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夜の点数:4.8
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¥6,000~¥7,999 / 1人
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2025/10/18 更新
その夜、仕事仲間たちと連れ立って向かったのは、繁華街の雑踏の中にひっそりと佇むビル。その上階に、まるでタイの夜市の一角を切り取ったかのような居酒屋「イサーン サコンナコン」があるという。看板にはタイ文字が踊り、薄暗い階段を上っていくと、階下の喧騒が少しずつ遠ざかり、代わりに異国の香りが鼻をくすぐってきた。ナンプラーとレモングラス、唐辛子が入り混じった、あのタイ特有の熱を帯びた匂いだ。
扉を開けた瞬間、そこはまるで別世界だった。タイ人客たちがマイク片手にカラオケを歌い、スタッフは笑顔で行き交い、スナックと現地の居酒屋が融合したような、どこか懐かしくも雑多な空気が店内に満ちていた。ネオンの明かりが天井に反射し、音楽と人々の声が混じり合って、まるでバンコクの裏通りに迷い込んだような錯覚を覚える。
席に着くと、まずは定番の「トムヤムクン」を注文した。湯気を立てて運ばれてきた鍋には、えび、きのこ、レモングラス、パクチーがぎっしりと詰まっている。一口スープを啜った瞬間、酸味と辛味が舌の奥を刺激し、ココナッツミルクのまろやかさがその辛さを包み込む――まさに本場の味だった。バンコクの屋台で食べたあの記憶が、一気に蘇る。仲間の一人が「これ、現地の味そのままだな」と呟いたが、それは決して大げさではない。
続いて運ばれてきたのは、イサーン名物の「辛いウインナー」。こんがりと焼き上げられた皮がパリッと音を立て、中から唐辛子と肉汁がほとばしる。ビールを流し込むと、喉の奥がじんわりと熱くなる。この感覚がたまらない。テーブルには次々とソムタム(青パパイヤサラダ)、ガイヤーン(焼き鳥)、ラープ(ひき肉とハーブのサラダ)といった料理が並び、どれも手加減なしの“本気の辛さ”と“香草の香り”が生きている。ここが東京であることを一瞬忘れてしまうほどだった。
ふと店の奥を見ると、常連らしきタイ人たちが次々とステージに立ち、楽しげに歌い踊っている。店主もマイクを握り、客席と一体になって盛り上がるその光景は、日本の居酒屋とはまったく異なる空気を生み出していた。辛さに汗をかき、笑いながら、僕たちもその輪の中に自然と溶け込んでいった。
「イサーン サコンナコン」は、ただの料理店ではない。階段を数段上るだけで、異国の夜へと踏み込む小さな旅が始まる。ビルの上階というロケーションもまた、まるで秘密のアジトに迷い込んだような感覚を引き立てていた。外に出れば秋の夜風が頬を撫で、現実に引き戻される。だが、あの辛さと音楽と笑い声は、しばらく耳と舌に残り続けた――まるで、ほんの短い旅の余韻のように。