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ザ・リッツ・カールトン大阪5階。 豪奢でありながら過剰に騒がしくない内装は、ホテル内レストランとして理想的な均衡を保っている。壁一面に配された陶磁器と、箏曲の生演奏が生む空気は、食事を味覚体験から特別な時間の演出へと引き上げていた。 供される広東料理は、日本的な端正さを纏いながらも、素材と技法の確かさが感じられる構成。なかでも北京ダックは特筆すべき一品だった。艶やかに焼き上げられた皮は美しく、脂の甘みと香ばしさが舌の上で静かに解けてゆく。完成度の高さは疑いようがない。 しかし、一方で強い違和感も残った。 丸々一羽で注文した北京ダックは、目の前で皮を削ぎ、薄餅に包む提供のみで完結し、残った肉は供されなかった。中国本土では、残肉を好みの調理法で提供するのが一般的であり、骨も含めて余すことなく料理に昇華される。その認識があっただけに、希望を伝えた際「処分している」と静かに告げられたことには、正直なところ衝撃を受けた。 ここには、日本の高級中国料理が独自に再解釈した「最も完成された瞬間のみを切り取って供する」という美学があるのだろう。だがそれは同時に、「命を余さずいただく」という中華料理本来の思想から、距離を取る選択でもある。 料理の完成度、空間、サービスはいずれも一流であるからこそ、この一点が惜しまれてならない。 洗練を選んだ結果、何を完成と定義したのか。その判断が、この店の料理観を最も雄弁に物語っている。洗練の中に、もう一歩、料理の思想が見えれば、記憶に残る名店になると感じた。
2025/12訪問
1回
美しいピンクが艶めく、梅香る伝統の蕎麦