65回
2024/01 訪問
薄衣の芸術
冬の近藤さん。今年最初の訪問でした。
特に好印象だったものは河豚の白子と人参。次点がカワハギと椎茸かなと。
河豚の白子は臭みがなく、トロトロでクリーミー。非常に美味しかったです。カワハギは肝を身で挟んで揚げたもの。以前と比べるとカワハギの質は落ちているような気もしますが、肝への火の入り方は絶妙だと思います。
人参は千切りにして飴細工のように纏めたもの。香り良く、甘味が抜群でした。表面積がかなり広いにも関わらず、油切れもそこまで悪くありません。それでも油が気になるという方は、すぐには食べずに少し置いておくと油が落ち着いてくれます。椎茸はピーク時と比べると落ちますが、食感・香り・うま味とまずまず良好でした。
換気は非常に良く、油の香りがお店に籠っているなんてことはありません。その一方で、コロナ前よりも席数を減らしているとはいえ、まだ席の間隔は若干狭めというのが本音でしょうか。銀座の一等地という立地を考えれば、価格は非常に良心的だと思います。
2024/03/02 更新
2023/12 訪問
薄衣の芸術
初冬の近藤さん。冬の天種に入れ替わっていましたが、目当ての鯊や牡蠣は入荷がなかったようです。
最も好印象だったものは椎茸。次点が人参。魚介では金目鯛や穴子が好印象でした。
肉厚の椎茸は押し返すような弾力に逆らって噛みしめると、うま味が口の中に溢れ、香りが鼻の穴に抜けていきます。うま味・食感・香りと全てが揃っています。
人参はサツマイモと並ぶこちらのシグネチャ。我が家では人参の方が人気があります。飴細工を模した人参の天ぷらは甘味が抜群。目でも愉しめる逸品です。表面積が広い分、油切れに多少の難はあるので、供された際に少し待ってから食べることをお勧めします。
穴子は外はカラリ、身はムッチリ・ホクホクに揚げられており美味しかったです。金目鯛もフワフワ。
油切れは良好ですし、吸油量も少ないです。当店より油を頻繁に交換するお店はないでしょう。太白胡麻油をメインに太香胡麻油(極淡)も少しブレンドしているので、太香が馴染んでいないうちは香りが気になる人もいるかもしれませんが、油は常に新しい状態です。換気も当店が日本一だと言って差支えないでしょう。
2023/12/29 更新
2023/09 訪問
薄衣の芸術
秋の近藤さん。真っ当な天ぷら屋さんにとっては難しい季節になってしまったのではないかなと。
最も印象に残ったタネは女鯒。他店も含め、今年の最高値を更新。肉厚な身は外をカラリ・中はムチっとホクホクに揚げられており、非常に美味しかったです。スミイカもまだまだ柔らかい食感が楽しめるものでした。それ以外では蛤もジューシーでGood。
野菜では南瓜とニンジンが好印象。南瓜は当店では晩夏から秋にかけて供される天種。やや大きめにカットされた南瓜は時間を掛けてじっくり揚げられ、ペーパータオルで蒸らしてから供されます。皮と果肉の際の甘味と香りが印象に残る逸品です。
人参は冬場のものや晩春の雪室人参が一番なのかもしれませんが、通年安定して美味しいものがいただけます。松茸はこの二、三年はもう一つといったところですが、近年の不作と請求額を考えれば不満は感じませんでした。
油は太白胡麻油がメインですが、1/4ほど太香胡麻油(極淡)もブレンドされています。油をこれでもかという位に交換するので、油は常にきれいな状態が保たれています。換気に関しても間違いなく日本で一番良い天ぷら屋でしょう。
2023/12/28 更新
2023/07 訪問
薄衣の芸術
夏の近藤さん。お好みのメニューが夏野菜一色に変わっていました。
最も印象に残ったものは岩牡蠣(富山)。とてもクリーミー且つジューシーでした。10年以上?前に近藤さんで初めて岩牡蠣の天ぷらを食べた時の感動は今でも忘れられません。ここ数年、メニュー上で見かけず残念に思っていたのですが、久しぶりにいただけて幸せな気分になりました。
岩牡蠣以外にも賀茂茄子、新銀杏、蛤が非常に美味しかったです。賀茂茄子は中がトロトロ・ジューシーで、噛むと口の中に熱々の汁が広がります。大振りにカットした賀茂茄子は内部の水分を利用して蒸し料理の要領で揚げてあります。近藤さんらしい一品だといえるでしょう。
美しいエメラルドグリーンの新銀杏も、出始めのこの時期が一番香りが良く美味しいと思います。蛤は春のものが美味しい印象がありますが、この日のものは非常に美味しかったです。
定番の天種では穴子が良かったかなと。外はカラリ・サクサク、中はホクホクに揚げられており美味しかったです。
2023/08/06 更新
2023/06 訪問
薄衣の芸術
天ぷらのハイシーズンの近藤さん。この時期ならではの天種を目当てに訪問しました。
特に印象に残ったものは鮑、トウモロコシ、ジャガイモ。鮑は房総の黒鮑。炊いていない生の状態から揚げていくのですが、中心部に軽く火の入った程度の仕上がり。外側から中心部に向けて食感にグラデーションがあり、口の中に芳醇なうま味と香りが広がります。
トウモロコシは甘々娘(山梨)。当店のために通常よりも多く間引きして栽培されたものです。抜群の甘味と鼻に抜ける香りが堪りません。6月の限られた時期しか入荷が無く、毎年楽しみにしているお客さんが多い逸品です。甘々娘が使われるようになった最初の数年よりも質が上がっているような気がします。
ジャガイモの天ぷらは、白米をジャガイモで挟んで揚げる変わり種。白米とジャガイモに不思議な一体感が生まれており、外はサクッとしていますが、中はムッチリ・ホクホク。ご飯の部分に醤油を垂らしていただく、ちょっと野暮ったいものですが、揚げ色の付いたジャガイモの香ばしさと醤油が実に良く合います。
上記以外では女鯒、アオリイカ、新蓮根等も美味しかったです。空豆は春に比べると香りが落ちていましたが、それでも十分美味しいといえる水準だったかなと。
2023/08/06 更新
2023/05 訪問
薄衣の芸術
初夏の入り口、山菜シーズンも終盤といった時期に伺いました。この日も天種の書かれた紙と睨めっこしながらお好みで注文しました。
特に好印象だった天種は空豆、姫竹、蛤。
上記に次ぐのが人参、ヤングコーン、ジャガイモ、白魚、女鯒あたりかなと。
ハリギリや山独活といった天然の山菜も美味しかったです。
空豆は柔らかく香りが素晴らしかったですし、蛤もジューシー。姫竹は頬張るとサクッとした食感とともに爽やかな香りが鼻に抜けました。
ジャガイモの天ぷらはご飯をジャガイモで挟んで揚げた変わり種。これからの時期にはもっと美味しくなるはずです。人参は甘味も然ることながら、目にも美味しい逸品。ヤングコーンも食感・香りともに良好でした。
バラで揚げた白魚はムッチリとした食感が好印象。女鯒はカラリと揚げられており、身がしっとり・ホクホクで美味しかったです。
6月はいよいよ天ぷらのハイシーズン。次回の訪問が今から楽しみです。
2023/05/30 更新
2023/03 訪問
薄衣の芸術
春の近藤さん。天種の書かれた紙と睨めっこしながらお好みで注文しました。
特に印象に残ったものは筍と空豆。筍は塚原の朝掘りの白子筍。中まで火が入り切っていない絶妙な揚げ加減で、筍らしい歯応えと鮮烈な香りが印象に残るものでした。えぐ味の少ない筍だからこそできる天ぷらです。空豆も柔らかくて香りが抜群でした。非常に美味しかったです。
上記以外では蛤、白魚、公魚も美味しかったです。蛤はとにかくジューシー。白魚は大葉で巻いたものとかき揚げにしたものの二種類をいただきました。前者は中がトロッと、後者はムッチリとした食味を楽しめました。公魚もパンパンに抱卵しており美味しかったです。
2023/04/27 更新
2023/02 訪問
早春の近藤さん。寒さが峠を越したころに伺いました。
印象に残った天種は河豚の白子、白魚、空豆、ニンジン。
河豚の白子はとろとろクリーミー。臭みもなく、非常に美味しかったです。白魚は大葉で巻いたものとバラでかき揚げにしたものの二種類の食べ方で。前者は中がトロっと。後者はもっちり・ムッチリとした食感が愉しめます。公魚もパンパンに抱卵しており、こちらも美味しかったです。
ニンジンは香ばしくて実に甘い。空豆は柔らかく、香りが鼻に抜けます。椎茸も食感・香り・うま味とまずまず。
太白に太香(極淡)をブレンドしているので、人にっては香りが合わないという方もいらっしゃるかもしれません。ただし、油を頻繁に換えているので、常に油のコンディションは良好。換気も、私が知る限りでは最も良い天ぷら屋です。
2023/03/26 更新
2022/12 訪問
薄衣の芸術
初冬の近藤さん。鯊、牡蠣、甘鯛といったタネはありませんでしたが、女鯒のような江戸前らしい定番種はたとえ価値が伝わりにくくとも欠かさず仕入れられています。
人参は千切りにして飴細工のように。甘味が印象的な逸品です。通年楽しめる天種ですが、強いて言うなら冬から春くらいまでがシーズンになるのかなと。晩春には雪室人参(スノーキャロット)という甘味に富んだ品種も供されます。
椎茸は食感、香り、うま味とまずまず。この日は山ごぼうに加えて、堀川ごぼうが新しく天種のラインアップに加わっていました。ワカサギも抱卵こそしていませんでしたが、味はなかなか。
頻繁に油を交換しているので、油のコンディションは常に良い状態。換気も当店より良いお店はないでしょう。店内が油臭いということがありません。
最近流行りの高額店はおまかせのコースのみで一斉スタート、従って鍋の中には常に同じ天種が入っているというのが一般的です。このスタイルは店十分の条件ですから揚げるのは楽なのでしょうが、客側に自由度はありません。近藤さんには、そういった高額店に欠けている、客に合わせる器量があります。それが当店を高級店たらしめる所以でしょう。
2023/01/01 更新
2022/11 訪問
薄衣の芸術
晩秋の近藤さん。鯊や牡蠣の入荷がなかったのが残念でした。
特に印象に残った天種は椎茸。次点が人参、山ごぼう。魚介では鱚といったところでしょうか。
椎茸は食感、香り、うま味とこの日のものが今年一番でした。噛むと押し返すような歯応えがあり、その弾力に逆らって噛みしめると香りが鼻に抜け、口の中にはうま味が溢れてきます。原木椎茸を供するお店も増えましたが、この時期の近藤さんの椎茸は一味違います。非常に美味しい椎茸でした。
飴細工を模した人参は目にも美味しく、山ごぼうも無駄な繊維質がなく香りが良かったです。鱚は質良く、しっとり・ふんわりと揚げられており、ミルキーかつシルキー。美味しかったです。
2023/01/01 更新
2022/10 訪問
薄衣の芸術
秋が深まってきて松茸が一段落という頃に訪問。鯊が獲れなくなった昨今、天ぷら屋的にはやりにくい時期になってしまったように思います。
強いて良かったものを挙げるとするならば、鱚と女鯒でしょうか。鱚はしっとり・フワッとしており美味。女鯒はホクホク。この時期でもなかなか美味しかったです。
仙鳳趾の牡蠣は以前より早い時期から供されるようになりました。晩秋~初冬のものに比べるとまだまだだと思いますが、こちらも意外と美味しかったです。
一方、椎茸はこの時期にしてはもう一つ。食感、香り、うま味と全てにおいて物足りなかったです。例年だとこれ位から美味しくなるはずなのですが・・・。
今回はデザートの写真を一枚。ピオーネ、シャインマスカット、無花果、メロン。以前と比べると果物の質も下がったように思いますが、それでも十分上質。果物好きには堪りません。甘味が弱いものから順番に食べることが肝要。最後まで真剣勝負です。
2022/11/19 更新
2022/08 訪問
薄衣の芸術
盛夏の近藤さん。今夏は天候不順や食材の価格高騰で思うような天種に出会えませんでした。
そんな中で最も印象に残ったものが新いか。外はサクッと揚げられており、身は実に滑らかで柔らかく、甘味も十分。非常に美味しかったです。新いか以外の魚介では、鱚がふんわり・しっとりと揚げられておりGood。
野菜ではジャガイモ、トウモロコシが前回に続き好印象。夏定番の種ごと食べられるピーマンも香り良く美味しかったです。新銀杏も外はサクッと、中はモチっと、鼻に抜ける香りもまずまずといったところでした。ただし、ここ数年、新銀杏は7月の方が美味しいものに出会える確率が高くなってきたような気がします。
2022/08/23 更新
2022/07 訪問
薄衣の芸術
異常に早かった梅雨明け直後の訪問。印象に残ったものはトウモロコシ、賀茂茄子、ジャガイモ等。
この日のトウモロコシはミルフィーユという品種。今年は甘甘娘をいただくことはできませんでしたが、このミルフィーユという品種もなかなか甘くて美味しかったです。
ジャガイモの天ぷらは白米をジャガイモでサンドウィッチして揚げたもの。外はサクッと香ばしく、中はホクホク。中央の白米の部分とジャガイモの一体感が何とも言えません。白米の部分に醤油をかけていただくのですが、揚げ色の付いたジャガイモの香ばしさと醤油が非常に良く合います。少々野暮ったいものですが、大好きな一品です。
賀茂茄子は大き目にカットして揚げたもの。これぞ蒸し料理という感じの仕上がりは、水分の多い賀茂茄子ならでは。揚げる際のサイズも重要なのだと思います。こちらも醤油でいただくのですが、ちょっと多めかもというくらい掛けた方が美味しいと思います。
2022/08/23 更新
2022/06 訪問
薄衣の芸術
天ぷらのハイシーズンに訪問。今年はトウモロコシや鮑がありませんでしたが、久しぶりに近藤さんで銀宝をいただくことができました。
銀宝は、銀宝を食べずして天ぷらを語ることなかれと言われる天種の王様。コリっとしたゼラチン質の皮目とムッチリと締まった身の生み出すうま味と食感のコントラストが何とも言えません。癖がなく上品、それでいてうま味が強いタネです。これは塩より天汁で食べるべき天種だと思います。
この日の銀宝は皮目のゼラチンも相応にあり、ムッチリとした身の弾力と濃厚なうま味が味わえるものでした。他店も含め、この2~3年の間で食べたものの中では一番美味しかったかなと。
それ以外にも、ジャガイモ、賀茂茄子が非常に美味しかったです。魚介では鱚、女鯒、アオリイカあたりが次点だったかなと。
2022/06/13 更新
2022/05 訪問
薄衣の芸術
天ぷらのハイシーズン幕開けという時期に訪問したのですが、この日はちょっと肩透かしを食らってしまいました。
ホワイトアスパラガスは香り良くジューシー。ヤングコーンは食感・香りともにGood。姫竹の香りもまずまず。たしかに悪くはないのですが、どれも以前と比べるともう一つというのも本音です。
魚介では蛤がジューシーで美味しかったです。鱚、女鯒も決して悪くはありません。魚介も従来と比べると首を傾げてしまうことが多かったです。他の時期なら、季節的要因を疑うのですが・・・。
定番のタネ以外では、クロムツを見かけたので試してみました。皮目にしっかり火が入っていましたが、身はふんわりと仕上がっており、うま味が感じられました。悪くはないのかなと。寒い時期に見つけたら、また試してみようと思いました。
この日は久しぶりに稚鮎の天ぷらもお願いしました。琵琶湖の天然物でしたが、こちらの鮎は活けではないせいか、そこまで美味しいと思ったことがありません。残念ながら、この日もそれを再認識する結果となってしまいました。
そして、タネ質以上にガッカリしてしまったのが油の香り。油の交換時に太香(極淡)の比率をいつもより高めにしてしまったのか、それ以降、油の香りが気になって仕方なかったです。価格をほぼ据え置きで営業されているので、以前よりタネ質が下がるのは諦めが付きますが、油の比率は完全なミス。そこは残念に感じてしまいました。
2022/06/13 更新
近藤さんの天ぷらはとにかく軽く、素材の持ち味を十二分に引き出しています。素材の持つ水分を利用した加熱調理で、天ぷらは蒸し料理と言われる所以がよく分かります。揚げる際のタネの最適なカットやサイズまで工夫されており、素材の持つうま味、香り、食感が愉しめます。脆いほどに薄い衣に包まれた天ぷらは芸術的です。
他店と比べると、特に野菜の天ぷらが充実しています。さつまいもが当店のシグネチャーとして有名ですが、個人的には以下の野菜の方がオススメです。
春には筍(塚原産の朝掘り)、アスパラ、空豆。初夏から夏にかけては姫竹、とうもろこし(甘甘娘・ゴールドラッシュ)、じゃがいも、いんげん、賀茂茄子、ピーマン。晩夏には南瓜も外せない一品です。秋が深まり寒くなってくると、椎茸(岩手八幡平)、山ごぼうやニンジンなども美味しくなります。アスパラや椎茸は通年供されますが、それぞれ上記の時期が断トツでしょう。
2020/12/06 更新