131回
2017/09 訪問
鮪の優先順位
貸切の宴を楽しんできました。
前回のように全てが横綱大関級という奇跡は年に1度もないでしょうから、そこまで揃い踏みではありませんでしたが、何十回伺っても安定しています。
由良の雲丹も良いもので嬉しかったです。
もうシーズンは終わりですね。
今年最後の由良の雲丹になったかも知れません。
日本人は食材もブランドが好きなので由良の雲丹が美味しいと言うとなんでもかんでも由良の雲丹であれば美味しいと勘違いされますが、一番札、二番札というトップクラスでなければ美味しくありません。
究極の話をすれば、一番札でも、日によっては満足できないものもあります。
私はこのお店で由良の雲丹を頂くまで由良の雲丹は美味しくないなあと思っていました。
良い雲丹の旨味がほとんどなかったからです。
また、たまにこちらのお店以外のレビューで由良の雲丹はあっさりとしているという評価を散見します。
それはトップクラスの由良の雲丹を食べたことがないからだと分かりました。
世の中の99.99%の方が鮪の本当の味をご存知ないのと同様に私も由良の雲丹の本当の味を知らなかったのです。
年に数回というような究極の由良の雲丹は、脳天に突き刺さるほど濃厚です。
あっさりなどしていません。
うちの店で出させて頂いたエゾバフンウニをデザートみたいと仰ったお客様がおられますが、究極の由良の雲丹となるとそれを遥かに凌駕します。
とにかく濃厚。
但し究極の由良の雲丹でなければダメです。
普通に食べられるものはむしろ不味いです。
私が以前頂いた普通の由良の雲丹は良いエゾバフンウニの足元にも及ばない代物でした。
雲丹本来の旨味が全然無くて、ミョウバンや薬の味や風味がないだけというものだったのです。
ほとんどの方が口にすることができないようなトップクラスの魚介類はそのようなものなのです。
逆にそうでないものは、その魚介類の本来の味はしません。
鮪も雲丹も穴子もイカも鯛も鮑もヒラメもアジも鯖も秋刀魚もイワシもいくらも河豚もタコもホタテも牡蠣もハマグリもサザエもとり貝も鰻もありとあらゆる魚介類、世に出回っている99.99%はその食材の本来の味がしないのです。
そんなものが高級店で提供されるから腹が立つのです。
食材本来の味は世界一の天才シェフが何をしても補えません、絶対に。
自然に存在する旨味は人の手ではどうすることもできないからです。
だからコンセプトを変えて、比較的良い食材を型にはまった調理方法に囚われず、そこそこの値段設定で提供して貰えると凄いお店、凄い技術と感動するわけです。
逆に料理だけで1万円を超えるようなお店で普段食べているものよりクオリティが低い食材を自分が修行したお店のマニュアル通りで出されれば怒りは頂点に達します。
料理に対する真摯な気持ちが全く伝わらない見かけだけの有名店での修行という陳腐なプライドが横たわっている料理。
資格があるだけで通り一遍の訴訟しかできない弁護士に多額の報酬を払うようなものです。
訴訟など一般的なものは真剣に勉強すれば誰でも本人訴訟が出来ます。
自分でできないことに対して報酬を払うことに意味があるのです。
今実を結んでいない有名店での修行という肩書きだけに対してお金を払わなくてはいけないのでしょうか。
一体何に対して1万円払うのでしょうか?
鰆が凄く美味しかったです。
旬は春だとか真冬だとか言われてますが、以前に書かせて頂いているように、トップクラスのものは、旬など関係ありません。
旬とされていない時期でも築地には物凄いものが来る時があるのです。
ただし、築地の仲買において優先順位が最上位クラスに入っていないと手に入れることは出来ませんが、、、。
9月末の大間の鮪。
凄みさえ感じました。
極上でした。
もしかしたらこの時期に頂いた鮪では人生最高だったかも知れません。
赤身、中トロ、大トロ。
極上の鮪は赤身が一番美味しいと何度も書かせて頂いていますが、本日のものは中トロも大トロもものすごく美味しかったです。
勿論、一番美味しい部位を出してくれたのですが、それにしても予想を上回る凄いものでした。
脂が上品で良い意味で脂を感じさせないのです。
本物を追求しない高級寿司屋で出てくる霜降りのような大トロは本物の鮪の大トロとは異なる食べ物です。
鮪本来の味がないので霜降りのような重くて透明感が全くない脂で美味しいと錯覚させるのです。
誰も本当のことをご存知ない。
以前にも書きましたが、特に鮪の入手は仲買での優先順位が決定的に品質を決めてしまいます。
私が少し前に予想した通り、城助というお店の仲買での優先順位がトップクラスに近づいてきたのかも知れません。
いや、かなり上がったと思います。
9月末にこのような大間の鮪が手に入るのですから。
更に凄いことになってきました。
握りは0.3秒は無理としても3秒以内に召し上がって下さい。
極上の食材と城助さんが泣いてしまうので。
2017/10/26 更新
2017/09 訪問
横綱大関そろい踏み
城助の営業時間だと言うのにスマホに電話が入っていました。
私も仕事中で音を消しているので気がつかなかったのですが、一息ついた時にふとスマホをみると履歴に出ていました。
こんな時間に電話が入ることは今まで一度もなかったので、何事が起きたかと思って、折り返しの電話をしてみました。
「どうしました?」
「いやー、今○○さんがいらっしゃっているのですが、今日のタネはどれも凄いから水野さんに知らせて下さいと言われたのですよ。」
「そうなんですか、今日はけっこう忙しいから伺えるかなあ。」
「9時以降1席だけならいつでも入れますよ。」
「そんな食材が良いのなら、嫁といっしょじゃないと殺されるなあ。まあ、どちらにしてもまだ仕事中なのであとから電話します。」
しばらくしてから、また一息ついている時にスマホを見るとまた電話が入っていました。
またこんな時間に電話が入っているんだとかなり驚きました。
「どうしました?」
「いやー、今開けた由良の雲丹は物凄いですわ。」
「年に一度食べられるかどうかのレベルなんですね。」
「そうっすねえ。」
「分かりました、嫁を説得して遅い時間でも良いなら伺います。」
「お待ちしております。」
さて、たまたまうちの店で夕食を食べ終わっていた妻ですが、年に一度かどうかの由良の雲丹となればまだまだ食べられるということで遅い時間に伺いました。
筋子。
年に一度入るかどうかという筋子は透き通るような綺麗な旨みがあるものでした。
○○さんはまずこれに感動されたようです。
小イワシ。
ここまで脂が上品なイワシはなかなかありません。
滅多に口にすることは出来ないでしょう。
かつお。
八丈島のものだったと思います。
こちらも上品な旨みがありました。
もしかしたらかつおは握りだったかな。
握りの最初は鯛でした。
これもすごかったです。
9月という時期の鯛でこれほどちゃんと鯛の甘みがあるものは初めて頂いたかも知れません。
他の握りも全て良かったです。
年に一度か二度という横綱級や大関級のクオリティーのものが目白押しでした。
熟成度もベストに近いものが偶然揃ったのでしょう。
個別には凄いものを頂いたことがありますが、9月のこの時期にこれだけ揃っているのというのは初めての経験でした。
鮪も9月のものとしてはかなり良かったです。
仲買における鮪の優先順位が凄く上がったのでしょうか?夏なのにここ最近ずっと安定して良いようです。
このような鮪の味がちゃんとする鮪以外は食べたくないとしみじみと思いました。
世の中の99.9%以上の鮪は鮪の味がしないのでいつも食べることはできませんが、、、。
そして、由良の雲丹。
まあ、凄かったですね。
もちろん、一番札ですが、味に関してはこれ以上のものはないでしょうと城助さんに申し上げると、大きさはもっと大きいものがありますが、味に関しては仰る通りですと言われました。
妻もこんな雲丹は食べたことがないと言っていましたが、私も人生で食べた雲丹で最高の味だったと思います。
食べ物に関しては、実際に経験しなければ絶対にその味に対する感動を得ることはできません。
最高レヴェルの雲丹を何度も食べていると思っていましたが、上には上があるものです。
由良の雲丹の究極のものはこういうものだということを思い知らされました。
この味をご存知の方は世の中に何人おられるのでしょうか。
1000人未満だと思います。
食べる機会がないからです。
仕入れることができないからです。
ちなみに妻はお腹いっぱいだったはずなのですが、握りを18貫くらい食べていました。
城助の芸術的な握りは別腹になるのです。
今夜は○○さんの城助貸切の日です。
仕事の都合がついたので、私も今夜城助に伺います。
この日のようなオールスターというわけにはいかないでしょうが、常に新しい発見があるので楽しみです。
日本酒を飲みすぎないように気をつけます。
十四代あるかな。
2017/10/23 更新
2017/08 訪問
旬と産地
頻繁に伺っているので都度は書かせて頂いておりませんが、感じたことがある場合は更新をさせて頂いています。
寿司屋や日本料理屋で全ての食材の産地を告げるところがあります。
そのためかお客側もそれを詳しく知りたがる方がいらっしゃいます。
個人の自由の話ですが私はあまり意味のないことだと思っています。
確かに魚介類には旬があり、良いものが取れるという有名な産地があります。
鮪であれば大間が有名で既にブランド化していますし、神戸界隈では明石の鯛や蛸や由良の雲丹が有名です。
旬というべき時期もあります。
ただ、その日頂く食材が日本一とかそれに準ずるものである場合は関係がありません。
例えば、昨日、私の店でお客様に提供させて頂いた天然の牡蠣は旬のものではありませんでした。
牡蠣は英語のRがつく月に食べるものだと言われていますし冬のイメージがあり、真夏に天然物を頂く機会はほとんどありません。
夏は天然物は岩牡蠣が出回ります。
しかし、仕入れの当日の日本一となれば、冬のトップクラスと同じレヴェルのものもあります。
昨日の牡蠣は厚岸のものでした。
夏は厚岸とその周辺で天然物の牡蠣がとれますが、厚岸のものであっても当然のことながらピンキリがあります。
そして、こんなお盆の季節であっても、単に厚岸産ということではなく、その日の日本一となれば、人生で一度も食べたことがないと言うような牡蠣を食べることは不可能ではないのです。
この日、こちらのお店で頂いたあん肝は素晴らしいものでした。
基本的には私はこのお店では握りしか頂きませんが、城助さんが私にどうしても食べて欲しいものがあると握りにはできないものなどは出してくれるのです。
大変上品なあん肝でもちろんこのような最高級のものはポン酢などでは絶対に食べません。
ポン酢で何かを食べると食材の味がポン酢の味で覆われてしまうので、食材そのものが最高級であればポン酢など使わないのです。
鯛もひらめもそしてふぐも最高級のものにポン酢などは使いません。
ちなみに真夏の鯛としては、この日頂いたものはかなり良いものでした。
前述の物凄い牡蠣も当然ポン酢など使いません。
なにもしないでそのままが一番美味しいと思います。
ちなみに私の店では生は出したくないので少し火をいれたものを提供させて頂いています。
話がそれましたが、真冬のイメージが強いあん肝でもお盆の季節に素晴らしいものが食べられることはあるのです。
もちろん、運は必要です。
そのような年に一回か二回というようなものは仕入れてみなければわからないからです。
そして、そのような食材を仕入れることができるお店に行かなければ食べることは不可能です。
魚介類の仕入れの仕組みは非常に特殊な世界となっています。
日本国中どこでとれたものでも、高い値段がつくものは全て築地にいきます。
明石の鯛もトップクラスは全て築地に行くので、神戸中央市場や明石の市場にはありません。
ないものは買えないのでそのような市場でしか仕入れをしたことがない料理人の方は、日本一クラスの食材の存在すら知りません。
私の店にも料理人の方が多く来てくださっていますが、例えば帆立を召し上がるとこんな味の帆立がこの世に存在していることすら知らなかったと仰る方もおられます。
北海道には美味いものがあると勘違いしておられる方が多いですが、北海道では素晴らしい食材がとれますが、とれたものは即日築地に行くので、北海道には北海道でとれたトップクラスの食材はありません。
前述の帆立は、北海道産ですが、北海道では食べられませんし、東京に行ってもほんの一部の高級料亭でしか食べることはできないのです。
だから、この世に存在していることすら知らなかったという話になるのです。
日本中の料理人の0.1%もその存在をご存知ないと思います。
そしてトップクラスの食材は単に築地に行けば買えるものではありません。
鮪だったらこことこことここ。雲丹ならこことここ。
というようにそのようなものを扱える仲買は決まっているのです。
従って、まずはそのようなトップクラス食材を扱う仲買と付き合うことができなければ、そのようなものを買うことができないのです。
そして一番重要なのはそのような仲買のリストのどこに自分が入るかということです。
トップクラスの食材は数に限りがあるので、売る相手が決まっていて、その中で明確な優先順位が決められています。
それは仲買の社長さんの頭の中にあるのでしょうが、信じられないほどはっきりと順位が決まっています。
倍のお金を払うといっても絶対に売ってもらえません。
10倍のお金でも売らないでしょう。
そこには、仲買と飲食店との絶対的な信頼関係があるからです。
余ったものはいくらでも売りますが、行き先が決まっているようなトップのものは絶対に手に入れることはできません。
明石の日本一クラスの鯛は、神戸や明石では買えません。
築地に行ってもそれを扱えるような仲買と付き合いがなければ買えません。
付き合いがあっても、リストの上位に入っていなければ買えません。
仲買と高級料亭との付き合いは200年以上ということもあるので、そのリストで上位に入ることはほぼ不可能です。
だから何度も書いていますが、全財産をつぎ込んで、大借金をしてでも、死ぬほど食べ歩きをしていない料理人を私は信用しないのです。
自分では手に入れられない、自分が修行をされたお店でも手に入れられない、そのようなクオリティの食材が実際に存在しています。
その味の凄さを知るには、お金に糸目をつけずに死ぬほど食べ歩くしかないのです。
私が中山城助という男が大好きで、料理人として最もリスペクトしている理由はそこにあります。
彼は、これだけお店が有名になり、予約を取るのが困難になっても、今もそして常に握りを食べ歩いておられます。
まだまだ進化したいからです。
このような時代は料理も常に進化しますから常に研究をしていなければ必ず陳腐化していきます。
また怒られるのでしょうが、進化するための努力を惜しむようではプロではないと私は個人的には思っています。
食べ歩きによって自分が出会ったことがないようなレヴェルの食材と出会うことができます。
アテ一つとってもこれまでと同じ食材をさらに美味しくすることはできないかを考えます。
こちらのお店であれば、由良の雲丹は日本一クラスのものが手に入れられますが、鮪は日本一まではいきません。
もちろん、私の知る限りでは関西の寿司屋ではかなり上質な鮪を手に入れておられると思いますが、東京には食材がもっと凄い寿司屋があります。
仲買との関係やコストの問題でトップの食材が手に入らないのであれば、手に入るもので更に握りを美味しくするにはどうしたら良いかを考えるしかありません。
ゼロから考えるのは不可能です。
ヒントが必要なのです。
そのヒントを得る方法は死ぬほど食べ歩くことしかありません。
100軒の寿司屋に行って300万円を使ってもたった一つのヒントが得られれば良い方でしょう。
300万円が全て無駄になるかもしれません。
自分が提供している料理よりも美味しくないものに300万円を使う可能性の方が高いからです。
500万円を無駄にするかも知れません。
いや1000万円を無駄にするかも知れません。
それでも進化のためには食べ歩き続けるのです。
その姿勢をひしひしと感じるからこそ、私は中山城助が日本一の寿司職人だと断言できるのです。
大体有名な方のお店には行かせて頂いていますが、それを感じられる寿司屋は他には一軒もありませんでした。
中山城助とはそのような職人であり、城助という鮨屋はそのようなお店なのです。
そのことは、築地の有名な仲買の社長さんにも必ず伝わります。
いや、もう伝わっているでしょう。
すると200年の付き合いをしている高級料亭と同じ順位になるという奇跡が起きることもあり得るのです。
超一流のものを扱う人は、やはり進化し続ける超一流の料理人に日本一レヴェルの食材を使って欲しいと思うものです。
近い将来、彼は、鮪などのトップクラスを入手することが極めて困難な食材についても日本一レヴェルのものを手に入れることができるようになるでしょう。
2017/08/15 更新
2017/08 訪問
一番札と二番札
築地では、雲丹と鮪だけがセリにかかります。
他の魚介類も良いものは毎日値段が変動しますが、セリにかかる雲丹と鮪はその変動が特に大きいと言えるでしょう。
先週の金曜日、由良の雲丹が美味しかったのは当然としても、この時期の鮪としては秀逸とも言えるものを頂くことが出来たので、食べられるうちに食べておこうと月曜日に予約を入れようとしたのですが遅い時間は貸切ということでダメでした。
「明日お願いします。」と言われたので、「明日は8時半以降は空いてるの。」と聞いたら、「大丈夫です。」ということだったので予約させて頂きました。
実は、私の母は人生の終焉を迎えておりまして、最近は頻繁に名古屋へ行っているのですが、7月いっぱいと言われていたのが誕生日である8月まで頑張ったので、この日、妻を連れて名古屋へ行くということで二人共仕事を休みにしていました。
8時半であれば、妹とのいろいろな打ち合わせのあとで神戸に帰って来れるので、予約させて頂くことができたのです。
ちなみに昨日昼ご飯としてアップさせて頂いたいば昇は母と最後に食事をしたお店です。
妻も連れて行きたかったので伺いました。
さて、本日の宴は妻の他に私の店にもいらっしゃって頂いている食通の方お二人もおられてとても楽しいものになりました。
金曜日よりも熟成が若いものもありましたが、総じてどれも美味しかったです。
ただ、由良の雲丹は金曜日頂いた二種類の方が味が濃く、透明感があったので雲丹は金曜日の方が美味しかったと呟くと城助さんが、「水野さんもわかってないなあ、最初のは今日の一番札、次は二番札ですよ。」とのこと。
築地だけではなく、由良の雲丹も非常に人気があるので当然セリにかかります。
本日の雲丹は一番高い値段がついたものと二番目の値段がついたものだということです。
「いや、でも個人的にはどう考えても金曜日の二番目に食べたものが一番美味しかった。」と言うと、「あれはあの日の二番札だったんですよ。」とのこと。
「金曜日の二番札の方が今日の一番札や二番札よりも美味しいということは普通にあり得るからどう考えても金曜日の方が美味しかった。」とここまで言うと、「そっすねえ、金曜日の方が良かったです。」と言いました。
常連の食通の方もご一緒していたので、私で遊んだのですね。
何回も書いていますが、魚介類のトップのものは毎日クオリティが変わります。
不味くて安いものは安定して不味いですが、トップクラスとなると年に一度か二度というようなものがあったりするので、その日、その日のトップの味はかなり上下するのです。
私も築地でトップ、すなわち日本で一番クラスの貝のみを仕入れて毎日商売していますが、トップクラスのものは毎日ものが違います。
普通にすごいものもあれば、年に一度か二度と思われるものもあるからです。
食材のクオリティはトップのものになると料理人の技術とかなんとかでどうにかなるものではないので、味がかなり変わるのです。
個人的にはなんたらかんたらと言う世界一の握りを提供するという伝説の寿司職人をすでに超えているのではないかと思っている中山城助という努力する天才をしても、それはどうしようもないのです。
ただし、彼は一日一日握るの上手くなっているようですので、与えれた食材の中でベストを尽くすという意味では、昨日よりも今日、今日よりも明日の方がその握りの芸術性は増しているでしょう。
伝説とされている数寄屋橋のお店や新橋のお店や数寄屋橋の高名なお弟子さんのお店とは全く異なる次元の握りの世界に入っておられると思います。
ちなみに金曜日とは異なる良い鮪が入ったということで本日頂きました。
これも夏鮪としてはずば抜けていました。
宮崎のもののようですが、3日も予約を入れておられる本日同席させて頂いた食通の方が羨ましいです。
夏鮪の美味しいものは冬の大間のトップクラスとはまた違った風味や味わいがあってとても好きになりました。
城助で食べさせてもらったおかげです。
ただ、逆に普通の夏鮪はますます嫌いになりました。鮪の味がしないからです。
2017/08/02 更新
2017/07 訪問
由良の赤雲丹
城助には昨年の冬に初めて伺ったので、今や神戸ではほぼ食べることができないという最高級の由良の赤雲丹を頂かなければなりませんでした。
店の団体様のご予約が日にちが変わったのでチャンスは少ないと思い、金曜日に無理やり妻と二人の予約を入れさせて頂きました。
妻は最初のマコガレイにやられました。
鮪にも白身にもジャストフィットするシャリは唯一無二、城助だけです。
この日はどれもほぼ完璧。
鮪が酷いと城助さんご本人から聞いていましたが、食べたら夏鮪としては秀逸だったので、なーに〜、鮪凄く良いじゃないとと言ったら、あまりにも酷かったからもう鮪はいらんと言ったらこれを送って来たんすよ〜。とのこと。
水曜日の夜中に予約したから、もうあったはず。
驚かせたかったのでしょうか。
この時期にたまたまこのような鮪が食べられたのは最高の幸せでした。
赤身と中トロと希少部位を出してくれましたがなるほど希少部位が特に美味しかったです。
由良の雲丹は、2種類頂きましだが、最初のものはいわゆる一般的な雲丹で味が濃厚なもの、二つ目は妻は生まれて初めて食べたと言ってました。
濃厚ではなく、爽やかな風味なのですが、旨味だけが浮かぶように感じる不思議な雲丹でした。
まだまだ食べたことがないものがあるものです。
穴子も味がかなり濃くなっていました。
今夜は仕事がないので、軽く昼飲みしていますが、予約が取れたら、今夜も伺いたいです。
2017/07/31 更新
2017/04 訪問
生まれて初めての体験
いやー、まだまだ本当に美味いものを食べていませんね。
痛感しました。
それなりに食べ歩きを趣味としてきて、入手が不可能に近いような食材ならばともかくとして、普通に食べられる食材の究極に近いものは大体食べたのかなと思っていました。
年齢的にもそろそろ舌の能力が落ちてきていると思っていますし、何かを食べて唸るほど感動するということは、数年に一度となっています。
昨年は、城助のひらめの握りを食べた瞬間に衝撃を受けて、異常なほどの城助ラヴァーになり、同じような城助ラヴァーの方々と毎日グループLINEで食の情報をやり取りしていますが、城助で同じような感動を味わうことはもうあまりないかなと思っていました。
夏の由良雲丹は物凄いようですが、7月まで待たなければなりません。
この時期はとり貝も美味しいですし、金目鯛の熟成も美味しいですが、感動するまでは至りません。
慣れてしまうのです。
それでも、城助の握りは毎日食べても飽きないので、いつか1週間毎日の自己記録を更新したいと思っていますが、7月までは人生初という経験はできないと思っていました。
夏鮪。
夏鮪は旨みが足りず、小笹やはしぐちで頂いても美味しいとは思いませんでした。
漬けなどで味を足して握りにすれば、まあ食べられるかなとしか思っていませんでした。
冬の大間のなにもつけずに食べても驚く程の旨みがある赤身は本当に美味いと思いますが、夏鮪ではそんなことを感じたことはないのです。
しかし、昨日の夏鮪は違いました。
いやー、初めて城助の握りを頂いた時と同じくらい、いやそれ以上に感動しました。
関西の方は鮪は美味しくないとおっしゃる方が少なくありませんが、大阪の市場やましてや神戸の市場には本当に美味い鮪は入荷されません。
本当に美味い鮪は、いや魚介類に関しては最高級のものは全て築地に集まります。
超一流のものは一部の店にしか回りませんが、それを食べて初めて鮪を食べたことがあると言えます。
鮪の味がしない鮪を食べても鮪の美味しさはわからないのです。
大トロだと脂の甘みがあるので、トロの部分が高値で提供されていますが、逆に言えば、食べるのが苦痛になるような赤身が世の中の99%以上を占めているのでそんな逆転現象が起きているのです。
本当に美味い鮪を召し上がったことがある方は、ほとんどの方が鮪は赤身が一番美味しいと仰います。
私も同じ意見です。
脂が軽いので極上の中トロも美味しいと思いますが、王道は赤身だと思っています。
さて、話がそれましたが、そんな鮪も夏鮪は個人的には好きではなかったのですが、価値観が変わりました。
冬の鮪とは全く異なる美味しさがあるのです。
城助の握りが美味しいということもありますが、食材としてクオリティーが物凄かったです。
夏鮪ですから、全体的にフレッシュな味わいがあるのですが、咀嚼していると綺麗で透明感のある冬の鮪とは異なった旨みが口の中に広がります。
冬の鮪は噛んだ瞬間に重厚な旨みが襲ってくるのですが、極上の夏鮪は清楚で上品な旨みが口の中にじわじわと広がっていって、飲み込んだあとでも口の中にその旨みがしばらく残っています。
極上の白身もそんな感覚があるのですが、それとも少し異なります。
個人的には人に説明するのに白身のような鮪と言っていますが、超一流の白身よりも口の中に旨みが残るのです。
冬の鮪のようなドカーンとくる旨みではなく、本当に本当に透明感がある旨みに味覚がしばらくの間支配されてしまうのです。
城助さんに聞いたらここまでのものは、年に一回か二回入るかどうかだそうです。
恐れ入りました。
昨日、今日、明日まではあるということでしたので、妻にどうしても食べさせたくて今日も予約を取りました。
なんと予約が取れたのです。
私も食の運が良いと思っていますが、妻もかなり食運が良いですね。
魚介類が好きな方、握りが好きな方が、あの夏鮪を食べずに人生を終えることは悲劇以外のなにものでもありませんね。
私自身は、昨日、今日と食べられますが、次は来年になってしまうかも知れません。
ここまでの夏鮪が今年また食べられるとは思えないからです。
2017/04/11 更新
2017/03 訪問
芸術と経営
芸術と経営は基本的には一致しません。
芸術家は己の芸術を追求し尽くしたいわけですから、根本的な話としてコストは考えません。
経営者はまずはコストのことを考えます。
経営はゴーイングコンサーンであり、継続しなければ何も始まらないからです。
東芝もそうですが、なんであんなめちゃくちゃなことをするかと言うと、理由は一つしかありません。
会社を潰したくないからです。
ましてや日本を代表する上場企業です。
先輩たちが血の混ざったオシッコを出しながら守って来た日本を代表する会社を自分たちの代で潰すことなど絶対に出来ない訳です。
赤字になりやすい要素は徹底的に排除したいのです。
城助という店がどんなあつらえなのか皆さんご存知でしょうか?
まあ一応私は寿司に限らずかなりの高級店に行っていました。
特に神戸に来る前の東京の独身時代、アメリカ的プロの経営者として、なんたらの社長、どこかの副社長、あそこの常務などと言う仕事をしている時は接待ではなく、自腹で週に4回は今思えばアホかと言うほど食にお金を使っていた時代があります。
ランチ5000円、ディナー3万円と言う毎日が普通だったこともあります。
自慢の話をしたいのではありません。
そんな時に伺っていた数々のお店のほとんどよりも城助のあつらえは高級感が満ち溢れています。
店の外装、内装はまあ、芸術家らしく、ご自身の理想を徹底的に追求しています。
まずはアプローチ。
扉を開けると京都のお店のような廊下があります。
そしてすぐには見えないカウンター。
広く長いカウンター。
普通であれば13席は取れるところをわざわざ9席しか入れないようにしています。
正面には物凄い金額をかけた壁があり、天井もかなり高いです。
カウンターの席の後ろには効率を考えれば必要のない廊下があり、通常ならば個室として使うべき空間は待合いになっています。
効率や多くの人を入れられると言うことを考えれば後ろの廊下と待合がなければ、個室二つは確保できるでしょう。
そうすれば、セレブや芸能人が来やすいですが、それはしません。
無駄と言える空間こそが一番贅沢であり、高級感があることを知り尽くしているからです。
そして個室を作らない本当の理由は、もうお分りでしょう。
シャリの温度を管理しているからです。
昨日、内装が変わった生粋に伺った時に、個室があったので、この個室も含めれば〇〇名様入れますねと言ったら、個室は使っていませんと仰っておられました。
まああの温度管理が徹底されたシャリをテーブル席で出すはずがないのですが、なぜ個室を作られたのか謎です。
何れにしても城助はあつらえにおいて効率は100%無視です。
まさに芸術家。
ところがこの方は単なる芸術家ではありません。
お客に対してはなぜかへんこを貫いておられますが、世界一の握りを提供すると言うことに関しては、徹底的に経営者なのです。
一般的なアホな職人気質、芸術家肌はあるところまでいくと食べ歩きをしません。
己の才能に溺れ、莫大な収入で生活も安定するからです。
なんでこんなに凄く、有名人も押し寄せる店のオーナー大将が他の店の寿司を食わなあかんのやと言う訳です。
しかし、彼は違います。
今も少しでも時間があれば食べ歩いています。
彼自身が寿司マニアなのです。
理由は一つ。
何か新しいアイディアのヒントになればと言うことなのです。
もう3兆865億回書いていますが、食べ歩きをしない料理人は終わっています。
これだけ世の中の価値観が変わる時代に命がけで食べ歩きをしなければ、己の技は世間から見れば退化していきます。
食べ歩きをして常に進化を模索すると言う姿は真の経営者の姿です。
そこにはクソみたいな偽物のプライドなど微塵も存在しないのです。
これは優秀な経営者の特徴です。
過去の成功に溺れないと言うのは経営者にとって1番重要なファクターです。
しかし、彼の経営者としての本当に素晴らしいところはそこだけではありません。
価格戦略です。
城助はとにかく安い。
もちろん、なんとかの牛丼ではないので500円で食べられるものではないですが、クオリティからすると常識外れに安いです。
アテを含めたフルコースでかなり飲んでも一人18000円まで。
二人で4万を超えるにはシャンパンのボトルを開けるしかありません。
これだけのあつらえの高級店で私の価値観の中で世界一のクオリティを持つ握りを出すお店の料金設定がこの安さです。
実は城助さんはこの料金設定に物凄く拘っておられます。
一つは本当に握りを愛する人にはあまり敷居が高く思われたくないからです。
逆の視点で申し上げれば握りを愛さない人には来て欲しくないのでしょう。
ただ、私の視点から見ればそこには経営者としての冷静な判断があります。
流石AB型です。
料金の割安感はリピーターを増やします。
飲食店経営で一番大切なことは二つです。
ランニングコストを下げることとリピーターを増やすことです。
外装、内装は初期投資なので実は好きなだけお金をかけても資金力があればやっても良いのです。
資金力がある程度あったとしてもランニングコストの重圧は店を潰します。
そして、割安感がなければいつまでたってもリピーターは増えません。
では、アホみたいにコストが高い食材を使いながら、何故、高級店として破格の安さが実現できるのでしょうか。
仕入れです。
私は食材は最高級でなければ、食材本来の味がしないとか、どこどこの食材は弱いと言っていますが、握りとして食べさせるのであれば、高度な判断での取捨選択は納得できます。
マグロや雲丹やその時の凄い食材は築地の、しかも数少ない特定の仲買からしか仕入れることができません。
どうしても築地から買わなければいけないものがあるのです。
もちろん、その日一番高い値段がつくものとかそれに準ずるものは基本的に築地にしかありません。
食材として使いたいものに対して、あるクオリティを求めるのであれば築地から仕入れるしかないのです。
そのためには築地の仲買との人間関係や諸々のことに常に気を使って良好な関係を保たなければなりません。
職人気質一本では出来ないことです。
経営者としての感性が必要なのです。
また、関西だからと言って大阪の仲買を通して築地のものを仕入れると言うアホ丸出しのことはしません。
間に余計な存在が入るのでコストが高くなる上に、クオリティに対して文句が言えなくなります。
コストが高く、クオリティの低いものしか入らなくなるのです。
まあ、関西のなんたら星がついているところでもそんな寝ぼけたことをやっているからまともな食材が手に入らないのです。
しかし、彼の凄いところは、送料やなんやらでそこまでのコストをかけるべきではない食材に関しては大阪の市場で仕入れている点です。
時期の利点や己の力量によって、握りにすれば築地の金に糸目をつけない食材でなくても己が求める芸術的な握りが作れると判断したものは大阪の市場のものでも使うのです。
ここが経営者として物凄いところです。
職人気質馬鹿、芸術家肌一筋では到底出来ないことです。
芸術と経営の融合という不可能を可能とする人。
それが中山城助です。
しかし、不可能を可能としているのは才能だけではありません。
血のにじむような努力です。
経営の勉強です。
日本中の寿司屋について詳細が書かれているノートです。
ガラケーの彼にはパソコンもスマホもないので昭和のノートしかないのです。
そこに天才の誰も知らない努力が詰まっています。
そのことこそが彼を極めて優秀な経営者にしているのです。
世の中の誰も知らないことです。
もう知ったか!
ちかにゃん喜んじゃうね。
ところで3月に入ってからの城助訪問連続記録が本日途切れました。
妻もこれを読むので回数は書けません。
今日の土曜日は、入れてくれなかった。
その理由はわかっていますが内緒です。
最終訪問は生粋に伺ったあと、3月10日の金曜日です。
お腹いっぱいで5貫ほどしか握りを食べなかったので表記の料金となりました。
通常このような食べ方、このような料金は絶対に出来ませんのであしからず。
あと重要なことを一つ。
二巡目の後の秘密の握りのみの三巡目は城助の握りをよく理解している方でないと食べることは出来ません。
シャリが時間が経ってしまっていてベストの状態ではないからです。
このようなシャリは本来、バイトの賄いのために残してあるものでお客に提供することを前提にしていません。
本来の城助の握りを知らない方には提供されるものではありません。
常連を贔屓しているのではなく、何がなんでも、数貫でも握りを食べたいと言う異常者の我儘を聞いてくれているだけです。
その点だけは決して勘違いなさらないよう心からお願い申し上げます。
2017/03/12 更新
2017/03 訪問
握りを食べれば全てがわかる
まあ、あれからも多少ペースは落ちたとは言え、物凄い回数伺っているのでいつのことを書けば良いかと思いますが、情報の更新という観点で書かせて頂きます。
食材に関しては旬があるので切り替え時期があります。
そんなの当たり前と仰るかも知れませんが、同じ食材でも産地が変わったりするわけです。
凄みのある由良の雲丹の赤雲丹は夏のもの。
頂点のものは食べたことがありません。
6月7月8月のどこかで食べられるでしょう。
板雲丹のアホほど高いものと比べても凄いようです。
塩水雲丹の最上級や板雲丹の一番札より凄いのでしょうね。
城助は握りの完成度で勝負なので食材が日本一ということではありません。
アベレージは凄いですが何十回と食べていればものによって弱いこと、全体的にいつもより弱いこともあります。
3月に入ってから穴子は弱いです。
マグロも大間から暖かい季節の勝浦に変わっているので弱いというより若いですね。
でも、3月3日の入籍記念日に妻と伺った時はどれも凄かったです。
既にマグロは勝浦のものに変わっていたのですが、この日ばかりは仕事の都合があるので時間は未定ですが、数日前から予約を入れていたので、ギリギリいける大間のマグロの熟成の極地のものを残しておいてくれました。
その日のちょっと前には勝浦のマグロに変わっていたのでその優しさが伝わって来ました。
他のタネも明らかに二人のために残しておいてくれたのがよく分かり、実はかなり感動しました。
城助さんはそんなことは一言も言いませんでしたが、握りを愛するもの同士なのでわかるのですよ、握りを食べれば全てが。
確かにへんこで愛嬌がないと言われていますが、懐に入ればとても優しい人です。
そして、誰も知りませんが、単なる職人堅気と世間から思われたいるようですが、実は経営者としても極めて優秀です。
そのことはまた次回書かせて頂きます。
彼の凄いところは実は経営能力にもあるのです。
ここまで芸術家肌の方で経営者としても突出しておられる方は稀有だと思います。
見るからに経営が上手いと見られないところが凄いところです。
食の芸術家でありながら、突出した経営能力があるところが彼の凄みです。
2017/03/09 更新
2017/01 訪問
アベレージの凄み
誰も信じてくれないような異常なペースで、私とひろぼんはこちらのお店に伺っているので、全て書くと物凄いことになって城助の影のオーナーと疑われてしまうのでいちいち書いていませんが、新たに感じたことや新しい情報は自分自身の忘備録の意味でも書かせて頂きます。
真偽を確かめたい方は、城助さんに我が家のように異常なペースで来ている二人がいますよねと聞いてみて下さい(笑)。
実際に聞かれた方がいらっしゃいますよ。
さて、今夜も握りだけの3回転目なのでお店に着いたのは11時40分頃です。
私の仕事の都合と2回転目のあとで席があくのが11時とか12時とかになるので、これくらいが私の来店のレギュラータイムと言えるでしょう。
ちなみに席は9席しかありません。
広いカウンターに隣との間をかなりあけて椅子が置かれているので9名様しか同時間に予約が取れないのです。
組み合わせの関係で、5時半スタートの方が多い1回転目、8時半スタートの方が多い2回転目だと、当日予約が取れるとしたら1人でないと難しいでしょう。
3回転目にいらっしゃるのは握りだけささっと食べて帰る人だけなので、常連の方しか当日予約は取れないかもしれません。
城助さん自身が握りを食べて欲しい、将来的にはアテを無くしたいと仰っているので、握りを愛して、数貫でもいいからなんとしてでも食べたいという異常な城助握りラバーの方々だけが3回転目にいらっしゃいます。
個人的な感想としては、城助さんご自身が異常と言えるほどの握りラバーで物凄い数の寿司屋の食べ歩きをされておられるので、寿司ではなく、鮨を愛する人がお好きなのだと思います。
そのような人が自身の握りを、握り自体を愛してくれることが一番嬉しいのだと思います。
そのことが良い悪いは別として接客にも反映しているので、居心地が物凄く良い方と悪い方にはっきりと分かれるのだと思います。
そして、神戸にも北新地にも銀座にもありますが、常連でお金をいっぱい使ってくれる人に媚びるような営業は絶対にしない方なので、そのような扱いを受けたい方には合わないお店です。
さて、本題です。
最近、ひろぼんに拉致されて祇園まで連れて行かれてまつもとで寿司を食べたりして、その直後にこちらのお店の握りを10貫とか場合によっては18貫くらい食べたりして痛感することは異常と言えるようなアベレージの高さです。
ひろぼんもその嫁も私の妻も他の熱狂的な城助ラバーズも全く同じことを言います。
私は握りだけを食べることが多いのですが、とにかく一品足りとも不満が残る握りがありません。
どんなに高級店に伺っても、どんなに気に入ってリピートしているお店でも、品数が多いと2品くらいはある程度の不満が残ります。
しかし、城助ではそれがありません。
2ヶ月足らずで普通の常連の方の2年分くらいは伺っていますが、本当にそれがないのです。
昨日のさわらと今日のさわらは違うねみたいなことはありますよ。
鮪なども寝かした日にちが1日変われば当然味はかなり変わります。
365億回書いていますが、最上級の食材は昨日と今日の仕入れに差が出ます。
しかし、握りとして、芸術品として完成されたものしか提供されることはありませんので、不満が残るというレヴェルには絶対にならないのです。
例えば、祇園のまつもとでその日頂いた最高のものが、城助のその日の真ん中くらい、或いはそれよりも下と個人的に感想を持ったものが同じくらいレヴェルなのです。
ある意味異常です。
関西人はこれを変態と表現しますが、まさに変態が醸し出す変態ワールドが城助の全てなのです。
よく、厳選したものしか出さないという宣伝文句がありますが、そんなことがあった試しがありません。
その日、築地で最も高い値段がついたものを何もしないで出すのであれば、良い悪いは別としてそれは厳選したもの、その日日本のベストだと言えるでしょうが、そんな魚介類だけを使えるのは、松川とか超高級料亭とか特殊なお店だけですから、結局はその店のベストを尽くすしかありません。
それが感じられるかどうかが重要なのです。
それが850円のざる蕎麦であっても良いのです。
今の時期の日本全国の蕎麦粉の中からそれこそ自分自身がベストだと思うものを厳選して、場合によっては複数の産地のものをブレンドして、自分自身がベストだと思う熟成をして出されたものは、変態ワールドがあるので、同じく変態が食べればその努力と情熱が一瞬で感じられるのです。
コースの数合わせで、最後に本当にどうしようもない穴子やイクラの握りを出してくるような超有名超高級店にはそれとは全く逆の感情が湧き上がって来るのです。
変態同士は磁石のように惹かれ合い、変態とそうではない人は磁石のように離れていくのです。
そして変態ではない同士も磁石のように惹かれ合うのです。
客が店を育てる。
いつも書かせて頂いている言葉の裏には変態の世界が広がっているのです。
それが城助という変態ワールドの真実であり、世間で言われるところの城助の接客の全てなのです。
2017/01/29 更新
2017/01 訪問
世界の城助
これだけ短い期間に同じ鮨屋さんに何回も伺ったのは人生初めてですので、いちいち新しいレビューをすると城助ばかりになりますが、新しい情報がある場合は更新せざるを得ません。
私と妻のとん2、鮨が死ぬほど好きなひろぼんとその若くて美しい奥様、4人で伺いました。
今宵は12貫握りプラス巻物一本勝負です。
いつものようにこのメンバーは城助のお客の中で一番早いペースで日本酒を飲みます。
とん2も美味しいものが出てくるとどれだけでも飲めますが、私とひろぼんは飲もうと思えばどれだけでも飲めますからね。
私はいつもいきなり日本酒を飲み始めますが、今日は山歩きをして喉が渇いていたので初めて生ビールから飲みました。
と言っても10秒で飲み干してしまいましたが。
一貫目の握りを食べた瞬間に、左隣のとん2と右隣のひろぼんが、今日はいつもとシャリが違うよねの一言。
何故私に確認するのでしょうか?
もう私は初老、ひろぼんやとん2の方が味覚の感覚ははるかに優れているはずです。
最初はいつもより水分が少なかったので硬めに感じました。
意図的にそうしたという意見と時間的なタイミングでそうなったという意見がありましたが、私にはどちらかはわかりません。
ただ、こちらのお店のシャリはあまりにも繊細なので温度がちょっと変わるだけで、水分がほんの少し変わるだけでかなり味が変わります。
レヴェルの高い食べ物ほど少しの違いが凄く大きく感じるのでしょうがないのです。
本日、食材のレヴェルは平均的に全て良かったです。
総合的には食材のレヴェルの平均値はこれまでの個人的な経験の中では2番目か3番目くらいに良かったかな。
いやー平均値としては1番を争うかも。
一流の食材は毎日、毎日凄いものばかりということは有り得ないから、ばらつきがあるのが普通です。
正月相場が終わって築地の一流素材も安定してきましたね。
シャリは途中からいつもの感じに変わりました。
まあ、私もうるさいと言われますが、とん2とひろぼんは細かいですねえ。
あれやこれやと言っています。
硬めのシャリが立った感じのそれと後半のいつものシャリと意見が分かれました。
とん2は後半のいつものシャリがタネとの一体感があって好きとのことでした。
ひろぼんは前半の東京のいかにも江戸前のシャリが立った感じの方が好きだと言っていました。
これはねえ、同じお店の同じ握り手の握りなので、微妙な好みの問題です。
そもそもこのお店の握りは芸術なので理解する人には理解されますが、理解されない人には理解されません。
そしてこのお店の握りが世界一、大袈裟ではなく握り日本一=世界一と思っている人同士でもちょっとしたことで意見が分かれるんですよ。
いつものシャリの方がタネとシャリの一体感があったと思いますが、やや硬めの方がシャリが立って握り全体に立体感が出るのでそれはそれで美味しいと思います。
タネとの相性もあるので同じタネを微妙に違うシャリで比べてみないと自分の好みがどちらであるか、わかりません。
超一流の食べ物とはそのようなものです。
食べるたびに違わないとおかしいのです。
一度タネとシャリのベストを食べてしまったら、それと同じものが出てくるまで常に微妙に違うと感じるはずです。
いつも同じ味などという食べ物は、そのようなレヴェルということです。
理解されない方は絶対に理解してもらえませんが、超一流、芸術というレヴェルの食べ物の真実はそこにあります。
さて、本日は一つ衝撃的なことがありました。
何を食べたのかわからない魚があったのです。
個人的には全く食べたことがない味だったのでわかりませんでした。
なんと答えはさわら。
いつもと違って燻さずにかなり熟成したものを出してくれたのでわかりませんでした。
そして物凄く美味しかったです。
もちろんいつものパターンのものも出してくれましたが、初めての経験で新鮮でした。
ハリイカもいつもと異なりかなり熟成したものが出たので鮨の舌が研ぎ澄まされているひろぼんがどんな種類のいかかわからなかった程です。
魚貝類は熟成すると旨味の方向性がどんどん似てくるので腐敗寸前までいくとなにかがわからなくなります。
もちろん、城助さんはそこまで熟成させませんが、いつもと違うものが出てくると判断が難しくなります。
いやー、小笹の更新レビュー書けないなあ。
あれほど好きで東京に行くたびに食べていた小笹。
食材は凄いものが出てくることはありますが、握りは比べてはいけません。
何れにしても食べ物としての限界に近い芸術品を同じように喜んで楽しめる人たちとあーでもないこーでもないと言って食べるのは至福の喜びと言えるでしょう。
美味しさが倍増するのですよ。
城助の美味しさを本当にわかって貰える方には神戸ホンマに美味いもん会に入って貰って、皆んなで楽しく美味しいものを食べたいですね。
2017/01/18 更新
2016/12 訪問
至高の一期一会の芸術品
小さい握り飯の上に生の魚介類をのせたものを鮨とは言いません。
シャリについては人の好みがあるにしても、きちんと温度管理がされ、シャリが立っていて、魚介類には素材の良さを最大限に引き出す仕事がされ、なおかつ全てが一体となって食の芸術品として完成されているものが寿司です。
そして熱心な読者の方はお気づきかと思いますが、私はちゃんとした寿司にはあえて鮨という文字を使うようにしています。
このお店は関西ではほとんどない鮨を提供されておられるお鮨屋さんです。
一度は行くべきだというご意見。
絶対〇〇さんには合わないから行かない方が良いというご意見。
神戸界隈、阪神界隈の有名寿司店の中で唯一ずっと気になっていながらどうしても伺う踏ん切りがつかなかったお店です。
マイナス要因として接客についてあまりにも多くの方々から良くない、二度と行かないというお話を直接お聞きすることが多かったことがあります。
そして、もう582億回書いていますが、魚介類に関しては、大阪や神戸の市場で仕入れたものは良いものがなく、築地の特別な仲卸か特別な漁師の方々から直で仕入れていなければ、満足できないからです。
料金設定からするとそんなに高くないので、雲丹はご実家の関係からそれなりに良いかもしれませんが、他のタネはあまり良いものがなく、また関西の寿司屋さんを悪く評価してしまうことになるだろうと思っていたからです。
さて、こちらのお店はほんとに偶然、あることから常連の方と伺うことになりました。
最初の時は握りしか頂きませんでした。
一貫目で思いました。
一言。
関西で初めて鮨を頂いた。
握りと言えるものが関西にもあった。
前述した鮨そのものです。
細かいことは書きません。
アテも美味しいですが、日本酒を飲みながら握りだけをいっぱい頂きたくなります。
それほど握りが美味しいですし、そのためにどのような仕事をされて、情熱をかけておられるかが良く分かります。
シャリだけではなく、タネによって繊細に施された仕事がヒシヒシと伝わってきます。
それぞれのタネが香り立っているのです。
握りを通してご主人と会話をしているような気持ちになるのです。
ただし、独創性の高い赤酢のシャリですから、特に関西の方の間では好みは分かれるでしょう。
妻は生粋の赤酢のシャリが苦手だと言っていますが、私は生粋はタネのレヴェルは低いけれども握りだけは美味しいと思っています。
記憶が古いので明確ではありませんが、生粋の握りも本当の鮨と言えるのかも知れません。
近いうちに確認に伺う予定です。
接客については評価が分かれるでしょう。
私は常連の方と伺っているので特になにも感じませんが、寿司、いや鮨がわかる方だけがご主人が好きということはわかります。
東京の高級寿司屋にはいろいろなタイプのご主人がおられるので、それを何十軒と経験しておられないとわからないと思いますが、まあ一言で申し上げれば相性です。
もちろん、あまりにも個性的というか、非常識ということもありますが、こちらのお店が非常識だとは個人的には思えません。
私は、握りは出された0.3秒以内に食べると決めていますが、このお店のようなシャリの温度がしっかりと管理された握りを出されて30秒以上経ってしまったらそれは、お店が提供したい料理ではなくなってしまいます。
店側としては既に自らの料理として成り立っていないものを評価されたらたまらないでしょう。
寿司のシャリの温度管理など、関西の方々は全く興味がないようですが、握りはまずは味付けの好み以前に温度管理が重要です。
そのような料理なのです。
だから作り手とすれば、そんな基本的なことも理解していない方に料理を提供したくないという気持ちになるのは致し方ないことです。
しかし、関西の超高級店でもシャリの温度管理をしておられるところは皆無に等しいです。
そもそも、その観点からも、神戸、関西には本当の握り、鮨はほとんど存在していません。
鮨屋は存在していないのです。
食は好みと言いますが、握り、鮨とはこのような食べ物であり、このような土俵に立って初めて好みという話が出てきます。
フレンチのお店に行って、中華が出てきて、そのお店の評価ができますか。
寿司屋に行って、鮨ではなく、小さな酢飯のおにぎりの上に本来の味がしない魚がのったなにものかが出されてそれをなんと驚くべきことに醤油をつけて食べろと言われて、握りを食べたということになりますか。
握りを評価するのであれば、まず握りと言えるべき条件を同じにしたうえで好みを語るべきであり、そうでなければフレンチを食べたことがない人が中華をフレンチと思っていて、フレンチを評価することと全く同じになります。
そんなあまりにも基本的なことが全く理解されていない。
本音をはっきりと申し上げればそういうことです。
大阪の有名店で食材を築地から入れていて美味しいお店はありますし、神戸でもアテであれば島本は美味しいと思いますが、握りと呼んで良い鮨が食べられるのは今のところ、関西ではこのお店だけです。
フレンチと中華を同じ土俵で評価する人がおられるのでしょうか。
本物の握りとお握りの上に魚がのっているものを同じ土俵で評価したり、云々言ったりするものではないのです。
鮨と関西寿司は全く異なるジャンルの食べ物ですし、回転寿司やお持ち帰りができるもの、百貨店やイカリで売られているものとも全然違うものです。
血のにじむような努力と天性のセンスによってこのような握りが世の中に誕生したのがよく分かります。
日本を代表する孤高の天才と芸術と言うべき鮨文化の奥深さが広く理解される日は来るのでしょうか?
2022/12/30 更新
進化し続ける天才中山城助の温度管理されネタとシャリが一体化した芸術的な握り
2023/02/20 更新