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これらの口コミは、訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

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120 件を表示 27

酒ト肴 さしすせそ 東通り店

東梅田、梅田、大阪梅田(阪急)/居酒屋、寿司、創作料理

3.09

145

¥2,000~¥2,999

¥2,000~¥2,999

定休日
-

夜の点数:4.1

大阪の夜の街を歩けば、どこからともなく漂ってくる焼き魚の香り、鉄板の上で弾ける油の音、そして通りの奥で笑い声が重なり合う。そんな喧騒のただ中に「酒ト肴 さしすせそ 東通り店」はあった。繁華街のネオンに負けぬよう、控えめながらも確かな存在感を放つ提灯が揺れ、暖簾をくぐった瞬間に、僕の心はすでに解き放たれていた。 「とにかく安くて旨い」——この言葉を体現するような空間だった。まずはハイボールで乾杯だ。グラスに注がれた琥珀色の液体は、氷と炭酸が織り成す音楽を奏で、喉に滑り込んだ瞬間に一日の疲れをすべて吹き飛ばす。乾いた喉に沁みわたる冷たさの中に、ほんのりとしたウイスキーの余韻が残る。仲間と顔を見合わせて笑い合うと、店全体の空気がぐっと自分たちのものになったような気がした。 壁に貼られた短冊のメニューには、気取らぬ言葉が並んでいる。「ポテサラ」「出汁巻き」「唐揚げ」——どれも馴染み深いが、ひと手間かけた風情を漂わせている。出てきた料理はどれも小皿に盛られ、箸を伸ばせばすぐに消えてしまうほどの軽やかさ。それがまた次の一品を呼び込み、酒をさらに進めるのだ。 例えばアジの南蛮漬け。しっかりと酢が効きながらも、角の取れたまろやかさがあり、噛みしめるごとに魚の旨みが浮き上がってくる。あるいは厚揚げの煮物。出汁の香りに包まれたやさしい味は、家庭の食卓にあるようでいて、決して家庭では真似できぬ深みを持っていた。 安さという言葉は、時に味気なさを連想させるが、この店では違った。安いからこそ遠慮なく頼める。そして頼むたびに舌が喜び、心が踊る。仲間との語らいの輪は、酒と肴によって何度も広がっていった。 ふと耳を澄ますと、隣のテーブルでも笑い声が絶えない。会社帰りのサラリーマン、若いカップル、そして地元の常連らしき人々。彼らが一堂に会し、同じ空気を共有していることこそ、この店の魅力なのだろう。高級店では得られない親しみ、肩肘張らずに過ごせる安心感がここにはある。 グラスを重ねるたびに、僕たちの時間は濃密になっていった。時計の針は確かに進んでいるはずなのに、体感ではゆるやかに流れていく。ハイボールの爽快感と肴の旨みが、時の歩みをやわらかくしてくれるのだ。気がつけば、テーブルの上は皿とグラスで埋め尽くされ、笑い声は最初よりもさらに大きくなっていた。 「酒ト肴 さしすせそ 東通り店」。名前の通り、酒と肴があれば人は満たされる。その真理を、この夜僕は改めて実感した。安くて旨い、そのシンプルな力強さが、僕らの心を解きほぐし、また明日を生きる糧となる。ここは豪華さを求める場所ではない。しかし、仲間と笑い合い、肩を並べ、安らぎを求めるには、これ以上ないほどふさわしい場所だ。 扉を出ると、東通りの喧騒が再び押し寄せてきた。しかし、胸の奥にはまだハイボールの余韻と、肴の味わいが静かに残っていた。それは確かに、僕を幸福にした夜の証拠だった。

2025/09訪問

1回

にしかわ

JR難波、桜川、大阪難波/居酒屋、たこ焼き、食堂

3.38

99

¥1,000~¥1,999

~¥999

定休日
日曜日、祝日

夜の点数:4.0

大阪・難波の夜は、いつも何かを始める予感に満ちている。この日は仲間たちとの打ち合わせを兼ねた食事会だった。場所に選んだのは老舗の居酒屋「にしかわ」。派手な看板ではない。だが、暖簾のくぐり口に漂う湯気と匂いが、「ここは当たりだ」と直感させた。 カウンター越しに見える大将の動きは、まるで長年の経験が染みついた職人のそれだった。 テーブルにつくと、まずは刺身の盛り合わせが運ばれてくる。赤身のマグロは筋一つなく、舌に乗せた瞬間に溶けていく。 白身の鯛は淡い甘みと弾力を残し、まるで潮の香りが舌の奥で広がるようだった。 「これは、ええな」同席していた仲間の一人が、静かに唸った。誰もが言葉少なに、箸の動きでそのうまさを分かち合う。 続いて出てきた名物サラダ。 大皿に盛られたレタスとトマト、その上に半熟卵がとろりと乗る。 ドレッシングの酸味が爽やかで、玉子のまろやかさと絶妙に調和していた。 「こういう一皿ができる店は信頼できる」 誰かがそう呟いた。 確かに、こうした“地味なうまさ”こそ、長年通いたくなる理由になる。 そして、たこ焼き。 大阪人にとっての誇りのような料理だ。 外はカリッと香ばしく、中はとろりと柔らかい。 ひと口頬張れば、タコの旨みと出汁の香りが広がり、思わず笑みがこぼれる。 「東京でこの味は出せんやろ」 そう言いながら、誰かがビールを注いでくれた。 グラスの泡が弾ける音と、笑い声が混ざり合い、仕事の話も自然と熱を帯びていく。 締めに選んだのは牛煮込み。 大鍋で長く煮込まれたスジ肉は、箸を入れただけでほろりと崩れる。 味噌の香ばしい香りが鼻を抜け、七味をひとふりすれば味がきゅっと締まる。 「うまいな」 誰もが短くそう言って、黙々と食べた。 言葉はいらない。料理がすべてを語ってくれる夜だった。 気づけば、話題はいつの間にか仕事から人生へと移っていた。 苦い時期を乗り越えた仲間たちと、次の展開を語り合う。 笑いながらも、誰もが胸の奥でそれぞれの覚悟を確かめている。 にしかわの温かな灯りが、その沈黙さえも優しく包んでくれた。 外へ出ると、難波の夜風が心地よかった。 振り返ると、暖簾がゆらりと揺れている。 あの一夜が、また新しい挑戦の始まりになる気がした。 うまい酒、うまい飯、そして信頼できる仲間。 その三つが揃えば、どんな困難も笑い飛ばせる。 「にしかわ」は、そんな気持ちを思い出させてくれる店だった。 味だけでなく、人と人の絆までも温めてくれるような、浪花の底力を感じた夜だった。

2025/11訪問

1回

どうとんぼり神座 エキマルシェ新大阪店

新大阪、東淀川、東三国/ラーメン、餃子

3.42

862

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-

夜の点数:4.0

新大阪駅の雑踏の中で、僕には一つの“儀式”がある。東京へ戻る新幹線に乗る前、必ず立ち寄る店があるのだ。それが「どうとんぼり神座 エキマルシェ新大阪店」である。旅行者や出張族でごった返す構内の一角に、明かりをにぎやかに灯す暖簾。その先に待つ一杯は、僕にとって単なる食事ではなく、旅の締め括りであり、次の時間へと心を整えるための儀式のようなものだ。 席に腰を下ろし、迷うことなく「半熟卵ラーメン」を注文する。待っている間にも、厨房から漂う湯気とスープの匂いが鼻先をくすぐる。ガタンゴトンと新幹線の発着を告げるアナウンスが遠くに響くなか、僕は心の中で「大阪に来た」と静かに頷く。ここでこの一杯を食べてこそ、大阪の旅が完結するのだ。 やがて目の前に現れた丼は、湯気を立ちのぼらせながら堂々たる姿で僕を迎える。透き通るようでいて奥深いスープ、その表面に浮かぶのは鮮やかな野菜とチャーシュー、そして中心に鎮座する半熟卵。レンゲでスープをすくい口に含むと、その優しさに思わず肩の力が抜ける。塩気は強すぎず、ほんのりと甘みがあり、まるで体の奥に沁みこんでいくような味わいだ。大阪の食文化の懐の深さが、この一杯には凝縮されているように思える。 麺をすすると、コシがありながらもするりと喉を通っていく。次に箸を半熟卵へと伸ばす。割ると、とろりとした黄身が流れ出し、スープに溶け込んで黄金色の膜を広げていく。その瞬間、ラーメンはひとつの料理から、別次元の世界へと変貌する。スープにコクが増し、麺を絡め取る味わいが深みを帯びる。僕はその瞬間を待ち望んでいた。何度食べても、この流れは儀式そのものであり、心を落ち着ける一種の祈りに似ている。 周囲を見渡せば、同じように出張帰りらしき人々が慌ただしくラーメンをすすっている。誰もがこの短い時間に、束の間の癒しと活力を求めているのだろう。エキマルシェという場所は、時間に追われる人々の交差点。その中で「神座」のラーメンは、一瞬だけ立ち止まり、自分を取り戻すための場所になっている。 大阪の街には数え切れないほどの食がある。串カツも、お好み焼きも、焼肉も、数々の誘惑が旅人を惹きつける。しかし僕にとって最後に欠かせないのは、この「半熟卵ラーメン」だ。豪華でも派手でもない。だが確実に、旅の記憶をひとつに束ね、次へと送り出す力を持っている。 丼を空にし、席を立つとき、心の中で小さな安堵を感じる。これでまた東京へ戻れる、と。食べ終わった余韻が、体の芯を温め、足取りを軽くする。改札を抜け、新幹線のホームへ向かう僕の中で、さっきまでの一杯がまだ生きている。 「どうとんぼり神座 エキマルシェ新大阪店」。僕にとってここは単なるラーメン屋ではない。大阪という街と東京をつなぐ、味の架け橋であり、旅のリズムを刻む鼓動のような場所だ。半熟卵ラーメンは、これからも僕にとって“出発の儀式”であり続けるだろう。

2025/09訪問

1回

TALKS cafe & bar

大阪、梅田、大阪梅田(阪神)/カフェ、バル

3.47

195

¥3,000~¥3,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-

昼の点数:4.0

梅田の街は、いま大きな変貌を遂げている。再開発という名の波が、古びた街並みに新しい息吹を吹き込み、光と影を交錯させながら、その輪郭を日ごとに描き変えている。そんな新天地の只中に、ひときわオシャレな存在感を放つのが「TALKS cafe & bar」だ。 打ち合わせのために足を踏み入れたのは、まだ午前中の早い時間。大通りの喧騒から少し外れた路地に位置するにも関わらず、店先には都会的な洗練が漂っていた。ガラス越しに覗く店内は、木目の温もりとメタリックな質感が絶妙に融合し、まさに「都市の今」を象徴するかのようだ。 席に腰を下ろすと、店内を包み込む空気が心地よい。高すぎない天井と柔らかな照明、そして穏やかに流れる音楽。周囲を見渡せば、ノートPCを広げる若いビジネスマンや、ゆったりとした会話を楽しむ女性たちが、自然体でこの空間に溶け込んでいる。ここは単なる喫茶の場ではなく、「人が集まり、話し、未来を描くための場」として設計されているように思えた。 僕が頼んだのはアイスカフェラテだ。グラスに注がれたその一杯は、氷の透明感に支えられながら、濃厚なエスプレッソとミルクの白がゆるやかに溶け合っていた。ストローを差し、一口目を含むと、ほろ苦さとまろやかさが同時に舌に広がる。エスプレッソの鋭い輪郭を、ミルクの柔らかさが絶妙に包み込み、喉を抜ける瞬間に心地よい余韻を残していく。これが都会のカフェラテか、と感心するほどに完成度が高い。 そして、この味わいを際立たせているのは、やはり店の空気そのものだ。外の光が大きな窓から差し込み、グラスの中の氷を輝かせる。その様子を眺めているだけで、打ち合わせ前の硬さが少しずつほどけていく。カフェラテを口に運びながら、目の前の資料をめくると、まるでその文字までもが新しい可能性を語りかけてくるような錯覚を覚えた。 「TALKS」という店名には、人と人が交わることへの強い意志が込められているのだろう。隣のテーブルでは若者たちがデザインのアイデアを熱く語り合い、奥の席では外国人客が楽しげに英語を交わしている。その光景を眺めながら、僕はこの店がただのカフェにとどまらず、「未来の街を象徴する社交場」であることを確信した。 再開発で生まれ変わる梅田において、この店は単なる「新しい店舗」ではない。都市の人々が日常を持ち込み、そこに小さな物語を積み重ねていく「舞台装置」だ。カフェラテの味わいと共に、その時間と空気までもが記憶に刻まれていく。 打ち合わせを終え、グラスの底に残る最後の氷が溶けていくのを見届けたとき、不思議な充実感が胸に残った。仕事の準備を整える場所でありながら、自分自身の気持ちをも整える力を、この空間は持っている。 ──TALKS cafe & bar。梅田の新しい顔にふさわしい、オシャレで力強い存在だ。ここで飲むアイスカフェラテは、単なる一杯の飲み物ではなく、未来へ向かう街と自分をつなぐ「合図」のように思えた。

2025/09訪問

1回

会津屋 天王寺MIO店

天王寺、天王寺駅前、大阪阿部野橋/たこ焼き

3.42

136

¥1,000~¥1,999

~¥999

定休日
-

夜の点数:3.9

天王寺の夜は、どこか優しい。 駅前のざわめきの奥に、子どもの笑い声と、焼きたてのソースの香りが漂っていた。 「会津屋 天王寺MIO店」。その暖簾をくぐった瞬間、僕はふと、過ぎ去った季節の記憶を思い出した。 テーブルには、元妻と、子どもが二人。 久しぶりに四人がそろった夕食だった。 仕事に追われ、時間に追われ、それぞれの生活に追われてきた中で、こんな穏やかな夜が訪れるとは思ってもみなかった。 けれど、目の前のたこ焼きがジュウジュウと音を立て始めた瞬間、すべての距離が、少しだけ近づいたように感じた。 会津屋といえば、ソースをかけない元祖たこ焼き。 外は香ばしく、内はふんわり。 口に運ぶと、ほんのりとした出汁の香りと、タコの弾力が心地よい。 派手さはないが、確かな職人の手仕事が光る味だ。 僕はその横で、ハイボールをゆっくりと口に運ぶ。 氷の音が、子どもたちの笑い声と混ざり合って、どこか音楽のように響いた。 「パパ、これもう一個ちょうだい!」 「熱いから気をつけろよ」と言いながら、僕はフォークで転がして渡す。 彼らは夢中でほおばり、また次を欲しがる。 たこ焼きがまるで宝石のように輝いて見える瞬間だった。 食べ盛りの子どもというのは、こんなにも単純で、こんなにもまっすぐに幸せを表現できるのかと、少し胸が熱くなる。 元妻は、そんな子どもたちを見ながら、静かに笑っていた。 その笑顔に、過去の痛みや後悔が、一瞬だけ溶けていく気がした。 僕らは夫婦ではなくなったけれど、こうして同じテーブルを囲めるというだけで、人生はまだ悪くない。 たこ焼きが焼ける鉄板の音が、まるで小さな焚き火のように、僕らの間を照らしてくれていた。 「ここのたこ焼き、やっぱり違うね」 彼女がそうつぶやいた。 確かに、外側の香ばしさの中に、ほのかな出汁のうまみが潜んでいる。 塩もソースもいらない。 素材と技だけで成立する、潔い大阪の味。 一口食べるごとに、胸の奥で小さな記憶が蘇る。 学生の頃、南の街角で食べた初めてのたこ焼き。 屋台の灯りと、笑い声と、雨上がりの匂い。 あの頃の無邪気さが、この一皿の中に生きている気がした。 店内の空気は明るく、ほどよく人で賑わっている。 駅ビルの中という立地にも関わらず、どこか家庭的で温かい。 スタッフの声も柔らかく、子連れにも心地よい空気がある。 こういう空間は、食のうまさだけでなく、人の距離を縮める調味料にもなる。 ハイボールのグラスが空になった頃、子どもたちは満足げに椅子にもたれかかっていた。 テーブルには、焼きたての香りの余韻と、家族の時間の名残。 たこ焼きという小さな丸の中に、僕はたしかな「円(えん)」を感じていた。 店を出ると、夜風が心地よい。 天王寺の街の明かりが滲んで見えた。 手をつなぐ子どもたちの温もりと、遠くで微笑む元妻の姿。 ふと、もう一度だけ振り返って、店の灯りに軽く頭を下げた。 「ありがとう」と、誰にともなく呟いた。 ――人生の味は、やっぱり少し熱い方がいい。

2025/11訪問

1回

スターバックス コーヒー LINKS UMEDA 2階店

大阪梅田(阪急)、梅田、大阪/カフェ

3.14

124

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.9

梅田の街を歩くと、常にどこか「加速する都市」の鼓動を感じる。その中心にそびえるLINKS UMEDAのビルは、まさに現代都市の象徴だ。ガラス張りの外観が空を映し、行き交う人々の姿を取り込みながら、日々の営みを静かに包み込んでいる。その2階にあるスターバックスは、ただのカフェではなく、都市生活者の拠点であり、呼吸のような存在だと気づかされる。 僕が訪れたのは午後の少し疲れを感じる時間帯だった。一人でふらりと立ち寄り、二杯目のアイスコーヒーを注文する。レシートを差し出すと、スタッフはにこやかに「ワンモアコーヒーですね」と答えてくれる。その瞬間、都市の雑踏に紛れていた自分が、どこか温かな場所へ迎え入れられたような気持ちになる。トールサイズで190円。これほどまでに「お得」という言葉が腑に落ちる瞬間は少ない。 受け取ったグラスは、透き通る氷の奥で漆黒の液体が揺らめき、光を反射しながら美しいコントラストを描いている。一口含むと、心地よい苦味が舌を撫で、喉を駆け抜ける。決して重たくなく、むしろすっと染み渡るような軽快さを持っている。朝に飲む一杯とは違い、二杯目のアイスコーヒーは「都会の午後をリセットする役割」を担っているように思えた。 LINKS UMEDA 2階店の魅力は、やはりその空間にある。高い天井と大きな窓が開放感を与え、差し込む光がテーブルの木目を柔らかく照らしている。店内にはビジネスマン、学生、観光客が入り混じり、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。ノートPCを広げる者、友人と談笑する者、ただコーヒー片手に窓の外を眺める者。多様な人々を受け入れるこの懐の深さこそ、スターバックスの真骨頂だろう。 一人で座っていると、周囲の会話が断片的に耳に入ってくる。ビジネスの商談、旅行の計画、試験勉強の悩み。どれもがこの都市の一部であり、同じ空間を共有している。その喧噪をBGMのように受け止めながら、氷の溶けていく音を聞いていると、時間が緩やかに流れていくのを感じる。 この店のオシャレさは、単なるデザインやインテリアの問題ではない。空間全体が「梅田」という街の先進性を体現しているのだ。古い梅田の街並みが再開発で姿を変える中、このスタバはその象徴の一つとして存在している。ここで飲むコーヒーは、ただの飲み物ではなく、都市の鼓動そのものを味わっているような感覚を与えてくれる。 二杯目のアイスコーヒーを飲み干すころ、グラスの底に残った氷が小さく音を立てて崩れた。その透明な響きが、自分の中の疲れを洗い流していく。190円という小さな贅沢が、これほどまでに心を満たすのかと、改めて思う。 ──スターバックス コーヒー LINKS UMEDA 2階店。ここはただのカフェではなく、都市の一部であり、自分を整える場所だ。二杯目のアイスコーヒーが、都会を生きる僕に与えてくれたのは、値段以上の価値だった。

2025/09訪問

1回

スターバックスコーヒー 四ツ橋店

四ツ橋、心斎橋、西大橋/カフェ

3.11

103

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.8

四ツ橋の朝は、都会のざわめきがまだ完全に目を覚ましきらない、独特の静けさと緊張感が入り混じった時間帯だ。その空気の中で僕はふらりとスターバックスコーヒー四ツ橋店の扉を押した。ガラス越しに差し込む朝の光は、すでにオフィスへ急ぐ人々の影を細長く伸ばし、店内のテーブルや椅子を淡く照らしていた。朝のスタバには、夜とはまた違う独特の空気が漂っている。慌ただしくコーヒーをテイクアウトする人々と、ノートパソコンを広げて一日の始まりを整える人々。そのどちらにも属さず、ただ朝の一杯を楽しむことに集中できる空間がここにはある。 僕が選んだのはアイスコーヒーだ。シンプルで、どこにでもある飲み物のはずなのに、スタバのそれは不思議と都会的で洗練された表情を持っている。氷がカランと音を立て、黒い液体がグラスの中で深く沈んでいく瞬間、背筋が伸びるような爽快さを覚える。口に含むと、焙煎豆の香ばしさとほろ苦さが舌の上を滑り、胃の奥にすとんと落ちていく。その余韻は決して重たくなく、むしろ朝の思考を研ぎ澄ますように軽やかで透明感があった。 スタバの魅力は味だけではない。カップを片手に、ふと周囲を眺めれば、そこに流れるのは多様な人々の人生の断片だ。出勤前にスーツ姿で打ち合わせの資料を広げる男、英語の教科書をめくる学生、そしてただ窓辺でぼんやりと人の流れを眺める老紳士。四ツ橋という街の顔がそのまま切り取られたかのように、店内には濃淡さまざまな人間模様が集まっていた。カフェとは、単にコーヒーを味わう場所ではなく、都市の呼吸を感じ取るセンサーのような存在だと、この場所に座るたびに思う。 インテリアはウッド調で、柔らかな照明が落ち着きを演出している。派手さはなく、むしろ日常に寄り添う親密さが漂う空間だ。それでいて、座席のレイアウトや音楽のセレクトには確かな洗練があり、どの席に座っても自分の時間に浸れる余白が残されている。まるで都会の雑踏の中にある小さな避難所のようだ。アイスコーヒーをひと口含みながら、目の前に広がるその雰囲気に身を委ねていると、心が少しずつ整っていくのを感じる。 僕が気に入っているのは、ここにいると「時間を奪われる感覚」がないことだ。駅前の喧噪やオフィス街の早足なリズムとは一線を画し、この店内だけはゆったりとした時が流れている。隣のテーブルで交わされる会話が耳に入っても、不思議と邪魔にはならない。むしろ、その断片が自分の物語の一部に溶け込むような気さえする。 都会で生きるということは、常に加速し続ける流れに身を置くことだ。だが、その流れに飲み込まれる前に、こうした一杯のコーヒーが自分を救ってくれる。スターバックス四ツ橋店で飲む朝のアイスコーヒーは、ただのカフェイン摂取ではなく、都会を生き抜くための「心の呼吸」だ。 一日の始まりに、この場所でグラスを傾けること。それは自分にとって、小さな儀式のような意味を持っている。外の街がどれほど慌ただしくても、ここで味わうひとときがある限り、僕はまた歩き出せる。 ──朝の四ツ橋に、スタバのアイスコーヒー。これ以上の贅沢を、僕は知らない。

2025/09訪問

1回

大衆食堂 こうき屋

岸里、天下茶屋、岸里玉出/スープカレー、食堂

3.22

40

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.7

大阪・西成区、岸里駅すぐ近くにある「大衆食堂こうき屋 岸里店」に行ってきました。アクセスが良く、駅からすぐなので迷うことなく到着。シンプルな外観のビルの1階にあり、店内に入ると明るく清潔感のある空間が広がっていました。 この日はランチタイムに伺い、「スープカレー チキンレッグ野菜入り」を注文。トマトベースとココナッツベースから選べるスープのうち、今回は酸味のあるトマトベースを選びました。 運ばれてきたお皿には、カラフルな野菜がたっぷり盛られ、中央にはホロホロのチキンレッグが堂々と鎮座。スープを一口すすると、トマトの爽やかな酸味とスパイスの風味が重なり、深みのある味わいにびっくり。専門店顔負けの本格派でした。 野菜はれんこん、にんじん、ブロッコリー、パプリカ、なすなど多彩で、しっかり食べ応えがあります。れんこんのシャキシャキ感、なすのとろっとした舌ざわり、それぞれが引き立っていて、一品一品に手間がかかっているのが伝わります。チキンレッグは骨からすっと身がほぐれるほど柔らかく、スープの旨みが染み込んでいて絶品。ご飯はターメリックライスで、スープとの相性も抜群でした。 そして今回、料理の味と同じくらい印象に残ったのが、女性店員さんの接客の素晴らしさ。入店時から笑顔で迎えてくれ、メニューの説明も丁寧で親しみがありました。注文時もタイミングを見て声をかけてくれたり、「辛さの調整もできますよ」と気を配ってくれたりと、本当に気持ちの良い接客。食後にも「お味どうでしたか?」と優しく声をかけてくれ、その一言が心に残りました。 おかげで一人での食事でも終始リラックスでき、料理の美味しさをより一層引き立ててくれた気がします。こういう接客って、また来たくなる理由になりますよね。 店内は地元の常連らしき方が何人かいて、にぎわいつつも落ち着ける雰囲気。決して広くはないけれど、カウンターとテーブル席のバランスが良く、居心地はかなり良かったです。電子決済も対応しており、支払いもスムーズでした。 スープカレー以外にも定食や一品料理が充実しているので、次回は角煮定食やハンバーグも試してみたいと思いました。テイクアウト対応もあるとのことで、時間がない日にも重宝しそうです。 全体として、「こうき屋 岸里店」はスープカレーの質、野菜の種類、接客、価格、すべてにおいて満足度が高いお店です。中でも、女性スタッフさんの温かく丁寧な対応は本当に気持ちよく、料理の美味しさ以上に「また来たい」と思わせてくれました。スープカレー好きな方はもちろん、初めての方にも自信を持っておすすめしたい一軒です。

2025/05訪問

1回

御堂筋なんば応援団 大分からあげと鉄板焼 勝男

なんば(大阪メトロ)、大阪難波、日本橋/居酒屋、からあげ、バル

3.05

67

¥2,000~¥2,999

~¥999

定休日
-

夜の点数:3.6

御堂筋沿いをなんばの雑踏の中ふらりと歩いていた。人波をすり抜けるようにして辿り着いたのは「御堂筋なんば応援団 大分からあげと鉄板焼 勝男」。看板に灯る赤い光が、旅人を誘うようにじっとこちらを見ている。特別な目的があったわけじゃない。ただ、無性にハイボールと鶏のももを食べたくなったのだ。そんな衝動に任せて足を止め、引き戸を開けた瞬間、香ばしい油の匂いが鼻を突き抜けた。 店内は威勢のいい声が飛び交い、鉄板の上では肉が弾ける音がリズムを刻んでいる。カウンター席に腰を下ろし、まずは迷わずハイボールを頼んだ。冷えたジョッキが手に伝わるその感触だけで、今日一日の疲れが溶けていくように思えた。ひと口飲むと、強めの炭酸が喉を突き抜け、身体がすっと軽くなる。都会の雑踏の中で味わう一人の時間、その静けさをこの一杯が保証してくれる。 すぐに運ばれてきたのは、こんがりと焼かれた鶏のもも。皮はパリッと音を立てるほど香ばしく、中は肉汁がじわりと溢れ出す。噛むほどに鶏の旨味が舌に絡みつき、ハイボールをまた呼び寄せる。大分からあげの店と銘打つだけあって、鶏へのこだわりは強いのだろう。その一口ごとに、遠く九州の温暖な空気や、地元の人々が誇る鶏料理の風景が脳裏に浮かんでくる。 次に注文したのはせせり。鶏の首肉という希少部位だ。鉄板で焼かれたせせりは、弾力のある食感が特徴的で、ひと噛みすると程よい脂が口の中に広がる。プリプリとした歯ごたえと濃厚な旨味は、鶏肉の中でも格別だ。もものジューシーさとはまた違う、噛みしめるほどに奥行きのある味わい。ハイボールとの相性も言わずもがなだ。喉を潤すたびに、肉の余韻と炭酸の刺激が絡み合い、何とも言えぬ幸福感をもたらす。 店は賑わっているが、カウンターに腰かけると不思議と孤独が心地よい。隣の客は仲間と笑いながら唐揚げをつつき、奥のテーブルでは会社帰りらしい一団が声を張り上げている。その喧噪をBGMに、僕はひとり、自分の世界に没頭する。グラスの中で氷がカランと鳴る音が、まるで旅の途中の宿で聞く風鈴のように心を和ませた。 大分の唐揚げを看板に掲げるこの店には、ただ安く飲み食いできる居酒屋以上の力がある。鉄板の上で踊る肉の匂いが人を引き寄せ、ひと口の鶏肉が人を黙らせる。そして、強炭酸のハイボールが人を解き放つ。心斎橋となんばの間を行き交う人々にとって、この店は憩いの場であり、明日への活力を取り戻す場所なのだろう。 ふらりと立ち寄っただけの夜だったが、ここでの一杯と一皿は、僕の中に小さな物語を刻みつけた。ハイボールの爽快さ、ももの肉汁、せせりの歯ごたえ。すべてが都会の夜にひとすじの光を投げかけてくれたように思う。次にまたここを訪れるときも、僕はきっと同じようにグラスを傾け、鶏肉を頬張りながら、自分だけの旅の続きを歩んでいるだろう。

2025/09訪問

1回

スターバックスコーヒー うめきたグリーンプレイス店

大阪、梅田、西梅田/カフェ

3.32

53

¥1,000~¥1,999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.4

大阪の朝は、まだ都会のざわめきが完全に目を覚ます前に、少し湿った風が肌を撫でていく。 梅田の再開発地「うめきたグリーンプレイス」。ビルの合間を縫うように伸びた遊歩道には、仕事前のサラリーマン、PCを開く学生、そしてコーヒー片手に立ち話をする人々の姿がある。 その真ん中に、まるで静寂の港のように佇んでいるのが「スターバックスコーヒー うめきたグリーンプレイス店」だった。 打ち合わせの待ち合わせ時間より少し早く着いた。 陽の光が柔らかく差し込むガラス張りの店内は、想像以上に開放的だ。 外のテラス席には観葉植物が並び、人工的な都市の中にも小さな「緑の呼吸」が感じられる。 このスタバは、ただコーヒーを提供する場所ではなく、都会の時間を一度ゆっくりと解きほぐす装置のようにも見えた。 カウンターで注文したのは、いつものアイスコーヒー。 季節限定の甘いドリンクにも惹かれたが、この日の自分にはキレのある苦味が必要だった。 仕事の打ち合わせに臨む前の、いわば心のチューニング。 カップを受け取り、氷がガラスを叩く小さな音を聴きながら、一口、口に含んだ。 ——その瞬間、冷たさよりも先に、透明な苦味が脳を駆け抜けた。 豆の香ばしさが鼻を抜け、あとからほんのりとした酸味が追いかけてくる。 キレがありながらも角がない。 そして何よりも、**「仕事モードへのスイッチ」**をそっと押してくれるような味だ。 打ち合わせの相手が現れた。 コーヒーをテーブルに置き、PCを開く音、議論のテンポ、そして時折笑い声が混じる。 だが不思議なことに、この店ではどんな会話も騒音にならない。 それぞれが自分のリズムで時間を刻んでいる。 それはまるで、街全体がスタバのBGMに同調しているようでもあった。 打ち合わせの内容はビジネスライクなものだったが、コーヒーの香りがそれを少し柔らかく包み込んでくれた。 話がひと段落したころ、氷が溶けかけたグラスの底には、少し丸みを帯びた苦味が残っていた。 それを飲み干した瞬間、妙にすっきりとした気持ちになった。 たぶんそれは、会話がうまくいったからだけでなく、一杯のコーヒーが心の輪郭を整えてくれたからだと思う。 店を出ると、午後の陽射しが街を黄金色に染め始めていた。 振り返ると、ガラス越しに見える客たちの姿が、それぞれの物語を抱えながらカップを手にしている。 誰かにとっては出発点であり、誰かにとっては休息であり、誰かにとっては終わりの合図かもしれない。 そんな多様な時間を一つに束ねているのが、この店の不思議な魅力だ。 「スターバックス うめきたグリーンプレイス店」。 ただのチェーン店と呼ぶには惜しい。 ここには、都会と人間の“間”を取り持つ静かな知性がある。 キレのあるアイスコーヒーは、その象徴だ。 たった一杯で、今日の自分がほんの少し整う。 それだけで、また次の一歩を踏み出せる気がした。

2025/11訪問

1回

ミスタードーナツ 南海天下茶屋駅ショップ

天下茶屋、北天下茶屋、岸里/ドーナツ、飲茶・点心

3.07

50

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.3

駅のざわめきの中に、ふと時間がゆるむ場所がある。 南海天下茶屋駅の改札を抜けた先、通勤客や学生が足早に行き交うコンコースの一角に、ガラス越しに灯る「ミスタードーナツ」の赤いロゴ。いつもの光景なのに、どこか懐かしい。 昼を過ぎ、少し小腹が空いた午後。 手を洗い、トレーを持ってドーナツのショーケースに向かうと、目の前には新メニューの「クリドーナツ」が並んでいた。層のように重なった生地がほんのりと黄金色に光り、表面にはうっすらと粉糖が舞っている。見ただけで、口の中に甘い香りが広がるような錯覚を覚える。 そして、もう一つは定番の「クリームチョコドーナツ」。 ミスドに来るたびに、結局これを手に取ってしまう。新しいものを試しても、最後は原点に戻る。人生の縮図のような選択だ。 アイスコーヒーを受け取り、窓際の席に腰を下ろす。 カウンター越しに見える天下茶屋のホームでは、電車が滑るように出入りしている。その音が、妙に心地よいBGMになる。 まずは「クリドーナツ」から。 フォークを入れると、サクッという軽やかな音とともに層がほぐれる。噛むと、バターの香りがふわりと広がり、ほんのりとした塩気が甘さを引き立てる。ミスドがここまで進化したか、と少し感心する。 昔のミスドといえば、やわらかくてふんわりとした生地が主流だった。けれどこの「クリドーナツ」は、まるでクロワッサンとドーナツの間をゆくような、新しい触感だ。 外はパリッと香ばしく、中はしっとり。コーヒーをひと口含めば、バターとカフェインの苦味が舌の上で溶け合い、午後の倦怠感がすっと消える。 次に、定番の「クリームチョコドーナツ」。 これはもう説明不要の安定感。口に入れた瞬間、ふわりと広がるココアの香り。そして中からとろけ出すカスタードクリーム。甘さのベクトルがまっすぐで、誤魔化しがない。 このシンプルさが、心を落ち着かせる。 新しいメニューに驚きながらも、やっぱり定番に戻ってしまうのは、僕たちが安心を求めているからだろう。新しさと懐かしさ、その両方を抱きしめて生きている。 ふと窓の外を見ると、下校途中の学生たちが笑いながら歩いていく。 ひとりでドーナツをかじるこの時間が、なんだか贅沢に思える。スマホも見ず、ただコーヒーの氷が溶けていく音を聞きながら、思考を漂わせる。 天下茶屋という街は、派手さはないが、どこか人情の温度が残っている。 そんな場所にあるミスタードーナツだからこそ、ただのドーナツが少し特別に感じられるのかもしれない。 店を出ると、夕方の風が少し冷たく頬を撫でた。 その瞬間、バターの余韻とコーヒーの苦味が、妙に懐かしく胸の奥に残った。 何気ない日常の中に、確かな幸福がある。 ――そんなことを思わせてくれる、天下茶屋の午後だった。

2025/11訪問

1回

HOLLYS なんばマルイ店

なんば(大阪メトロ)、難波(南海)、大阪難波/カフェ

3.33

92

¥1,000~¥1,999

~¥999

定休日
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夜の点数:3.3

なんばマルイの1階にあるカフェ、「HOLLYS」。 韓国からやってきたこの店は、赤を基調とした看板と、愛らしい熊のキャラクターが道行く人の足を止める。旅の途中、荷物を抱えたまま、僕はふとその入口に吸い込まれた。 アイスカフェラテを注文し、奥の窓際の席に腰を落ち着ける。 空調がきいた店内は外の蒸し暑さをすっかり忘れさせてくれる。ラテの苦味とミルクのやわらかさが舌の上でほどけ、喉を静かに潤す。 僕は、この街で特別な何かをしたわけではない。 ただ、少し歩き、少し食べ、そしていま、こうして夜行バスの時間を待っている。だが、旅というのは、そういう「間」の時間にこそ、本質があるのかもしれない。 HOLLYSは、にぎやかななんばの喧騒からわずかに離れた静寂の港だ。 向かいの席では、スマートフォンを指で滑らせる若い女性がひとり。隣のカウンターには、仕事帰りらしき男性がコールドブリューを手に書類に目を通している。それぞれの時間が、ここで静かに交差している。 夜行バスまで、あと一時間と少し。 このまま眠ってしまいそうになるのをこらえて、冷たいラテをまた一口すすった。 旅の終わりと始まりのあいだ。 HOLLYSのラテは、そんな曖昧な時間をやさしく包んでくれていた。

1回

焼肉ホルモン 龍の巣 梅田本館

東梅田、中崎町、大阪梅田(阪急)/焼肉、もつ鍋、鉄板焼き

3.36

451

¥4,000~¥4,999

-

定休日
-

夜の点数:3.3

夜の喧騒がようやく落ち着きを見せ始めた午前二時。梅田のネオンはまだ灯っていたが、人の波はどこか潮が引いたあとのように、静かだった。足元に絡みつく湿気とアルコールの残り香を引きずりながら、俺は「龍の巣」の暖簾をくぐった。 焼肉もホルモンも、今夜の胃には少し重い。求めていたのは、酔いをなだめ、少しばかり正気を取り戻させてくれるもの。ただ、それだけだった。 カウンターに腰を下ろすと、厨房の奥から漂ってくる香りが、じわじわと身体の奥に染みこんでくる。かすうどん。大阪の夜に生きる者なら、一度は通る“儀式”のような一杯。 やがて、湯気を立てながら、それは静かに目の前に置かれた。 レンゲでまず一口、黄金色のスープをすくう。油かすのコクが溶け出したその汁は、どこか懐かしく、そして不思議と品がある。深夜の街に身を置く人々の疲れや酔いを、すべて受け止めるような温かさだ。 麺を啜る。柔らかすぎず、弾力もありすぎず。絶妙な塩梅で、ほどけていくように喉を通る。やたらと主張しすぎることもなく、ただ静かに、己の役割を果たしている。 時折顔を覗かせる青ネギが、またいい。色味も香りも、さりげないアクセントとして器の中で踊っている。 「飲み干すなよ」と、どこかで聞いた声が脳裏をよぎったが、気づけば器の底が見えていた。アルコールの酔いがゆっくりと引いていく。だが、完全に覚めたわけではない。あれはきっと、“人の温度”だった。 夜の街を歩いていると、ふと「何をやっているんだろうな」と思う瞬間がある。だが、かすうどんのようなものが、そこにあるだけで「まあ、いいか」と思わせてくれる。今夜も、この街にいていいんだと。 「ごちそうさん」と小さく呟いて、俺はまた夜のなかへと戻っていった。梅田の街は、まだ夢の途中だった。

2025/07訪問

1回

餃子酒場 ぴたり アメ村店

大阪難波、なんば(大阪メトロ)、四ツ橋/餃子、居酒屋、日本料理

3.08

16

¥2,000~¥2,999

-

定休日
火曜日

夜の点数:3.3

大阪・アメリカ村の雑踏を抜けた先に、その餃子酒場はあった。まるで都会の喧騒の中にぽっかり空いた小さな熱帯の島のように、赤ちょうちんが灯り、うっすら漂う香ばしい油の匂いに引き寄せられるように、ふらりと店の暖簾をくぐった。  「餃子酒場 ぴたり アメ村店」。名前からして冗談のような、しかし妙に覚えやすい店だ。まだ夜の帳も降りきらぬ頃だというのに、店内はすでに客で賑わっていた。二人連れ、三人連れ、男女入り混じり、笑い声とビールの泡が天井に届きそうな勢いで立ち上っていた。  そんな喧騒の中、僕はといえば一人。端のカウンターに腰を下ろし、ひとまず生ビールを注文する。冷たいジョッキが手元に届いたそのとき、店員の若者が声を張り上げた。「いらっしゃいませーっ!」と、まるで舞台の幕が上がるような勢い。ここでは、料理だけでなく空気まで熱々に提供されるらしい。  まずは「肉汁餃子」。熱を帯びた鉄皿の上で、ぷっくりと膨らんだ餃子がジュウジュウと音を立てる。箸でつまむと、皮がほんのわずかに抵抗し、その中から熱い肉汁がはじけるように飛び出す。やけどを警戒しつつも、口に運ぶと、これはたまらない。肉の甘味、ニラの香り、皮のパリッとした焦げ目。そのすべてが一体となって舌を包み込んでくる。これこそ、男一人の夜にふさわしい「孤高のご馳走」だ。  続いて「しそ餃子」。こちらは打って変わって清涼感に満ちている。しその香りが口の中を通り過ぎた瞬間、春先の山道を歩くような錯覚に陥る。さらに「春菊爆弾」。名前の通り、一口頬張ると春菊の青々とした風味が舌を貫き、なんとも言えぬ刺激が広がる。苦みと旨みが交差し、ビールが一層うまくなる。  そして最後に注文したのが「激辛麻婆豆腐」。これはある種、挑戦だった。唐辛子の赤が器いっぱいに広がり、その表面にはラー油が油膜のように漂っている。スプーンで掬うと、ドロリとした豆腐と挽肉が混ざり、舌に乗せた瞬間、火が走る。咳き込みそうになる辛さ。しかしその奥に、しっかりとしたコクがある。舌を刺すような刺激の向こうに、なぜか癖になる旨さが潜んでいた。  ハイボールに切り替え、喉を潤す。ふと周りを見れば、どのテーブルも楽しげな声で満ちていた。恋人同士、友人同士、仕事帰りの同僚たち。誰もが誰かと一緒に、餃子と笑いを分け合っている。  その中で、僕は一人だった。けれど不思議と寂しさはなかった。店の熱気、店員の威勢の良さ、皿の上の料理たちが、まるで「よく来たな」と声をかけてくれているような気がしたのだ。  一人で来る店も悪くない。むしろ、こういう場所でこそ、自分と向き合える。黙って餃子を頬張り、黙って酒を飲む。ただそれだけの時間が、人生を豊かにする。  「ぴたり」という名の通り、今夜の僕には、この店がぴたりと合っていた。

2025/07訪問

1回

無添くら寿司 新世界通天閣店

新今宮駅前、動物園前、恵美須町/回転寿司

3.05

39

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-

昼の点数:3.2

通天閣の足元に広がる昭和レトロな町並みに溶け込むように、「無添くら寿司 新世界通天閣店」がある。観光客と地元の人々が入り混じるこの賑わいの中、今日は子ども二人を連れて、寿司を囲む家族の時間を過ごした。 子どもたちのリクエストは、開口一番「まぐろ!」。赤身、中とろ、漬け、ネギトロと、まぐろ尽くしで目を輝かせている姿を見て、こちらまで嬉しくなってしまう。回転レーンに流れてくる皿を前に、ひと皿、またひと皿と楽しそうに手を伸ばす姿に、成長と無邪気さの両方を感じた。 僕はというと、まずはビールで一息。喧騒の中にあっても、泡立つグラスの一口目は、やはり格別だ。喉を潤したその瞬間に、ふと、「こういう普通の時間こそが、一番の贅沢なのかもしれない」と思う。 無添というだけあって、素材の味わいはシンプルでありながら安心感がある。子どもにも安心して食べさせられる、という親の目線にもきちんと応えてくれるのがありがたい。 皿を5枚入れると抽選が始まるビッくらポン!も、子どもたちにとっては小さな冒険のようで、「当たれ〜」と念じる姿もまた微笑ましい。 寿司を囲み、笑い合いながら箸を伸ばす。新世界のど真ん中で、ほんの少しだけ日常を忘れ、でも日常の大切さをかみしめる――そんな晩ごはんだった。

2025/07訪問

1回

ニュージャパン 梅田 レストラウンジ

中崎町、東梅田、大阪梅田(阪急)/食堂

3.21

28

-

-

定休日
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夜の点数:3.2

予定していたホテルの予約を失念したのは、言ってしまえば自分のうっかりだ。ただ、その“うっかり”が思いもよらぬ体験を呼び寄せてくれることがある。梅田の夜。駅から少し歩き、ネオンと雑多な喧騒の狭間に、その場所は静かに佇んでいた。 「サウナ&カプセル ニュージャパン」。 男たちの戦場のようでありながら、同時に癒しの殿堂のようでもある不思議な空間だ。決して新しくはない。しかし古びた革ジャンのような味わい深さがある。何より、ここには“泊まる”だけではない、もうひとつの「夜を過ごす」選択肢がある。 受付を済ませてロッカーへ向かい、備え付けの館内着に袖を通す。 身体をサウナに預ける前に、まずは一杯と決めていた。 食堂の片隅、ビールのグラスを傾ける。冷たい泡が喉を通り抜け、体中に「今夜はもう、ここでいいんだ」と言い聞かせてくれる。周囲の男たちもまた、思い思いのスタイルで夜を迎えようとしていた。 サウナ室に入る。 最初の高温室は、乾いた熱気とともに心のざらつきを溶かしていくようだった。誰とも話さない、ただ汗を流す。その沈黙が、むしろ贅沢だった。 滝のように流れる水風呂に肩まで浸かると、思わず小さく声が漏れる。 「はぁ……」 きっと今夜、どこかのホテルのベッドでは得られなかったものだ。 ガーデンデッキで横になり、夜空を見上げる。 虫の声も、車の音も、すべてが遠くなっていく。 サウナで整う、という言葉があるが、それはただ身体が爽快になるというだけの意味ではない。人生の歯車の噛み合わせが、少し戻るような感覚すらある。 深夜。 館内の灯りは穏やかに落ち、静寂が支配する。 眠る前にもう一杯、ビールを飲もうかと思ったが、やめておいた。 代わりに、冷たい麦茶を口に含みながら、ふと思う。 —ホテルの予約を忘れたこと。 それすら、何かに導かれていたのかもしれない、と。 そして、仮眠室へ。 照明はやや落とされ、リクライニングチェアがずらりと並んでいる。 隣の誰かの寝息を背に、目を閉じる。 やがて静かな眠気が、まるで波のように身体を包み込んでいく。 —サウナの夜は、こうして幕を下ろした。

2025/07訪問

1回

ドトールコーヒーショップ 近鉄難波ビル店

大阪難波、なんば(大阪メトロ)、JR難波/カフェ

3.06

26

~¥999

~¥999

定休日
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昼の点数:3.2

大阪・難波。地上では雑踏が鳴り響き、騒がしさが日常に溶け込んでいるこの街で、ふと私は地下へと足を向けた。まるで喧騒から逃れるための避難所のように──そう、そこにはドトールコーヒーショップ近鉄難波ビル店があった。  階段を一段ずつ下りるたびに、空気の密度が変わっていく。都市のざわめきが次第に遠のき、代わりに静けさと安堵が身体を包む。地下という空間には、地上とは異なる独特の安心感がある。閉じられた空間ゆえの静寂、そしてどこか包み込まれるような温度。私はその空気に身を任せながら、扉を押し開けた。  地下にあるこのドトールは、想像以上に奥行きがあり、窮屈さを一切感じさせなかった。整然と並ぶテーブルと椅子、所々に設けられた仕切り──まるで仕事に没頭するために設計されたワークスペースのようだった。スーツ姿のビジネスマンがパソコンに向かい、ひとりの若い女性が静かに読書をしている。みな、自分だけの時間に没頭していた。  ブレンドコーヒーを注文し、私は壁際の席に腰を下ろした。周囲の会話は低く、ざわつきも最小限に抑えられている。それが心地よいBGMとなり、思考の流れを妨げることはない。ここでは“誰かの目”というものが存在しない。まるで自分が無名の旅人となって、都市の地下にひっそりと潜り込んでいるような気分だった。  電源コンセントがある。Wi-Fiも安定している。パソコンを広げ、仕事の資料を開いた瞬間、私の内側のスイッチが入った。集中力が研ぎ澄まされていく。地下にいるというのに、空気は重くない。むしろ、地上の浮ついた空気よりもずっと落ち着いている。私はひとつ、またひとつと書類を片づけていった。  店内の照明はやや控えめで、それがかえって集中を助けてくれる。派手さはない。だが、その控えめな明るさが、どこか誠実で、やさしい。長時間いても疲れを感じさせないのは、この絶妙な設計ゆえかもしれない。  気づけば1時間以上が経っていた。私は手元のコーヒーに目をやる。まだ香りが立っている。温かさも残っている。そういう小さな“丁寧さ”が、この地下の店の魅力なのだろう。地下にあるからこそ、外界から隔絶された空間として、そこに“働く者の静寂”が宿っていた。  私は静かに席を立ち、レジ横で一礼し、階段を上った。再び地上の喧騒が耳を打つ。だが、心の奥には、あの地下の静けさがまだ余韻として残っている。それが何よりの証だった。  ──ドトールコーヒーショップ近鉄難波ビル店。そこは単なるカフェではなく、“働く旅人”が一時の安らぎと集中を得る、地下の秘密基地だった。

2025/07訪問

1回

ゼッテリア 天王寺駅北口店

天王寺、天王寺駅前、大阪阿部野橋/ハンバーガー

3.05

24

~¥999

~¥999

定休日
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昼の点数:3.1

旅の途中で、ふと立ち寄った町に、特別な理由もなく吸い寄せられるように足を運ぶ喫茶店がある。 今朝、天王寺の駅前に降り立ったとき、ぼくは無意識のうちにその名を探していた。ゼッテリア。派手でもなく、老舗の風格があるわけでもない。だが、どこか懐かしさを感じさせるその名前が、心のどこかに引っかかっていたのだ。 まだ朝の光がビルの隙間を縫うように射し込む時間帯。駅からすぐの交差点を渡り、エスカレーターを上がると、その店はある。ガラス越しに店内を覗くと、まばらな客が黙々と朝食をとっている。誰もがそれぞれの時間を過ごしているようで、しかし、どこかに共通する静けさがある。 ぼくは入口でメニューを眺め、しかし心はすでに決まっていた。アイスコーヒーを一杯。それだけでよかった。 朝食をとるにはまだ胃が目覚めておらず、しかし身体は何かを求めていた。冷たさ。苦味。覚醒。 トレイを持ち、空いている窓際の席に腰を下ろす。目の前には、ガラス越しに見える天王寺の街。 ビルとビルの間から、まだ眠りきれていない空が見える。コーヒーのカップに指を添え、ひとくち。 冷たい液体が喉を通り抜けるたび、頭の中の靄が晴れていくような気がした。 苦味は控えめで、だが芯のある味だった。 コンビニコーヒーのような無機質さではない。どこか、昔ながらの喫茶店の味を思わせるような、ほんの少しだけ「甘さ」を想起させる余韻がある。 この場所で、こうしてアイスコーヒーを飲んでいると、旅の途中にいる実感がふと湧いてくる。 天王寺という街が持つ雑多な空気と、人の気配と、しかしその中にある一瞬の静寂が、心地よい。 横の席では、年配の男性が新聞を広げていた。向こうのテーブルでは若い女性がスマートフォンをいじりながらサンドイッチをかじっている。皆、それぞれの朝を過ごしている。 しかし、その空間のなかで、ぼくはぼくだけの「朝」を見つけていた。 旅とは、特別な出来事の連続ではなく、こうした何気ない一瞬にこそ宿るものだ。 それを、天王寺のゼッテリアのアイスコーヒーが、教えてくれた気がした。 もうひと口、コーヒーを飲む。 カップの中の氷が、静かに溶けてゆく音が、かすかに耳に届いた。 それはまるで、時間が少しずつ、優しく進んでいることを知らせてくれるようだった。

2025/07訪問

1回

珍竹林 なんば店

なんば(大阪メトロ)、大阪難波、難波(南海)/居酒屋

3.37

113

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
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昼の点数:3.1

 難波の街は、朝からざわついていた。雑多な人の流れ、飛び交う関西弁、鳴り響く信号音──そんな中に身を置くと、東京で張り詰めていた自分の感覚が、ふと緩むのを感じる。  昼時を迎え、私は「珍竹林 なんば店」に足を運んだ。地上の喧騒から一歩退いた路地裏、和食の暖簾がゆらりと揺れていた。中に入ると、どこか懐かしさの漂う空間が広がっていた。年季の入った木のテーブル、少しざらついた感触のメニュー、そしてどこか人情の匂いがする空気。  私が頼んだのは、豚汁定食だった。大きめの器に盛られた具だくさんの豚汁は、熱々で、味噌の香りが立ち上がる。大根、にんじん、ゴボウ、そして柔らかな豚肉──どれも丁寧に煮込まれていて、出汁の奥行きが舌にじんわり染みわたる。ご飯も、漬物も、決して派手ではないが、真っ当で、まっすぐな味だった。身体が喜んでいるのがわかった。  そうして食事を進めていたときだった。一人の年配の男性が、入り口からゆっくりと入ってきた。杖こそついていなかったが、どこか足取りが危なげで、目の動きもきょろきょろと落ち着かない。  カウンター近くに立ち尽くした彼は、目の前のタブレットに視線をやると、「これ、どないして注文するんや……わからん」と小さくつぶやいた。それは決して怒鳴り声でも、威圧でもなかった。だが、彼の声に、誰も反応を示さなかった。  店員は、厨房の中で忙しそうに動いていた。声は届いていたはずだ。なのに、彼らは目も向けず、そのまま業務を続けていた。私は、一瞬、東京の昼下がりのチェーン店の風景を思い出した。どこか冷たく、無関心な都市の空気。  だが、ここは大阪だった。  隣の席に座っていた中年の男性が、箸を置いて、すっと立ち上がった。「兄ちゃん、わからへんの? ほな、ワシがやったるわ」そう言って、お爺さんのそばに行き、タブレットの使い方を丁寧に教えはじめた。指でスクロールしながら、「これがメニューや。押したらええだけやねん」と説明する様子は、まるで昔からの知り合いのようだった。  お爺さんの顔が少しずつ和らいでいった。そして「すまんな」と小さく礼を言うと、男性は「気にせんでええわ、こんなん誰でも最初はわからんて」と笑った。その笑顔に、私は心を打たれた。  こういう光景を、東京ではあまり見ない。人と人との距離が遠く、効率ばかりが優先され、無言の壁がいつの間にか築かれてしまう。  大阪には、まだこうした人間の温度が残っている。  だが、同時に私は少しだけ残念にも感じた。店員が、ほんの一歩だけ踏み出せば、もっと心地よい空間になっただろう。たとえば「お声かけましょうか?」のひと言があれば、お爺さんは戸惑わずに済んだし、店の印象もより温かいものになったはずだ。  それは、サービス云々ではなく、空間全体の「余白」に関わる問題だと思う。大阪の良さは人の情にある。ならば、店としてもその精神を少しだけ意識してもらえたらと、願わずにはいられなかった。  私は最後の一口の豚汁をすすりながら、あの光景を胸の中で反芻した。スープの熱が喉を通り、胃に落ちると、どこか心が静かに整っていく。  珍竹林の豚汁は、確かに旨かった。だがそれ以上に、この街の「人のぬくもり」が、今日という一日の記憶を、より鮮やかにしてくれたのだ。

2025/07訪問

1回

マクドナルド JR難波駅前店

JR難波、大阪難波、なんば(大阪メトロ)/ハンバーガー

3.07

57

~¥999

~¥999

定休日
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夜の点数:3.0

夜の難波。 人波がやや落ち着きを見せ始めた午後八時半、僕はJR難波駅前のマクドナルドの自動ドアを押した。 外では夜行バスの乗り場へと急ぐ人々の姿。東京行き、広島行き、名古屋行き。行き先は違えど、どこか皆、同じような疲労と期待を抱えているように見える。 僕もその一人だ。 これから東京へ向かう夜行バスに乗る。仕事と夢とを半分ずつ抱えた、いつもの気まぐれな旅である。 ただ、出発までのわずかな時間をどう過ごすか――それは旅人にとって、小さな儀式のようなものだ。 僕はカウンターで「アイスカフェ・オ・レ」と「三角チョコパイ」を注文した。 冷たい飲み物と、温かい甘味。矛盾したような組み合わせが、なぜか今の気分にしっくりくる。 二階席へ上がる。窓際の席から見下ろす難波の夜は、ネオンの光が雨上がりの舗道に滲んで美しい。 テーブルの上に置いたカフェ・オ・レのカップには、白いミルクの層とコーヒーの苦味がゆっくりと混ざり合い、まるで東京へ向かう心の揺らぎを映しているかのようだった。 一口飲むと、冷たさが舌を走り、次の瞬間にほんのりとした甘みが広がる。 チェーン店の味といえばそれまでだが、この一杯がくれる安心感は、旅人にとって何よりの救いだ。 どんな街に行っても同じ味。だからこそ、マクドナルドは「帰れる場所」でもある。 そして、三角チョコパイ。 包み紙を開くと、バターの香りがふわりと立ち上る。 外はサクサク、内はとろり。濃厚なチョコが口いっぱいに広がると、思わず目を閉じてしまう。 一口ごとに、少しずつ、心の緊張がほどけていく。 それはまるで、これから始まる長い夜への小さなご褒美のようだった。 隣の席では、学生らしき若者たちが笑いながらスマホの写真を見せ合っている。 一方で、奥の席にはトランクを抱えたビジネスマンが、黙々と資料をめくっている。 この店は、不思議と人生の断片が交差する場所だ。 一杯のカフェ・オ・レを挟んで、夢も、現実も、そして旅立ちも、みんな同じテーブルに座っている。 時計を見ると、出発まであと20分。 紙コップの底に残った氷がカランと音を立てた。 僕はその音を聞きながら、深呼吸をする。 旅の前に味わうこの瞬間――それは、都会の喧騒の中で唯一、静寂が宿る時間かもしれない。 外へ出ると、夜風が頬を撫でた。 さっきまでの温かいチョコの余韻が、まだ口の中に残っている。 その甘さを携えて、僕はゆっくりと夜行バスの停留所へ歩き出した。 ――旅の始まりには、いつも小さなカフェ・オ・レの香りがある。

2025/11訪問

1回

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