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夜の点数:4.5
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¥8,000~¥9,999 / 1人
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2025/10/13 更新
東中野の駅を降りると、夜の空気にほんのりと炭火の香りが混じっていた。住宅街と商店が入り混じるこの街の空気には、どこか人懐っこさが漂っている。角を曲がった先に、木の温もりが滲み出るような小さな看板が灯っていた——「千串屋」。その名の通り、串焼きが主役の店である。
暖簾をくぐると、カウンター越しに立ち上る煙が目に飛び込んでくる。炭の上でじゅうじゅうと音を立てる焼き鳥。焼き手の大将は、手首の返し一つで串をくるりと回し、火加減を絶妙に操っている。その姿に一瞬、時間が止まったような感覚を覚える。串を焼く音、炭がはぜる音、そして奥のテーブルから聞こえる笑い声が、心地よいリズムを刻んでいた。
この日は気の置けない仲間たちと、仕事終わりの小さな宴を開いた。まずは生ビールで乾杯。グラスを合わせる音が軽やかに響き、喉を通る冷たいビールが一日の疲れを洗い流していく。口の中に残る麦の香りと炭の煙が混ざり合い、まるでこの店全体がひとつの料理になっているようだった。
最初に頼んだのは、定番の「ねぎま」。皮はこんがりと香ばしく、中は驚くほどジューシー。塩の加減が絶妙で、鶏の旨味が舌の上にじわりと広がる。続いて「つくね」。ふっくらと焼き上げられたそれは、ひと噛みで肉汁が溢れ、甘辛いタレと黄身のコクが絡み合って至福のひとときを演出する。仲間の一人が「これは日本酒にも合いそうだな」と呟いたが、僕はあえてハイボールを選んだ。炭酸の泡が舌の上ではじけ、脂の余韻を心地よくリセットしてくれる。
次々と運ばれてくる串は、どれも一串ごとに表情が違う。「せせり」のしなやかな弾力、「ぼんじり」の濃厚な脂、「レバー」のとろけるような舌触り——それぞれの部位に、大将の経験と勘が刻まれている。焼き過ぎず、だが芯まで熱が通った絶妙な火入れは、もはや職人芸としか言いようがない。
テーブルの上は、次第に串の山とグラスの数で賑やかになっていった。会話は自然と弾み、くだらない冗談から真面目な将来の話まで、話題は尽きない。炭火の熱気と仲間の笑顔に包まれていると、時間の感覚がゆっくりと溶けていく。店内はそれほど広くないが、むしろその距離感が人と人との心の壁を取り払ってくれるようだった。
気がつけば、店の外には夜風がひんやりと流れていた。通りに出ると、炭火の香りがまだ体に染みついているのが分かる。胸の奥に残るのは、満腹感だけではない。仲間と過ごした、飾らない時間の余韻だ。
千串屋 東中野店——派手さはない。しかし、ここには確かな“旨さ”と“時間”がある。炭火の前に立つ職人と、それを囲む人々の笑顔。そのすべてが、この夜を特別なものにしてくれた。次は一人で、カウンターに腰を下ろしてじっくり味わうのも悪くない。そんな余韻を残して、駅へと続く夜道を歩いた。