2回
2024/10 訪問
陶酔に誘われる、帆立て貝とインゲンのジェノベーゼソーススパゲティ。#レトリカル食レポ(15)
すくいあげたパスタから
バジルの青い香気が鼻に届いたかと思うと、
サッと茹でたインゲンのコリッとした
歯ごたえが口のなかをノックし、
硬さを残したアルデンテのパスタとの
噛み心地のアンサンブルを
感じたのもつかの間、
とろりとしたジェノベーゼソースの
緑のカーテンが一気に引かれる。
たっぷりのオイルとニンニク、
バジルが醸し出す濃厚なソースは、
細かなバジルの青みが絡みつく
穀物の甘みをしっかりと残したパスタと
口のなかで出会い、噛むほどに
うっとりと、とけ合う。
何度も押し寄せる陶酔にも似た
ジェノベーゼの濃厚な波を
繰り返し、繰り返し、
舌全体で絡みとめて味わううち、
大ぶりな帆立て貝を
忘れていたかのようにフォークに刺すと、
色濃く閉じ込められ凝縮された
潮の旨みが、
ソースの味わいを、さらに奥深く変える。
帆立の厚みある肉の繊維の
ほろりとした食感が、
インゲンとパスタの醸す
噛み心地のアンサンブルに
ぎゅっと重なったかと思えば、
インゲンがふたたび顔を出して、
五感の全てを楽しませるパスタが
またフレインしていく。
ご近所、神奈川・中央林間のイタリアン「Hal」。
食材の美味な邂逅に酔いしれる時間。
2025/12/07 更新
生ハムとマスカルポーネチーズが口のなかで溶けあうときの、
一瞬のドラマがたまらない。
塩気がきいた生ハムの、軽く燻されたやや強引なアプローチを、
ミルクから生まれたマスカルポーネの、
とろりとしたかすかな甘みが受け止めたら、
二つの際立つ味わいと舌ざわりは、
あたかもソーシャルダンスで男女の肢体が
絡みあって優雅な造形美をつくりだすかのように、
ため息止まらぬ、なめらかな味覚の陶酔を生み出す。
写真はご近所のイタリアン「Hal」さんの
生ハムとマスカルポーネチーズのピザ。
いつも半分は、しらすのピザと組み合わせる。
ふっくらとしたピザ生地が、
まろやかに一つになったハムとチーズを
抱きあげるようにくるみ込んで、
とろけるように、とろける味わいにアクセントを加える。
それは口のなかで踊るペアダンスの
塩気と甘味とコク深さに、
自由に踊って絡みあえる舞台を与えたかのようだ。
もちろん決して、三角関係には、ならない。