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いつからだろうか、ラーメンというものが「日常」ではなくなったのは。 腹が減ったらふらりと入るものだったはずが、 今では一週間前に予約し、あらかじめ心の準備まで整えて向かう料理になっている。 とみ田に入店した瞬間、その変化はさらに鮮明だった。 客に差し出される水は、水道水であるにもかかわらず、 グラスにはウイスキーを冷やすための球氷が沈んでいる。 その冷たさは確かに上等だが、 「上質とは何か」を問いかけてくるようでもあった。 カウンターの内側では、職人が真剣にチャーシューを盛り付けている。 その姿は、もはや一杯の麺に添える肉ではなく、 まるでひとつの「皿」を作り上げるかのような集中である。 私は一瞬、自分がラーメン屋ではなく、 小さなフレンチの厨房に座しているかのような錯覚を覚えた。 看板はつけ麺。 全国一位と評され、評点も高い。 しかし、口に運んだ瞬間、 その味は「完璧」と「記憶に残らない」の狭間に静かに落ち着いていた。 調和はある。技術もある。 だが、心を掴む何かは、そこにそっと沈んだまま浮かび上がってこない。 最後に強く印象に残ったのは、 つけ汁でも、麺でもなく、チャーシューだった。 丁寧で、細やかで、そして確かによい出来だった。 店を出るとき、 つけ麺の味は、もう輪郭が曖昧になっていた。 高級であることと、心に残ることは同じではない。 それを静かに思い出させてくれる一杯であった。
2025/11訪問
1回
東京からわざわざ足を伸ばして、市川の「小むろ」へ。 支那ソバの名店として知られており、以前から気になっていた一軒だ。 まず印象的だったのはチャーシュー。 しっかりと味が染みており、脂のバランスも絶妙。 何枚食べても重くならず、むしろもっと食べたくなる。 この完成度は見事。 ワンタンは生姜がかなり効いており、 おそらく脂のしつこさを和らげるためだと思うが、 そもそもこの一杯に“しつこさ”自体があまりないので、少し不思議な存在感だった。 スープは非常に澄んでいて、見た目からして美しい。 ネギの香りが加わることで、口当たりが一層軽やかになる。 麺はやや硬めの茹で加減で、個人的にはもう少しスープとの馴染みがほしいところ。 全体としては端正で真面目な一杯という印象。 総じて、きれいにまとまった支那ソバで、せっかくここまで来たなら、ついでにディズニーでも寄って帰るかと思ってしまうのも正直なところ(笑)。
2025/10訪問
1回
今月二度目の訪問。 やっぱり思うけど——ウシマルは愛人と行くのに最高の店だと思う。 まず、場所がとにかく人里離れている。 車で行くしかなく、周囲は一面の田園風景。 この立地、プライバシー性は完璧で、奥さんに偶然出くわすなんてことも絶対にない(笑)。 店に入ると、外ののどかな景色とは対照的に、 モダンで洗練された内装。 田んぼを抜けた先に突然現れるスタイリッシュなイタリアンというギャップに、 思わず「おお…」と声が出る。まさに柳暗花明また一村。 そして何より、料理の完成度が高い。 イタリアの伝統的な技法に、九十九里の新鮮な食材を組み合わせた一皿一皿は、 どれも香り・味・温度のバランスが見事。 食材の良さを最大限に引き出しており、わざわざ訪れる価値がある。 価格も非常に良心的で、コースは一人あたり約2万円。 仮にデート代ギャラ込みでも、1回の出費は5万円以内で収まる。 このクオリティでこの金額は、もはや破格と言っていい。 さらに重要なのは——周りにブランドショップが一軒もないという点。 銀座で食事をすれば「この後シャネル寄っていい?」と言われる可能性があるが、 ここではそんな心配は皆無。 食べ終わったら田んぼと星空しかない。 まさに経済的にも心理的にもやさしいデートレストラン。 千葉の静かな田園地帯に佇む「ウシマル」。 まさに千葉の片隅に輝く一粒の真珠のような存在だ。 店内は静かで落ち着いた雰囲気。 四方からふんわりと漂う薪火の香りが、どこか懐かしくも上質な空気を作り出している。 そしてその香りがしっかりと料理に溶け込み、素材に新しい生命を吹き込んでいるように感じた。 ハムの盛り合わせは特に印象的。 様々な食材を用いて仕立てられたハムは、香り・食感ともに豊かで、 スパイスと千葉特産の落花生の香ばしさが重なり、土地の個性と職人技が共存する一皿となっていた。 全体を通して、イタリア料理と日本の食材の融合が見事。 素材の扱い方、味のまとめ方、香りの立たせ方、どれもが繊細で、 “高級さ”ではなく“誠実さ”で勝負している印象だ。 そして何より、価格が非常に良心的。 このクオリティを東京で求めようとしたら、三〜四万円は覚悟しなければならないが、 その値段を取る店ほど、内容が伴っていないことも多い。 ウシマルは、まさに「本物の料理とは何か」を改めて教えてくれる一軒だった。