この口コミは、味覚 文士(あじかく ぶんし)さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
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夜の点数:4.9
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¥10,000~¥14,999 / 1人
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料理・味 5.0
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|サービス 5.0
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|雰囲気 5.0
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|CP 4.5
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|酒・ドリンク 5.0
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[ 料理・味5.0
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| サービス5.0
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| 雰囲気5.0
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| CP4.5
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| 酒・ドリンク5.0 ]
黒の扉が開くとき、焼き鳥は芸術になる――六本木『とり澤』の美食劇場
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2024/12/23 更新
ごきげんよう、諸君。
六本木の夜に迷い込んだ私は、秘境のような隠れ家「とり澤 六本木店」の黒い扉を叩いた。看板もなく、ただ黒が静かに語りかけるその佇まいは、まるで美食家だけに開かれる秘密の入口だ。
扉を開けた瞬間、そこに広がるのは黒を基調とした洗練の空間。カウンター席のみという潔い構成に、「ここは焼き鳥界のオペラハウスか?」と思わずつぶやいた。木と黒が織りなすシックな調和は、清潔感と高級感のハーモニー。ここで語られる物語は、舌先だけでなく五感すべてを満たしてくれる。
1730の一斉スタート。始まりの鐘が鳴るようなこの時間の設定もユニークだ。カウンター越しに見える大将は、焼き鳥を操る魔術師そのもの。焼き場の炎の揺らめきが、舞台のスポットライトのように大将の手元を照らす。
まず一串、口に運べば、これはもう「焼き鳥」という概念を超えた芸術だ。14本を次々といただき、その度に私の舌は新しい詩を紡いだ。ささみは絹のように滑らか、つくねは心に灯る小さな火のように温かい。皮のパリッとした食感と中のジューシーさは、まるで初恋の記憶が甦るようだ。
大将の立ち振る舞いも見事である。絶妙なタイミングで串が運ばれ、言葉少なに「どうぞ」と差し出される。そこには押しつけがましさはなく、料理が語るべきことを任せるプロフェッショナルの風格が漂う。大将の空気感は、この店の主役を焼き鳥に据える名演出家だ。
「締めはどうなさいますか?」と問われ、冷麺をオーダー。焼き鳥の余韻を残したまま、一口啜るとその清涼感に胃袋が歓喜の声を上げる。いや、歓喜しすぎたのかもしれない。気がつけば、私は食べ過ぎの極致に達していたのだ。
諸君、六本木の夜にこの隠れ家を訪れる際は、空腹を伴い、好奇心を忍ばせていただきたい。「食べることは舌先で読む物語」。ここで語られるその物語は、人生の一ページを彩る美食の叙事詩だ。
さあ、諸君。わが書斎で共に美食の物語を紡ごうではないか?