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2025/07訪問
1回
午後の陽が、浅間山の稜線を柔らかく照らし始めていた。 エンジンの熱を帯びたまま、車を横川サービスエリアに滑り込ませたのは、旅のほんの小休止のつもりだった。 だが、ふと目に入った「峠の釜めし本舗 おぎのや」の暖簾に、懐かしいものが胸の奥に灯った。 それは、まだ少年だった頃、両親に連れられて訪れた信州の旅の記憶。母が小さな木のスプーンでよそってくれた、あの温もりの味だ。 釜めしの蓋を開けた瞬間、白い湯気とともに、時を越えてくる記憶。 炊き込みご飯の香り、ほんのり甘く煮締められた椎茸と筍、渋く光る栗。鶏肉は控えめながら芯の通った旨味をもち、脇に添えられた紅生姜が全体に小さな鋭さを与えていた。 食べるたびに、心が静まる。 旅という名の時間の流れの中で、釜めしは「今ここにいる」という確かな手ごたえを与えてくれる。 サービスエリアとは名ばかりの、実に侮れぬ食の小宇宙。 峠を越える前に、腹ごしらえと共に、心の景色をひとつ、しっかりと刻み込んだ。
2025/07訪問
1回
長い道のりの途中、ひととき車を降りた。 上信越道、横川サービスエリアの上り線。風が抜ける丘の上に、見慣れた緑のサイレンス――スターバックスのロゴが、妙に安心感を与えてくれる。 その店のカウンターで注文したのは、アイスカフェモカ。 エスプレッソの苦味に、チョコレートの甘みが絡み合う。だが、ただの甘さではない。どこか都会的で、抑制された苦味が芯を残していた。 プラスチックのカップを手に、テラスの椅子に腰かける。 眼下には、少しずつ暮れ始める空。向こうに浅間のシルエットが溶けていくのを、黙って眺める。 高速道路の旅におけるカフェモカは、目的地とは無関係な時間。 だが、その一杯が、走り続ける理由をふと問い直させてくることがある。 ひと口ごとに、過ぎていった日々と、これから向かう明日が交錯する。 それは旅の中の休憩ではなく、旅そのものだった。