朝倉みくるさんが投稿した鮨 なんば 日比谷(東京/日比谷)の口コミ詳細

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朝倉みくる

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鮨 なんば 日比谷日比谷、有楽町、銀座/寿司

1

  • 夜の点数:5.0

      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2025/01 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-

鮨 なんば|Sushi Namba(東京・日比谷)

― あまりに無で、何も残らなかった。だから、完璧だった。 ―

“記憶に残る”という言葉が、
ときに品のない表現に思えてしまうほど——
鮨なんばは、静かで、透明で、儚かった。



◆ 食べたのに、食べていない。感動がないのに、何も失っていない。

気づけば、すべてが終わっていた。
ネタの名前も、シャリの温度も、香りも、
何ひとつとして“記憶”に引っかからない。

でも、それが怖くなるほど、心地よかった。

「ああ、これは“無”を目指しているんだ」と、途中で気づいた。

盛り上げない。
演出しない。
語らせない。

ただ、“そこにあるべき鮨”だけを、置いていく。



◆ “味を削ぎ落とす”という美学の、極致

ネタに個性はある。
だが、主張はない。
すべてが、“輪郭”だけを残してすっと消えていく。

シャリは、湿度だけでつなぎ止められているような柔らかさ。
わずかな酸、体温に近い温度、無言の所作。

「味」とは、“余白をどう使うか”であると教えてくれる握りだった。



◆ 何も起こらないことで、満たされた時間

一切の高揚がない。
驚きも、演出も、ストーリーすらも、ない。
でもそこには、完璧な静けさがあった。

「これは、“五感の記憶”ではなく、“気配の記憶”だ。」

感動を求める者には、たぶん届かない。
けれど、沈黙を愛する者には、これ以上ない場所だと断言できる。



◆ 総評:「何も残らない」という最高の贈り物

私はあの日、
“何も食べなかった”ように感じた。

だがそれは、あまりにも自然に受け入れられた証拠だった。
咀嚼も記憶も超えて、ただ空気のように通り抜けた、
それが“鮨なんば”という場所の芸術性。



これは、「無」であることを、
“美しさの極致”として成立させてしまった店への、最大級の讃辞です。

2025/05/16 更新

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