40回
2019/09 訪問
きざ㐂の挑戦
9月のきざ㐂。
鮨好きなら必ず知っている、「早川光の最高に旨い鮨」に出演し、ますます知名度が上がってきたきざ㐂。
早川さんのおかわりの一貫は…、それは是非ご覧になって確かめて頂きたい。
まだまだ暑い日もあるが、そろりそろりと秋の気配が近づいてきている。今回、つまみでは北海道のキンキが秀逸だった。昆布締めした後に軽く炙ってあり、香ばしさととキンキの濃厚な旨味が濃縮している。
定番の真魚鰹の塩漬けスモークは、今回塩味が前面に強すぎた。もっと抑えたほうが真魚鰹の美味さが引き立つかな。
握りでは、赤身のヅケ、鯖が今回は特に美味だった。
近いうちにシャリを変えるそうだ。なんでも今まで使っていた米が水害で入荷できず、新しい米を使って、シャリを一から作り直す事になるらしい。
それはそれでまた新たな楽しみとなる。
きざ㐂の挑戦は続く。
2019/10/02 更新
2019/07 訪問
きざ㐂の挑戦
7月は全国的に気候が悪く、なかなか魚が厳しいようだ。そんな状況を感じさせないくらい、きざ㐂の鮨は
完成度が高い。お店も1年を過ぎてますますレベルが
上がってきた。
今回は特に鰯が秀逸だった。青魚が美味い季節だが、脂の乗りや身の柔らかさなどが群を抜いた一貫だ。
それとは別に春子鯛はふわふわの身がしっかりと昆布の旨みをまとい、口に溶ける仕上がりは流石。
一通り頂いたところで最後に大将が「新作ができたんですが召し上がりますか?」ときた。そんな風に言われたらYES以外の選択肢はない。
新作とは干瓢巻きだ。
春先くらいから開発に試行錯誤してたのは聞いていたが、ついに完成したようだ。
正直甘くてクタッとした干瓢は苦手だ。しかし、きざ㐂のそれは明らかにレベルが違う。甘過ぎず、噛んだ時の食感はしっかりと残してある。この干瓢は美味い。
冒頭からツマミとして登場してもいいかもしれない。
きざ㐂には自家製のドライ塩辛があるのだが、それと並んで酒が進むツマミになるかもしれない。
今回は頂いていない新作もあるようなので、また次が楽しみだ。
きざ㐂の挑戦は止まらない。
2019/07/28 更新
2019/06 訪問
新たなる旅路、きざ㐂
水無月のきざ㐂。
先月までとは陣容が変わっていた。一つは秋からお休みしていた女将が復帰された。
そしてもう一つは昨夏から裏方を一手にこなしていたお弟子さんがなんと退店していた。色々な事情があっての事だろうが、最近グッと成長を感じていただけに残念。
しかし、別れがあれば新たなる出会いもまたあり、志のある若手が見習いを始めている。大将の力量はもちろん、その店を作るのはそこに関わるすべての『人』だ。そこにはもちろん客の人間力も大いに含まれる。
新たなる旅路が始まったきざ㐂もまた、応援していきたい。
さて、今回の握りは烏賊、春子鯛、小鰭が秀逸だった。
烏賊に歯が入る時のシャクっとした感触、硬めに炊いた赤酢のシャリとのバランス含めてとても良かった。
一方で春子はきっちりと締められ、朧の旨味と柔らかな食感と風味に魅了された。
また次が楽しみだ。
2019/06/12 更新
2019/05 訪問
薫風の新星、きざ㐂
薫風とは5月を表わす季語。
ということは、きざ㐂が開店一周年を迎えたという事。
この一年で、色々と変化しながら成長してきた。
開店当初から比べると、玉子焼きや味噌汁も変わり、赤酢のブレンドや小鰭の締め方など、『きざ㐂』流の理想を目指して日々前進している。
さて、今回特に出色だったのは鰹の炙り。この時期は鮪の赤身よりも鰹の方が旨さが立っている。ほのかに燻香を纏わせ、その後皮目を炙ったもの。
そして締め方を変えた小鰭、旬を迎えた鯵も堪らない味わいだ。
まだまだ予約は取りやすいので、鮨気分の時は当日でも電話してみることをお勧めする。
薫風の新星、そんなお店。
2019/05/18 更新
2019/04 訪問
薫風の新星、きざ㐂
どうしよう、目が覚めた時から今日のお昼は鮨気分だ。
この気持ちを抑えるのは不可能だ。
席が空いてる事を祈りながらきざ㐂に電話すると、すんなりオーケー。
店に着いてみると今日の昼は私一人だけしか居ないという。なんときざ㐂貸し切り!という事で、大将と一対一で鮨を握ってもらうというなんとも贅沢なランチとなった。
聞くところによると、たまにこういうこともあるそう。きざ㐂くらいの店になると当日電話しても断られるだろうと客側が勝手に思い込んでしまうが、突然鮨気分になったら迷わず電話するのが正解だ。
さて、今回は昼の握りのコースをいただいた。鮨的にはこの時期は端境期で、鮪も痩せて、穴子や鯖なんかも厳しくなる。
握りの一貫目は細魚から。あれ?なんか砂利がいつもと違うぞ?と思っていると、酢のブレンドを変えたとの事。鮪とのバランスを考え赤酢二種のブレンドから、米酢も入れた四種のブレンドに変更したそうだ。それにより舎利の色も味もマイルドな風味に変わっている。
いまの季節の鮪にはこの方がマッチする。
大将の木崎氏は本当に研究熱心で現場に満足せず、常に旨い鮨を追い求める姿勢には頭が下がる。
5/1できざ㐂も一周年を迎える。
赤坂の地でますます旨い鮨を目指して行って欲しい。
2019/04/15 更新
2018/10 訪問
薫風の新星、きざ㐂
きざ㐂は、行くたびに何か進化を遂げている。
今回もこの秋の素材を存分に楽しませてくれる展開だった。
豊洲市場に移って最初のセリにかかった三厩の鮪は身が柔らかく、適度に脂をまとって口の中でジュンッ、と溶けた。私は普段、鮪は赤身派なのだがそんな私でも今回のトロは素直に美味しいと思える逸品だった。
個人的な好みとしては、青魚好きには堪らない鯖が最高によかった。秋から冬にかけて真鯖が最も美味しい旬を迎える。幸せだ。
そして秋といえばイクラの季節だが、軍艦に何やらオレンジの液体を注ぎ込んでいる。なんとイクラを裏ごしして卵かけご飯にしてみたという。チャレンジングな一貫だが、そういうトライは前向きでいい。
そして最後の玉子も山芋の分量が変わってしっとりタイプにバージョンアップ。今までよりもこちらの方がタイプだ。
毎日の営業を続けながら、試行錯誤をしてレベルを上げていくのは大変なご苦労と思う。
しかし、客はそういうところを見ているし、だからこそその店のファンとなる。
きざ㐂には応援したいと思える何かがある。
また次の訪問が楽しみだ。
2019/01/25 更新
2018/09 訪問
薫風の新星、きざ㐂
あ、明日夜空いたから鮨行こう。いつものように急に思い付く。
きざ㐂に電話すると2回転目なら大丈夫という事で何とか席を確保することができた。
いつもの酢橘を絞ったキリリとしたハイボールでスタート。今日はどんなツマミかワクワクしてしまう。この期待感こそがきざ㐂の魅力のひとつでもある。
自家製のドライ塩辛も絶品だが、必ず魚の燻製が出てくる。これが美味い。日本酒が進んでしまう。口の中で薫香を転がしながら鼻に抜ける頃には旨味がとんでもなく広がってくる。いつか鯖の日に当たれと思っている。
今回は三厩の赤味が出色で、力強い赤味本来の香りが立ち上がっていた。そして秋の定番秋刀魚の身はとてつもなく豊潤。
最後にマグロ全部入りの太巻きが!
だんだんときざ㐂のスタイルが構築されつつあるのを感じる。
またこの可能性を味わいに行きたい。そんなお店。
2019/01/25 更新
2018/08 訪問
薫風の新星、きざ㐂
完全にローテーション入りし、月2ペースで通っている。流石にガラッと魚か変わるわけではないが、同じ鰻でも前回訪問時とは違う料理方法で出てきたりと細かな気配りがなんとも嬉しい。
今回新たなものは、つまみのあん肝。握りでは鱒子と秋刀魚。あん肝は冬のイメージが強いが、夏場のあん肝もまた美味く、山葵をちょっと絡めながらの日本酒は格別だ。
鱒子はちょうどこの時期のみのもので味わえたのは幸運だ。一般的なイクラよりも粒がひと回り小さいのが特徴。
そしてついに秋刀魚が食べられる季節になった。肉厚の身は適度な弾力があり、口の中で旨味を爆発させる。思わず目を細めて遠くを見つめてしまう。
相変わらず女将の日本酒セレクトは流石だ。『スッキリ目で』というざっくりしたオーダーでも料理に合わせて緩急つけたチョイスをしてくれる。いつもついつい調子に乗って飲みすぎてしまうのはそのせいだ。
今でもかなりのレベルの店だと思う。固定客もどんどん増えて行くだろう。しかし、この後もう一段上に昇るにはきざ㐂ならではのスペシャリテの一貫を生み出す必要があるのも必定。1年を通してきざ㐂の代名詞となる一貫。果たしてそれは何なのか。若き大将はきっとそれを成し遂げるに違いない。そんな期待を感じさせるポテンシャルがここにはある。
薫風の新星、そんなお店。
2019/01/25 更新
2018/07 訪問
薫風の新星、きざ㐂
体温を上回る暑さにやられ、やり切れない日が続く…。
そうだ、きざ㐂に行こう。
3回目にして初の夜訪問。
まずはハイボールに酢橘をギュッと絞って呷る。
チリリとした酸味が喉を通り、血管に染みるように消えて生き返る。
すっ、と突先の巻物がわたされスタート。これは安定の味だ。
そして枝豆。一見普通の枝豆だが、すこぶる香りがいい。青い香りが立ち昇る。
その他にも色々な酒肴が出されたが、真魚鰹のスモークや鯨、カリッと焼いた鰻、など垂涎の逸品が続く。
これは日本酒が止まらない。
日本酒のラインナップも幅広く、女将が料理に合わせてチョイスしてくれるのが嬉しい。
握りも、松茸の握りなんていう変化球から始まり、新烏賊の歯ざわりと喉越しはこの時期ならではのもの。
鱚の昆布締めもしっかりと旨味が乗って朧とよく合う。
鮪は赤身の酸味が良く立っていて夏の鮪ならではの味わいだ。
そして鯵。この時期最も美味い魚だ。味が良いからアジ、という名前の由来にも納得してしまう。
それ以外にもきざ㐂の鮨には本当に外れがない。どれもが納得の美味さがある。
若き大将のこだわりが散りばめられている。
本当にこれからどこまで登っていくのか、楽しみな店だ。
薫風の新星、そんなお店。
2019/01/25 更新
2018/06 訪問
薫風の新星、きざ㐂
5月を表す季語はいくつもあるが、もっとも人の心を掻き立てるのは『薫風』だろう。
くんぷう【薫風】
初夏、若葉の香をただよわせて吹いてくるさわやかな南風。(大辞林より)
そんな薫風の新星が赤坂見附に現れた。元とかみの木﨑倫氏が5/1に『きざ㐂』をオープンしたのだ。
まだ若い大将だが鮨にかけるモチベーションや拘りは相当なもので、研鑽に余念がない。
かといって狷介さは感じさせないのも好感だ。
とかみと比べるとシャリの質がやや変わって、炊き上げの固さや赤酢の鋭角さもマイルドに修正されている。
正直きざ㐂のシャリの方が断然好みに合う。
挨拶をすませるとまずは鮪の突先の巻物から。このスタイルはとかみ譲りだ。
握りは3日寝かせた伊佐木から始まった。口の中で凝縮された旨味が爆ぜる一貫。
鮪の赤身はパッと特有の風味が立ち上がり、トロは脂と旨味のバランスがいい。いずれにせよきざ㐂のシャリが最も活きるのは鮪と合わさった時なのは間違いない。
お互いの長所を増幅しあっている。
かといって、他の種に合わないというわけではないのだ。
小鰭は海老の朧を噛ませることで、シャリに負けない旨味が乗る。鯵は芽葱や大葉の風味が赤酢で引き立つ。
つまり一貫一貫、それぞれに旨さを引き出す工夫があるのだ。
口に入れるたびに、あぁなるほどという納得感がそこにはある。
それから、包丁を入れる時の真剣な表情と、雑談の時の可愛らしい笑顔のギャップもまた一興。
若き大将のこれからの飛躍を期待せざるを得ない。
そう、薫風の新星、そんなお店。
2018/06/02 更新
2ヶ月ぶりの訪問。さて、晩秋のきざ㐂はどうだろうか。
ここのところの天候不順で鯵が不漁でとんでもない値段らしい。そんな中でも今回群を抜いていたのが小鰭。今までも美味かったが、酸味、塩味、旨味のバランスがドストライクの好みだった。聞けば小鰭の締め方を改良中との事。小鰭は季節によって大きさが変わってくるので中々難しい魚なのだが、それ故に店ごとに大きく振れ幅がある種である。来るたびに何か進歩を感じられる。
そしてそれは次への期待へと繋がる。
きざ㐂の挑戦は続く。