31回
2025/09 訪問
「車海老フライ」と「タンシチュー」
これまで幾度となく「ぽん多本家」を訪れ、数々の料理を堪能してきたが、長らく心に引っかかっていた一品があった。それが「車海老フライ」である。
“時価”という心理的なハードルの高さ、そして「タンシチュー」という唯一無二の存在が常に立ちはだかり、その選択に至ることはなかった。しかし今回、意を決して訪問。
「タンシチュー」は同店において必ず注文すべき料理であるため、「車海老フライ」は一尾(¥4,940)に留めることにした。結果としては、背徳感を覚えるほど贅沢なランチとなったが、これもまた一つの経験。
車海老は、希少な"天然物"であり、大ぶりで身は弾力に富み、口に含めば濃厚な旨味が広がる。その素材に、「ぽん多本家」が誇る伝統の"揚げ"技術が加わることで、他に類を見ぬ海老フライが完成する。
黄金色の衣の美しさからしても、店主の技量の高さが明白。頭から尻尾に至るまで余すところなく味わい尽くす。
素材の質、火入れ、ビジュアルのいずれをとっても、海老フライの頂点と断言できる一皿であった。
一方の「タンシチュー」は言わずもがな。デミグラスソースは濃厚かつ奥行きがあり、芳醇な香りと深いコクが食欲を刺激する。黒毛和牛のタンはトロトロな食感で、今回の仕上がりは特に秀逸であった。
まさに至福の時間であり、改めて「ぽん多本家」という老舗の底力を実感するひとときであった。
2025/10/12 更新
2025/09 訪問
名物"タンシチュー"
東京に来た。やはり足は「ぽん多本家」へと向かう。言わずと知れた洋食の老舗である。価格は決して安くないが、料理の質をはじめ、接客、空間など、飲食店としての本質がここにある。
看板料理はカツレツ。ロース肉の芯のみを用い、脂は取り除き、自家製ラードでじっくりと揚げる。
魚介のフライも見逃せない。江戸前の素材を使用したキスや穴子など、その鮮度と揚げ方はいずれも一級品。
好みはタンシチュー。黒毛和牛のタンはじっくりと煮込まれ、繊維がほぐれるような食感。デミグラスソースは濃厚かつ深いコクと、芳醇な香りが印象的。
器へのこだわりも見事。大倉陶園のロイヤルブルークラウンが、格式と華を添えている。
今回の訪問も期待通り、いや、それ以上の満足を得た。
2025/10/05 更新
2025/07 訪問
至福の一皿
東京に来たならば、やはり「ぽん多本家」に足を運ばねばならない。猛暑にもかかわらず、開店間際には長蛇の列。本物を求める客の多さが、その人気を物語っている。
今回も車海老フライと迷いながら、結局はタンシチューとご飯セットを選んだ。
これまで幾度となく堪能してきた逸品であるが、提供時の高揚感は、毎回新鮮。
デミグラスソースの芳醇な香りが食欲をそそり、大倉陶園のロイヤルブルークラウンの気品には、改めて目を奪われる。味については既に幾度も記してきたため割愛。
料理、接客、設え、そのすべてにおいて誠実であり、真っ当な飲食店であると、改めて感じた。
2025/07/27 更新
2025/05 訪問
荘厳で風格漂うひと皿
約一ヶ月ぶりに東京を訪れた。迷うことなく「ぽん多本家」へ足を運ぶ。
かねてより車海老フライに挑みたいと考えており、今回は一尾のみでも注文しようと目論んでいたが、残念ながらメニューにその姿はなく、恐らくは仕入れの事情によるものであろう。タンシチューとご飯セットを注文。
期待に違わず、やはり見事な味わい。デミグラスソースはこの上なく濃厚でありながら、どこか“和”の風味を感じさせる奥深い味わい。
料理が盛られた大倉陶園の平皿は、その美しさによって、華と格式を添えており、味覚のみならず視覚にも訴えかけてくる。
また、ご飯、赤だし、おしんこのいずれもがハイクオリティであり、脇役と侮れない確かな品質が保たれている。この点は極めて重要。これらの要素がおざなりであれば、いかに主菜が秀逸であろうとも、全体の印象に影を落としかねない。
「ぽん多本家」は、家族経営により初代のこだわりを令和の世においても忠実に守り抜き、誠実な姿勢で店を営まれている。まさに、真っ当な飲食店といえる存在である。
今回の訪問もまた、満足のひと言に尽きる。
2025/06/01 更新
2025/04 訪問
老舗の矜持と技
東京を訪れるたびに必ず足を運ぶ「ぽん多本家」。今回はランチタイムでの訪問であり、目当ては言うまでもなく、名物のタンシチュー。
長時間じっくりと煮込まれた黒毛和牛のタンは、驚くほど柔らかく、口の中でほぐれるような食感。
デミグラスソースは深いコクと、どこか「和」の趣を感じさせる濃厚な味わいに仕上がっている。付け合わせのジャガイモ、ニンジン(グラッセ)、椎茸も丁寧に調理されており、いずれも申し分のないクオリティ。
そして、大倉陶園の平皿が、この一皿に格調と華を添えており、目にも麗しい。
誠実な接客と、静謐で凛とした店内の空気が相まって、真っ当な飲食店であることを改めて実感する。明治創業という老舗の矜持と技が、皿の上に見事に表れている。
2025/04/20 更新
2025/04 訪問
伝統のカツレツ
今週も東京へ来た。そして、東京に来た際に必ず立ち寄る「ぽん多本家」で夕食を済ませた。
今回はディナータイムの訪問であったため、シチューはすでに売り切れていた。しかし、同店には他にも魅力的な料理が多く存在する。魚介のフライと迷った末、看板メニューであるカツレツを注文した。
まずはスーパードライで喉を潤す。薄口のグラスがよく、供されたポテトサラダも高品質。
「ぽん多本家」のカツレツは、豚ロースの脂身をトリミングし、赤身の芯の部分だけを使用している。脂身と赤身では揚がる時間が異なるため、赤身のみを使うことで均一な火の通りを実現し、しっとりとした食感と豚肉本来の旨味を引き出している。
取り除いた脂身は炊いて自家製ラードを作り、揚げ油として使用している。これにより、あっさりとしながらもコクのある風味が加わり、カツレツに深みを与えている。
カツレツは低温の自家製ラードに入れてゆっくりと温度を上げながら揚げることで、淡いきつね色のサクサクとした食感に仕上がる。
大倉陶園の美しい平皿に盛り付けられたカツレツは、神々しいオーラを放つ。
近年、とんかつ業界では、部位ごとに一切れずつ供する専門店が注目を集めている。肉の質も調理技術も飛躍的に進化し、東京や大阪には名だたる名店がひしめいている。しかしながら、「ぽん多本家」はその潮流とは一線を画す。初代のやり方を頑なに守り続け、伝統を貫いてきた老舗である。
その一貫性、そして創業者へのリスペクトは、実に感嘆に値する。料理はもちろん、接客や店構えに至るまで、誠実さと真摯さが貫かれている。まさに「真っ当な飲食店」という言葉がふさわしい名店である。
2025/04/13 更新
2025/04 訪問
伝統の"技"と"味"
帰洛を前に腹ごしらえをしようと、「ぽん多本家」を訪問。東京を訪れるたびに立ち寄る老舗である。今回もタンシチューとご飯セットを注文した。
原材料や光熱費の高騰を受け、メニューは値上げされていた。タンシチューは6,600円、ご飯セットは660円。
しかし、卓越した料理の完成度、落ち着いた店内、誠実な接客、そして歴史に裏打ちされたブランド力を思えば、妥当な価格と言えよう。
タンシチューは期待を裏切らない。上質な黒毛和牛のタンは、箸でほぐれるほど柔らかく仕上げられており、口の中でほろりとほどける食感が魅力。約3週間かけて仕込まれたデミグラスソースは、この上なく濃厚で、深いコクと芳醇な風味が特徴。 
付け合わせのジャガイモ、ニンジン(グラッセ)、椎茸も抜かりなく、一皿を鮮やかに彩る。
さらに、大倉陶園のロイヤルブルークラウンが料理を引き立てる。深く艶やかな瑠璃色に金蝕が施されたその美しさは、形容しがたいほど。
外に目をやれば、東京は桜が満開。上野公園は花見客で賑わい、明日の雨予報を前に御徒町界隈まで人波が続く。それもまた春の風情。爛漫の桜を横目に「ぽん多本家」の味を堪能し、心地よい余韻とともに帰洛の途に就く。
2025/04/05 更新
2025/03 訪問
「大倉陶園」が華を添える荘厳なひと皿
東京に帰るたび、必ず足を運ぶ場所がある。それが、明治38年創業の老舗洋食店、「ぽん多本家」だ。
創業者の精神を受け継ぎ、現在は4代目がその伝統を守り続けている。料理や接客に対する真摯な姿勢が伝わり、自然と背筋が伸びる思いがする。  
店内に足を踏み入れると、静謐な空間が広がり、随所に飾られた調度品が趣を一層引き立てる。
接客は誠実そのもので、細やかな心遣いが感じられる。さらに、「大倉陶園」の食器が料理を引き立て、風格漂う料理の数々が並ぶ。 
今回は、タンシチューを注文した。「大倉陶園」のロイヤルブルークラウンが華を添える荘厳なひと皿である。
使用するタンは厳選された黒毛和牛で、ナイフが不要なほど柔らかく、ほんのりと和を感じさせるデミグラスソースは、深いコクと濃厚な味わいが特徴だ。
ご飯、赤だし、おしんこも例外なくハイクオリティ。 
退店時の「ありがとうございました。」のひと言が、なんとも嬉しい。また来たいと心から思わせる、そんな特別な存在の店だ。
2025/03/25 更新
2025/02 訪問
荘厳で風格漂うひと皿
東京へ来た。やはり「ぽん多本家」へと向かう。目当ては「ビーフシチュー」だ。同店のデミグラスソースを堪能すべく、今回はシチューを選択した。「車海老フライ」も気になるところだが、欲張りは禁物。次回の楽しみに取っておくことにする。
このビーフシチューは、約3週間もの時間をかけて仕込まれたデミグラスソースが特徴で、その深いコクとほんのりとした「和」の風味が絶妙に調和している。
荘厳で風格漂うひと皿は、大倉陶園の平皿に盛り付けられ、視覚的にも味覚的にも満足感を与えてくれる。
次回は「車海老フライ」を、と心に決めつつも、久しぶりに「タンシチュー」も味わってみたいという思いが湧いてくる。幸せな悩みは尽きない。
2025/03/25 更新
2024/12 訪問
神々しいオーラを放つ、「ぽん多本家」のタンシチュー
東京滞在中、洋食店巡りの締めくくりとして、明治38年(1905年)創業の老舗「ぽん多本家」を訪問。
宮内省大膳寮で西洋料理を手掛けた島田信二郎氏が創業し、「カツレツ」発祥の店として知られる名店だ。
先週に続き、開店前に到着し、無事にポールポジションを確保。“今回こそは”と心に決め、車海老フライを堪能するつもりでいた。しかし、やはり引き寄せられるのは、あの深みのあるデミグラスソース。結局、タンシチューを注文した。
運ばれてきた皿には、黒毛和牛のタンが神々しいオーラを放って横たわっている。ホロホロを超え、もはやトロトロで、ナイフは形ばかりの存在だ。
噛むという行為すら忘れさせるほど滑らかで、口の中で繊維が甘くほどける。このタンを覆うのは、ほんのり「和」を感じさせる滋味深いデミグラスソース。苦味とコクがもたらす複雑な余韻が、舌の上でいくつもの層となって揺らめく。大倉陶園の「ロイヤルブルークラウン」に盛られたこの一皿は、格式と華やかさをまとい、この老舗を象徴している。
東京には、魅力的な老舗洋食店が数多く存在し、それぞれが独自の歴史とこだわりを持っている。文明開化の象徴であり、幼少期の思い出を呼び起こす懐かしい「洋食」。これからも、そんな魅力ある洋食店を巡る旅を続けていきたいと思う。
2024/12/23 更新
2024/12 訪問
伝統の一皿
東京に来た。師走の寒さが身に染みる。
生まれ育った土地だからだろうか、都会のざわめきにも不思議な安らぎを感じる。なかでも上野は、幼い頃、母とよく訪れた街であり、懐かしさが胸に込み上げてくる。
上野に足を運ぶたび、私は必ず「ぽん多本家」に立ち寄る。明治38年創業のこの老舗は、カツレツ発祥の地として知られ、その歴史と伝統は訪れる者を魅了してやまない。素材選びから調理法に至るまで、細部に宿るこだわりが、料理を芸術の域へと昇華させている。確かに値は張るが、そのひとときは価格以上の満足感と心の滋養を与えてくれる。
この日は、開店前の静けさの中、店の前に立った。お目当ては、カツレツと並ぶ名物のビーフシチュー。開店前にメニューを手にしたとき、そこにその名を見つけた瞬間、冬の寒さも忘れ、胸が高鳴った。もう一品は、車海老フライかカキフライかと迷った末、蛤バタヤキを二粒選ぶ。欲望を少し残しておくのも、次回の楽しみになるだろう。
蛤バタヤキは、バターの香ばしさと海の恵みが織り成す絶妙な一品。そして、待ち望んだビーフシチューが運ばれてくる。芳醇な香りが立ち上り、長時間煮込まれた黒毛和牛は箸でほぐれるほど柔らかい。口に含むと、ほろりとほどけ、デミグラスソースの深いコクと濃厚な旨味が広がる。約3週間かけて仕込まれたその味わいは、一口ごとに至福の時間をもたらす。やはり「ぽん多本家」は、単なる洋食店を超えた特別な存在だ。
食事を終え、店を出ると、冬の冷たい風が頬を撫でる。上野の街並みは時とともに変わり続けているが、上野広小路から上野公園の方角を見渡すと、母と歩いた記憶が鮮やかによみがえる。あの頃と変わらぬ風景が、心に温かな余韻を広げてくれた。
2024/12/23 更新
2024/11 訪問
至高の一皿
3連休の初日、東京に来た。しかし、待ち受けていたのは季節外れの大雨。ただし幸運なことに、新幹線の遅延には遭遇せず、ほっと胸を撫で下ろす。
滞在初日のランチは「ぽん多本家」を選択。商品力、空間力、伝統と格式を兼ね備えたブランド力、そして利便性。そのすべてを満たすこの店は、何度訪れても心を満たしてくれる。
今回は開店時間に間に合ったので、狙いはもちろんシチューだ。ディナータイムに訪れると必ず品切れの逸品である。メニューにはタンシチューとビーフシチューの2種類が並ぶが、どちらも至高の味わいだ。
開店15分前に到着すると、すでに2組の待ち客がいた。メニューに目を通すと、ビーフシチューはないものの、タンシチューはオン・ザ・メニュー。迷わず注文し、さらに蛤バタヤキ(2粒)をお願いする。本当は冷えたビールを一緒に頼みたいところだが、この後の予定を考え我慢することにした。
まず運ばれてきたのは、老舗ならではの蛤バタヤキ。厳選された上質な天然の蛤に小麦粉をまぶし、バターを溶かしたフライパンで丁寧に火を通す。香ばしい香りとともに、凝縮された海鮮の旨味が口いっぱいに広がる。これは店主の卓越した火入れ技術の賜物だろう。
続いて登場したタンシチューは、希少な黒毛和牛のタンを使用。箸でほぐれるほど柔らかく、口の中でホロホロと崩れていく。付け合わせのじゃがいも、にんじん、椎茸もシチューの深い味わいを引き立てる。3週間もの時間をかけて完成させたデミグラスソースは、この上なく濃厚で、深いコクと芳醇な風味が特徴だ。さらに、大倉陶園の洋皿が華と格式を添える。まさに老舗の真髄を堪能できる一皿である。
1905年創業の「ぽん多本家」は、都内屈指の老舗洋食店。その威厳を感じさせる重厚な入口もまた、この店の魅力の一つだ。これからも足繁く通いたい、心からそう思える名店である。
タンシチュー
蛤バタヤキ
大倉陶園の洋皿が華と格式を添える
絶妙な火入れ加減
年季の入ったカトラリー
ご飯(硬めの炊き上がり)
赤だし(なめこ)
秀逸なおしんこ
希少な黒毛和牛のタン
濃厚な海鮮の旨みが口の中に広がる
老舗の風格
2024/12/23 更新
2024/09 訪問
伝統と格式
久々の更新となってしまった。8月中旬に調子を崩し、その後、副鼻腔炎を併発して嗅覚を失った。これに伴い、味覚も大きく低下してしまった。徐々に回復はしているものの、依然として匂いや味を感じにくい状況が続いている。このような状態ゆえ、外食を控えていた。
完全に回復してから再開しようと決めていたが、東京へ出張する機会があり、外食欲を抑えることができず、今宵ついに解禁するに至った。
東京には行きたい店が数多くあるが、「ぽん多本家」は私の中で不動のナンバーワンである。伝統と格式を兼ね備え、本物を提供するこの店は、私にとって特別な存在だ。
ディナータイムでの訪問だったため、シチュー類は売り切れていたが、これは仕方のないこと。他にも魅力的なメニューは多い。今回はポークソテーを選んだ。
まずは小瓶で喉を潤す。久々のアルコールであり、気分は爽快だ。お通しにはポテトサラダが自動的に提供される。シンプルながら抜かりのない一皿である。これが居酒屋であれば、580円程度の値付けだろう。
メインのポークソテーについては多くを語るまでもない。これまで幾度もレビューしてきたので詳細は省くが、バター醤油風味の味付けが、一度食べたら忘れられない一皿を演出している。
ご飯、赤だし、おしんこもさすがのクオリティ。明治創業の老舗が持つ実力は伊達ではない。
やはり、食は元気の源であり、生きる活力を与えてくれる。久々の外食は、まさに大満足のひとときであった。まだ本調子とは言えない身体だが、1日でも早く、かつての嗅覚と味覚を取り戻したいと願っている。
2024/09/19 更新
2024/05 訪問
伝統と格式
東京を訪れると、必ず「ぽん多本家」へ足を運ぶことにしている。この日も仕事を予定通りに終え、帰京前の貴重な時間を同店での食事に充てた。
残念ながら、タンシチューとビーフシチューはすでに売り切れであった。ディナータイムにこれらのメニューに出会うことは極めて稀である。
この日注文した料理は以下のとおりである。
・蛤バタヤキ(3個)
・ポークソテー
・ご飯・赤だし・おしんこ
店内は老舗の風格を感じさせる静寂に包まれ、店主の誠意ある挨拶がとても良い。明治時代から続く伝統の味は、食事を終えるたびに幸福感で満たされる。これこそが外食店の真髄であろう。訪れる人々にとって「遺したい味」として記憶に残るに違いない。
ポークソテー
蛤バタヤキ(3個でオーダー)
大倉陶園の平皿が華を添える
蛤バタヤキは絶妙な火入れで、外はカリッと、中はとってもジューシー
ご飯・赤だし・おしんこ
手抜かりのない絶品のおしんこ
ホッと一息できるお茶
エントランス
2024/06/09 更新
2024/04 訪問
日本が誇る洋食のレジェンド的存在
妻と東京へ来た。旅行初日のランチは「ぽん多本家」。目当ては「ビーフシチュー」と「蛤バタヤキ」だ。
これまで何度も同店を訪問しているが、常にビーフシチューは売り切れかメニューになく、未だ食べたことがない。バタヤキについては、「植野食堂」を見て食べたくなったのだ。
さて午前10時40分、メニュー表に目を通す。なんと「ビーフシチュー」の名があるではないか。ようやくその機会に恵まれた。心の中ではガッツポーズだ。当然ビーフシチューは注文し、その他に「蛤バタヤキ」、「カツレツ」、「きすフライ」を注文した。2人で食べるには十分な量であった。
料理は次のように提供された。
【蛤バタヤキ】
外はカリッと、中はジューシーで、バターと蛤の旨味が口の中で絶妙に融合し、納得のいく一品であった。とにかく火入れがお見事。
【きすフライ】
衣はフワッとしつつもサクサクとした食感が保たれており、4代目店主の"揚げ"の技術が感じられた。きすの甘みと衣がまとったラードのコクが絶妙にマッチしていた。大倉陶園の「ブルーローズ」が何とも美しい…。
【ビーフシチュー】
まずはそのビジュアルに圧倒される。大倉陶園の「ロイヤルブルークラウン」が、このひと皿に華と重厚感を加える。デミグラスソースのコクとビターな味わいが老舗の風格を醸し出す。肉はホロホロな食感で、赤ワインとの相性が抜群であろうことが想像される。
【カツレツ】
脂身を取り除いていることで、ロース肉ながらヘルシーな味わいが楽しめる。金の縁飾りと衣の色が絶妙に調和しており、この一皿を格上げしている。
私たちは4品をしっかりと完食し、大満足のランチとなったのである。
2024/06/09 更新
2024/04 訪問
since1905 歴史の奥深さを感じる魅惑のタンシチュー
思わぬ時間ができたため、食事を済ませてから帰京することにした。貴重な東京滞在の機会である。やはり満足のいく食事をしたいという思いから、またもや「ぽん多本家」を訪問した。
昨夜はポークソテーを堪能したため、本日は違うメニューをセレクト。今回もビーフシチューの名はメニュー表に無し。縁が無いのかもしれない。ただし、タンシチューの名がある。迷わずオーダーした。さらにヤサイサラダも追加。ご飯、赤だし、おしんこは欠かせない。というのも、この店のコンセプトは「ご飯に合う洋食」だからだ。
さて、ヤサイサラダは1,100円と高価だが、その価格に見合う価値がある。シンプルな構成ながら、野菜の鮮度と味付けは他の追随を許さないクオリティだ。レタスはシャキシャキで、酸味の効いたドレッシングとの相性が抜群。トマトとキュウリは瑞々しく、グリーンアスパラは下ごしらえが丁寧で、甘みが際立っている。自家製マヨネーズも好みの味わいだ。ソテーやフライ物には野菜が添えられていたため、ヤサイサラダを注文する機会がなかったが、手抜かりのない一品だった。
そして、タンシチューである。使用するタンは黒毛和牛。筋っぽさは全くなく、ホロリとほどける肉感。デミグラスソースは、仕上がりまでに約3週間を要するらしい。幾重にも深いコクとビターな味わいが特徴だ。大倉陶園の「ロイヤルブルークラウン」が、このひと皿に華と重厚感を加える。
「ぽん多本家」は創業から100年以上続く老舗で、現在は4代目がその伝統を守り続けている。まさに洋食屋のレジェンドと言える存在だ。
2024/06/09 更新
10月も半ばを過ぎたというのに、最高気温は25℃に達した。秋とは思えぬ陽気に包まれた一日である。こうした季節の乱れは、地球環境の歪みを静かに、しかし確かに告げているように思われる。
さて、「ぽん多本家」のタンシチューである。
提供された瞬間、思わず息を呑む。器には大倉陶園の「ロイヤルブルークラウン」が用いられ、その気品ある佇まいが一皿に華と重厚感を添えている。
デミグラスソースは、深いコクと濃厚な旨味をたたえており、老舗の矜持を感じさせる仕上がり。私の中では、「ぽん多本家」と「洋食おがた」のデミグラスが双璧をなしている。
使用されるのは黒毛和牛のタン元。とろけるような食感と、肉本来の旨味が絶妙に調和している。付け合わせのにんじん、じゃがいも、椎茸も高品質であり、脇役ながら料理全体の完成度を高めている。ご飯、赤だし、おしんこに至るまで一切の手抜きがない。
店内の設えや照明、調度の一つひとつに、老舗の矜持と節度ある美意識が息づいている。接客は誠実で、華美に走ることなく、静かな品格を湛えている。すべてにおいて「正統」を感じさせる店である。今後も折に触れて足を運び続けたいと思う。