ウィーンの森の物語さんが投稿したとおの屋 要(岩手/遠野)の口コミ詳細

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美食考察記:科学的見地・文化的見地、双方による美食の考察

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ウィーンの森の物語 (男性・東京都) 認証済

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掲載保留とおの屋 要遠野/料理旅館、創作料理

7

  • 夜の点数:5.0

    • ¥40,000~¥49,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.6
      • |雰囲気 4.6
      • |CP 4.2
      • |酒・ドリンク 4.6
  • 昼の点数:5.0

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 4.6
      • |雰囲気 4.6
      • |CP 4.2
      • |酒・ドリンク 4.6
7回目

2020/10 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥40,000~¥49,999
    / 1人

美食考察記 第百二十八話

敢えて、長年レビューするのを控えていたが、
こちらの店は、私の食にする意識、対峙する姿勢を最も大きく変えた一軒といっても過言ではない。
私が初めて訪れたのは、今から約9年も前のこと。
そのあまりの衝撃に間を翌年に再訪したが、当時の印象としては、
・地元の食材を中心に扱い、発酵料理がベースとなっているが、コースを通して料理に型がなく、基本の技術しっかりで、和洋中いずれも調味、盛り付け含めセンスが抜群。
・料理はほぼ独学というが、失礼ながら、遠野という地、更に言えば県内を見渡しても、料理の技法を学んだり、舌のセンスを磨くような店も見当たらないので、一体どうやって?
と、頭の中が「???」だらけになったのを覚えている。

それから、定期的に訪問を続けたが、繁盛している様子がなかったので、
「これだけの腕があれば、東京に来れば、あっと言う間に予約が取れない店になる」と、
少し心配になり、失礼を承知で余計な進言をしたことがあった。
すると要太郎さんは、「東京で勝負したいという気持ちはあるが、ここには、私が面倒を見なければならないものが沢山ある。それは、田圃や麹、酵母であり、また、料理については、日の当たらない食材に手を添えて、スポットライトを浴びせる、新しい命を吹き込むのが僕の役目。また、海鰻も出せば、お客様に喜ばれるのはわかっているが、個体数保護の観点から、一定以上のサイズのものしか仕入れないし、そのバランスを勘案しながら提供している」との言葉が返って来た。
確かに、私が初めて当店を訪れた時は、他県の厳選食材もコースの中で一部組み込まれていたが、この頃には、地産地消の要素がよりハッキリ強くなっていた気がする。また、この言葉を聞いて、自分は要太郎さんが、目を向けて欲しかった部分を殆ど理解出来ていなかったことに気付き、反省と同時に、自身の未熟さが恥ずかしく思えた。
要は、それまでは、皿の上にある料理を口の中だけで味わい、この料理、食材は、どうすればより美味しくなるか?最上となる食材の条件、調理法ばかり只管希求しており、要太郎さんが最も目を向けて欲しかった、食材の背景や思いまでも含めて味わうという行為にまで到っていなかったのである。

また、とおの屋要の料理は、要太郎さん自身が遠野の地に身を投じ、米作りに勤しみ、四季や自然、生命の起源である微生物と日々真摯に向き合うことでインスピレーション、イマジネーションが生まれ、それを投影させることでコースが成り立っており、東京の繁華街で店を構えても、舌を一時的に満足させる料理は作れようが、皿の内容を日々変化させ、人を感動に至りしめることは難しく、食べ手側にも、遠野という土地ないしは、食材の背景を理解することが求められ、それを現地で味わうことで昇華されるのだなとも。

以降、私は、食に対する意識を変えるべく、多くの知識や視点を持つことを心掛けるようになりました。
具体的には、
・人はなぜ食べるのか?
・人を中心とした食の歴史と生物の進化
・自然環境と食物連鎖
・世界の食文化と料理の成り立ち、歴史的背景
・世界の食材の伝播と品種改良の歴史
・文化人類学
・食品工学
・味覚の伝達経路、味蕾細胞から大脳皮質へ
・味覚だけでなく、触覚、嗅覚、視覚、聴覚から料理を考える。
・太陽光、火(熱源)、水、空気、微生物から調理を考える。
・アミノ酸と栄養素、甘味・塩味・うま味・酸味・苦味・辛味・カルシウム味から料理構成を考える。
・生、焼く、蒸す、揚げる、熟成、発酵によって、香り、食感、味わいがどう変化するか?
・食材の旬とその土地を取り巻く背景
.....等、挙げれば枚挙にいとまがない。

皆様ご存じの通り、自然の中には、食べられるものと食べられないものの二つがあり、経済の合理性、環境、生産性、宗教、その国が歩んだ歴史、時代背景等によって食文化が形成される。
世界の食文化を俯瞰的にみると、経済が発展し、食料を安定的に確保出来る状況となるにつれ、料理を構成する要素に決まった傾向が見られる。具体的に言うと、人が本能的に美味しいと感じる、三大栄養素、即ち、糖、脂質、炭水化物をメインとした、柔らかいもの、口当たりの良いものへと構成が推移するのです。 これらは、エネルギーの変換効率の観点から人が進化する過程で、摂取することでβーエンドルフィンが放出するよう遺伝子に組み込まれており、謂わば、当然の流れと言えましょう。
これまでは、人間が美味しく感じる味を科学的に分析し、調味料や添加物を使用することで、それらの料理を巨大資本が担ってきました。しかし、今では、高額店までもが、香り、食感、苦み、酸味ではなく、うまみ、甘味等で味の構造を厚くし、柔らかさや口当たりの良いだけの、旬や食材の個性を蔑ろにした料理へと舵を切りつつある状況を危惧します。この傾向は、畜産物、野菜や果物等の生産物(品種改良、栽培方法、飼育方法)にも同様のことが言えており、果たして、それで良いのだろうか?とも。

人の本能や感覚器の仕組みを利用したテクニカルな料理は深い感動には到らないというというのが私の持論であり、
何ヶ月も先まで予約して、そのような料理を口にして喜んでいる方々があまりに多いことに違和感を覚える。
客が料理人に媚び、また、料理人が客に媚びる構造も、それに拍車をかけていると言える。
中には、料理人に自身の影響力を誇示し、裏で金銭をふっかけている愚か者もいるようで、
私に言わせれば、そのような人間は、食文化を語る資格はなく、人としての恥を知るべきである。

要太郎さんの料理、扱う食材は、上記とは対極にあり、一石を投じる料理と言える。
私見で発酵という手法はうま味を増やすが、食材の味や香り、食感を均一化する懸念もあるが、
こちらの料理はそれだけに頼らず、酸味や苦み、彩、香りまでも計算し、活かした、独自の地味深い料理に仕上げている。

インターネットの普及で地方まで食べ歩きの為だけに足を運ぶ人がこの十年で爆発的に増え、
今では、地産地消を掲げた質の高い料理を供するオーベルジュも数多ありましょう。
しかし、自ら田畑に赴き、自ら汗を流し、微生物にまで向き合い、感動に到るまでの料理を皿の上に落とし込む店は、
日本国内に果たして幾つあるだろうか?

なお、夕食の素晴らしさもさることながら、オーベルジュの善し悪しを判断するのは、朝食の力の入れ方だと思っているが、
こちらは、昔から手を抜かず、常にガチなのが通う詰めている理由の一つ。
また、料理に合わせる器選びの素晴らしさやインテリアのセンスの良さにも着目頂きたい。

最後に、「料理を美味しく感じるメカニズムは科学的には解明されつつあるが正解のないもの。料理は五感で味わい、感性によって解釈され、最終的な価値の認識は時間によって下される」。
とおの屋要は、生涯記憶に残る、オンリーワンの素晴らしい食体験が出来る、稀有な店の一つです。

一日一組に絞っているが故、値段も決して安くはなく、また、年々予約も取り辛くなっているとも耳にしますが、
幸運にも、もしその機会がありましたら、何よりも優先して訪問されることをお勧めします。

2023/10/03 更新

6回目

2019/07 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

2023/10/01 更新

5回目

2018/11 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

2023/10/01 更新

4回目

2018/05 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

2023/10/01 更新

3回目

2017/07 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

2023/10/01 更新

2回目

2015/07 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

2023/10/01 更新

1回目

2014/11 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス4.6
    • | 雰囲気4.6
    • | CP4.2
    • | 酒・ドリンク4.6
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

2023/10/01 更新

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