。写真ではその魅力が伝えきれませんが、一口食べればすべてが分かる、そんな一皿。 東京で、これだけの完成度をこの価格で味わえるフレンチは本当に貴重。思わず人に教えたくなるけれど、予約はこれ以上取りづらくなってほしくない…そんなジレンマを感じる名店です。
2025/05訪問
1回
ここでは、常に多彩で独創的な料理の組み合わせに出会え、笑顔を絶やさない大将と和やかな雰囲気の厨房チームが迎えてくれます。加えて、日本の伝統的な節気や行事、食文化についても自然と学べる。そして、こうした体験ができるにもかかわらず、その価格は驚くほど良心的——それが、私が「銀座しのはら」を心から好きな懐石料理店だと思う理由です。 今回の訪問では、特に焼き魚が印象的で、香ばしい脂の香りが立ちのぼり、一口ごとに余韻が残る美味しさでした。そして、毎回楽しみにしている干し柿は今回も期待を裏切らず、さっぱりとしながらも濃厚な風味で、ちょうど味の切り替えが欲しいタイミングに登場する名脇役。(ただ、いつもながら追加注文ができないのは本当に惜しいところです…) 確かに、素材のグレードや技術力、予約の困難さという面でいえば、もっと上を行く名店も存在します。しかし、ここまで気負わずに誰でも自然と懐石料理の魅力に触れられる店は、実はそう多くはありません。「美味しく、楽しく食べる」——その本質を忘れずにいられるこの店が、私はやはり大好きです。
2025/02訪問
1回
冬だけの幸せの味――aca再訪レポート 喉黒のリゾットは、まさに「今日は絶対に美味しいものが食べられる」と感じさせる一皿。運ばれてきた瞬間からふわっと立ち上がる香ばしい香り。濃厚なのに全く重たくなく、魚の旨味がぎゅっと詰まったご飯はふっくらとやわらかく、口の中でじんわりと広がる幸福感。特に印象的なのは、喉黒の身とご飯の食感の一体感。噛んだ時の抵抗感がほとんど同じで、まるで一つの食材かのような一体感がありました。 acaは今回も、安定感と洗練された驚きを兼ね備えた素晴らしい体験でした。冬の食材の力も加わり、料理の一つ一つに季節感と深みがありました。特に印象に残ったのは、意外にも前菜のタコと冬野菜の一品。程よい酸味と甘み、そしてシャキッとした歯ごたえが、一皿目から一気に食欲を引き立ててくれました。 そして、今回の主役とも言える牛肉料理の登場。acaの牛肉は毎回その存在感と演出に目を奪われますが、今回は特に外側のキャラメリゼされた薄い層に驚かされました。口に入れるとほんのりとした「カリッ」という音。その軽やかな食感のすぐ後に、低温調理された内側のとろけるような肉質が追いかけてきて、香ばしさと旨味のコントラストが完璧に調和していました。 acaの料理は決して派手ではありませんが、一皿一皿に込められた丁寧な仕事と、季節の魅力を最大限に引き出すセンスに、毎回感動させられます。次回はどんな驚きが待っているのか、今から楽しみです。
2025/01訪問
1回
さすがは日本一。独自の繊細な技法が生み出す白焼きは、まるで蟹味噌のような質感と旨味を備えた、唯一無二の鰻だった。 友人のおかげで、今日は東京からわざわざ琵琶湖まで足を延ばし、この鰻の名店を訪問。名前は以前から耳にしていたものの、「他の名店と比べて、そこまで明確な違いがあるのだろうか」と正直半信半疑だった。しかし食べ終えた瞬間、その疑問ははっきりとした確信に変わった。――これは確かに別格だ。 まず鰻肝焼き。火入れが完璧で、見た目はまるで茸のよう。噛めばじゅわっと旨味が溢れ、嫌な焦げ感は皆無。白焼きは驚くほどエアリーで、蟹味噌を思わせる濃密さと、ふわっとした軽さを同時に備えている。鰻の脂の香りも実に上品で、深みがある。 そして何より印象的だったのが、ご主人の人柄。自身の技法研究への情熱が溢れており、部位選びから下処理、焼きの理論、狙う食感までをとても誠実かつ熱心に説明してくれる。その語りは理屈倒れではなく、最終的に提供される一皿がすべてを証明している。まるで料理の先生のように、忍耐強く、情熱に満ちた姿勢がとにかく格好良い。 わざわざ訪れる価値がある、記憶に深く残る鰻体験だった。
2024/12訪問
1回
大阪までわざわざ友人と食べに行きたくなる──まさにそんな力を持った寿司店だ。 肩の力が抜けるほど軽やかで楽しい空気感、時折差し込まれる“想定外”のひと手間や新しい遊び心、そして最後のお会計は2万円台という納得感のある価格帯。この絶妙なバランスこそ、何度も足を運びたくなる理由だと思う。 板前の人数は多めだが、主厨の圧倒的な手さばきと、チーム全体の段取りの良さが相まって、提供のテンポはむしろ心地よいほど滑らか。待たされるストレスとは無縁のリズムが続く。 名物の五穀の押し寿司から始まり、一口サイズで旨味が弾ける生牡蠣の“一勺”、そして忘れてはいけないのが、ここならではの美しいマグロのクオリティ。ひとつひとつに驚きと満足が詰まっていて、気の置けない友人と一緒に味わうには、これ以上ない舞台だ。
2025/11訪問
1回
いつの間にか、都内の天ぷらは一人六万円超えが当たり前──そんな世界に気圧されて足が遠のいていた頃、「ああ、こういう店こそ僕の“幸せ食堂”だ」と思わせてくれたのが、麻布十番の商店街裏にひっそり佇むこの一軒。賑やかさのすぐ裏で、ふっと静けさが落ちるようなチルな空気感。何度か通っているが、ブレない安定感と“食べていて気持ちがいい”軽やかな天ぷらは相変わらず。大将は見た目も爽やかで、タイミングを見てはちょこっと追加を出してくれることもあり、予約困難店でありながら値上げ幅も控えめなのが嬉しい。 値段の話はさておき、「ここは本当に“食べる価値”がある」と言い切れるのは、やはりその安定したクオリティ。半熟状にとろりと旨味の詰まったホタテ(p3)、香りの立ち方が絶妙な名物・茸の海老包み(p4)、そして写真には収められなかったが紫蘇巻きの白海老など、奇をてらった食材があるわけでもなく、派手な演出もないのに、ただまっすぐに“美味しい”。あえて言えば、海老頭の火入れはやや強めで、個人的にはもう少し柔らかい方が好み。 頻繁に通うわけではないのに、大将はいつも自然体で優しい。外国語も少し話せ、誰に対してもきちんと誠実で、気前も良く、その空気ごと美味しさに繋がっている。こんな天ぷら屋が、やっぱり一番好きだ。
2019/01訪問
1回
横浜まで東京からわざわざ足を運ぶ価値がある──この店の焼鳥は、今回もそれをはっきりと思い出させてくれた。友人と再訪できたことも嬉しく、そしてやはり最初の一串から心を掴まれる。黄金色に揚がったような均一の酥皮は、噛んだ瞬間にパリッと心地よく割れ、その直後に溢れ出す旨味が「さあ、ここからが本番だ」と味覚に告げる。 火入れの巧みさと素材の良さは相変わらず見事で、ひと口ひと口が名刺代わりのような説得力を持つ。ただ、こちらの食欲が強すぎるせいか、どうしても一串の儚さに名残惜しさが残るのも毎度のこと。 季節の限定料理も面白く、香り高いのにクセのないチーズ茶碗蒸し、松露香る鶏胸肉バーガーは外側まで丁寧に焼かれ、薄く香ばしい皮が味わいをさらに引き立てる。そのほかにも、手間を惜しまない一品が続々と登場し、コースの流れにワクワクが止まらない。 次回はどんな驚きが待っているのか──またすぐにでも訪れたくなる、そんな一軒だ。 完璧なちょうちん。写真を見ただけで、その美味しさが伝わるはずです。 最近は予約困難をうたう焼鳥店が増えましたが、繊細な皮目をきちんと焼けず、過度な焦げ味ばかりが立つところも少なくありません。正直、それは私の好みではないのですが——。 関内駅にオープンしたこちら「1000」は、若き店主が火入れを極めた一軒。一口目のカリッとした皮で心を掴まれました。外側の香ばしさと内側の旨み、そのバランスは見事で、どの串も口に運ぶたびに「うまい」と唸らされます。 最初の酒肴と追加した松茸以外は、すべてが文句なしの逸品。鶏胸肉の刺身から始まり、皮付き串へと続く「パリッ」とした食感が一貫して心地よい。特にちょうちんは圧巻で、前半の濃厚な旨みに加え、後半の「シャクッ」とした独特の食感が新鮮でした。これまでの多くが“半熟卵の爆汁感”に寄っていた中で、こちらは鮮度と食感の両立が際立ちます。鶏首肉もまた絶品で、外は香ばしく中はジューシー、それでいて油っこさを感じさせない。技術の高さが際立ちます。 串を食べ終えても興奮は収まらず、〆物を全種類注文。ラーメン、担々麺、カレーライス、燻製鶏そぼろご飯。いずれも「鶏油の香り」が際立ち、まるで老鶏を丸一日煮込んだかのような濃厚さ。特に鶏そぼろご飯は、香ばしい焼きトウモロコシと卵黄のまろやかさが重なり、甘みとコクが突き抜ける一杯でした。思わずおかわり。 欲を言えば、デフォルトの焼鳥の種類がもう少し多ければ、あの感動の焼鳥体験をさらに続けて楽しめるのにな、と思いました。 決して安くはありませんし、東京からわざわざ足を運ぶ必要もありますが、それでも「行く価値あり」と断言できる一軒です。
2025/10訪問
2回
こちらは、東京の寿司界でも特徴的な二部構成を持つ名店。 2階が本板(おもていた)で、価格はおおよそ6万円。( 通常はマグロの握りのみ撮影が許可されています。) 地下1階が副板(ふくいた)で、価格は約4万円。 どちらも肴から握りへの流れや構成に違いがあり、それぞれの魅力が光る。 今回はその「本板」を訪れた。 中でも圧巻だったのは、マグロ4貫の手握り。 光沢、見せ方(黒いカウンターが職人によって常に磨かれていて、まるで鏡のような反射があるのも粋だった)、 そして口に入れた時のマグロとシャリの一体感——それは単なる脂の滑らかさではなく、全体がなめらかに溶け合う融合感があった。 シャリの温度は比較的低めながらも、驚くほどマグロに合っていて、違和感は一切ない。 ただ、それほどに完成度の高いマグロが登場するのであれば、それに先立つ酒肴の構成や味の繊細さにも、もう少し踏み込んで欲しいというのが正直なところ。 その後の握りももちろん丁寧で美しく、おいしいのだが、どこか少し物足りなさが残る印象もあった。 それでも、確かな技術と演出の中で味わう極上のマグロ握りは、「また来たい」と思わせるには十分な魅力だった。 次は副板も体験して、それぞれの違いをより深く味わってみたい。
2024/03訪問
1回
こちらは、まるでライブ感溢れる“鰻エンターテインメント”の舞台——Kabutoでの再再再再訪体験。 まず最初に、入店時の空調はやや控えめに感じたものの、ディナータイムには暑さも和らぎ、さほど気にならなかった。 本題の鰻の串焼きから。 今年も「天然+養殖」のハイブリッド鰻を使用した構成。興味深いのは、まったく同じ日付でありながら、今年の天然鰻は明らかに昨年よりもふっくらして見えたこと。一方、去年は養殖のほうがジューシーだった記憶もある。 火入れは今年のほうが軽めで、外はパリッと、中はふっくら。まさに個人的に好みの仕上がりで、満足度は高い。 Kabutoならではの体験、つまり目の前で締める鰻+香りを嗅がせてくれる“違い”のレクチャー、さらに鰻の心臓の生食も健在。 今年は頭の動きがかなり激しく、なかなかにスリリングな演出。心臓も昨年よりおとなしかったけれど、昨年のほうがまだ血の巡りが強く、噛んだ瞬間のピリピリ感が印象的だった(体験としては濃いが、苦手な方には少々ハードかも…)。 串の構成は、記憶より1〜2本少ないような気もするが、タレの焦げ感が控えめで、苦味が減った分だけ、全体的により洗練された印象。味は記憶通り素晴らしく、これで昨年同様の価格というのは、コストパフォーマンスも見事と言える(正直、あの「野田岩」より満足度は高いかもしれない)。 主厨は今回は新しい色味の手拭いを着けていて、店内の雰囲気とよりマッチしていた。相変わらず集中力の高い仕事ぶりと、ふとした時に見せる朗らかな笑顔が印象的。ただ、昨年のような即興のダンス(p10)は今回は見られず(笑)。 食べログ銀賞、4.44という高評価にも関わらず、全く堅苦しさを感じさせない空間——それがKabutoの魅力。食通の方にも、ちょっとした冒険を求める方にも、心からおすすめできる一軒です。
2024/06訪問
1回
何度も通っていながら、そういえばレビューを書いていなかったことに気づきました。斎藤大将は相変わらず、親しみやすさと厳格さを自在に行き来する、その独特の立ち姿。周囲の店がどんどん値上げする中で、今なお数年前と変わらぬ価格で勝負しているのも、ある意味この店らしいところでしょう。 17時半スタートのディナーは、料理そのものの美学を存分に堪能できる時間。握りが落ちるたびに目を奪われ、そしてお隣と軽く日本酒を分け合うような空気感も実に心地よい。お酒がほどよく会話をほぐしてくれる、そんな緩やかな時間が斎藤大将の魅力でもあります。 玉子焼き(写真13)は今回もやはり圧巻。いや、むしろ以前より美しいかもしれません。半透明でプリンのように弾力のある本体、均一に焼き上げられた香ばしい表面が淡い甘みを引き立てる。思わず「お代わり!」と言いたくなる出来映え。 一貫ごとの味わいはブレることなく、軽やかに始まり徐々に厚みを増す流れ。そして何より、目を奪うほど艶やかに輝くフォルムの美しさ。これこそがトップクラスの寿司店が体現する美学と矜持でしょう。次回の訪問が今から待ち遠しいです。