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115 件を表示 15

骨付鳥、からあげ、ハイボール がブリチキン。 浅草橋店

浅草橋、馬喰町、両国/居酒屋、からあげ、カレー

3.04

44

¥2,000~¥2,999

-

定休日
-

夜の点数:4.9

浅草橋という街は面白い。ビルと高架が幾重にも影を落とし、隅田川の風が道路の隙間をすり抜けていく。観光客が足早に通り過ぎる浅草とは違い、この街には、夜になると独特の静けさが満ちてくる。そんな町角に、ぽっと明かりをつけて迎えてくれる店がある。「骨付鳥、からあげ、ハイボール がブリチキン。」浅草橋店だ。 店の前に立つと、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。くたびれた一日の終わりに、理屈ではなく本能が「ここでいい」と決めてしまう。引き戸をくぐると、店長が笑顔で出迎えてくれた。その笑顔は作り物ではない。常連にも一見にも同じ温度で向き合い、気さくに声をかけてくれる。愛想よく、しかし距離を詰めすぎない。酒場の空気をよく知った接客だ。 テーブルにつき、まずはハイボールを頼む。氷がグラスに触れてカランと鳴ると、それだけで肩の力が抜けていく。いつもの仲間とグラスを軽くぶつけ、「おつかれ」と小さな声を交わせば、それはもう宴の始まり。 最初に届いたのは名物の「がブリチキン」。からあげとは呼ばない。がぶり、といくための鶏だ。衣は薄く澄んだ黄金色。噛めば肉汁が滲み出し、舌に伝わる熱い衝撃に思わず口角が上がる。ブラックペッパーの刺激がハイボールとの相性を完璧に演出してくれる。ハイボールを流し込むたび、次のひとつを口に運ばずにはいられない。 そして、主役がやってくる。親鳥の骨付鳥。皿の上では艶やかな肉が堂々と構え、食べる者に覚悟を促す。若鳥にはない筋肉の反発。噛みしめると、じんわりと溢れる旨味が歯に、舌に、記憶に刻まれる。脂は控えめだが味は鋭い。長く生きて溜め込んだ力強さが、この一皿には宿っている。 店内では、仕事帰りの客たちがそれぞれの夜を語り合っている。愚痴も夢も、鶏と酒がすべて受け止めてくれる。この店には、そういう懐の深さがある。ふと視線を感じて振り向くと、店長が気にかけるように目を配っている。グラスが空になりそうなら、聞こえるか聞こえないかの声で「次、どうしましょう?」と笑う。こういう心地よさが、客を次の再訪へと導くのだ。 三杯目のハイボールに差し掛かるころ、笑いは大きく、話はくだらなく、夜そのものがやわらいでいく。仲間が言った。「せっかくだから、これでもかってくらい食おうぜ」。それは、ただの冗談ではなかった。唐揚げを追加し、骨付鳥をまた一本。限界を忘れた夜は、とても自由だ。 噛むほどに味の増す親鳥に、自分たちの人生が重なった。失敗や疲れを抱えても、こうして笑っていられる。ハイボールの泡が、今日を肯定してくれる。そんな瞬間の積み重ねこそ、きっと幸せというやつなのだ。 店を出る頃、浅草橋の夜風が少し冷たくなっていた。背中を押すのではなく、肩をそっと包み込むような、優しい風だ。店長の「ありがとうございました、またぜひ」が背中に追いかけてくる。その声は不思議と、自分の明日を元気づけてくれる。 鶏と酒と、いい人。 それさえ揃えば、夜はごちそうになる。 ここは、そんな夜を保証してくれる場所だ。

2025/10訪問

1回

タイランド

錦糸町/タイ料理、カレー

3.49

524

¥2,000~¥2,999

~¥999

定休日
月曜日

夜の点数:4.5

ドアを押した瞬間、湿った夜風の向こう側にあるはずのバンコクが、店内の温度と香りに置き換わって僕らの前に立ち現れた。レモングラスの青い香気、炒め油に溶けたニンニクの甘み、ナンプラーの潮っぽい気配。カウンター越しに「サワディーカー」と柔らかな声が落ちる。スタッフは皆タイ人らしく、厨房では中華鍋が火柱を吸い込み、金属の音を刻む。ここは「タイランド」。名は簡潔だが、器の中身はどこまでも濃い。 まずは仕事のパートナーとシンハーで乾杯する。泡は軽いのに、喉に当たるところで麦の芯がきちんと鳴る。ビールを迎えるための最初の皿に、青パパイヤのソムタムを頼んだ。臼で叩かれた唐辛子は直線的で、ライムの酸とタマリンドの甘酸っぱさがその刃を丸くする。千切りの果肉はまだ若く、硬質な歯触りが舌に拍子を与える。辛い、しかし止まらない。ビールがみるみる減るのは、料理の構成が正しい証拠だ。 続くパッタイは、甘さに逃げない。掌の熱で温まったライムを絞ると、米麺の輪郭が一段くっきりし、干し海老とピーナッツの香りが背骨になる。卵は絡めるだけに徹し、もったりさせない。強火のまま駆け抜けるタイの屋台の速度感が、そのまま皿の熱に写り込んでいる。ガパオは、名ばかりのバジル炒めでない。ホーリーバジルの辛香が立ち、粗く刻んだ鶏肉にナンプラーの塩が深度を与える。目玉焼きの縁はかりっと焦げ、黄身を崩すと全体がひとつの料理へと合流する。白飯の湯気に顔を近づけると、香りが一瞬甘くなるのが嬉しい。 トムヤムクンは、期待通りに混沌である。レモングラス、カー(ガランガル)、バイマックルーが三位で香りを支え、唐辛子の鋭さをココナツは一切手伝わない。澄み気味のスープに複数の光が差し込み、海老の殻から滲む甘みが、最後に静かな余韻を置いていく。辛・酸・塩の三角形が美しく均衡しているから、匙が止まらない。ここにだけは、話題を料理に譲る沈黙が生まれる。 そして締めのグリーンカレー。緑はやさしい色だが、油断は禁物だ。青唐辛子の芯は真っ直ぐで、ココナツミルクは盾ではなく媒介だ。鶏の旨味がスープに融け、タイ茄子が種の苦みで格を上げる。ジャスミンライスを浸せば、米自体に香りの回路が開き、匙とレンゲの往復に迷いがなくなる。甘さ、辛さ、香り、温度。どれもが半歩ずつ前に出て、互いを押し立てる。 細かなところが良い。スプーンは平たい金属で、麺も米も掬いやすい。卓上の砂糖・酢・ナンプラー・唐辛子、それぞれが「個別の主張」ではなく「微調整」のために用意されている。厨房から流れるタイポップスは控えめで、会話の余白を侵さない。スタッフの視線は常に客席の先を見ていて、水が減る前にグラスが満たされる。作り笑いではない、土地の体温のような笑顔がある。だからこちらも自然と頷きで返す。 二本目のビールはチャーンに替えた。麦の輪郭が少し丸く、辛味の皿に寄り添う包容力がある。仕事の話は次第に具体性を帯び、しかしどこか流れが滑らかだ。きっと舌が納得しているからだろう。良い店は、議論の角を一本ずつ削ぐ。ここはまさしくそういう店だ。 マンゴーと餅米のカオニャオ・マムアンで口を洗う。熟れた果実の香りに、ココナツの甘みが細く橋を架ける。炊き上げの加減が良く、粘りが重たくならない。辛さの旅は、こうしてふいに熱帯の夕暮れに着地する。 店名は「タイランド」。単純明快な旗を掲げながら、皿の精度は驚くほど緻密だ。ここには観光のタイではなく、生活のタイがある。強火の理、香草の秩序、塩と酸の節度。僕らはグラスを合わせ、泡の弾ける音を合図に再び箸を進める。仕事のパートナーと二人、腹ではなく心の方が先に満たされていくのを感じた。遠くへ行かなくても、旅は始められる。今夜、その方法をこの店が教えてくれた。再訪確定。

2025/09訪問

1回

バンコク屋台カオサン イイトルミネ新宿店

新宿、新宿三丁目、新宿西口/タイ料理、アジア・エスニック、カレー

3.47

244

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-

昼の点数:4.1

新宿駅の雑踏を抜けると、 ふと遠い国の湿った風が頬に触れたような錯覚を覚える時がある。 ビルの隙間を縫って、どこからかスパイスの匂いが流れてくるのだ。 ああ、今夜はどうしてもあの香りに呼ばれている—— そんな気配がして、イイトルミネの奥へと足が向いた。 「バンコク屋台カオサン」。 店名を見た瞬間、あのカオサン通りの喧噪が脳裏によみがえる。 バックパッカーたちの笑い声、 屋台の鉄板が鳴らす軽快な音、 夜風に混じるライムとパクチーの刺激的な香り── そんな旅の断片を思い出しながら、扉を押した。 中に入れば、そこはまるで新宿という現実から一段降りた“異国の溜まり場”のようだ。 赤いチェックのテーブルクロス、 壁に貼られたタイのビール広告、 そしてどこからともなく漂うココナッツミルクの甘い香り。 旅心をくすぐるには十分すぎる演出に、思わず息がほどけていく。 今夜は相棒と二人、 仕事の話から人生の話へ、 そしていつの間にか笑い話に変わっていく、 そんな肩の力が抜けた時間を久しぶりに味わおうと思った。 最初に運ばれてきたのは、 真っ赤なスープの表面がほのかに煌めくトムヤムヌードル。 レンゲを近づけただけで、 レモングラスと唐辛子の鋭い香りが鼻腔を刺激する。 その匂いを吸い込んだ瞬間、 旅先で灼けた陽光の下で食べた屋台の一杯がフラッシュバックする。 スープを口に含む。 荒々しい辛さの中に、ふっとした甘みが潜んでいて、 まるで旅の途中でふと出会う優しさのようだ。 麺をすすれば、パクチーの青い香りがふわりと鼻を抜け、 上に乗ったカリッと焼けた豚肉が、 この一杯をしっかりした“食事”として成立させている。 スパイスが体の奥に火を灯すような感覚が心地いい。 そして横に控えていたジャスミンライス。 日本の米とは違う、細長い粒が立つタイ米。 香り高く、さらりとしていて、 スプーンで口に運べばほんのりとした甘さが広がる。 辛さをまとった口の中を、 この一口がそっと整えてくれる。 料理の主役ではないが、旅には欠かせない“友人”のような存在だ。 さらにテーブルに置かれた、 淡い緑のスープが印象的なグリーンカレー。 茄子がとろりと崩れ、 ココナッツミルクの濃厚さの中にピーマンの爽やかさが混ざる。 鶏肉の柔らかさも申し分なく、 辛さと甘みの調和が見事だった。 スプーンを口に運ぶたび、 タイの湿った夜風を背中に受けながら食べた記憶が蘇ってくる。 そして、忘れてはいけない相棒── シンハービール。 キンと冷えたグラスに注ぐと、 黄金色の泡が静かに立ちのぼる。 喉を鳴らして流し込めば、 たちまちスパイスの熱がすっと引き、 代わりに透明な爽快感が全身を駆け抜ける。 この一瞬のために辛い料理を選んだのだと、 そんな気分にさえなる。 気づけば相棒と二人、 仕事で張り詰めていた心の糸がふっと緩んでいた。 新宿の喧騒を忘れ、 ただテーブルの上に並ぶ料理だけと向き合う、 そんな素朴で贅沢な時間。 旅に出かけなくても人は旅の続きを味わえるのだと思わせてくれる一軒だった。 店を出ると、外は夜の新宿。 だがどこか心の中は軽く、 ほんの少しだけ異国の風をまとっているような気がした。

2025/11訪問

1回

ダリカレー

西武新宿、新宿西口、新宿三丁目/バー、カレー

3.15

25

¥2,000~¥2,999

-

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

夜の点数:4.0

深夜を越え、街の灯りが少しずつ色を変えはじめる頃、歌舞伎町という街は妙に静かになる瞬間がある。夜の喧噪が一度吐き出され、朝の気配がまだ追いついてこない“間(ま)”の時間。そんな隙間にふらりと入り込むと、酔いのまま身体が勝手に導かれるように一軒のカレー屋に辿りつく。それが「ダリカレー」だった。仲間と朝まで飲み歩き、腹の底に何か温度のあるものを落とし込みたくなる、そんなタイミングだった。 銀色のステンレス皿に広がるカレーは、赤い。いや、“赤い”という言葉よりも、もっと血の通った色をしている。照明のせいでさらに妖しく輝いて見えるが、スプーンを入れた瞬間、その赤の奥に眠っていたスパイスの香りが立ち上がった。酔いが一瞬だけ醒める。まるで、どこか遠い国の市場で立ち止まったときに感じる、あの乾いた香辛料の熱さに似ていた。 口に運んでみると、最初にくるのは鋭い刺激ではない。むしろ、柔らかな旨味がじわりと広がり、遅れてスパイスの刃先が舌の横をスッとかすめていく。そのバランスが絶妙だ。深夜明け方という時間帯にちょうどいい。重すぎず、しかし軽くもない。酔った胃袋を責め立てることなく、そっと目を覚まさせる。“ギリギリの優しさ”を持ったカレーと言ったらいいだろうか。 ライスの白さがまた、この赤を引き立てる。スプーンで両方をすくい上げた瞬間、まるで赤と白のコントラストがひとつの物語のように見えた。夜と朝の境界線。その曖昧な時間を、そのまま皿の上に写し取ったようだった。 そして、横に置かれたグラス。氷の音が、静かにチリンと鳴る。その響きがこの一杯に拍子を与える。冷たさの中にわずかに残る、先ほどまでの酒の余韻。だがそれすらも、このカレーの熱がゆっくりと溶かしていく。飲み歩いた歌舞伎町の夜が、この皿の前で一本の線になっていくのを感じた。 周囲を見渡すと、店内の照明はどこかレトロで、少し怪しげで、それでいて落ち着く色をしている。多くの人が素通りしていく歌舞伎町の朝方で、ここだけは時間が止まったような感覚があった。人の気配が薄れるこの街で、ときどきこうした“オアシス”のような店に出会う。その意外性が、また旅のようで、面白い。 カレー自体の味はシンプルだが、決して凡庸ではない。赤いルーの中に潜む複雑さは、深夜から朝へと繋がる人の心の揺らぎに似ている。刺激と温もり、醒めた感覚と続く酔い。そのどちらも抱えて歩く歌舞伎町の夜明けには、実にしっくりくるのだ。 仲間と笑いながらスプーンを動かし、気づけば皿はきれいに空になっていた。味そのものよりも、「どんな時間に食べたか」「誰と食べたか」が記憶に深く刻まれる料理がある。ダリカレーのそれは、まさにそういう類の一皿だった。 歌舞伎町が朝日に染まり、街の空気が変わっていく。眠りにつく者と、これから一日を始める者。そんな人々が交差する街で、このカレーは淡々と、しかし確実に、夜をまとめあげる役目を担っているように見えた。 酔いのなかの一杯だったからこそ、忘れがたい。 そしてきっと、次にまた朝まで飲んでしまったら、同じようにこの赤いカレーを求めてしまうのだと思う。

2025/12訪問

1回

松屋 大久保2丁目店

東新宿、西早稲田、新大久保/牛丼、カレー、食堂

3.03

26

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.6

松屋の新メニュー「肉すい定食」を食べた日、なぜか胸の奥が妙に静かだった。 昼下がりの大久保二丁目。雑多な街の喧騒のなかで、ふと吸い込まれるように入った松屋。店の前には「新発売 肉すい定食」の赤い幟が風にたなびいていた。こういう時の直感は、だいたい当たる。 カウンターに腰を下ろすと、厨房の奥からジュウジュウと肉の焼ける音。鉄板の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。食券を出して、湯気の向こうに見える店員の無駄のない動きに、なぜか安心感を覚える。松屋というのは、チェーンでありながら、どこか人間臭い温度が残っている。 ほどなくして運ばれてきたのが「肉すい定食」。 透明な出汁に浮かぶ薄切り牛肉。白ネギの香りがふっと立ちのぼる。その横に艶やかな白飯と、生卵。関西風の澄んだスープが、まるで京都の料亭で出てきそうな静謐さをまとっているのに、どこか家庭的な温もりもある。 一口すすった瞬間、驚いた。 だしの旨味が、舌の上で静かに広がっていく。甘くもなく、しょっぱくもない。牛の脂がうっすらと溶け込んで、まるで冬の朝の白い息のように、儚く消えていく。思わず箸が止まらない。気づけば息継ぎも忘れて、熱々の肉を喉にかきこんでいた。 「うまい」と言葉に出す暇もない。 噛むたびに、肉の柔らかさと出汁の深みが、心の奥の疲れをほどいていく。日々の喧騒、仕事の重圧、取引先との緊張感。そんなものが一瞬で遠のく。牛肉一枚一枚に、誰かの真剣さが宿っているように感じる。 ご飯を半分ほど残して、スープに卵を割り入れる。 白身がふわりと広がり、黄身がゆるやかに溶けて、出汁の色を淡く変えていく。その美しさに、思わず箸を止めて見入ってしまう。日本人のDNAに刻まれた「だしの風景」が、そこにあった。 最後の一口まで飲み干すと、体の芯からじんわりと温まる。 決して派手ではないが、完成された静かな一皿。 食後の余韻が長く続き、外に出ると大久保通りの喧騒が一瞬ぼやけて見えた。 ふと思う。 「肉すい」とは、ただの出汁料理ではない。 それは、人の疲れや孤独を優しく包み込む日本の食文化の原点のようなものだ。松屋という大衆の食堂が、そんな心の隙間を埋める料理を出してきたことに、少し感動すら覚えた。 食べ終えたあと、胸の中に静かな充実感が残る。 「うますぎて息継ぎせずに一気にかきこんだ」と笑いながらも、どこか自分を見つめ直すような、そんな昼食だった。 大久保二丁目の松屋。 牛めしでもカレーでもない、新しい「日本の味」が、ここには確かに息づいている。

2025/11訪問

1回

松屋 浅草国際通り店

浅草(つくばEXP)、田原町、浅草(東武・都営・メトロ)/牛丼、カレー、食堂

3.04

41

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

夜の点数:3.6

浅草の夜に灯る黄色い看板は、まるで旅人を導く灯台のようだった。国際通りを歩きながら、僕と仲間たちはその光に吸い寄せられるように足を止めた。松屋。誰もが知る牛丼の聖地。その暖簾をくぐった瞬間、甘辛いタレの香りが鼻腔をつきぬけ、胃袋をわしづかみにする。 「牛めし、つゆだくで。」 注文の声はまるで儀式のように響いた。やがてトレーに載せられた一杯の丼。その表面は黄金色のつゆで艶めき、肉と玉ねぎが織りなす風景は、見慣れたはずなのに毎回新鮮な驚きをもたらす。 そこに紅生姜を山のように盛りつける。赤と白と茶色が織り成すコントラストは、まるで浅草寺の提灯のように鮮烈だ。さらに七味を、惜しげもなく振りかける。ひと振り、ふた振り、いや、それ以上。雪崩のように赤い粉が降り注ぎ、丼の景色が一変する。 ひと口すくって口へ運ぶ。米の甘み、肉の柔らかさ、タレの深いコク。そこに紅生姜の酸味が鋭い切っ先のように立ち現れ、七味の辛味が舌に火を灯す。その瞬間、仕事で重く垂れ込めていた疲労が一気に吹き飛んでいく。まるで牛丼が僕の内側からエネルギーを注ぎ込む発電機であるかのようだった。 仲間たちも無言で丼に向かっていた。箸の動きは速く、味噌汁の湯気が静かに立ちのぼる。言葉など要らない。そこには「牛丼」という共通言語があった。空腹を満たすだけでなく、仲間との絆を確かめる場としての丼。それは戦士たちの糧であり、庶民の宝であり、旅人の拠り所でもある。 ふと気づけば、僕は夢中で丼をかき込み、残されたつゆまで一粒の米も逃さず口に運んでいた。最後に味噌汁をすすり、塩気と旨味で締めくくると、体の奥底から「もう大丈夫だ」と囁く声が聞こえる。これ以上の救済がどこにあるだろう。 松屋の牛丼は、単なるファストフードではない。それは日本という国の食文化が生んだ奇跡の一杯だ。高価な料理では決して得られない、即効性と安心感、そして“日常を支える力”。浅草の夜に食べたあの牛丼は、僕にとってまさに生命線であり、希望の象徴だった。 店を出ると、浅草の街はまだ賑わいを見せていた。だが、僕の足取りは軽かった。牛丼の余韻が血となり肉となり、心を奮い立たせていた。松屋 浅草国際通り店――ここはただの牛丼屋ではない。人を生かす「場所」そのものなのだ。

2025/09訪問

1回

松屋 市川店

市川、市川真間、菅野/牛丼、カレー、食堂

3.05

35

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.5

市川駅の北口を出て、風が頬をなでた瞬間、ああ、冬が来たなと感じた。 駅前の通りを歩きながら、吐く息が白く曇る。指先がかじかみ、ポケットの中で手をもぞもぞと動かす。そんな夜、自然と足が向いたのは、いつもの松屋 市川店だった。 寒さが人を呼び寄せるのは、きっと、あの湯気のせいだ。 券売機の前で立ち止まり、迷いなく指が押したのは「チゲ鍋定食」。 心も身体も温めてくれる、この季節の定番。鉄鍋でぐつぐつと煮え立つその音が、何よりのご馳走だ。 店内は思ったよりも混んでいた。スーツ姿のサラリーマン、部活帰りの学生、年配の常連客。みんな黙々と湯気に顔を向け、冬の夜を乗り越えるように箸を進めている。 やがて、目の前にやってきたチゲ鍋は、まるで火山のようだった。 赤く光るスープの中に、豆腐、豚肉、ネギ、そして半熟卵。湯気の奥で卵がとろりとゆらめいている。レンゲですくうと、唐辛子と味噌の香りが立ちのぼり、鼻腔をくすぐる。 ひと口、スープをすすった瞬間、舌の上に広がる辛みと旨み。その奥にほんのりとした甘みが追いかけてくる。思わず「うまい」と小さく声が漏れた。 外の冷気で固まっていた身体が、じわじわと溶けていく。 この瞬間のために冬があるのだと、心のどこかで納得する。 スープを飲み干すごとに、背中に汗がにじむ。鍋から立ちのぼる湯気と、体内から湧き上がる熱が交錯して、自分が湯気の中に溶け込んでいくような錯覚さえ覚えた。 ふと隣を見ると、学生らしき青年がスマホを見ながら同じチゲを食べていた。 「やっぱり冬はこれっすね」と、店員に笑いかけている。 その何気ない言葉に、妙な共感を覚えた。人はきっと、理由なんてなくても温かいものを求める季節があるのだ。 ご飯をスープに少しずつ浸して食べる。 辛さと米の甘みが溶け合って、至福のバランスになる。最後は残りの汁を一滴も残さず飲み干した。 空になった鍋の底に残る赤い模様を見つめながら、どこか満たされたような、静かな充足感が胸に広がった。 外に出ると、冷たい風がまた頬を打った。 だが、さっきまでの寒さとは違う。身体の芯に熱が灯っているから、風がむしろ心地よい。 駅へ向かう途中、ふとショーウィンドウに映った自分の顔が、どこか柔らかく見えた。 松屋のチゲ鍋定食は、ただのファストフードではない。 それは冬の夜に、ひとりの人間を静かに包み込む小さな灯火だ。 寒さに凍える帰り道の途中で、ふと立ち寄ったこの場所が、誰かの一日の終わりを温めている。 そんな当たり前の光景が、この街の冬をやさしくしている気がした。

2025/11訪問

1回

Time is Curry シャポー市川店

市川、市川真間、国府台/カレー、カフェ

3.38

138

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
-

昼の点数:3.5

灼けつくような陽射しが、駅前のアスファルトに容赦なく突き刺さる。市川の午後。ふと足が向いたのは、シャポーの地下、通路の奥にひっそりと暖簾を掲げる「Time is Curry」だった。  いつもならスパイスの香りだけで満ち足りるのだが、この日は違った。胃の奥に確かな渇きがあった。ハンバーグカレー。メニューに目を落とした瞬間、それは一切の迷いを打ち消していた。  ほどなくして運ばれてきた皿からは、蒸気が立ち昇り、スパイスの奔流が鼻腔を駆け抜ける。そして、中央に鎮座するハンバーグ。厚みがあり、ナイフを入れると肉汁が溢れた。それは、まるで炎天下に咲く一輪の花のようだった。  一口、頬張る。辛さのなかにほんのわずかに甘みがあり、それが熱気とともに身体の隅々に染み渡っていく。夏の疲れも、汗ばむシャツも、その瞬間だけはどうでもよくなった。  時間など、どうでもよかった。ただ、スプーンを進めるたびに、心の奥の何かが静かにほぐれていったのだ。 ──Time is Curry。名前の通り、あの一皿に、確かに“時”が宿っていた。

2025/08訪問

1回

松屋 新宿靖国通り店

新宿西口、西武新宿、新宿三丁目/牛丼、カレー、食堂

3.07

69

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

昼の点数:3.3

チゲ鍋定食 — 冬の新宿に灯る、小さな焔(ほのお)をすする 新宿という街は、どれだけ歩いても掴みきれない。 雑居ビルの灯りは眠ることを知らず、道を急ぐ人々は、他人の影とすれ違うたびに自分の輪郭を確かめているように見える。 その靖国通りの、喧騒の真ん中に松屋がある。 派手な街に埋もれるようにして佇む黄色い看板は、旅の途上でぽつりと点った灯りのようで、どこか安心を覚える。 店に入ると、鉄板の匂いと温かい湿気がまとわりつき、外の冷たい風が遠い過去のように感じられる。 ふと、冬の旅で何度も味わった“食堂の匂い”を思い出した。 人がいて、メシがあって、湯気が立ちのぼるだけで、妙に救われる瞬間がある。 今日は迷わずチゲ鍋定食を押した。 それが正解だと、最初の一口をすすった瞬間にわかった。 鉄鍋は真っ赤に燃えた火山のようで、スープがぐつりと音を立てていた。 湯気の向こうに、豆腐が白く沈み、豚肉が軽やかに揺れている。 レンゲでスープをすくい上げると、唐辛子と味噌の香りが同時に立ちのぼり、鼻腔の奥のほうへゆっくりと沈んでいった。 ひと口すすった。 “うまいのなんの” 自然に言葉がこぼれた。 辛味は決して突き刺さるような鋭さではない。 舌の上で燻るように熱を放ち、喉を通った瞬間、静かに身体の中心へ染み込んでいく。 この“染み方”に、旅人は弱い。 ひと口ごとに思考がほどけ、張りつめていた気持ちがゆっくりと緩んでいく。 具材もまた、誠実だ。 豆腐はふわりと柔らかく、辛いスープを吸い込んで、まるで別物のような旨味を纏っていた。 豚肉は脂がほどよく落ち、噛むたびにチゲの香りをはじかせる。 ネギとキムチがスープの隙間に潜り込み、白いご飯を誘う仕上がりになっている。 そのご飯がまた、まっすぐにうまい。 チゲのスープを少しだけ混ぜて食べると、 辛味・甘味・旨味が三重奏のように重なり、冬の夜にぴたりと寄り添う。 気づけば、店内の音が遠くなっていた。 箸の音、どんぶりを置く音、厨房の作業音。 それらが妙に規則的に聞こえる。 新宿の真ん中でこんな小さな静けさに包まれるとは思わなかった。 チゲ鍋は、食べ進めるほど味が変わる。 熱が落ち着くと、尖っていた辛さが丸くなり、味噌の深みだけが残る。 まるで日記の最後の一行だけがやけに心に残るように、後味だけが強い存在感を放つのだ。 食べ終わるころには、外の冷えた空気に戻るのが少し億劫になる。 しかし、扉を押し開けた瞬間に感じた冬の風は、さっきより柔らかかった。 身体の内側で小さな焔が灯っているようで、まっすぐ歩き出せる温度がある。 松屋のチゲ鍋定食は、豪華さとは無縁だ。 だが、旅人に必要なのは往々にして、こういう“素朴でまっすぐな一杯”だ。 どこで食べても同じようでいて、どこか新宿の夜にしか出ない味がある。 食べ終えたあと、胸の奥にわずかな余熱が残っていた。 それは食事というより、冬の夜に灯った一本の道標のようだった。

1回

スパイス ファクトリー ecute品川サウス店

品川、北品川、高輪ゲートウェイ/カレー

3.49

783

~¥999

~¥999

定休日
-サイトの性質上、店舗情報の正確性は保証されません

夜の点数:3.3

品川駅は、いつも人の波が途切れない。 朝のホームには、焦りと眠気と期待が混じり合った匂いが漂っている。 そんな雑踏の中、僕は一瞬の隙を見つけた。 電車の乗り換えでもなく、打ち合わせの時間調整でもなく、 ただひとり、胃の奥に温もりを落とし込みたかったのだ。 駅構内の「ecute品川サウス」に入ると、 通勤客の靴音とコーヒーの香りが交錯していた。 その一角に、小さく光る看板がある。 「スパイス ファクトリー」。 名前の通り、香辛料の工場を思わせるような、刺激と静けさの同居する店だった。 カウンター席に腰を下ろす。 目の前には、スチールの器と香り立つカレー。 僕が頼んだのは「バターカレー」。 どこか懐かしい響きに惹かれた。 旅の途中で食べるカレーには、家庭の味でも、異国の味でもない、 “通過点の味”という特別な位置があると思っている。 スプーンを手に取り、ひと口。 バターの香りが、ふわりと鼻を抜けた。 そのあとを追うように、クミンとカルダモン、 微かなチリの刺激が舌の上に重なっていく。 濃厚でいて、くどくない。 駅という“立ち去る空間”にありながら、 この一皿は「もう少しここに居てもいい」と言っているようだった。 カレーの中には、柔らかく煮込まれたチキンが沈んでいた。 スプーンで軽く押すだけで、ほぐれていく。 肉の繊維が、ルーと一体になって、 喉の奥でふっと溶けた。 口の中には、バターの甘みとスパイスの苦み、 そしてどこかに、焦げた鉄板のような香ばしさが残った。 ふと顔を上げると、店の外を通り過ぎる人々が見えた。 皆、誰かと約束をしているようでいて、 誰にも止められない流れの中にいる。 そんな彼らの背中を眺めながら、僕は思った。 人は誰も、カレーのように混ざり合いながら生きているのだと。 甘さと苦さ、柔らかさと刺激。 どちらか一方だけでは、きっと物足りない。 食べ終わる頃、バターの膜が器の縁に薄く残っていた。 それを見つめながら、 僕は無意識に深呼吸をした。 スパイスの熱がまだ胸の奥に残っている。 その熱は、これから向かう仕事の緊張を少しだけ和らげてくれるようでもあり、 同時に、再び歩き出すための“火種”のようでもあった。 レジで会計を済ませ、再び人の波の中へ戻る。 改札を抜ける頃、 遠くから、もう一度あの店の香りが追いかけてきた気がした。 スパイスの匂いは、人の記憶に深く刻まれる。 あの朝、僕はただカレーを食べただけではない。 品川という街の、ほんの一瞬の優しさを味わっていたのだ。

2025/11訪問

1回

錦糸町小町食堂

錦糸町/食堂、カレー、麺類

3.33

158

~¥999

~¥999

定休日
-

夜の点数:3.3

錦糸町の夜は、どこか湿気を帯びた雑踏の匂いがする。駅前の喧騒を抜けて少し歩くと、小町食堂の暖簾が目に入った。派手さもなく、しかし確かな灯りを灯す店。誘われるように扉を開けると、カウンターの奥から「いらっしゃい」と女将の声が響いた。 壁に貼られたメニューには、どこか懐かしさの漂う文字列が並んでいる。鯖の味噌煮、肉じゃが、焼き鮭……派手なものはない。だが、そこには確かな“帰ってきた感覚”がある。 頼んだのは、ハンバーグ定食と瓶ビール。グラスに注がれた泡の向こうで、少し遅れてやってきたハンバーグが鉄皿の上でじゅうじゅうと音を立てる。ナイフを入れると肉汁が滲み出て、湯気がほほを撫でていった。脇に控えるポテトサラダも、ただの添え物ではなく、しっかりとした仕事がなされている。そういう一皿一皿に、店の矜持が滲んでいた。 隣の席では、作業着姿の男が静かに味噌汁を啜っていた。きっと毎日のようにここに通っているのだろう。そんな顔をしていた。 都会の夜に埋もれそうな自分を、ふとこの小町食堂が引き止めてくれた気がした。飯を食うということ。それは単なる栄養補給じゃない。心の位置を確かめる、静かな儀式でもあるのだ。

2025/08訪問

1回

かのや 新橋駅構内店

新橋、汐留、内幸町/そば、うどん、カレー

3.49

1015

~¥999

~¥999

定休日
-

昼の点数:3.2

新橋の喧騒に背を向けるように、構内の一角にある「かのや」にふらりと足を踏み入れたのは、ちょうど腹の虫がうるさく鳴き始めた頃だった。 自販機の前に立ち、迷わず「鴨汁つけ蕎麦」のボタンを押す。カチリという音とともに食券が吐き出され、それを手にカウンターへと向かう。店員が無言で受け取り、湯気の立つ厨房へと消えていった。まわりには、仕事の合間を縫ってきたのだろう、ネクタイを緩めた男たちが黙々と蕎麦をすする音だけがあった。 やがて目の前に置かれた蕎麦は、艶のある黒褐色で、瑞々しく、凛としていた。鴨の脂が浮かぶ温かい汁の香りが、立ちのぼる湯気に混じって鼻腔をくすぐる。 一口、蕎麦を手繰る。冷たい蕎麦のしなやかな腰と、鴨の旨味が溶け込んだ汁の熱が混ざり合って、口の中に静かな衝撃が走る。まるで、都会の雑踏の中にぽっかりと浮かぶ静かな沼に足を踏み入れたようだった。 鴨は柔らかく、それでいて芯がある。噛むごとに、肉の野性がじんわりと立ち上がり、濃厚な出汁と溶け合う。 気づけば器は空だった。満腹というより、満たされたという感覚が、腹の底にしんと沈んでいた。 新橋の午後は、そのあともせわしなく騒がしかったが、僕の中だけは、しばらく鴨の余韻が静かに鳴り続けていた。

2025/08訪問

1回

CoCo壱番屋 荒川区南千住駅前店

南千住、三ノ輪橋、三ノ輪/カレー

3.06

41

¥1,000~¥1,999

¥1,000~¥1,999

定休日
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夜の点数:3.1

夜の南千住駅前は、昼間の喧噪が嘘のように静まり返っていた。 仕事を終えた仲間と共に、疲労と空腹を抱えて歩いていると、風に乗ってスパイスの香りが漂ってきた。振り返ると、黄色い看板の「CoCo壱番屋」が闇に浮かび上がっている。朝まで営業しているというのが嬉しい。深夜の胃袋に灯をともす数少ない場所だ。 扉を開けた瞬間、カレーの香りが一気に包み込む。 スパイスの刺激と油の香ばしさが混ざり合い、眠気を吹き飛ばした。 テーブル席に腰を下ろすと、仲間が「定番のカツカレーにする」と言う。 僕は迷わず「カレーうどん」に「辛いニンニク」を添えた。 そして、ふと目に留まった「ラッシー」。この組み合わせが、今の自分の体に必要なような気がした。 数分後、湯気を立てたカレーうどんが運ばれてきた。 とろりとしたルウが麺にまとわりつき、スプーンを入れると、黄金色の液体がゆっくりと揺れた。ひと口啜ると、カレーの辛さとだしの旨みが同時に押し寄せ、舌の上で複雑に絡み合う。麺を噛むたびに、疲れがほどけていくのが分かる。 そして、横に添えられた「辛いニンニク」。 一匙口に含むと、まるで火花が散るような刺激が喉を通り抜けた。 瞬間、眠気もだるさも吹き飛び、全身が熱を帯びる。 夜の疲れが、ニンニクの力で逆流していくような感覚。 明日のことなど考えず、ただこの瞬間に生きているという実感があった。 食べ終えたあと、少し汗ばんだ額を拭きながら、冷たいラッシーを手に取った。 白いグラスの中で氷がカランと音を立てる。 ストローを差し込み、ひと口飲む。 ヨーグルトの酸味がふっと舌を撫で、ミルクのまろやかさが辛さの余韻を包み込む。 その瞬間、カレーの熱が静かに鎮まり、体の奥から「生き返る」ような感覚が広がった。 ラッシーという飲み物は、戦いを終えた勇者へのご褒美のようだ。 辛さに打たれ、ニンニクに燃え、最後に優しく癒やされる。 この三拍子がそろった時、夜の食事はひとつの物語になる。 ふと店内を見渡すと、同じように仕事帰りらしき客が数人、黙々とスプーンを動かしていた。 誰もが無言で、自分の疲れと向き合っているように見えた。 CoCo壱番屋の深夜には、奇妙な連帯感がある。 目的は違えど、皆が同じ湯気の中で、今日を生き抜いた証を確かめ合っているのだ。 店を出ると、外の空気がひんやりと頬を撫でた。 カレーとニンニクの香りがまだ体の内側に残っている。 遠くで始発電車の明かりが見えた。 この一杯のために、今日も頑張れたのかもしれない。 そしてまた明日も、同じ看板の灯りに吸い寄せられるのだろう。 スパイスの香りに誘われて、僕らは再び夜の街を歩き出す。

2025/10訪問

1回

いろり庵きらく 本八幡店

本八幡、京成八幡/立ち食いそば、カレー

3.07

66

~¥999

~¥999

定休日
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昼の点数:3.1

朝の本八幡駅、いつものように人の波に押されながら改札を抜けたところで、ふと立ち止まった。空腹と、少し肌寒い空気。そんなとき自然と足が向いたのが「いろり庵きらく」だった。 ここは前から気になっていた蕎麦屋。立ち食いだけど、チェーンの中では評判も悪くない。食券機の前に立ち、迷わず「ワカメ蕎麦」のボタンを押す。なぜワカメか? 特に理由はない。胃が重くないものを、というその時の直感だった。 カウンター越しに受け取った丼。ワカメが想像以上にたっぷりのっていて、まず視覚で「おっ」となる。ネギもぱらっといい感じに散らしてある。つゆの香りがふわっと鼻に抜けて、食欲が刺激される。 一口すすると、つゆはやや濃いめだが、出汁が効いていて妙に落ち着く味。ああ、こういう味を体が欲していたんだな、とちょっと感心した。蕎麦はやや細め。特別コシがあるわけじゃないけど、つゆと絡んでいいバランス。正直、立ち食いレベルを少し超えてる気がする。 主役のワカメも予想以上だった。歯ごたえがしっかりしていて、磯の香りも強すぎず弱すぎず。駅ナカのそばで、こんなにちゃんとしたワカメが出てくるとは思わなかった。箸を進めるたびに、じんわり体が温まっていく。 食べ終わって外に出ると、駅前の喧騒がまた戻ってくる。でも胃の中にはあったかいつゆの余韻が残っていて、なんだか少し元気になったような気がした。 「また来よう」、そんな言葉が自然に出てくるような、ちょっとした安心感があった一杯だった。

2025/07訪問

1回

吉野家 新橋烏森口店

新橋、汐留、内幸町/牛丼、豚丼、カレー

3.09

154

~¥999

~¥999

定休日
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夜の点数:2.5

吉野家 新橋烏森口店 ここで牛丼とトン汁を食べた。牛丼は生卵を入れて、しょうがを山盛り、七味を大量にふりかこて、口いっはみさ書き込む 沢木耕太郎風に食べログ向けに買いて

1回

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