5回
2025/10 訪問
年月を経て3種の珍味にありついたぞ
またしてもサントリーホールのコンサートの後のディナーで訪問した。ラストオーダーが22:00というのも嬉しい。
個室を初めて利用したので,何かと気が楽ではあったが,まるで隠し部屋に4人が潜むというのが相応しい大きさで少し落胆した。中華の個室というものは,広くて真ん中に大きな丸いテーブルが鎮座しているものと、昭和の人間は刷り込まれているが,思えば最近はテーブルにナイフフォークで銘々に取り分けられて提供されるフレンチスタイルは珍しいことではなくなっている。丸い真ん中が廻るテーブルなど今や中華街にでも行かないとお目にかかれないかもしれない。私の経験ではフレンチスタイルの最初は青山のダイニーズテーブルであったように思う。隠れ家的な地下の暗めの照明でインテリア,カトラリーがオシャレで新しもの好きな洒落者達に人気であった。おそらく伝説のイタリアン、飯倉のキャンティの中華版であったと思われるが、特段味が優れていたわけでもないので,フレンチスタイルが当たり前になった今はどうなったんだろうな。あの根津美術館前の通りもすっかり様変わりしてしまい、昔からあるのはブルーノートくらいではなかろうか。イタリアンモダン家具のB&Bやジルサンダーの旗艦店があったことを懐かしむのは歳をとった証かもしれないな。
さて料理であるが,フカヒレ姿煮、あわび、ツバメの巣の文言の誘惑に負けて高い方のコースを奢ってみた。飲み物は,アルコール制限のある身ではビールを飲むことが増えたが、良い店には最近は一般には手に入らない特別なビールが置いてあることが多い。麦芽に拘った無濾過の生ビール、所謂ホワイトビールが流行ってきた.和食にも洋食にもどんな料理でも食中酒として合うビールが作られるようになったというわけで、これはビール好きには嬉しいことでありますね。先には鮨屋、和食屋でインディーズ系のロココビールを経験し、柑橘系の香りがして喉越しもスッキリととても気に入ったものだ。エッセンスにはサッポロの白穂の香があり、これもとても良かった。すかさず2杯空けて,次は迷った末にグラスの紹興酒にした.アルコールは種類を問わず3杯までと主治医に内緒で勝手に決めているからである。
アミューズは牛筋の煮込みであったが,これにはバゲットがよく合うもので、森下の居酒屋山利喜では昔から置いてあったが,さすがにエッセンスには置いてなかった。前菜はいつものようにクラゲ,シャコ、タコ,サーモンなど凝ったものが六種で、これらは廻るテーブルのミニサイズのお皿に乗せられていた。フカヒレは金華ハムの上湯スープでとても上品なコクのある味わいは流石で,魚料理は甘鯛のポアレで麹町のビストロ、オープロバンソーのによく似ているが,焼津サスエ前田の魚だから特別にうまく感じた。ツバメの巣のスープの燕の巣は衣笠ダケとズワイガニに埋もれて確認出来ないほどであったが、同伴者の皿に運良く個体を確認出来たので半分っこした.実に台湾でタピオカと一緒のデザートで食べて以来,10年ぶり以上の僥倖であった。薬膳スープは朝鮮人参の恩恵か,飲む先から身体が熱ってきた。鮑は蒸し鮑の万願寺のピリ辛味で、これは正直アワビが惜しいと思った.肉料理はブランド牛の足利マール牛との説明を受けたが、ワインの葡萄の香りまではわからなかったが,もも肉にしては柔らかいのは焼き方が上手いのだろうが,このまんまステーキを中華というのは,僅かにソースの違いだけだろうな。食事は舞茸ご飯に麻婆豆腐で,これがベストマッチ。デザートは3種で,ココナッツ饅頭が変わらず美味い。
料理のジャンルが,どんどんボーダーレスになって来ているが,カテゴリーにこだわる方が寧ろおかしいというものだだろう。森羅万象何事も不確定でスペクトラム状であることは量子論が教えるところでもあるし、われわれは何も考えずに、コンサートの余韻に任せて,ただ美味い美味いと食べるのが正解のようだった。
2025/10/30 更新
2025/09/05 更新
2025/09 訪問
シェフの料理への誠実さが一皿,一皿に表れており,思わず姿勢を正してしまう
サントリーホールの帰りで21時頃になったが,アラカルトで自由に食べられるのが有難い。前がランチだったのでディナーは初めての来訪。本日のおすすめメニューから全て組み立てた。前菜はお任せ前菜6種盛り合わせに、干し肉の照り焼きを追加しようとしたら,それを6種の中に組み込んでくれる気遣いをしてくれた。6種は一つ一つが一品になるくらい手の込んだものばかりであった。魚系は全て焼津のサスエ前田魚店の魚介に渾身の調理がしてあるのだから外れようもない。あらが終わっていて太刀魚の揚げたものを食べたがトマトの油淋ソースが,中華の当たり前を外しているが、とてもマッチしていた。薬膳スープは,あまり詳しくはないが文句なしに美味い。福臨門の佛跳牆ぶっ飛びスープのようにナマコや朝鮮人参がこれ見よがしには入ってはいないが,薬効は十分に考えられているのだろう,スープには品の良い力を感じる。肉系はアキレス腱とトリッパの煮込みにした。クセのある2品だが,コラーゲンの適度な柔らかさと、トリッパのモツの臭みの消し具合は流石であった。柱侯醬という味わいは初めてであったが,奥深い味であった。締めは五目あんかけ焼きそばにしたが,麺の太さと硬さのバランスがよく,あんの中の海老はプリップリで,サスエのサイマキ海老だろうなと納得した。デザートは,前と同じココナッツ団子で美味さを再確認した。
他には類のない中華料理店だと思う。何より料理から伝わってくるのは料理への真面目な姿勢だ。当然のように食材にはとことん拘っている。次回こそ,フカヒレに挑戦してみようと思う。
2025/09/06 更新
2025/07 訪問
灯台下暗し,隠れた名店
慶應病院の受診の帰りのランチを探していて,偶然見つけてランチで初訪問。パソナのビルの角の青山通りからすぐのところだけど,行き過ぎてしまうほど目立たない店構え。大して期待もせずに入ったが,まずメニューに魚が焼津のサスエ前田魚店のものと書いてありビックリ。静岡の成生を支える,日本中の一流シェフが付き合いを求める目利きである。当日は前菜盛り合わせと甘鯛の唐揚げと八宝菜、点心いくつかと焼きそばを食べただけだけど,自分の知る薬膳の概念を変える洗練さであった。いくつかの資格を持つ経験値の高い料理人だが食材には徹底的に拘る姿勢に共感が持てる。次はディナーで仏跳スープとフカヒレコースと行きたい。この界隈はかつては職場にも近く,一時期住んだ事もあり,半世紀の馴染みだけれど,こんないい店がいつ出来たのだろう。
2025/08/06 更新
何事においてもそうであるが,最初は意外性に驚き感動しても,2度目は期待が高いが故に少しがっかりする。3度には妙なところのアラが目につくようになる。4度目に改めて気分がデフォルト状態になり正しい評価になるのではないかと思うが,いかがなものであろうか.例えをご婦人にしてみれば,紳士諸兄にはご賛同いただけるのではないかと思う。
エッセンスも,4度目になって改めて良い店だと思う.富麗華など中国飯店系や桃仙閣系のようなモダンながらもクラッシックな王道がベースに置かれたものでもなく、かと言って桃の木ほどにヌーベルシノア風でもなく,どちらかといえば、和と洋のエッセンスをミックスした中華のmixologyとも言えるものではなかろうか。
今回は勉強仲間の男性3人で忘年会ということで個室を使ったが,前回ほど窮屈感は感じず、前回との感じ方の差はどこから来るのだろう?前回は妻と二人であった。笑
料理は13500円のお得なコースにした。定番の牛スジの煮込み,前菜はサーモンやクラゲ,豆腐ヨウなど6種が廻るお皿で,フカヒレ、魚料理が2品,薬膳スープ、牛のローストに締めのご飯は土鍋白米に麻婆豆腐で、デザートはフルーツに絶妙な杏仁豆腐であった。魚料理のキンメとヤガラは焼津のサスエ前田魚店のもので,気のせいか一際美味かった。アルコールは例の無濾過のビール白穂の香にした.これは確かに美味い。全9皿で質量とも大満足で,これなら高いコースでなくても南青山エッセンスのエッセンスは十分味わえると断言出来る。
と言うことで、今回が私の落ち着いた評価である。結論,オススメである。