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夜の点数:4.9
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¥6,000~¥7,999 / 1人
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料理・味 -
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2025/10/27 更新
浅草橋という街は面白い。ビルと高架が幾重にも影を落とし、隅田川の風が道路の隙間をすり抜けていく。観光客が足早に通り過ぎる浅草とは違い、この街には、夜になると独特の静けさが満ちてくる。そんな町角に、ぽっと明かりをつけて迎えてくれる店がある。「骨付鳥、からあげ、ハイボール がブリチキン。」浅草橋店だ。
店の前に立つと、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。くたびれた一日の終わりに、理屈ではなく本能が「ここでいい」と決めてしまう。引き戸をくぐると、店長が笑顔で出迎えてくれた。その笑顔は作り物ではない。常連にも一見にも同じ温度で向き合い、気さくに声をかけてくれる。愛想よく、しかし距離を詰めすぎない。酒場の空気をよく知った接客だ。
テーブルにつき、まずはハイボールを頼む。氷がグラスに触れてカランと鳴ると、それだけで肩の力が抜けていく。いつもの仲間とグラスを軽くぶつけ、「おつかれ」と小さな声を交わせば、それはもう宴の始まり。
最初に届いたのは名物の「がブリチキン」。からあげとは呼ばない。がぶり、といくための鶏だ。衣は薄く澄んだ黄金色。噛めば肉汁が滲み出し、舌に伝わる熱い衝撃に思わず口角が上がる。ブラックペッパーの刺激がハイボールとの相性を完璧に演出してくれる。ハイボールを流し込むたび、次のひとつを口に運ばずにはいられない。
そして、主役がやってくる。親鳥の骨付鳥。皿の上では艶やかな肉が堂々と構え、食べる者に覚悟を促す。若鳥にはない筋肉の反発。噛みしめると、じんわりと溢れる旨味が歯に、舌に、記憶に刻まれる。脂は控えめだが味は鋭い。長く生きて溜め込んだ力強さが、この一皿には宿っている。
店内では、仕事帰りの客たちがそれぞれの夜を語り合っている。愚痴も夢も、鶏と酒がすべて受け止めてくれる。この店には、そういう懐の深さがある。ふと視線を感じて振り向くと、店長が気にかけるように目を配っている。グラスが空になりそうなら、聞こえるか聞こえないかの声で「次、どうしましょう?」と笑う。こういう心地よさが、客を次の再訪へと導くのだ。
三杯目のハイボールに差し掛かるころ、笑いは大きく、話はくだらなく、夜そのものがやわらいでいく。仲間が言った。「せっかくだから、これでもかってくらい食おうぜ」。それは、ただの冗談ではなかった。唐揚げを追加し、骨付鳥をまた一本。限界を忘れた夜は、とても自由だ。
噛むほどに味の増す親鳥に、自分たちの人生が重なった。失敗や疲れを抱えても、こうして笑っていられる。ハイボールの泡が、今日を肯定してくれる。そんな瞬間の積み重ねこそ、きっと幸せというやつなのだ。
店を出る頃、浅草橋の夜風が少し冷たくなっていた。背中を押すのではなく、肩をそっと包み込むような、優しい風だ。店長の「ありがとうございました、またぜひ」が背中に追いかけてくる。その声は不思議と、自分の明日を元気づけてくれる。
鶏と酒と、いい人。
それさえ揃えば、夜はごちそうになる。
ここは、そんな夜を保証してくれる場所だ。